敵意帰属バイアスが強く毎日イライラするのをやめたいです。

2023.06.27 Tue

目次

回答したカウンセラー

中浦ダイ

精神保健福祉士

中浦ダイ

精神保健福祉士。ニュージーランド在住。Waikato大学大学院カウンセリング学修士課程。Free to Runアンバサダーランナー。精神科医療機関でのソーシャルワーク、オルタナティブ教育団体でのプログラム運営、心理カウンセリング、女性の権利擁護などの活動を行う。知識が経験になり自分の物語になるようなコンテンツを作りたいと思っています。
【得意な相談】
◯自己肯定感・自尊心に関する相談(自信がない、何をしたいか分からない、自分がどんな人間か分からない等)
◯コミュニケーションに関する相談(家族・夫婦・親子・職場・友人との人間関係等)
◯適応に関する相談(職場・異文化・出産などライフステージに伴う変化等)

「敵意帰属バイアスが強く毎日イライラするのをやめたいです。」の相談内容詳細

相談者
相談者 ruma
いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
相手の些細な言動から敵意を感じ、怒ったり、落ち込んだり、ひどい時だと癇癪を起こしてしまいます。

例えば
①昔から冷え症が治らず、LINEで母親から「本当に婦人系の病気になるよ」「入院手術したら何十万もかかる」と言われた。
「私は冷えの危険性は知っているし、何年も深刻に悩んでいたのに、この人は私が冷え症を甘く見ていると決めつけて説教してきた。なりたくてなっているわけではないのになぜこんなことを言うのか。」と思い怒ってしまった。
半日経っても気持ちが収まらず、電話で自分が傷ついたことを伝えた。

②夫から「こんな物件がある」と不動産サイトを見せられ「私は今の家に不満はないし、環境を変えるのが嫌いだと前から言っているのにこの人は引っ越しをしたがっている」と思い怒ってしまった。
後から夫は引っ越すつもりはなく、物件を見るのが好きでただ見せたかっただけだとわかった。

③夫からごみの分別や家事などで軽く注意されると自分自身が否定されたと思い落ち込んだり逆ギレしてしまう。
「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
怒り100% 苛立ち100% 悲しみ50%
「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
被害者意識が強いは自覚しているものの、どうしても相手の言動に敵意を感じてしまう。
発達障害があり、子供の頃から様々な面で苦労してきたので、自分は不幸な人間でいつもつらい思いをしていると考えている。
完璧主義だけど自身のスペックは非常に低く自信がない。
指摘されると「自分はだめな人間だ」と落ち込む反面、失敗が許せないので自分が悪いと認めたくない。
相手のせいにしたくて、指摘した相手に怒りを感じることがある。
いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
ないと思うが、気のせいではなく相手が本当に悪意があって私を攻撃してきた。
いま専門家に聞いてみたいことは?
どうすれば敵意帰属バイアスをなくせますか?
また、怒りのコントロールができず癇癪を起こしたり、相手にぶつけてしまうのですが、どうすればやめられますか?
年齢、性別、職業
27歳 女 会社員
既往歴
・ADHD
(幼少期にアスペルガーと誤診されたことがあります)
・過眠症
悩みの内容の自由記述
--- 未回答 ---
相談者 ruma さんの自分史

自分史はまだありません。

※ プライバシー保護のため、ご質問の一部を編集部で変更している場合がございます。

「敵意帰属バイアスが強く毎日イライラするのをやめたいです。」への回答

  • ruma さん、ご相談を寄せていただきありがとうございます。精神保健福祉士の中浦です。

    他人からの何気ない発言に対して敵意を感じてしまい、怒りや落ち込みなどの感情をコントロールするのが難しいというご相談ですね。

    【聞いてみたいこと】には以下の2つが書かれていました。

    敵意帰属バイアス*をなくす方法
    ②怒りや癇癪を相手にぶつけずにコントロールする方法
    * 他者の言動の原因が敵意や悪意によるものだと認識してしまう心理的傾向

    もちろんこれらの問いは ruma さんの今の苦しみを表しているものだし、なくすことができたら ruma さんも生きやすくなると思います。

    でも、人は正しく組み立てなければ動かないプログラムではありません。他人や社会とうまく調和できない部分があることで生きづらさを感じることはありますが、それが「正しく組み立てられていない」という意味にはなりません。

    私は、 ruma さんが敵意帰属バイアスや怒りのコントロールを、自分の変えなければいけない「ダメな部分」として自分に厳しく課しすぎていることが、かえって2つの特性を強めてしまい、 ruma さんを余計に苦しめているように感じています。

    ずばり、 ruma さんへの私からの提案は、問題を敵意帰属バイアスや怒りのコントロールから「コミュニケーション」の問題にすり替えることです。

    コミュニケーションの問題とすることで、どうすればいいかという具体的な対策まで考えられるようになるはずです。

    次からひとつずつ説明していきます。

    敵意も怒りも悪いものではない

    ruma さんの相談内容をじっくりと拝見させていただきました。繰り返し読んでいると、ある特定のパターンがあることに気づきました。それは「①他人の言動→②敵意→③思う→④怒る」というパターンです。

    ruma さんが書いていただいた言葉を少しだけ短縮させていただき、パターンに合わせて分割してみます。

    ①冷え性であることを母親から「婦人系の病気になる」「手術したら何十万もかかる」と言われる(他人の言動)
    ②冷えの危険性は知っているし何年も悩んできたのに、私が冷え症を甘く見ていると決めつけて説教してきた(敵意)
    ③〜と思い(思う)
    ④怒ってしまった(怒る)

    ①夫から「こんな物件がある」と不動産サイトを見せられた(他人の言動)
    ②今の家に不満はないし環境を変えるのが嫌いだと前から私は言っているのに、この人は引っ越しをしたがっている(敵意)
    ③と思い(思う)
    ④怒ってしまった(怒る)

    ①夫からごみの分別や家事などで軽く注意される(他人の言動)
    ②自分自身が否定された(敵意)
    ③と思い(思う)
    ④落ち込んだり逆ギレしてしまう(怒る)

    これらのエピソードにはいずれも同じパターンがあり、 ruma さんはこのパターンの中にある②敵意を他人の言動から感じてしまうことと、④怒りを表出してしまう部分を変える必要があると考えているのだと思います。

    でも、このパターンで問題になるのは本当に②敵意を感じることと④怒りの部分でしょうか?

    もちろん、①の他人の言動は他人が言うことなので自分ではどうにもできません。

    他人の言動を②の敵意とは違う形で受け取ることができれば、④の怒る必要もないかもしれません。

    でも、ずっと冷え性で悩んできたのに「病気になる」とか「お金がかかる」なんて言われたら、「そんなこと分かってるよ」と敵意と怒りが湧き上がるのは、そこまでおかしなことではないように思えます。そう感じる言い分を ruma さんはちゃんと②敵意の部分で言語化もできています。

    私は、 ruma さんの敵意帰属バイアスは ruma さんを生きづらくさせているものかもしれないけど、それなりに妥当な敵意だと感じます。敵意を感じてしまったら、自分を守るために怒ったり落ち込んだりするのは、不適切どころか必要なことでもあります。

    このように考えると、変えるべきなのは敵意帰属バイアスではなく「敵意を感じてしまうことを隠さないこと」や、怒りをコントロールするのではなく「怒っていることを言葉で伝えられるようになること」なのではないでしょうか。

    私が冒頭で ruma さんの問題を「コミュニケーションの問題にすり替える」と言ったのは、他人からのどんな言動も聖人のように冷静に受け取れるようになるのではなく、どんな時でも怒らない仏を目指すのでもなく、自分の大切な人に自分の気持ちを伝えられる人でいられれば良いと思うからなんです。

    じゃあ、どういうふうにコミュニケーションを取ればいいのか。ポイントは、<間違わないようにする>のではなく<間違った後に何をするか>です。

    完璧主義は謝ることで楽になる

    ruma さんの敵意帰属バイアスや怒りが問題の核心ではない可能性について上述してきました。

    私が考える今の ruma さんの状況における問題の核心は、相談内容に書かれていた「自分の失敗を許せない完璧主義」の方にあると考えています。

    相談内容には以下の記述がありました。

    ・完璧主義だけど自身のスペックは非常に低く自信がない
    ・指摘されると「自分はだめな人間だ」と落ち込む
    ・失敗が許せないので自分が悪いと認めたくない
    ・相手のせいにしたくて指摘した相手に怒りを感じることがある。

    この中でも特に「失敗が許せないので自分が悪いと認めたくない」の部分が、 ruma さんと家族のコミュニケーションを難しいものにさせてしまい、 ruma さんを苦しませるものにさせているように感じます。

    今回の相談を書かれていた時、 ruma さんはどのような気分でしたか? 母親やご主人に対してどんな思いをお持ちでしたか? どちらも「自分の気持ちを分かってくれない」という理由で怒ったのだと思いますが、今はどのように感じていますか?

    おそらくですが、「なんであんな怒っちゃったんだろう」という思いや、「あんなに怒ってしまった自分が悪い」と感じられているのではないでしょうか。

    今も「母親や主人が悪い」と思っていたら、こうやってココロジーに相談をされないと思います。もしされたとしても、内容は「なぜ家族は自分の気持ちを知ろうとせずに嫌なことを言ってくるのか」というものに変わってくるはずです。

    つまり、 ruma さんの感じる敵意や怒りはそこまで不適切なものではないにもかかわらず、 ruma さんがこうやって苦しんでいるのは、「怒ってしまったこと」や「怒ってしまう自分はダメ」という、いわば ruma さんの「失敗してはいけない」という信念によるものではないかと思うのです。

    当然のことですが、失敗するのは悪いことではありません。自分のことになるとそのように考えられないことは私にもありますが、頭では失敗は悪いことではないと理解しています。きっと ruma さんも同じだと思います。

    では、失敗しないようにするのではなく、失敗を受け入れられるようになるにはどうすればいいのか。

    私は、自分の失敗を自分で受け入れようとするのではなく「他人に受け入れられる」という経験が重要だと考えています。

    つまり、怒ったり失敗したら「謝ればいい」ということです。謝って、相手から「大丈夫だから気にしなくていいよ」という言葉を受け取るコミュニケーションが、 ruma さんの失敗に対する信念や完璧主義を変えるのだと信じています。

    相談内容には記述がありませんでしたが、母親やご主人に対して怒ってしまった後、どのような会話をされましたか? ご主人に事情を伝えて「引っ越すつもりはない」と分かった後、どんな会話をされましたか?

    ruma さんが二人からの言葉に敵意を感じてしまったことを謝る必要はないと思います。繰り返しになりますが、敵意として受け取ってしまいかねないようなことを言われているからです。

    でも、もし後で話をして相手に「敵意の意図はなかった」と分かったら、その時は事情を説明した上で謝るべきです。

    コミュニケーションは二人以上の人間が自分の気持ちや考えを主に言葉というツールを使ってやりとりすることを指しますが、言葉はいつでも思っていることを正確に伝えられるものではありません。言葉は正確に思いを伝えないからこそ、今回のように敵意に感じたりするのです。

    そんな脆いツールでしかやりとりができない私たちは、ミスコミュニケーションが生じた時には謝るしかないと思うんです。

    謝ることができれば、今の ruma さんのわだかまりはないかもしれません。謝ることができれば、「失敗してはいけない」という完璧主義に ruma さんが苦しむこともなくなるかもしれません。

    繰り返しになりますが、敵意を感じてもいいし怒っても大丈夫です。でも、それで誰かを傷つけたり困らせたりすることがあったら、「自分のことを理解してくれていないと思って怒ってしまった。ごめん」と言ってみてください。

    謝罪は相手のわだかまりを解くだけでなく、自分の心に重くのしかかっているものも驚くほど軽くしてくれるはずです。

    もし謝っても相手が理解してくれなければ、その時はおもっきり相手に怒りをぶつければいいと思います。もう謝ったのだから、それを受け入れられないのは相手の問題です。 ruma さんがいつまでも抱える必要のないことです。

    今回お伝えしたことをまとめると以下になります。

    ①敵意も怒りも悪いものではない
    ②感じた敵意と怒りをコミュニケーションを通して相手に伝えることが大事
    ③敵意と怒りが間違っていたら謝る
    ④謝罪が受け入れられる経験を増やすことで「失敗してはいけない」や「完璧主義」の信念を和らげることができる

    ruma さんが大切な人に自分を気持ちを伝え、それが受け入れられる経験が増えることで、バイアスも怒りのコントロールも完璧主義も「失敗してはいけない」という思いも、全部が「そこまで悪いものでもないのかも」と思えるようになることを願っています。

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

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