「やらなくちゃいけないのはわかってるけど、つい別のことをしてしまう」
「さぁやるぞ、と思いながらSNSや動画サイトをチェックしてしまう」
そんな悩みを抱えている人はいるかな。
タスクをつい後回しにしてしまう行動は「先延ばし癖」とも呼ばれているよ。先延ばし癖は「意志が弱い」「単なる怠け癖」と考えられがちだけど、その背景には対処メカニズムや感情コントロールの問題があるとして、心理学の研究対象となっているんだ。
今回は「先延ばし癖」について心理学の知見を踏まえて解説し、対処法についてもまとめていくよ。一緒に見ていこう。
目次
心理学における先延ばし要因
Solomon & Rothblum(1984)の研究では、先延ばしの定義を「主観的な不安や不快感を経験する時点まで、不必要に課題を遅らせる行為である」としているよ。つまり先延ばしは、「本当に不安になったり嫌な気持ちになる瞬間まで、ついやることをやらずに置いてしまう」ことなんだ。
先延ばし行動の要因は、藤田氏による研究(2005)の分類によれば以下のような特性が関係しているみたい。
①認知的な特性
・時間的なマネジメントスキルの貧弱さ
②パーソナリティ特性
・怠惰
③失敗への恐れに関する特性
・学習・遂行達成への不安
・完全主義傾向
・自信の欠如
アメリカの大学生を対象にした研究では、70%以上の人が先延ばしを経験したことがあるみたいだし、条件が揃えばどんな人にも起こり得る自然な反応だと言えるかもしれないね。
なぜ先延ばししてしまうのか
ここでは先延ばしが起きる要因についてまとめていくよ。先延ばしは計画能力やこれまでの経験による学習など、様々な要因が重なって起きる行動なんだ。ひとつひとつを見ながら「あ〜これはあるな〜」「これはあんまり関係なさそうだな」なんて考えながら見てみてね。
見通しが立たない
これまでの研究でも、計画を立てる能力が低かったり見通しが立たないと感じていると、やるべきことを先延ばしにしてしまうことが明らかにされているよ。
脳は簡単なことを始めるときほどよく動くとも言われていて、逆に「途方もない」「どこから手をつけていいかわからない」ことに対しては意欲が起こりにくいとされているんだ。
「やるべきこと」の全容が把握しきれず、だけど着実に期日が迫っているという状態はゴールがわからない状態でマラソンをしているようなもので、苦しく感じるのも当然だよね。
「なんとかなる」成功体験
「限界ギリギリまで追い詰められたけどなんとかなった」という成功体験を学習すると、それ以降も「なんとかなる気がする」と楽観的にかまえてしまうことがあるよ。
実際の所、目の前のやるべきことはそれぞれ異なっているのだから「今回もなんとかなる気がする」と思うのは変な話なんだけど、人間の脳みそはそういう風に学習してしまうんだ。
「前回はこの作業にこのくらいの時間がかかったから、今回も同じくらい見ておけばいいはずだ」のように具体的な経験とデータに基づいた楽観ではなく「なんとかなる気がする」と気分的な楽観を持っているときには「自分は良くない成功体験を学習してしまっている」と考えたほうがいいかもしれないね。
極端な目標設定
目標設定が低すぎたり高すぎると、先延ばし行動が起きやすいことが明らかにされているよ。
「最低限でいいや〜」と目標を低く設定しているとやる気が出ないし「絶対に失敗したくない…」と高い目標を設定していると萎縮してしまうんだ。特に後者の「失敗過敏」などの性質は「完全主義傾向(完璧主義)」との関連が強いよ。
ココロジーでは完璧主義の対策についても一つの記事でまとめてあるから、そちらも参考にしてみてね。
自己肯定感の低さ
「自分はなにをやってもうまくいかない」など自己肯定感が低い場合にも、先延ばしが起きやすいよ。自己肯定感が低いと「どうせ失敗するんだから意味がない」などネガティブな感情にとらわれやすく、自分から行動を起こすことに消極的になってしまうんだ。
自己肯定感の低さはこれまでに味わってきたストレスや環境の影響が大きいんだ。ストレスを感じる状況から逃げられないことが続くと、その場から逃れる努力すらできなくなってしまうこともあるよ。これは「学習性無力感」とも呼ばれているんだ。
先延ばしの対策
次に先延ばしの対策を紹介していくね。
先延ばしの要因は複雑に絡まっているものの、対策は意外にシンプルなものが多いよ。上でも触れたように先延ばしは個人の気持ちの問題だけでなく環境の影響を強く受けているんだ。だからこそタスクに取り組む環境を調整することが大切だよ。ここではその方法をまとめてあるから、ぜひ活用してみてね。
先延ばしにする理由を見つめる
先延ばしをしてしまうのは単なる怠けというよりも、そのタスクに抱く不安や恐怖などから無意識的に逃げていることが多いんだ。
「失敗して笑われることが怖い」
「完璧に出来ないと意味がない」
など自分を縛る感情と向き合い整理することで、少しずつ気持ちをコントロールできるようになるよ。
自分の感情を知るためにはジャーナリングなどの方法が有効だよ。机に向かって紙に書く、という行為自体が重荷に感じるときには、スマホのボイスメモ機能などを使って
「いま宿題を後回しにしてる」
「こんな勉強がなんの役に立つのかわからないからやりたくない」
など先延ばしにしているタスクやタスクに対する気持ちを記録することで、今の状況や自分の感情についての理解が深まっていくよ。下にも簡単なワークを作ってみたから、試しに取り組んでみてくれると嬉しいな。
いま先延ばしにしていることは?
なぜ先延ばしにしてしまうんだろう? その背景の気持ちは?
先延ばしにする自分を認める
ジャーナリングなどの方法を通じて先延ばししてしまう自分の気持ちを把握したあとは、先延ばししてしまう自分を認めてあげよう。
自分ができたタスクを確認したり、自分がしたことを振り返る反省の時間が少ない人ほど、先延ばし行動をすることが明らかになっているよ。これは自分の行動や心の動きを客観的に把握するメタ認知の能力とも関係しているんだ。
先延ばしをしてしまう状況や気持ちを細分化できていないと「自分はやるべきことをやらないダメなやつだ」とざっくりとした罪悪感を覚えてしまうんだ。
罪悪感は先延ばし行動の要因でもあるから「先延ばしする→罪悪感を覚える→罪悪感を一時的に回避するために先延ばしする」という逃げ癖のスパイラルに陥ってしまうよ。
先延ばしをしてしまう状況や気持ちを明確にしてあげられると、
「なるほど、自分はこういう気持ちで先延ばししてしまうんだな」
「ついスマホを見てしまうから作業中はスマホの電源を切っておこう」
…といった感じで、曖昧な罪悪感を和らげ、状況の具体的な把握と対策に意識を向けられるようになるんだ。
タスクを切り分ける
上でも触れたように、タスクの全容が把握できない状態だと人はやる気を起こしにくいんだ。そんなときはタスクを細かく切り分け、チェックリストのようなものを作るのがおすすめだよ。細かく小さな目標を作っていく方法は「ベイビーステップ」や「スモールステップ」とも呼ばれ、目標達成に効果的なんだ。
例えば「試験勉強をする」だけだと、全容がわからずパニックになってしまいがちだよね。それを
□5ページ〜10ページまで進める(終わったらおやつタイム)
□単語を30個覚える(終わったらドラマを1話見る)
など細分化しつつご褒美を用意することで取り組みやすくなるよ。他にも
□勉強の前に机の上を片付ける
□おやつを買ってくる
など簡単なタスクをチェックリストの頭に持ってくることで、取り掛かることに抵抗を感じにくくなるんだ。一度取り組んでチェックをつけていくと「全部埋まってないと嫌だな」という感じでモチベーションが生まれる効果もあるから、簡単かつ効果的な方法だよ。
タスクを共有する
先延ばしを改善するために協力してくれる人や同じような悩みを持っている人に自分のタスクを共有するのも有効だよ。
・家族の見える場所に期日といっしょにタスクを貼り出す
・先延ばし癖のある人で同士でグループチャットを作りタスクを共有する
岡目八目なんて言葉もあるように、自分のことよりも距離のある他人の事のほうが全容を把握しやすい傾向があるんだ。協力を頼むときには一方的にお願いするよりも、互いのやるべきことを整理しあう互助会のような形で取り組むと長続きするよ。
部屋を片付ける
先延ばしあるあるとしてよく聞くものに「つい片付けをはじめてしまう」があるよね。
部屋が散らかっている状態は視覚的なストレスにもなり、先延ばしの言い訳としての片付けにも正当性が生まれてしまうんだ。
ちょっと大変かもしれないけど、ちょっと埃を取るくらいしかない状態まで部屋を整えておくと「掃除でもするか」と先延ばし行動を取ってしまったときにもすぐ終わる上に、タスクに取り組むための足がかりにもなるなど良いことづくめなんだ。
先延ばし対策まとめ
今回は先延ばし行動について、心理学的な背景や対処法について解説してみたよ。
最近ではリモート授業やリモートワークなど、タスクへの取り組み方を自分でコントロールする必要性が増してきているんだ。だからこそ「先延ばししてしまう自分はダメなやつだ…」と落ち込まず、状況を冷静に認知して、冷静に対処することが大切だよ。
また、先延ばしによる苦しみがとても強い場合には、より深刻なメンタルの問題が背景にあることも多いんだ。苦しみがとても強い場合や長期に渡るときには、自分だけで対処しようとせずカウンセリングを受けてみたり医師に相談するなど、専門家の力を使うことも考えてみてね。