アサーションとは?人間関係がラクになる簡単入門トレーニング

2022.01.12 Wed
シンくん
案内人 シンくん
アサーションのやり方の画像
アサーションとは?人間関係がラクになる簡単入門トレーニング

「疲れて家に帰ってきたとたん家族に用事を頼まれて、怒鳴ってしまった」

「のんびりしようと決めていた休日に友人から誘いがあっても、嫌われたくないからOKしちゃう」

自分に余裕がないときって、つい強く怒ったり自分の気持ちを後回しにしちゃうよね。でも、どっちの対応もすごく疲れちゃうと思う。

そこでオススメなのが、相手とも自分とも気持ちよく付き合える「アサーティブ」なコミュニケーション。アサーションとは、相手を尊重しつつ、対等な立ち場で自己主張するためのコミュニケーションスキルだよ。

今回は「自分も相手もOK」なコミュニケーションの方法を解説していくね。

アサーションを身につけると、コミュニケーションに自信が持てるよ
 

アサーションの歴史と語源

アサーションの起源は、1949年に行動心理学者のアンドリュー・サルターが出版した著書にあるといわれているよ。サルターは、「本来人間は、自由で活動的な生き物であるが、多くの人は子ども時代に受けたしつけなどによって抑制的になってしまっている」と考えて、本来の活動性を取り戻すためにアサーション(自己主張)が必要であると論じたんだ。

そして、行動療法の先導的医学者であるウォルピとラザルスは「人は不安への対処として、怒りを表したり、主張を抑圧をするのではないか」と発展させて、考えや気持ちを適切に表現するためのアサーショントレーニングを開発したんだ。

アサーション(Assertion:名詞)はアサーティブ(assertivene:形容詞)、アサーティブネス(assertiveness:名詞)とも同じ意味で、直訳すると「権利などを主張する、自分の意見をはっきり言う」。一言で表すと、「自己表現」や「自己主張」になるよ。

本当はみんな自由でいていいんだ!
 

アサーティブなコミュニケーションにおける意味

アサーションには社会的な背景にも大きく関わっていて、たくさんの人に影響してきたんだ。

1960年代から、アメリカで女性や黒人に対する差別を撤廃するための人権運動などが行われる中で、アサーションへの注目が社会的に高まり始めたよ。そして1970年代に、アメリカの心理学者アルベルティとエモンズが出版した”Your Perfect Right”がベストセラーになって、アサーションが世界的に注目を集めるようになったんだ。その中で、「アサーション権」という3つの権利が唱えられたんだ。

①「自分自身でいる権利」
②「自分自身の存在を表現する権利」
③「自分自身でいることや自身の存在を表現することに対して無力感や罪悪感を感じる必要はないという権利」

世界的に有名なキング牧師のスピーチは、このアサーション権を反映したものといわれているよ。
アサーションの権利を尊重することは、すべての人にとって大切で、アサーティブなコミュニケーションは、自分も相手も守っていくために必要なスキルなんだ。

みんな等しく大事な存在
 

アサーションの効果とメリット

アサーションを学ぶと、コミュニケーション力が上がるだけじゃなく、考え方自体も明るく変化するよ。

心理学の認知行動療法では、行動を変える→認知(ものごとの考え方やとらえ方)が変化する→感情に影響するという考え方があるよ。自分も相手も大切にするアサーティブなコミュニケーションを身に着ける行動によって、考えが前向きになり気持ちが明るくなる効果が現れるんだ。

「そっか!こう言えばいいんだ!」と思えたらだいぶ気が楽になるね
 

アサーティブにできない理由

パワハラなど職場での問題、自分も相手も傷つけるような夫婦喧嘩、些細なすれ違いから始まる友達とのトラブルなど、人間関係で困ることは多いんじゃないかな。

どうしてアサーティブなコミュニケーションを取ることは難しいんだろう。背景にはいろんな心理や社会が隠れているんだ。

自分の気持ちが把握できていない

自分の気持ちや言いたいことが不明確だと、もちろん言葉で表現することもできないよね。

生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹が空いたとか、オムツが気持ち悪いと感じたら、はっきり自分の気持ちをアピールするよね。でも成長していくと、親に受け入れられる言動を選んで身に着けていき、自分の気持ちを後回しにする経験も増えていくんだ。

すると、表現されなかった気持ちは薄れていって、見えなくなっちゃうよ。だから大人になって自分の気持ちを聞かれたときに困ってしまう人も多いんだ。メンタライゼーションで自分の気持ちを把握したり、自己開示を練習したりしてみてね。

主張すべきときにはちゃんと主張しないと…
 

結果や周囲を気にしすぎる

自分の言うことが伝わるかばかり気にしていても、アサーティブにはなれないんだ。自己表現で大切なことは、言いたいことが伝わるかどうかではなくて、自分の気持ちや考えを適切に言えるかどうかなんだ。

受け取り方は相手のものだから、自分が相手を支配することはできないよ。相手に変わってほしいときは、まず自分のコミュニケーションから変えていくのが近道なんだ。

気にしないで。君がどう受け止めるかは君の自由なんだから
 

自分の考えを言語化できていない

言葉だけアサーティブにしても、考え方そのものがアサーティブじゃないと、本心からアサーティブ・コミュニケーションを取ることは難しいんだ。

例えば、”物分かりのよい人が好かれる”、”愚痴をこぼしたら嫌われる”、”大人は子どもより偉い”、”上司の意見は絶対”などの考えをもつ人は多いんじゃないかな? 社会で”常識”といわれる考えや思い込みを正しいと信じて生活していると、社会の雰囲気に合わせた行動しか取れなくなりがちだよね。

自分は本来どうしたいのか、どんな風に考えているのか、どんな考えを大切にしていきたいかを考えて、意識することが、アサーティブなコミュニケーションの第一歩になるんだ。

「べき思考」が強いと、アサーティブになるのが難しいんだって
 

自分のコミュニケーションタイプをチェック

次は、いよいよ自分の自己表現タイプをチェックしてみよう。

『友達とレストランで食事を取っているとき、自分はステーキを注文したのにハンバーグステーキが来てしまった。そんなときどうする?』

A.怒って店員を呼び、店側の非を責め、もう一皿注文通りのステーキを要求する

B.ステーキが有名なお店だったからがっかりしながらも、「ハンバーグも嫌いじゃないし」と言い、黙って食べる

C.店員を呼び、”ハンバーグではなくステーキを頼んだこと”を冷静に伝えて、「取り替えてほしい」とはっきり伝える

上記3つのうち、自分だったらどれに近い反応をしそうかな? 自分がどういうタイプのコミュニケーションをする傾向があるのかは、下の「自己表現タイプ」を見てね。

3つの自己表現タイプ

アサーションの中では、コミュニケーション傾向を大きく3つのタイプに分けて理解するよ。

①攻撃的(アグレッション)タイプ

攻撃的(アグレッシブ)タイプは、自分のことだけを考えて他の人の気持ちや考えを無視して主張するタイプだよ。さっきの例で言うと、店員さんをしかりつけたAのパターンだね。

②非主張的(ノンアサーティブ)タイプ

非主張的(ノンアサーティブ)タイプは、自分よりも他の人を優先して、自分の気持ちや考えは後回しにするタイプ。これは、ハンバーグを黙って食べたBのパターンだよ。

③適度に主張的(アサーティブ)タイプ

適度に主張的(アサーティブ)タイプは、自分のことを大事にしながら他の人にも配慮するタイプだよ。冷静に、かつ、はっきりと「取り替えてほしい」と伝えたCはアサーティブタイプだね。

職場では非主張的タイプだけど、家族に対しては攻撃的タイプかも…なんて人もいるよね。

次に、3つのタイプを詳しく解説していくよ。

攻撃的自己表現(アグレッシブ)

”攻撃的”とは、暴言を言ったり相手を責めることだけを指すんじゃなくて、相手の気持ちや考えを無視したり軽く見て、自分の考えを通そうとすることも入るんだ。

何気ない会話の中での、ダメ押しや一言多い発言も、攻撃的な自己表現のひとつ。「私が正しい」「あなたの考えは間違っている」と思うときに、攻撃的な表現をしてしまうことがあるよ。家族や恋人など、親しい間柄になると、甘えや気の緩みから自分を押し通すことも増えるよね。

アグレッション(物理)は無理…!
 

非主張的自己表現(ノンアサーティブ)

空気を読んで意見を控えたり、面倒だから…と主張をしない人も多いんじゃないかな。

でも、自分の意見を言わなかったり、周りに合わせて曖昧な言い方をしてばかりいると、”自分の意見は役に立たないから””どうせ言ってもわかってくれない”という自信のなさや卑屈さに繋がってしまうこともあるんだ。

相手に対して、”立ててあげたんだ”、”黙ってる私の気もしらないで”という恩着せがましい気持ちになってしまうこともあるよ。上手く心の中で処理してるつもりでも、ストレスとして着実に蓄積されて、突然攻撃的になってしまったり、人との付き合いが嫌になってしまうこともあるんだ。

歌いたくないけど空気読まなきゃ…
 

適切な自己表現(アサーティブ)

自分の気持ちや考え、信念を率直に、その場にふさわしい表現で伝えることをアサーティブな自己表現というよ。自分が正直にはっきりと意見を言うことは、暗に相手にも意見を主張する権利を示していることになるんだ。

ときに意見がぶつかることはあるかもしれないけど、含んだ言い方をしたり、本音を隠して曖昧な伝え方をするよりも建設的な話し合いにすることができるんだよ。自分も相手も尊重した発言や行動は、鑑となって、相手からも返ってくるんだね。

宇宙人も人間も自己主張していいんだね
 

アサーション・トレーニングとは

”自分がどうしたいか聞かれてもわからない…””言いたいけど言葉がでてこない…”と思う人も多いよね。どんな風にアサーションを身に着けていけばいいのかを解説していくよ。

スポーツや楽器と同じように、いいコミュニケーションを取るためにも練習をして技術を身に着けていく必要があるんだ。だけど、お金をかけたり、毎日欠かさずトレーニングし続ける必要はないよ。思い出したときに一人で考えてみたり、ちょっとトライしてみようかなというときに行動したりすることで、少しずつ身についていくものなんだ。

アイメッセージを使う

I(私)メッセージ」とは、主語を自分にしたメッセージのことだよ。

「何度言ったらわかるの?」「寝てばかりいて!邪魔!」といった小言の主語は「YOU(相手)」だよね。これらの主語を「I」に変換すると、自分の気持ちがはっきりしたり、小言の裏にある本音に気づけることがあるよ。そして、相手に受け入れやすいメッセージになるんだ。

「(私は)伝えたことを忘れられて悲しいよ」とか、「(私は)忙しいから手伝ってほしいと思ってる」という、Iメッセージに変換すると、怒りだと思っていた自分の言葉の背景に、別の気持ちやメッセージがあることに気づくよね。

「寝てばかりいて!邪魔!」→「私はもっと家事を手伝って欲しい」
 

DESC法を使う

問題を解決するための方法として、アメリカの心理学者ゴードン・バウアー氏らが開発したDESC法が役に立つよ。DESCとは、「Describe:(客観的に)描写する」「Explain:説明する」「Specify:提案をする」「Choose:選択する」の頭文字をとったものだよ。

例えば、友人と喫煙席に座ってしまった場合は、

【DESC法の例】

喫煙する人が周りに多いね(D:描写)

実は私、煙が苦手なんだ(E:説明)

席を替えてもらわない?(S:提案)

あなたが吸いたかったら一本吸い終わった後でもいいよ(C:選択)

このように話すと、状況に対する気持ちや意図がしっかり伝わるよね。相手の気持ちを蔑ろにしないために、最後に選択肢を追加で提示することもポイントだよ。

「一本吸い終わってからでもいい」って選択肢くれたから、こっちも気が楽~
 

相手の話をしっかり聴く

実は、「きく」には種類があって、「聞く」は”耳に入ってくる”、「聴く」は”注意深く親身に耳を傾ける”という意味なんだ。聞くことはできても、聴くことってなかなか難しい…。特に、怒っているときや自分の要求を通したいとき、相手の話に興味がないとき、相手の意見は聞き流してしまっていることも多いんじゃないかな。

だけど、コミュニケーションは、自分の意見を伝えるだけでは成立しないよね。一方的に発信するばかりだと、相手も似たようなコミュニケーションになったり、シャットダウンされてしまうこともあるよ。まずは相手の言い分や要求をしっかり聴いたうえで、自分の気持ちや考えを伝えよう

こんなことしてるのにもちゃんと訳があるんです。聴いてくれます?
 

ロールプレイ事例

日常場面の例から、アサーティブな返し方を一緒に考えてみよう。

企業の場合

今日は仕事終わりに大好きなアーティストのライブ。定時まであと1時間!そんなとき上司から、「この資料作ってほしいんだけど、今日中にお願いできる?」と仕事を頼まれてしまった。どう見ても3時間以上はかかりそうな量の仕事…。今日中に終わらせるならライブには間に合わなさそう。どうしよう。

■アグレッシブ:今日は予定があるのでできません。申し訳ありません。

■ノンアサーティブ:えっ、今日中ですか?わかりました。頑張ります…。

■アサーティブ:明日までの資料なんですね…。申し訳ないんですが、今日はどうしても定時で帰らなければいけない用事があるので、本日は半分ほどしか進められないと思います。明日の午前中まで期限を延ばして頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

友人の場合

1週間働いて疲れ切った金曜日。楽しみにしていたドラマの録画を見ながら一人でのんびりしようと帰宅していた最中、「仕事終わった?今から飲みに行かない?聞いてほしい話があってさ…」と友人から電話。すごく疲れているし、今日は家でゆっくり休みたい気分…どうしよう。

■アグレッシブ:いやいや、今めっちゃ疲れてて〇ちゃんの話聞いてる場合じゃないんだ。〇ちゃんいつも自分の話ばっかりだし。

■ノンアサーティブ:え、嬉しい。でも今から行ったら遅くなるからな‥「朝まで飲めばいいじゃん!週末だし」そうだね。じゃあ行こっかな。

■アサーティブ:連絡ありがとう。でも今日はすごく疲れてるんだ。今から行っても遅くなっちゃうから今日は止めておいてもいい?ごめんね。また今度会いたいんだけど〇日はどう?

夫婦の場合

”今日は旦那の好きなハンバーグもポテトサラダも作っちゃった。早く帰れそうって言ってたから一緒にワイン開けてもいいかも!”と、ご飯が出来上がったころ「ごめん、上司に誘われちゃって飲みに行ってくる。遅くなる。」と連絡。先週もその前もずっとこんな感じ。土日は疲れたって言って寝てばかりいるし、もう最悪!深夜に夫が帰ってきたとき…

■アグレッシブ:(ため息をついて)今何時かわかる?今日は早く帰るって言ってたのに嘘つき!

■ノンアサーティブ:意外と早かったね。疲れてるよね?明日は早く帰れそう?「わかんない。」そっかそっか、仕事大変だね!

■アサーティブ:お疲れ様。今日は仕方なかったかもしれないけど、あなたの好きなハンバーグ作って一緒に食べるの楽しみにしてたから、寂しかったな。次から遅くなるとき、わかり次第すぐ連絡してほしい。

アサーティブ・練習ワークシート

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部下に書類を提出された。しかし、以前も指摘したミスを再度繰り返している。この部下は最近遅刻も多くて目に余るところがある。どのように注意すればいいんだろう。

友達のAちゃんとご飯に行ったとき、たまたまAちゃんの手持ちが足りなくて貸した1000円。Aちゃんはすっかり忘れてるみたいだけど、なんて言おうかな、それともお金のことは言い出しにくいし黙っていようかな。

平日は夫婦二人とも働いているのに、家事をしているのはほとんど妻の私ばかり。今日も夜ごはんを食べ終わった食器はそのままにして、夫はソファに座ってテレビを見ている。仕事で疲れてるのは私も一緒なのに‥!どんな風に声を掛けよう。

アサーションは少しずつでOK

職場や友人、家族など、人との関係性は大きな支えになるときもあれば、ものすごいストレスになることもあるよね。少し強く注意したらパワハラと言われたり、なにかと「コミュ力」を強調されたり…円滑なコミュニケーションってなかなか難しいと思う。

何から手をつけたら上手くいくのかさっぱりわからないときは、ここで取り上げられたアサーショントレーニングをぜひ意識してみてね。1日1回でも、1週間に1回でも、試してみることが第一歩だよ。

「私は…」と切り出すことを意識してみよう
 

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部下に書類を提出された。しかし、以前も指摘したミスを再度繰り返している。この部下は最近遅刻も多くて目に余るところがある。どのように注意すればいいんだろう。

友達のAちゃんとご飯に行ったとき、たまたまAちゃんの手持ちが足りなくて貸した1000円。Aちゃんはすっかり忘れてるみたいだけど、なんて言おうかな、それともお金のことは言い出しにくいし黙っていようかな。

平日は夫婦二人とも働いているのに、家事をしているのはほとんど妻の私ばかり。今日も夜ごはんを食べ終わった食器はそのままにして、夫はソファに座ってテレビを見ている。仕事で疲れてるのは私も一緒なのに‥!どんな風に声を掛けよう。

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