対人不安を改善して自己開示ができるようになりたい

2023.05.18 Thu

目次

回答したカウンセラー

中浦ダイ

精神保健福祉士

中浦ダイ

精神保健福祉士。ニュージーランド在住。Waikato大学大学院カウンセリング学修士課程。Free to Runアンバサダーランナー。精神科医療機関でのソーシャルワーク、オルタナティブ教育団体でのプログラム運営、心理カウンセリング、女性の権利擁護などの活動を行う。知識が経験になり自分の物語になるようなコンテンツを作りたいと思っています。
【得意な相談】
◯自己肯定感・自尊心に関する相談(自信がない、何をしたいか分からない、自分がどんな人間か分からない等)
◯コミュニケーションに関する相談(家族・夫婦・親子・職場・友人との人間関係等)
◯適応に関する相談(職場・異文化・出産などライフステージに伴う変化等)

「対人不安を改善して自己開示ができるようになりたい」の相談内容詳細

相談者
相談者 おいも
いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
・中学生の頃から、人と上手く話せない、対人恐怖がある

・どのコミュニティでも、疎外感を感じる、絶対嫌われると思ってしまう

・1度きりの関係(バイトでの接客)やお金が発生している時(お店やカウンセリング)では話せる
「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
悲しみ50% 不安50%
「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
対人不安の原因は、劣等感や無価値感が強くて自分のことを知られたくなく、自己開示できないからだと思う

ちゃんと話せていた子供の頃から、誰か特定の人と関係を深めるというよりは、みんなと仲良くするタイプだったから、そもそもあまり人に興味が無いのかもしれない

本当は人との関わりを求めているのにその感情に蓋をしているのか、そもそも人に興味が無いのかよく分からない

社交的な方が優れた人という勝手な世間のイメージがあり、そうじゃない自分が嫌だ

考えることや趣味、思考、顔、性格、声、自分に関わること全てが受け入れられない
理想が高くて現実を受け入れられない

中学生の頃からずっと同じ事で悩んでいて、いい加減嫌気が差している

対人不安の原因は自信のなさだと思う自信を付けるには色んな経験を積むことが必要だと考えて、新しい習い事をしたりバイトを増やしてみたり、趣味を探してみたりとこの1年間自分なりに必死に努力した

自信をつけるため、出来そうなこと全てにがむしゃらに手を出してみたけど
いつまで頑張ればいいのかゴールが見えず、希死念慮が出てきた 疲れた
いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
周りの人はきっとそんなに難しく考えてないから、不安に感じる必要は無いかもしれない

悩んでばかりじゃなく、自分の好きなことをしたりして自分軸を持てば、こんなことは気にならなくなるかも

完璧じゃなくてもいい
いま専門家に聞いてみたいことは?
・強い無価値感、劣等感、完璧主義の改善法
・自分軸の身につけ方

をお聞き出来たらと思います。
年齢、性別、職業
20歳、女、大学生
既往歴
うつ病
悩みの内容の自由記述
よろしくお願いします。
相談者 おいも さんの自分史

自分史はまだありません。

※ プライバシー保護のため、ご質問の一部を編集部で変更している場合がございます。

「対人不安を改善して自己開示ができるようになりたい」への回答

  • おいも さん、ご相談を寄せていただきありがとうございます。精神保健福祉士の中浦です。

    対人不安があり、その根底には自分に対する自信のなさや自分軸がないことが原因だと感じていらっしゃるのですね。

    人は社会的な生き物なので、他人とうまく会話できたり関係を持てないと、人生や自分の評価に大きな影響を感じてしまうこともあるでしょう。ライオンのように家族だけで狩りをして生きていけるのであれば、他者とうまくやっていくことに悩む必要もないですが、これは人間の宿命みたいなものなのかもしれません。

    【聞いてみたいこと】に、「無価値感・劣等感・完璧主義の改善方法」と「自分軸の身につけ方」を知りたいと書かれていましたね。

    話は少し逸れますが、 おいも さんの相談内容と自分史を拝見し、すごくご自身のことを振り返っていると感じました。対人関係での難しさだけでなく、これまでの人生で起きた出来事から自分にどんな性格的な特性があるかなどを紐付けて考えられています。

    もちろん自分を知ることはとても重要です。人生の困難を解決するには、最終的には「自分を知ること」以外にはないのではないかとさえ思う時もあります。

    しかし、これまでの おいも さんのご自身の振り返り方は、あまりにも自分に厳しすぎる振り返り方をされているように感じてしまいます。厳しすぎるがゆえに、ご自身で貼り付けた「無価値感・劣等感・完璧主義・自分軸がない」というラベルの正当性さえも疑いたくなるほどです。

    今回の おいも さんへのお返事は、もっと自分に優しく、それでいてより正確に自分を知る方法を中心に話を進めさせていただきます。そうすることで、 おいも さんが聞きたいとされていたご自身に貼り付けたラベルへの向き合い方のヒントにもなると信じています。

    「内省」は「反省」ではない

    正しく自分を知るには「内省」と「反省」の違いだけでなく、2つの使い分け方を知ることが重要です。

    「内省」は自分の心の中を見つめ、自分が感じたことや考えたことを省みる行為です。たとえば、友人にイライラしてひどい態度をとってしまった時の内省方法は以下のようになります。

    【内省の例】

    「なんであんなイライラしていたんだろう」
    「友達のどんな言葉や態度に反応したんだろう」
    「その時の自分はどんな気分だったんだろう」
    「自分は何を求めていたんだろう」

    こんな感じです。

    一方、「反省」は自分の言動や行動のどこが間違っていて、今後どうすればいいのかを考える行為です。先ほどの友達にひどい態度をとってしまった例で言えば、以下のようになります。

    【反省の例】

    「イライラしているとはいえあんな態度を取るべきではなかった」
    「何かが嫌だったのならちゃんと言葉で伝えるべきだった」
    「今度からはイライラしたら少し離れて冷静になる時間を作ろう」

    こんな感じです。

    「内省」と「反省」の違いは明らかだと思いますが、もっとも大きな違いは「内省」が自分の言動や行動に善悪の価値判断をせずに、その時の自分の気持ちをそのまま探ってあげることである一方、「反省」は間違いや失敗という善悪の判断を元に、直すべきものを直すことにあります。

    「内省」も「反省」もそれぞれに大事な行為です。どちらも生きていく上で自分をより成長させたり楽に生きるためには必要なことです。

    しかし、2つを行う上で絶対に間違えてはいけないことがあります。それは、自分を知ることに「反省」を使ってはいけない、ということです。

    前述したように、「反省」は自分の失敗や間違いを元にして自分を省みる行為です。同じ過ちをしないためには重要なことです。しかし、「反省」で分かるのは失敗の原因とその後の対策だけです。「失敗」は自分がどういう人間かを知る手がかりにはなりますが、「失敗」によって「自分はこういう人間」と決断を下すことは決してできません。

    自分を知るために必要なのは、善悪の価値判断をしない「内省」です。「失敗した自分はダメな人間」ではなく「失敗した自分には何が起こっていたんだろう」と、過ちを犯した自分のより深いところまで潜っていくことで、初めて「自分はこういう人間」という理解まで辿り着くことができるんです。

    善悪の価値判断は社会秩序を守るためには極めて重要ですが、「自分を知る」ためには一旦脇に置いておかなければいけないものなのです。

    そして、 おいも さんの相談内容や自分史には、 おいも さんが自分を知る手がかりに「反省」を使っていることが多いのではないかと私には感じられたんです。

    自分史は非公開になっているのでここでは触れませんが、「人と関われない自分はダメ」と振り返ったり、「やってはいけないことをした自分はダメ」というような記述がいくつかありました。

    一つ一つの失敗に向き合える おいも さんに対して、私は心から誠実な人だと感じています。しかし、これらを前述した「内省」と「反省」に照らし合わせると、自分の間違いを特定して「反省」し、その結果善悪の価値判断に基づき「自分はダメ」と結論付けていることにはならないでしょうか?

    本当に自分を知るためには、「人と関われない自分」が何を感じているかというところまで降りていかなくてはいけません。そのためには「自分はダメ」という価値判断で留まるのではなく、苦しみの中から「本当は◯◯してほしいと思っている」と、自分のしたいことに注目できるようになるまでが必要なのです。

    たとえば、大学のサークルに馴染むことができず「私が変だから馴染めないんだ」と結論付けてしまう場合で考えると、以下のような流れが内省の一つのやり方になると思います。

    【内省:人の輪に入れずに苦しんでいる場合の例】

    「馴染めないと感じるのは特定の人だったり瞬間があるだろうか」
    「その時自分はどんな気持ちになっているだろう」
    「その時の気持ちと似たようなことを感じる場面はあるだろうか」
    「もしどんなことがあれば馴染めない場所でも居やすくなるだろうか」
    「どんな人、どんな雰囲気のコミュニティに自分はいたいのだろうか」

    こんな感じです。

    「自分がダメ」というように何かを断定していないですし、苦しみを感じることの原因から、自分が望んでいる状態にまで問いを深めているのがイメージできていたら嬉しいです。

    相談内容に「自信を付けるには色んな経験を積むことが必要」で、そのために1年間バイトや趣味・習い事など「出来そうなこと全てにがむしゃらに手を出してみたけどいつまで頑張ればいいのかゴールが見えず」と書かれていましたね。

    自分を変えるためにこれだけの努力をできることはすごいことだと思います。誠実でひたむきな おいも さんの姿に尊敬するほどです。

    でも、これらは「自信がない」というラベルを「ダメなこと」と捉え「反省」してはいるけれど、 おいも さんが「どうしたい・どうなりたい」という望みの部分への「内省」が、「がむしゃらに手を出す」ことで置き去りにされているようにも見えてしまいます。

    たくさん「反省」することで自分が改善しなければいけないことばかり見つけてしまっては、 おいも さんが「自分に自信がない」と思ってしまうのも当然なのかもしれません。つまり、「自信のない自分」は「反省」という間違った方法で自分を知ることによって作られた偽りのラベルなのかもしれないということです。

    自分を知ることは本当はもっと自分に優しい行為でいいんです。失敗や苦しいことにも「そうなんだね。私ってこんなことに苦しんでいるんだね。辛いね」とそばに寄り添ってあげてほしいです。

    価値判断しないためのエクササイズ

    ここからは、「自分はダメ」というラベルを貼らずに内省する方法を考えていきます。

    以下のリンクにある記事では、メンタライゼーションといってより正確に自分を知るための方法が書かれています。今回書いていただいた自分史もメンタライゼーションの1つですが、記事の中では実は3番目に行うものとして紹介されています。

    では最初の2つには何があるのか。

    1つ目がマインドフルネス瞑想です。「良い・悪い」という価値判断は過去や未来に対する先入観から生まれるものなので、まずは「今、ここ」に意識を向けることから始めます。

    次がジャーナリングです。頭に浮かぶことを何も気にせず書き出す作業になります。こうすることで、過去に起きた出来事から「こうすべきだった」という価値判断をする前に、そんなことをした「自分の気持ち」を最初に振り返ることができます。

    3番目にようやく自分史が出てきます。

    自分史は本番で、マインドフルネス瞑想とジャーナリングは試合前のエクササイズや準備運動みたいな感じで、気軽に取り入れてみることをおすすめします。気が向いた時や少し時間がある時に、軽くやってみる感じです。

    すぐに考え方や振り返り方を変えるのは難しいかもしれません。でも、マインドフルネス瞑想とジャーナリングの2つのエクササイズを最初に行うことで、 おいも さんの自分史にも少しずつ変化が起きるはずです。

    自分に対するネガティブなラベルに変化が起きれば、 おいも さんの自分に対する自信や価値も別の見方ができるようになると信じています。

    そして、「反省」ではなくそのままの自分に向き合ってあげる「内省」という行為自体が、 おいも さんの「自分軸」を作ることにつながるはずです。

    詳しいやり方は以下のページに書かれているので、ぜひ参考にしてみてください。

    対人関係が向上するメンタライゼーションのやり方をわかりやすく解説

    今回 おいも さんにお伝えしたことをまとめてみます。

    ①自分を知るためには「反省」ではなく「内省」が重要
    ②「反省」で分かるのは失敗に関係する自分のごく一部だけ
    ③自分史を作る前に価値判断をしないためのマインドフル瞑想とジャーナリングを活用する

    他人とうまく関われるようになる前に、 おいも さんがもっと優しく自分と自分の人生に関われるようになることを願っています。

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

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