「彼の性格なのか宗教のせいなのかわからないけれど話が通じなくて困っています」の相談内容詳細
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いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
- 結婚を約束した彼氏が宗教二世だと今更言ってきた。付き合い始めに宗教についてお互い確認したのに、話が違うと言っても、返事が要領を得ずよくわからない。
- 「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
- 悲しみ70%
怒り30%
怖い30% - 「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
- 宗教について、信じてるのかそうでもないのか、話を聞いてもよくわからない。「今までこうだったからこう」「こうするのが普通だからこう」という答えばかりで、思考停止していると感じるが本人にそのつもりがないのが怖い。自分の頭で物事を考えてほしい。
- いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
- 一生懸命考えて出た答えが「今までこうだったからこう」なのかもしれない。考える力が、私が求める水準より低いのかもしれない。
- いま専門家に聞いてみたいことは?
- 「自分の考えは浅い」「視野がせまくなっている」ということを分かってもらうにはどうしたらいいか。恋人のアドバイスをまったく受け入れるつもりはないが、別れたくはないという心理はどういうことなのか。
- 年齢、性別、職業
- 30代、女性
- 既往歴
- --- 未回答 ---
- 悩みの内容の自由記述
- 宗教そのものも私は信仰がないため嫌だけれど、それよりもこちらの話・アドバイス・意見がなにも響いてないのが怖い。楽しく遊ぶことはできるけど、深い話になると機嫌が悪くなり、こちらが喧嘩をふっかけているというように捕らえられてしまう。せめて話し合いができるようになりたい。
自分史はまだありません。
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「彼の性格なのか宗教のせいなのかわからないけれど話が通じなくて困っています」への回答
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回答したカウンセラー
えみころ さん、ご相談をよせてくださりありがとうございます。臨床心理士・公認心理師の小野寺です。
婚約までしているパートナーとの間で話が通じなくて困っている。そしてその理由として考えられるのが「彼の性格」もしくは「宗教のせい」なのだということですね。
とはいえ、 えみころ さんは十中八九「宗教のせい」と思っているんじゃないでしょうか? なぜ私がそう思うのかというと、根拠は二つあります。一つが「彼の性格」が理由かも?と述べている一方、ご相談内容には一切パートナーの性格についての記述がないからです。
もう一つは、「結婚を約束した彼氏が宗教二世だと今更言ってきた」との記述です。パートナーとのやりとりに困惑し始めたのは、「今更」言ってきたごく最近の出来事のように読み取れたんです。もしパートナーの性格が理由なら、出会った当初から困惑しているのではないかと考えました。
ここでは、仮に「宗教のせい」だとして、そのせいでどうして話が通じなくなっているのかを考えていきたいと思います。そしてその考察を踏まえ、 えみころ さんはどうしたら良いのかも考えてみたいと思います。
なお、「結婚の話」となるとお相手のご家族の宗教観にも言及しなければならなくなり、かなりセンシティブな問題となります。お相手のご家族のことについての記載が一切ありませんでしたので、今回はもっぱら えみころ さんとパートナーとの関係にまつわる話に焦点を当てたいと思います。
さて、結論から述べると、パートナーと えみころ さんとの間で信仰についての話し合いが平行線になるのは当然だろうなと私には思えた、となります。
なぜなら宗教観、特に宗教二世の方の宗教観は幼少期から長らく刷り込まれた価値観となり、もはや自己とは切り離せない文化となるからです。
私たちに刷り込まれている日本文化を打ち破ることが如何に難しいかを考えてみればイメージが湧くのではないでしょうか。
えみころ さんにも想像してみて欲しいのですが、目の前に具だくさんのお味噌汁が置かれ、「めしあがりください」と言われたら、どのように食べるでしょうか?
おそらく「お箸を使った」のではないでしょうか? でも、それはどうしてなんでしょう?
何か深い考えがあってお箸を使って食べるイメージをしたのでしょうか? きっとそうではなかったはず。「今までこうだったからこう」「こうするのが普通だからこう」なのではないでしょうか?
私たちは「お味噌汁はお箸を使って食べなさい」と言われた幼少期を過ごしました。私は子どものころ、スプーンでお味噌汁を食べようとしたら「ご行儀が悪い」と言われたことを今でも覚えています。 えみころ さんもそんな子どもを見たら、きっとそう思うんじゃないでしょうか。
でも、「スプーンを使ってお味噌汁を食べる」が悪くて「お箸で食べる」がなぜいいのか説明しろと言われても、おそらく合理的に説明できる人はいないんじゃないかなと思います。 えみころ さんにはできますか? シチューはスプーンを使って食べますが、じゃあ、シチューが汁椀に入っていたら何で食べますか? お箸ですか? それともスプーン? その理由を合理的に説明できますか? ちなみに私は無理です…。
宗教観もこれと一緒だと思います。幼少期から「こうあるのが普通」との価値観を刷り込まれていれば、それを合理的に説明することは極めて難しいのです。
「自分の考えは浅い」「視野がせまくなっている」ということをパートナーに分かってもらうにはどうしたらいいか、とのご相談ですが、パートナーは「考えが浅い」わけでも「視野がせまくなっている」わけでもなく、単純に文化化した思考や習慣は言語化するハードルが高いのではないでしょうか。そのハードルの高さは「明日からお味噌汁を食べるときにスプーンを使ってもOK」と言われても、実行するのに躊躇するのに似ている気がします。
ちなみに、付き合い始めに宗教についてお互い確認した際にパートナーが曖昧な反応をした点。この宗教二世であることを言うべきか言わないべきかについても、宗教観が関係して言語化のハードルが高かった可能性はありそうですね。
今後もこのように「説明を求めても少しでも宗教が絡んだ場合、話は平行線となる」ことが出てくるかなと思いますが、そこは覚悟が必要となる点かもしれません。
日本はあまり宗教教育が盛んではありませんから、 えみころ さんが宗教に対して不安感を抱くことになんら不思議はありません。むしろそのお気持ちはもっともですよね。
しかし、日本には信教の自由があります。もしパートナーの信じる宗教によって、「ことあるごとにお布施を払わされている」とか、「家族との連絡を取らないように強制されている」とか、そのような実害が生じていないのなら、パートナーの信教の自由を認めるほかないように思います。
もちろん「信教の自由がある」とは、信じない自由も当然保証されているはずです。少なくとも私はそう考えます。ですので、パートナーが信じているからといってその信仰を えみころ さんに押し付けるのは明らかに間違っています。もしそのようなことがあれば、 えみころ さんはきっぱりとパートナーの考えを押しのけても良いと思います。
押しのける際、パートナーが「今までこうだったからこう」「こうするのが普通だからこう」と言っているのと同じように、「私にとっては今まで○○だったから、あなたの××との考えは受け入れられない」と、合理的な説明がなくても問題ありません。人の価値観は必ずしも言語化ができないのが普通だからです。
以上、宗教が絡むとどうして話が通じなくなっているのかを考えていました。それは「価値観」や「文化」であり、合理的に説明したりする言語化のハードルが高いものだからです。
その前提を踏まえれば、宗教観について えみころ さんがパートナーに説明を求めたり、改変を求めるのは得るものが少ないやり取りとなる危険性が大です。
「恋人のアドバイスをまったく受け入れるつもりはない」ことと「別れたくはない」はパートナーの中で両立しているのだと私には思えます。「受け入れるつもりはない」のではなく、「受け入れようにも難しい」のであり、「別れたくはないという心理」は「 えみころ さんが好き」ですよ、間違いなく。
それぞれ生まれ育った国が違って共有する価値観や文化が異なっても、恋愛し結婚できるのとまったく同じだと思うんです。
繰り返すように、お互い信教の自由があるのだから、ここはどうすることもできませんし、括弧にくくるほかないように思います。
えみころ さんが仮にパートナーから信仰を強制されるようなことがあったときには「No, thank you」と言っても問題はない。そのうえで えみころ さんもパートナーのことが「好き」なのか。そこだけが問われているのかな。そう私は思います。
「実害がないのなら」という条件つきではありますが、「宗教観についてどうこうするのは無理」というのがここでの結論で、 えみころ さんにとっては取り付く島もないものになってしまったかもしれませんね。
しかし、愛は国を越えるように、文化を越えるように、宗教も越えます。宗教を括弧にくくってパートナーを見てみてください。そこに愛はありますか。あるのなら、それはとても素敵なことです。
この度はご相談をよせてくださいましてありがとうございました。