「地元のネガティヴ面が気になりすぎてモヤモヤする」の相談内容詳細
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いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
- 数年前から今の住んでる地元が廃れる、荒れている様に耐えられない。
地元では事件や経済とか県や市や町の政治不信、地元のお店もコロナ渦でどんどん閉店したりと良いことが全然無い。
同じ地元の人の話やSNSのつぶやきを見ても、地元のマイナス面の事が気になりすぎている。
かといって私情により他県に引っ越すことは難しい状況です。 - 「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
- 悲しみ80%怒り90%不安80%
- 「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
- 自分は、ずっと慣れてきた地元がなんだかんだ好きだ。
確かに地元は日本でも田舎の県で魅力的なモノや観光地や食べ物も少ない、そこに地元のトップの人たちはじめ地元の人たちが様々な問題を起こしたり政治的にも意見が分かれて人々の心はばらばらになり大荒れの状況なっていて苦しい。
地元の大きなお祭りもあるが、お祭り会場周りの町の景色はシャッターが増えたり、地元の人たちもネガティブな事しか言わない、そんな光景や話題に自分は過敏に反応してしまう。
ただ、慣れてしまったゆえに急に変えるのはもう年齢的にも難しい。
それに自分は、35歳で精神障害とうつも持っていて、実家暮らしで障がい者雇用でやっと働いていけてる。
今から都会に引っ越して新しい職を探すのは非常に困難どころか絶望的だ。
実家は実家で65歳になった父母が気になる。近い将来親の介護も始まるかもしれないのに引っ越して大丈夫だろうか。ほかに兄弟はいない状況だ。 - いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
- 仮に引っ越すとしたら、障がい者雇用で生きてきた自分はどう生きていけばいいのか。
他県や田舎と反対の都会に引っ越したら地元のうやむやに振り回されずに平和に暮らせれるかどうか。
地元のいいところに目を向ける、地元で良好な人間関係を作れればまだ希望はあるのではなかろうか。 - いま専門家に聞いてみたいことは?
- こんな自分ですが、他県に引っ越すか地元で生き続けていくかどうしたらいいですか?地元で生きるにはどういった工夫をすればプラス思考で生きていけますか?
- 年齢、性別、職業
- 35歳 男性 障がい者雇用(アルバイト)
- 既往歴
- うつ、精神障害、発達障害(ADHD)、中度HSP
- 悩みの内容の自由記述
- --- 未回答 ---
自分史はまだありません。
※ プライバシー保護のため、ご質問の一部を編集部で変更している場合がございます。
「地元のネガティヴ面が気になりすぎてモヤモヤする」への回答
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回答したカウンセラー
KD さん、ご相談を寄せていただきありがとうございます。精神保健福祉士の中浦です。
慣れ親しんだ地元の経済状況が芳しくないことや、その影響によって悲観的な雰囲気を KD さんが感じてモヤモヤしてしまうのですね。地方都市の活性化は KD さんの地元だけでなく日本全体の大きな課題だと思います。
また、精神疾患があることで選択や行動に制限があるという状況も、地元の荒廃だけでなく生活や考え方に苦しさや窮屈さが生まれる原因でもあるように感じています。
【聞いてみたいこと】には以下の2つが記載されていましたね。
①他県に引っ越すか地元で生き続けていくかどうしたらいいですか?
②地元で生きるにはどういった工夫をすればプラス思考で生きていけますか?KD さんの今後の行動や普段の考え方に役立つアドバイスができるよう考えていきたいと思います。
障害者雇用は都会の方が進んでいる
①の他県に引っ越すか地元に居続けるかについてですが、相談内容に『自分は35歳で精神障害とうつも持っていて、(中略)。今から都会に引っ越して新しい職を探すのは非常に困難どころか絶望的だ』と書かれていたので、まずは都会に出て職を得ることについて正確な情報を知ることから始めましょう。特に客観的なデータは感情的な疑いや不安を変化させるのに役立ちます。
「都会に出て職を探すのは困難だ」ということですが、厚生労働省が公表しているデータによると、障害者雇用は都会の方がはるかに進んでいるようです。例えばですが、障害者の法定雇用率を達成している企業の数は東京が約7000、大阪が約3700あるのに対して、政令指定都市を除く他の都道府県では500〜800程度になります。法定雇用率は全従業員に対する障害者雇用の割合を定めたものです。従業員の数が多ければ多いほど障害者雇用の数も増えるので、大企業の多い東京や大阪では実際に雇用されている障害者の数はより多くなるでしょう。ちなみにですが、東京で法定雇用率を達成している企業は30%しかないので、障害者の雇用枠にはまだまだ伸び代があります。(*1)
「そんなこと言ったって都会は人口も多いから競争率も多いでしょ」と思われるかもしれませんが、別のデータによると、人口に対して精神障害者手帳の発行数の割合は島根県や山梨県がもっとも高く、東京や大阪はそこまで高くないことがわかっています。(*2) つまり、都会では雇用する企業数が多く、だからといって手帳を持っている求職者が多いわけでもないので、競争率も高いことはありません。
とはいっても、都会に出て不安なのは仕事だけではないですよね。家賃など物価が高いことによる経済的な不安もあると思います。しかし、それもあまり心配には及ばないのかもしれません。例えばですが、沖縄県と神奈川県の最低賃金には平均月収で40,000円ほどの差がありますが、不動産関連のデータを見ると両県の1LDKの家賃相場の差も約40,000円でした。つまり、収入に差はあるけど生活費も違うので相殺される可能性が高いということです。
ここまでは、都会に出るか地元に残るかを検討する上で、 KD さんが不安に感じている都会暮らしの実態について説明してみました。仕事と経済という生活の基盤においては、都会に出ることを決して不安視しなくてもいいことが伝わっていると嬉しいです。
印象は「交流」によって変化する
次に、地元で生活を続ける場合のことを検討してみます。 KD さんは『ずっと慣れてきた地元がなんだかんだ好きだ』と書かれていましたね。好きだからこそ地元が廃れ、政治的な問題と合わせて『人々の心はばらばらになり大荒れの状況』を憂慮されているのでしょう。
私は、 KD さんが地元のネガティブな側面が気になり苦しんでしまうのは、単に地元の経済や風紀が悪化しているという理由だけではないように感じています。ネガティブな印象には、 KD さんと地元との「交流」が乏しくなっていることも影響しているのではないかと感じているんです。
相談内容からは今の KD さんがどのような生活をされているのか分かり兼ねるので、あくまで私の想像になってしまいますが、 KD さんは昔と比べて人や地域との交流が少なくなっていたり、交流するものが限定されていたりはしないでしょうか?
なぜこのように考えるかというと、相談内容に『地元で良好な人間関係を作れればまだ希望はあるのではなかろうか』と書かれていたからです。SNSなどで批判的なつぶやきを見たりする限定的な交流はあっても、直接的に誰かと関係を持ったり時間を共有するような交流は持てていないのではないかと思うのです。それに、うつなどの疾患があると相対的に対人関係が減少すると指摘する研究も多くあります。体調を崩している現在の KD さんの交流が、職場や家族、SNSなど特定したものに偏よらざるを得ないことも考えられるのではないでしょうか。
環境心理学等によると、実は地域への愛着に必要なのは①信頼できる行政、②道徳的教育、③人々との交流だと言われているんです。(*3) つまり KD さんの状況を、経済悪化によって「①信頼できる行政」がなくなり、地元住民によるSNS上の誹謗中傷を見ることで「②道徳的教育」が失われたと感じ、 KD さんの病状のために「③人々との交流」が薄れてしまったと仮定すると、愛着に必要な要素のすべてと一致することになるんです。
そう考えると、お尋ねでもあった『地元で生きるにはどういった工夫をすればプラス思考で生きていけますか?』への回答は、「地元への愛着を形成する3つの要素を回復させてあげる」ことになりそうです。
では、実際に地元への愛着を回復させるにはどうすればいいのでしょうか? ポイントは③の「交流の回復」です。なぜなら、 KD さんが一人で行政を正すことはできないですし、たとえ神様でも住んでいる人全員の道徳心を向上させることは簡単ではないからです。でも、3つ目の「交流」であればなんとかできるかもしれません。なぜなら、複数の交流を地元の人やコミュニティと持つことは、 KD さん一人でもできる可能性があるからです。
地域によってコミュニティにも限りがあると思いますが、もし今でも直接話せる古くからの友人がいるのであれば、定期的に集まったりオンラインで話したりすることもいいと思います。趣味や好きなことがあるのであれば、集まりやサークル、オンラインコミュニティに参加することもいいのではないでしょうか。こうやって相談していただいた内容をカウンセリングなどで誰かに話すことで、悩みが解消されるだけでなく、人とのつながりを感じることで精神的な変化を生むことも考えられます。
「交流」はポジティブ思考を生む
交流を増やすことで変えられるのは地元への印象だけではありません。複数の研究から、対人関係を持つことや他者との交流が、抑うつ気分を改善したり主観的幸福感を高めることが指摘されているんです。つまり、「交流」は地元への愛着を高めるだけでなく、 KD さんの病気に対してもポジティブな効果があるということです。 KD さんが地元で暮らす中でもプラス思考でいたいと思う場合は、地元への肯定的な印象を作り、ご自身の今の病気についても良い影響のある「人との交流を増やす」ことがポイントになるのではないでしょうか。
実は、交流を増やすことは都会に出た場合も等しく重要です。なぜなら、知らない土地に住むと、誰でも最初は地域や他者から孤立した状態になるからです。家族からも離れますし、転職が必要であれば慣れ親しんだ同僚もいません。伝手がなければ知り合いもいないかもしれません。主治医が変わるようであれば、治療関係を一から作り上げる必要もあるでしょう。このような状態に不安を感じない人はあまりいないのではないでしょうか。それほど人は「交流」があることで安心感を得られるということです。
生活に対する不安は仕事やお金だけでなく、人との交流がないことでも強化されてしまいます。でも、交流のない状態は一つずつ解決することができます。仕事が決まれば同僚はできます。すぐに友達はできないかもしれませんが、古い友人とのビデオ通話などは場所に関係なくできることです。通院先が決まれば新しい主治医との交流が始まります。両親の心配があるかもしれませんが、定期的に帰省することで KD さんもリフレッシュできるかもしれないですし、それが新しい両親との交流の仕方にもなります。新しい土地で新しいお気に入りの喫茶店を見つけることも交流です。
そして交流のいいところは、一つ交流ができると自然と複数の交流が生まれることです。同僚を通じて、通院先で知り合った人を通じて、隣人や自治体のイベントを通じて増えていきます。交流を0から1にするには自分の力が必要ですが、1から2、3と増やすのは、自分が交流に対して心を閉ざしていなければ自然と増えていくものです。
長くなったのでまとめますね。
①障害者雇用は都会の方が進んでいるし、都会と地元のどちらで生活しても経済状況は大きく変わらない。
②地元への愛着は行政や住民などの外部要因だけでなく、地域との「交流」という内部要因がある。
③「交流」を増やすことは主観的な幸福を増やしてくれる。今回私がお伝えしたかったことは、「交流」を増やすことで KD さんが地元への愛着を回復させたり元気になるのに役立つということです。都会と地元、どちらに住むにしても変わりません。交流を増やしながら「どっちで暮らしても大丈夫」という気持ちを育むことを、今できることとして考えてもいいのではないでしょうか。
KD さんが好きな街で、色々なものと交流しながら過ごせるようになることを応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
【参考文献】
*1 令和3年 障害者雇用状況の集計結果
*2 人口1万人あたりの精神障害者手帳交付数ランキング
*3 地域に対する愛着の形成機構−物理的環境と社会的環境の影響−