うつ病になったときの行動や症状って?治し方と接し方

2022.05.14 Sat
シンくん
案内人 シンくん
ライター
執筆 小野寺 リヒト 臨床心理士/公認心理師
うつ病の症状
うつ病になったときの行動や症状って?治し方と接し方

なんだかずっと疲れている。何も楽しいと思わない。寝れない。食欲もない…。

そんなことが起きていないかな? もしこのような状態がずっと続いているとしたら、うつ病の可能性があるかも。

今回は、うつ病について詳しく解説していくよ。「自分は大丈夫!」という人も、うつ病を予防するのに役立つ考え方なども述べていくから参考にしてみてね。

うつ病の要因や対策のほか、身近な人がうつ病になったときの対処法も紹介するよ。

うつ病は誰がなってもおかしくない病気
 

うつ病とは

うつ病とは気分障害の一種で、精神疾患の一つなんだ。気分障害というのは、気分の波によって日常生活に支障をきたす病気のことだよ。

うつ病は大きく分けると、①一回うつ病を経験するだけの単一エピソード、②何度も治るのと再発を繰り返す反復型、③長い期間うつ状態が続く気分変調症の3つがあるよ。

うつ病は全然珍しい病気ではなく、日本では約15人に1人がうつ病を経験していると言われているんだ。うつ病はよく「心が弱い人がなる」との誤解・偏見を持たれることがあるけど、心の強さとうつ病になる・ならないは全く関係がないよ。誰だってなる可能性があるんだ。

そもそも心が強いってどういう状態を言うの?
 

うつ病の症状は?心・身体・行動の3ポイント

気分障害の一種と聞くと、気分の落ち込みや憂うつ感、意欲の低下などの気持ちの問題だけが引き起こされるように思うかもしれないけど、そうじゃないんだ。

実はうつ病は「」の症状だけではなく、「身体」や「行動」にも症状が出てくるよ。心に表れる症状を含め、身体や行動にはどのような症状が表れるのかを確認していこう。

うつ病の「心」に表れる症状

うつ病になったときに心に表れる症状としては、以下のようなものがあるよ。

  • 落ち込み
  • 憂うつ
  • 無関心
  • イライラ
  • 不安
  • 焦り
  • 意欲低下
  • 悲観
  • 自虐
  • 集中力欠如
  • 決定力低下

気力が落ち込んでしまって活動性がなくなってしまったり、何もやろうという気になれなくなるんだ。

言わば、電池切れの状態と考えるとイメージしやすいかもしれないね。

はぁ~~
 

うつ病の「身体」に表れる症状

うつ病になったときに身体に表れる症状としては、以下のようなものがあるよ。

  • 頭痛
  • 腹痛
  • 胃痛
  • 吐き気
  • 耳鳴り
  • ふらつき
  • めまい
  • 下痢
  • 生理不順
  • 味覚障害

うつ病は心に症状が表れるだけではなく、身体にも表れるんだ。むしろ心よりも身体に表れる症状が強く出るタイプの「仮面うつ病」と呼ばれるうつ病もあるくらいだよ。

身体に異変を感じたら、その原因はうつ病にある可能性もあるんだ。

「感情がない」と感じる原因は?無感情な人が知っておきたい2つの背景

うっ…
 

うつ病の人がとる「行動」

うつ病になったときの行動に表れる症状として、以下のようなものがあるよ。

  • 遅刻・欠席が増える
  • 洗濯や掃除等の家事ができなくなる
  • 洋服や化粧をしなくなる
  • 趣味に時間を割かなくなる
  • 最低限の決まったことしかできなくなる
  • お風呂に入れなくなる

心や身体に表れる症状は目に見えづらい一方、行動に表れる症状は他人にも目につくから、この行動だけを見て「怠けている」「甘え」と誤解されてしまうんだ。でも、決して怠けや甘えのせいではなく、うつ病というれっきとした“病気によって”できなくなっているんだよ。

今日も遅刻しちゃったな…
 

うつ病の原因

うつ病の原因は実はまだよくわかっていないんだ。だけど、うつ病を引き起こす要因として有力な候補と考えられているものがいくつかあるよ。

脳の機能障害によってうつ病が引き起こされると考えられているよ。うつ病になった人の脳を調べてみたらセロトニンと呼ばれる神経伝達物質が少なくなっていることが分かったんだ。

セロトニンには精神を安定させる働きがあるのだけれど、ストレスや寝不足、日照時間が短くなることなどによってセロトニンの量が少なくなってしまうことが知られているよ。

たまにはのんびりひなたぼっこしよう
 

ライフイベント

ストレスになるような出来事があったときにも、うつ病が引き起こされると考えられているんだ。

「嫌なことがあったらうつ病になる可能性があるだなんて当たり前じゃないか」という声が聞こえてきそうだね。でも、ここでいう「ストレスになるような出来事」はなにも「嫌なこと」に限らないだ。「結婚」や「妊娠」「個人的な輝かしい成功」など、一見すると喜ばしいこともストレスとなるんだよ。

心理学者であるホームズとレイは、一つ一つは人生上誰しもに起こりうる出来事であっても、それらが重なったときに精神的な病気が引き起こされ得ることを発見したんだ。

彼らはその出来事を「ライフイベント」と名づけ、ストレスの大きなものから順番に並べた社会的再適応評価尺度を作成したよ。社会的再適応評価尺度によれば、結婚におけるストレス度を50点としたとき、ストレスが一番大きなライフイベントは「配偶者の死」で100ポイント、その次が「離婚」で73ポイントとなっているね。

なお、先ほど挙げた「妊娠」は40ポイント、「個人的な輝かしい成功」は28ポイントのストレスだそうだよ。

ここに挙げたようなライフイベントは、自律神経を乱すのでストレスを感じるんだね。詳しくは自律神経の乱れを自分で整える7つの方法を参考にしてみて。

睡眠不足

睡眠不足もうつ病になるリスクを高めることが知られているよ。

うつ病になると睡眠障害が生じるので、「うつ病になったから睡眠不足になった」ということは確かだよ。

けど、フリンダース大学のニコール ・ロヴァート氏らの研究によると、うつ病発症後に生じる睡眠の問題よりも、青年期の睡眠問題からうつ病になる問題の方が大きいことがわかったんだ。

つまり、確かにうつ病になることで睡眠不足になる面もあるけど、それ以上に青年期にしっかりと睡眠をとっていなかったことが、のちにうつ病を引き起こす大きなリスク要因となることが示されたんだ。

今はスマホで簡単に昼夜問わずいつでも誰かとつながれるし、若いときは多少徹夜しても問題はないのでつい夜更かししてしまうよね。けど、その若気の至りがのちにうつ病を引き起こすことになるなんて…。

ついスマホ見ちゃうよね…
 

考え方

考え方によってはうつ病になりやすくなるよ。細かいことが気になりすぎたり、完璧主義だったり、相手の言動の裏を勘ぐりやすかったりするとストレスを貯めることになってしまうからなんだ。

例えば完璧主義の場合、99%よくできていても1%でも気に入らないことがあると全てダメなように感じるよね。このような考え方だと、ほとんどのことを「ダメ」と解釈することになるので、落ち込みや自信喪失、やる気などがない状態がノーマルになってしまうんだ。

もちろん、完璧主義時代が「ダメ」というわけでは全くないよ。完璧主義だからこそ、仕事が丁寧だったり、向上心があったり、責任感が強いという側面もあるわけだからね。

それに「あの人のように仕事ができる人になりたい」と周りにいい影響を及ぼしていることもあるかもしれないよ。完璧主義である自分を責める必要はないから安心してね。

要は「考え方」も使い方次第なんだ。1%のダメに焦点をあてすぎて「楽しいこと」が分からなくなっちゃうことには注意しようね。

完璧主義の治し方については、完璧主義をやめたい!の記事も参考にしてみてね。

ちっちゃいことは気にするな それっ ワカチコワカチコ!
 

人間関係

自分の気持ちを押し殺すような人間関係も、うつ病になるリスクを高めるよ。

うつ病になる人は、身近な人にも自分の本心を言えなかったり、相手の言葉の意味するところを早とちりしたり、相手は自分の言ったことを理解したと思い込む傾向があることが知られているんだ。

なので、相手の言動に「不快だな」と感じたらその気持ちを伝えるなり、その人と距離を置くことが大切になってくるよ。

自分の気持ちを伝えるにはアサーションが有効だよ。また、縁を切るべき人の特徴5選に書かれた特徴に合致する人とは距離を置くことがうつ病の予防策にもなるかもしれないね。

大切なことはちゃんと言わなきゃ、だよね
 

うつ状態のチェックリスト

今までうつ病の特徴やうつ病になる原因についてみてきたけど、今度は今の状態がうつ傾向にあるのかどうかを確認していこう。

本当は専門家に診てもらったり、うつ病を調べるテストを受けるのが一番なんだけど「そこまでじゃないし…」という人も多いよね。そんな人たちのために、ココロジー編集チームで独自のチェックリストを作ってみたよ。いくつかの専門家が使うテストを参考に作ったとはいえ、ちゃんとした科学的根拠はないリストだから目安として使ってね。

  • 毎日に充実感を感じられない
  • ほとんど毎日自分のことを責めている
  • 自分は価値のない人間であると強く感じる
  • 眠りにつくのに1時間以上かかることが週の半分以上あった
  • ほとんど食欲がない
  • 些細な決断もできないくらい集中力がない
  • ほぼ毎日自分の欠点について考えている
  • 死にたい気持ちが強い
  • 趣味が楽しくなくなった

ここに挙げた9つのほとんどに当てはまるようならうつ病の可能性は高いと思われるよ。ぜひ専門家への相談をためらわないでね。

うつ病の人への接し方

チェックリストをやってみて「自分は大丈夫そう」と思った人もいるかもしれないね。けど、うつ病は誰がなってもおかしくないもの。たとえ自分が大丈夫でも、自分の身近な人がうつ病になることはあり得るんだ。

身近な人がうつ病になったら、どうやって関わっていけばいいんだろう? 今度はそれをみていこう。

「病気である」と認めてあげる

何よりも大事なのは、本人の後ろ向きな言動は全て「病気のせいである」と認めてあげることだよ。

病気だからネガティブにしか考えられないし、朝起きれないし、食べられないんだ。本人は怠けているわけでは決してないんだよ。

けど、うつ病になった本人は、うつ病の症状のせいで「自分は怠けている」と自分を責め、更に症状を悪化させていくという悪循環になっていくんだ。

だから、身近な人は「辛いよね」と、その辛さに共感してあげることが肝要なんだよ。

しんどいときはかーちゃんを頼りなよっ!
 

「病気である」ことを認めてもらう

こちらが「本人は病気」と認めるだけではなく、本人にも「自分は病気である」と認めてもらうように働きかけることが大切だよ。

先ほども指摘したように、本人は本当は病気の症状なのに「自分は怠けている」と感じるんだ。そしてそれが更に病気を引き起こす悪循環となっているんだね。これは「症状」を「症状」と認識せず「怠け」と解釈していることからくる悪循環だよ。

この悪循環を塞き止めるためには、「怠けではなく症状」と本人に認識してもらうことが重要なんだ。

「『病気だから』となんでも病気のせいにして、かえってよくないのでは?」と思うかもしれないね。けど、病気だと認識することと治すことはセットだよ。インフルエンザになったときには会社や学校を休んでいい代わりに、しっかりと治すことが求められるのと全く変わらないんだ。

本人の治す気持ちをお膳立てするために、「その症状はうつ病からきているんだよ」ということを繰り返し思い出させてあげてね。

病気=治すべきもの
 

重大な決断をさせない

うつ病のときに重大な決断をするとあとで後悔することが多いよ。だから、「今は保留にしよう」と決断を先延ばしにしてもらうことがとても大切なんだ。

うつ病になると将来を悲観的にしか考えられなくなるので、かなり破局的な判断をする傾向があることが知られているよ。その判断からなされる決断は、うつ病に色付けされたものであり本心ではないんだ。

だから、うつ病のときにした決断は、うつ病のときならしないような決断であることが多いので、治ったあとに後悔することになるよ。

うつ病のときに離婚したり、仕事を辞めたり、借金をしたりといった決断は控えよう。

もっと詳しい「うつ病を患っている人への接し方や会話例」は下の記事を読んでね!

うつ病の方への接し方と禁句集6選

仕事辞めて自分探しの旅に出ます。探さないでください
 

うつ病思考からの脱却

うつ病を治す方法に認知行動療法と呼ばれる心理療法があるよ。認知行動療法とは、考え方を切り替える練習をしていく方法なんだ。この方法を参考に、うつ病のときに頭によぎりやすい考えと、それをどのように考えなおせばいいかを示していくね。

認知行動療法については、また後で少し触れていくよ。

私って何やっても駄目…

うつ病になると、自分を責める思考が出てきやすくなるんだ。だから、つい「何をやっても駄目だ」と自分をいじめてしまうんだね。

けど、本当に「何をやっても」なのかな? 起きることができたし、歯を磨くこともできたし、お昼ご飯をチンして温めることができたかもしれない。好きな音楽も聞けたんじゃない?

うつ病になると、身体が鉛のように重くなるものなんだ。その状態で朝起きたり歯を磨いたりというのは、足かせをしながらマラソンをするようなものだよ。だから、決して「そんなことできて当たり前」のことではないんだ。

「うつ病なのに、出来ていることがある」と考えることが出来そうだね。

今日私ができたのは、これとこれとこれ
 

僕は迷惑しかかけてない

罪悪感が強くなるのもうつ病の特徴だね。「迷惑かけてばかりだ」と感じるのもよくある症状だよ。

「迷惑かけてばかりだ」は、うつ病の人と会っていると、ほぼ間違いなく聞くセリフだね。どうしてうつ病の人はほとんどみんな「迷惑かけてばかり」と感じるのだろう? 答えは簡単。うつ病の症状だからだよ。風邪を引けば誰でも咳が出るように、うつ病になれば誰でも申し訳ないと感じるんだ。

「うつ病だから『迷惑かけている』と感じるのであって、大した迷惑かけてない。そう感じるなら、『ねえ、僕は迷惑かけてる?』と誰かに聞いてみればいい」と考えることは出来そうかな?

迷惑? なんのこと?
 

心が弱い人間だ

うつ病になると、周囲のことが気になるものだよね。

自分がうつ病のせいで気力がなくなっている状態だから、周囲の人がことさら活き活きしているように見えてしまう。今の自分にはとてもできそうもないことを、周囲が顔色一つ変えずにやっていたりすると「あの人に比べて自分はこんなことで落ち込んでいるなんて」と自分の弱さを痛感してしまうんだ。

でも、うつ病になるならないは心の強さは全く関係がないし、むしろうつ病になる人は頑張りすぎる傾向があることが知られているんだ。

なので、「今は休むことが仕事だから、他人が出来て自分にはできないことがあるのは当たり前。休むことに罪悪感があるかもしれないけど、頑張りすぎたからうつ病になったんだ。プラスマイナスして頑張り量を0に近づけていくのが治療」と考えるのはどうかな?

今は休むのが仕事なの~
 

自分は怠けているだけなんじゃないか…

大事なことなので繰り返すけど、うつ病のときに「怠けている」と感じるのは「症状」なんだ。怠けていると感じても、症状を強くしてしまうだけだよ。

だからしっかりと「これは症状だ」と考え、どうしたら治していくことができるか?に専念しよう。

「骨折したら安静にするのは当然。肉離れしたときに動かさないのは当然。うつ病のときにゆっくりするのはそれらと全く同じく当然」と考えて、治療に専念するのもありかもね。

骨折したら走らない! うつになったら休む! お兄さんとの約束だ!
 

うつ病の治し方

うつ病は怠けではなく、病気だよ。病気ということは専門的な治療が必要ということなんだ。

うつ病を治すにはどうしたらいいのか? 具体的にみていこう。

お薬を飲む

しっかりとお薬を飲むのが最も効果的なうつ病の治療法だよ。

風邪を引いたらお薬を飲む。吹き出物ができたら塗り薬を塗る。それとうつ病になったらお薬を飲むのは全く同じなんだ。

うつ病をはじめ、精神疾患に対する偏見は少しずつ緩和してきているように思うけど、まだまだ身体疾患と比較すると偏見は根強くあるように思う。はやく精神疾患も身体疾患も同じ病気なんだとの認識が広まるといいね。

うつ病でお薬を飲もうと思ったら、精神科か心療内科に行くことが必要だよ。精神科も心療内科も患者さんの数が多くてなかなか予約が取れないところが多いから、心が疲れたなと感じたら早めに予約を取るように心がけてね。

精神科か心療内科のどちらに行くか迷ったときは、下の心療内科と精神科の違いに関する記事を読んでみて。

精神科と心療内科の違いは?受診先に悩んだときのフローチャート【保存版】

 

 

はい、ええ。やはり数か月先まで予約でいっぱいですか…
 

「休むのも仕事」という気持ち

お薬を飲むと同時に、しっかりと心と身体を休めることが大切なんだ。

お仕事している人はしばらく有給を使うなり、傷病手当金を得ながら休職するなりして仕事から離れよう。有休も傷病手当金も、休むために使う制度なのだから誰にも気兼ねすることなく利用していいんだ。

休むことが必要になったタイミングは、休むことが仕事になったタイミングでもあるよ。真面目な人ほど「休む=甘え」と思いがちだけど、「休むのも仕事だ」と考えてみるのも手段の一つ。休めない人は、仕事だから生活リズムを整えて、好きな音楽や映画や本を鑑賞して、適度な運動をして、お風呂に入って、夜はゆっくり休むといった、うつ病の治療に効果的な過ごし方をしてみてね。

夜遅くまで業務関係の情報集めたり、好きなことを制限したり、満員電車に揺られたり、シャワーで済ませたりするのは、「休むという仕事」をさぼることになるから要注意なんだ。

趣味の読書。これが今の私の仕事
 

カウンセリングを受ける

うつ病を治すには、カウンセリングを受けることも効果的なんだ。特に、認知行動療法対人関係療法と呼ばれるカウンセリングがうつ病に効果があることが知られているよ。

認知行動療法

認知行動療法とは、先述した通り、考え方を切り替える練習をしていく方法だよ。うつ病になると、ふとした出来事が起きたときに、自動的にネガティブな考えがよぎるんだ。例えば、声をかけた人からあいさつし返してもらえなかったとき、「嫌われている」と考えるみたいな感じだね。

ネガティブな思考はネガティブな気持ちの発生装置になるんだ。先ほどの例で言えば、「嫌われている」と考えれば、落ち込んじゃったりしてしまいそうだね。

でもよくよく考えると、嫌われている理由以外にもあいさつし返してもらえない理由はあるはずだよ。例えば、イヤホンをしていたから自分の声が聞こえなかったからとか。だとしたら、あいさつし返してもらえなかったことに落ち込む必要はなかったんだ。

このことに気づくこと、そして耳元を見てイヤホンの有無を確認したり、今度は肩をポンポンしてからあいさつするなどの行動をとることがとても大事になってくるよ。

こんな感じで、うつ病になるとついネガティブな気分を引き起こすネガティブな思考がパッと出てきてしまうんだ。だから認知行動療法では、「ネガティブな気分になった背景に、ネガティブな思考はなかったか?」をモニターできるようになることを目指すよ。

モニターできるようになって、ネガティブな思考に気づけるようになったら、その思考を切り替える練習をしていくんだ。それは気分に比べて思考の方が切り替えるのが簡単だからだよ。

ちょっと実験してみよう。

今特に落ち込みの気持ちがない人は今すぐに落ち込んでみて。落ち込んでいる人は、幸せな気持ちになってみて。

…どうだったかな? 気分を変えてみてって言われても、すぐにはできないよね。

こっちはどうかな?

川を泳いでいるのを想像して。じゃ今度は山を登っているのを想像して。

…どう? こっちの方が簡単にできたよね。やっぱり気分より思考の方が切り替えるのが簡単なんじゃないかな。

自動的に頭によぎる思考は、複雑な推論を経て生じた思考じゃないので、意外にツッコミどころが満載なんだ。積極的にツッコミを入れて、ネガティブな思考をネガティブじゃない思考に切り替えていこう

色んな考え方を持てるようにね
 

対人関係療法

対人関係療法とは、うつ病になる前後には何かしらの対人関係問題があるものだと仮定するカウンセリング手法だよ。対人関係療法では、新しいコミュニケーション手段を習得しそれを活用して身近な人との関係性を良好にしていくことでうつ病を治していくことを目指すんだ。

うつ病は、身近な人との関係性によって良くなったり悪くなったりするものなんだね。「いつまでも怠けているの?」と責めてくる人が身近にいる人と、「うつ病だと辛いよね。協力できそうなことがあったら遠慮なくいってね」と共感してくれる人が身近にいる人とだと、明らかに後者の人の方がうつ病を治していきやすいんだ。

対人関係療法では、身近な人にはうつ病を治すためのサポーターになってもらい、本人はうつ病であることを受け入れつつ、「本音を伝える」など、うつ病を治すために出来ることを身近な人の協力を得ながら一つずつ着実にこなしていくよ。

1人で苦しいときは相談してくださいね
 

他の精神疾患との違い

最後に、うつ病と他の良く似た精神疾患との違いについてまとめていこう。

適応障害とうつ病との違い

うつ病とよく似た精神疾患に適応障害があるよ。うつ病も適応障害も気分の落ち込みといった点で共通しているんだ。

ただ、うつ病と違って、適応障害の場合は適応障害になった原因がハッキリしているよ。例えば、職場が合わなかったとか、学校でいじめを受けたとか、借金をしたとかだね。

なので、適応障害の原因となったストレスがなくなれば適応障害も治っていくんだ。よく、「会社には来れないのに、旅行には行けるのか」という批判を受けることがあるけど、職場が適応障害の原因の場合、それ以外の環境では普通に過ごせるよ。

それに引き換え、うつ病は必ずしも「これ」という原因がなくても発症するんだ。仮にあったとしても、その原因がなくなったところで治るとは限らないんだね。

適応障害って?「うつ病の軽いやつ」ではない理由

鬼さえいなくなれば僕は元気でいられるんだ! 鬼は外!
 

双極性障害とうつ病との違い

うつ病とよく似た精神疾患に双極性障害もあるよ。双極性障害は躁うつ病とも呼ばれていて、激しい落ち込みと過剰な活動性を交互に繰り返すのが特徴だよ。

双極性障害とうつ病とでは、治すために使うお薬は全く違うんだ。だけど、双極性障害の「過剰な活動性」のときは、本人は「何でもできる」「絶好調」「幸せ」とすら感じるので、自分は病気だとの自覚すらないんだね。だから、もし双極性障害の人が病院にくるとしたら、大抵の場合「激しい落ち込み」を呈しているときなんだ。

「激しい落ち込み」のときに受診するから、うつ病と間違われることも多いみたい。

双極性障害の原因と症状 接し方のコツは?

躁のときは何でもやれそうな気がする。 I Can fly!
 

うつ病まとめ

今回のポイントは以下の3点だよ。参考にしてみてね。

  1. うつ病は気分障害の一つ。気分障害だが、心だけじゃなく、身体や行動にも症状が現れる。
  2. 原因ははっきりとしていないが、うつ病になる理由として様々な要因が挙げられている。
  3. うつ病を治すには、医学的なケアをはじめ、休養やカウンセリングが有効。
うつ病についての理解がもっと広まりますように
 

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