非正規で働くことへの不安で、憂鬱な気分から抜け出せない

2023.06.18 Sun

目次

回答したカウンセラー

小野寺 リヒト

臨床心理士/公認心理師

小野寺 リヒト

臨床心理士・公認心理師。FP2級所持。
医療機関や一般企業の産業保健事業部等での勤務経験があります。心の悩みが気兼ねなく相談できたり、セルフケアの重要性が浸透した世の中になってくれたらいいなと思っています。読書と料理が好きです。
【得意な相談】
〇気分の落ち込みや不安に関する相談(上手な気持ちの切り替え方、最初の一歩になる行動の踏み出し方等)
〇人間関係に関する悩み(パートナー・親子・職場関係・友人等)
〇お金の相談(ついお金を使ってしまう心理、貯蓄・節約のこと等)

「非正規で働くことへの不安で、憂鬱な気分から抜け出せない」の相談内容詳細

相談者
相談者 ほはーほー
いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
コロナや自分の体調の問題で、今非正規で働いている。仕事内容は今まで経験した仕事の中でも、自分に合っていると思うが、ふとしたときに正社員で働いてないことの不安がよぎって、憂鬱な気分から抜け出せなくなる。
「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
悲しみ60%、不安80%、罪悪感60%
「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
最初は正社員で就職したのに、今は正社員じゃないことが親に申し訳なく感じる。周りの友人が正社員で働いているため、自分が情けなく感じてしまう。そのため、人に会いづらくなった。
いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
今は、非正規で働く人も多いし、非正規だから、劣っているわけではない。元気に働けているし、それだけでよいのではないか。
いま専門家に聞いてみたいことは?
仕事は嫌なことがあったり、嫌な人がいても、すごく無理をして働いているわけではないので、自分に合っている職だと思う。現状を大きく変えたいとは思ってないのに、将来や現在が不安になったとき、どのように気持ちを切り替えればよいか。
年齢、性別、職業
20代、女性
既往歴
ストレス性胃腸炎
悩みの内容の自由記述
最初の会社が倒産し、その後、別の仕事に就きましたが、仕事内容が合わず、食事が喉を通らなくなり、食べてももどすようになってしまいました。もともと心配性で不安に感じることが多くあります。仕事自体や人と関わることに、少し恐怖心をもっています。胃の不調は嫌なことを言われたり、出来事があると、まだ感じることがありますが、以前ほどではありません。また、親も私には、今は正社員も不安があるし、元気に働けてるだけいいんじゃない?と優しいです。テレビなどで同じような立場の人がいても、元気に過ごしているだけでいいと思えるのに、自分に対しては、そのように思うことができません。ネットなどで検索してしまい、現実を突きつけられると不安な気持ちが強くなります。気持ちに波があり、大丈夫と楽観的になれるときもあれば、涙が止まらなくなったり憂鬱気分がおさまらなくなるときもあります。その時が、とても苦しく辛いです。
相談者 ほはーほー さんの自分史

自分史はまだありません。

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「非正規で働くことへの不安で、憂鬱な気分から抜け出せない」への回答

  • ほはーほー さん、ご相談をよせてくださりありがとうございます。臨床心理士・公認心理師の小野寺です。

    非正規で働くことに不安を感じておられるのですね。

    おっしゃられる通り「非正規で働く人も多いし、非正規だから、劣っているわけではない」ですよね。それに過去「食事が喉を通らなくなり、食べてももどすようになってしま」った経験もおありなのですから、今「元気に働けている」ことの方が、ずっと重要かと思います。

    そもそも現代社会は「VUCAの時代」と言われていて、全く将来が読めません。VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、未来を予測することが非常に困難になっていることを意味する言葉です。

    「Youtuberが仕事になる」なんて、20年前の人たちは誰も予測できていなかったのではないでしょうか。小学生がなりたい職業ランキングではここ最近ずっとYoutuberが1番だそうです。ところが、そんなYoutuberも徐々に「オワコン」と言われつつあります。

    このように流れがとても速いのが現代社会の特徴ですから、正社員として働いているのもリスクだと言えます。いつその会社が倒産するかわからないからです。 ほはーほー さんが最初に入られた会社も倒産されたとのことですよね。当たり前の話、「この会社は倒産するだろう」と思って入社する人はいないのですから、本当に「将来が全く読めない」ことを物語っていると思います。このリスクは今後ますます大きくなっていくでしょう。

    自分が若いときに会社が倒産するのならまだチャンスはありますが、もしもっと年を取ってから倒産されたら…。考えるだけでもゾッとします。

    その点、非正規で働くことはリスクヘッジになる側面がありますね。派遣として働いているのなら、派遣されていた会社が仮に倒産しても他の会社に行けばいいだけの話です。掛け持ちで複数の会社で勤務していいことも非正規の強みです。

    ちなみに、私たち臨床心理士は非常勤掛け持ちで勤務している人がとても多いのです。ある日は病院へ行ってカウンセリング業務をし、ある日は療育施設に行って子どもたちと関わる、みたいな働き方です。

    何が不安なのかが見えれば対策も見える

    とはいえ、上記の状況を並べ連ねても「非正規で働くことへの不安」はなくなりはしないかもしれません。

    正社員に比べて非正規は社会的な待遇は決して良くはないですよね。 ほはーほー さんが週に何十時間程度働いておられるのか分かりませんでしたが、もしそれほど多く働いておられないのなら、もしかしたら年金は基礎年金だけかもしれませんし、保険も国民健康保険かもしれません。基礎年金は厚生年金に比べ、将来受給できる年金の額が少なくなります。国民健康保険だと、出産手当金も傷病手当金もありません。場合によっては雇用保険にも入っていないかもしれませんね。

    会社の業績が傾いたときに人員整理されてしまいやすいのは非正規雇用の人たちでもあります。

    こういう現実を考えれば、いくらVUCAの時代だからといっても、非正規で働くことに対してやっぱり不安を感じてしまいます。

    であるならば、他の手段をもって不安を少しでも下げるように取り組めるといいかもしれません。

    まずは「非正規で働くことへの不安」が何を指しているのか、解像度を高めることが必要です。

    「病気や怪我で働けなくなったらどうしよう」
    「老後資金が心配」
    「人員整理されやすい」

    などなど、より具体的に考えるのです。

    「病気や怪我で働けなくなったらどうしよう」が不安の正体なのであれば、就業不能保険に入ることで不安は多少減るかもしれません。この保険はまさに病気や怪我で働けなくなったときに備える保険です。ただ、もし ほはーほー さんが健康保険に入っているのなら、傷病手当金を受給できるのでこの保険は不要かと思います。

    「老後資金が心配」なのでしたらiDeCoやNISAをはじめるといいかもしれません。いずれも国が用意した制度で、投資をした際にかかる税金を抑えることができるものです。

    「投資なんて怖い」と思われるかもしれませんが、iDeCoやNISAでインデックスファンドをすればそんなに怖くはありません。

    インデックスファンドとは、ごく簡単に言うと、長期的に様々な投資商品を一定額ずつ購入していく投資手法で、しかもその作業を投資のプロがやってくれるものです。証券口座に資金を入れておけば、毎月一定額ずつ自動で投資に回されます。デイトレーダーのように「いつ買っていつ売って」と株価とにらめっこする必要はありません。

    iDeCoもNISAも何十年も続けることで元手を増やしていくことを目指す設計となっているものです。この点も投資に対する怖さを緩和してくれます。というのも、1950年から2017年の間のどの15年を区切っても、この間に投資をしていた人は損していないことが明らかとなっているからです。

    今からコツコツとインデックスファンドを行い続ければ、将来の老後資金の心配はしなくて済む可能性が極めて高いと言えそうです。

    もちろん、投資に「絶対」はありませんので、インデックスファンドを20年、30年続けても元本以下になってしまうことはあり得ます。しかし、余剰資金で投資を行うことで将来に備えることができる可能性があり、その可能性が高いのであればやってみる価値はありそうです。ちなみに、つみたてNISAは100円から始めることができますので、とても始めやすいかと思います。

    「非正規で働くことへの不安」の正体が「人員整理されやすい」である場合は、兼業や副業(複業)を考えるのはいかがでしょうか。兼業・副業していれば、複数の企業や団体に所属することになります。

    いくらVUCAの時代で企業の業績がいつ傾くかわからない時代だといっても、所属先全部が同時に業績不振になる確率はかなり低いでしょう。だから兼業・副業をしていれば、いきなり収入が途絶えてしまうというリスクは避けられそうです。兼業・副業がうまくいけば、収入面での不安もなくなるかもしれません。

    「自分には兼業・副業できるようなスキルがない」と思われたかもしれませんね。その場合、今お勤め先で使っているスキルを活かせる企業を見つけて、そこと兼業してもいいのです。あるいは今からまた別のスキルを身につけて、数年後に副業するのでもよいかと思います。

    以上「非正規で働くことへの不安」について考えてみました。VUCAの時代で先が読めないだけに何をするにも不安があるかと思います。

    そんなときこそ「何が不安なのか」をより具体的にすることが大事になってきます。そうすれば、今できる可能な対策が見えてくるかもしれません。

    今回の記事では、具体的に対策を3つご紹介しました。これが参考になって、 ほはーほー さんの不安を取り除く対策が何かしら見つかれば幸いです。

    最後までお読みいただきありがとうございました。

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