自力で抑えきれない好意をどうしたら良い?

2023.06.02 Fri

目次

回答したカウンセラー

中浦ダイ

精神保健福祉士

中浦ダイ

精神保健福祉士。ニュージーランド在住。Waikato大学大学院カウンセリング学修士課程。Free to Runアンバサダーランナー。精神科医療機関でのソーシャルワーク、オルタナティブ教育団体でのプログラム運営、心理カウンセリング、女性の権利擁護などの活動を行う。知識が経験になり自分の物語になるようなコンテンツを作りたいと思っています。
【得意な相談】
◯自己肯定感・自尊心に関する相談(自信がない、何をしたいか分からない、自分がどんな人間か分からない等)
◯コミュニケーションに関する相談(家族・夫婦・親子・職場・友人との人間関係等)
◯適応に関する相談(職場・異文化・出産などライフステージに伴う変化等)

「自力で抑えきれない好意をどうしたら良い?」の相談内容詳細

相談者
相談者 らるぱ
いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
朝、電車内で時々見かける同い年くらいの女子のことが気になっている。
気になりすぎて、その子の制服や降りる駅から学校を特定しようとしたり、住んでいる場所を推測したりしている。
一年半くらい毎日見かけていたのに、ここ最近になってその頻度が急激に減った。
その子のことを考えると自然と涙が出てしまったりする。
「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
その子に対する好意 100%
自分に対する嫌悪感 30%
戸惑い 30%
「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
まず、今まで経験したことのない大きさの思いに自分でも戸惑っている。いつ、どこで、何をしていてもその子のことを考えているから、やらなければならないこともろくに手につけられない。
その一方で、自分が知っているのはその子の制服姿だけで、名前すら知らないし、ちゃんとした恋愛をしているという感触がなくてもどかしい。身近な誰かに相談しても引かれてしまいそう、という思いから誰にも打ち明けることが出来なくて苦しい。
僕自身、クラス内で居心地が悪いからいつも一人でいるその子を見て「あの子もそうだといいな」という理想像をその子に押し付けてしまっているみたいで、そんな自分を心底気持ち悪いと思う。
このままだとストーカーのようになってしまいそうで怖くて、既にそういう類のことをしている自分にも嫌悪感を抱いている。でも仮にその子の全てを知ったとしても、電車内で一緒になるだけの関係上、絶対に関わることが出来ないから満足できないんだろうな、という冷めた見方もしている。
今までは誰になんと言われようと誰かを好きになる気持ちは抑えなくても良い、という思いではいたが、見かける頻度が急に少なくなったせいもあるのか、より一層その子に対する感情が大きくなっていき、いい加減日常生活の他のところにも影響が及ぶと思って怖くなっている。
いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
自分は恋愛経験が豊富な方でもないし、男子校に通っているので、異性と関わる機会が極端に少ない環境にいるから、感覚が麻痺した状態に近くなっているのかもしれない。
いま専門家に聞いてみたいことは?
どういう風にすれば、自分の思いを抑えることが出来るか。でも自分の思いを抑えることがその子への好意が失われることに繋がってしまいそうという思いもあるので、そういう部分への上手な向き合い方を教えて欲しい。
年齢、性別、職業
15歳 男 学生
既往歴
--- 未回答 ---
悩みの内容の自由記述
--- 未回答 ---
相談者 らるぱ さんの自分史

自分史はまだありません。

※ プライバシー保護のため、ご質問の一部を編集部で変更している場合がございます。

「自力で抑えきれない好意をどうしたら良い?」への回答

  • らるぱ さん、ご相談を寄せていただきありがとうございます。精神保健福祉士の中浦です。

    電車で見かける女の子のことが気になっているのですね。最近は見かけることが少なくなったことによって自然と涙が出たり、その子への思いが らるぱ さんの中で膨らみ、どのようにそんな想いを抱えていけばいいのかわからない、という内容としてお返事をさせていただきます。

    最初にちょっとだけ私の中2の時の恋バナを聞いてください。

    当時私はYさんという女の子に恋をしていました。背が低くて活発でよく笑う子です。歳は1つ下です。顔はあまり似ていないけど妹がいて、小さい犬を飼っていました。おそらくテニス部だったと思います。青色が好きなようで、身の回りの物の多くを青色で揃えていました。

    ここまで読んで「詳しいことまで知ってるな」と思われたかもしれませんが、実はYさんは私と同じ地域には住んでいても、別の学校に通う知らない女の子だったのです。

    私が知っている彼女の情報は、放課後や休日に自分の犬の散歩をしている間に彼女を探した結果分かったことなんです。

    今回は専門家という立場だけでなく、同じような経験を同じような歳にしたことのある人間としてもお返事をしたいと思っています。

    では、次からは らるぱ さんの苦しい思いにどう向き合っていけばいいかを考えていきましょう。

    自分の恋心をなぞる

    「どういう風にすれば、自分の思いを抑えることが出来るか」と書かれていましたが、もしかしたら今の らるぱ さんの苦しみは、女の子への想いを「抑えようとしている」ことによって生まれているのかもしれません。

    感情はなかったことにしようとしたり見ないようにすることで増幅されると言われています。記憶や思い出も忘れようとすることで、逆に脳裏から離れなくなってしまいます。悲しい時は無理して明るい音楽を聞いて元気になろうとするのは逆効果で、悲しい時はメロウな曲を、怒っている時はヘヴィメタを聴くと良いと言われています。

    つまり、感情は無いものにしようとすると余計にこじれるということです。

    では、抱えるのは辛いけど抑えようとするのも苦しい恋心をどうすればいいのか。私からのアドバイスは、抑えきれない恋心を「なぞる」です。怒っている時はヘヴィメタを聴くように、苦しい恋心を苦しいまま、でももう少し楽な形で「なぞる」ということです。

    たとえば、ラブソングを聴きながら「自分の今の気持ちと似ているなぁ」と感じるようなことです。ラブソングを聴いて想起される恋心は、直接彼女を想って苦しむより少しだけ客観性が生まれます。同じ苦しみを感じながら距離感を生むことができるので、 らるぱ さんが不安に感じていた「彼女への想いを維持しつつ苦しい恋心に向き合う」ということがしやすくなるはずです。

    「なぞる」というのは何か元になるものがあって、その上に自分で何かを足していくことです。文字を書くことでいえば、下の文字が透けて見える紙の上からなぞって書いたり、絵を描くことでいえば塗り絵になるかもしれません。

    初めて習字や絵を描こうとする時は、いきなり何もない白い紙に書くのはとても難しい作業なので、多くの人はこの「なぞる」という作業から始めると思います。

    らるぱ さんの恋も同じです。「恋愛経験が豊富な方でもない」や「今まで経験したことのない大きさの思いに自分でも戸惑っている」と書かれていましたが、今の恋は らるぱ さんにとって初めての習字や絵画と同じなのだと思います。いきなり一人で綺麗に文字や絵を描こうとするのは、適切な向き合い方ではないのかもしれません。

    なんとなく「抑えきれない恋心をなぞる」というのがどういうことか想像できていたら嬉しいです。

    具体的な「恋心のなぞり方」ですが、私は小説を読んだり映画を観るのをおすすめします。特に今のご自身の状況に似ているものが良いと思います。「他人の恋、でも自分と共通する想いに苦しんでいる物語」に触れることで、もう少し らるぱ さんの恋を形容する言葉が増えるはずです。

    実際、私も2つの映画を観て他の恋心の物語をなぞってから今お返事を書いています。

    「恋は雨上がりのように」と「君の名は。」という映画です。どちらも有名だと思います。以前観た時の内容を覚えていて、 らるぱ さんの想いと似たところがあるように感じたので見返しました。

    らるぱ さんの恋だけだったら苦しさを和らげることだけを考えてしまいそうですし、自分の恋だけでは甘酸っぱさが残るだけですが、別の2つの物語に触れることで、恋心のもっと多様な側面を感じることができました。

    紹介した映画はストリーミングやレンタルで観られると思うので、良ければご覧になってみてください。

    「知りたい欲求」は人を豊かにする

    らるぱ さんの恋だけでなく2つの映画には、「相手をもっと知りたい」という想いが溢れています。

    私は、「恋」は「相手のことをもっと知りたい」という欲求だと思っています。だから、 らるぱ さんも相手の家がどこにあるのか知りたくなるし、私はYさんの好きな色まで知って喜んでいました。

    相手の色々なことを知って、知ったことに対して「あれはイイ、これはダメ」と価値判断せずに、知ったことのひとつひとつに敬意を持つことが「愛」になるのだと思います。敬意を持った人間関係は豊かで穏やかな時間を生みます。

    「知りたい」という欲求はなにも恋に限りません。学問でもビジネスでも同じです。

    「知りたい」という欲求が人に向かえば友情や愛になり、特定の現象に向かえば学問になり、経済に向かえばビジネスになるのだと思います。これらはどれも人の人生を豊かにしてくれるものです。

    ただし、たくさん知っても敬意を持てなければ、それこそ らるぱ さんが心配されていたストーカーの類になってしまうのだと思います。「敬意」が伴わない「知りたい欲求」は、人でも学問でもビジネスでも詐欺や搾取になりかねません。

    私は、相手のことを「知りたい」という らるぱ さんの想いに対して、相談内容に書かれていた「気持ち悪い」や「嫌悪感」という言葉で表してほしくないと思っています。今の恋心を、苦しいかもしれないけど、 らるぱ さんの人生や人間性を豊かにしてくれているものとして大切にしてほしいです。

    次は、もうひとつ今の らるぱ さんの苦しさを和らげられるかもしれないことについて考えてみたいと思います。

    彼女との関係の前に自分の人間関係を見直す

    恋が実るかどうかは、実は運によるところが大きいです。

    告白が受け入れられるかどうかは、「相手のタイプか」の前に「相手に恋人がいないか」で決まることの方が多いような気がします。相手のタイプになるために努力はできるかもしれないけど、相手に恋人がいるかどうかは自分ではどうやってもコントロールできないことです。

    彼女との関係を一歩先に進めるためにはどうしても会話をすることが必要になると思いますが、どんな態度で、どんな言葉で声をかければいいかは、彼女の好みやその時の気分や状況で変わってしまいます。

    何が言いたいかというと、どんなことをすれば彼女との距離を近づけられるかというのは、努力できることはあっても、それが必ず報われるものではないということなんです。

    むしろ「好きなのに何もできない」「好きなのに何をすればいいか分からない」というのが恋心の苦しみの元凶なのかもしれません。

    そこで、今の らるぱ さんへの私からの最後のアドバイスは、彼女のためではなく「自分のため」にできることをする、です。いつ彼女との関係が進展しても良いように、自分の気持ちや生活を充実させておくということです。

    私は、 らるぱ さんの相談内容の中で一箇所だけ気になるところがありました。それは「身近な誰かに相談しても引かれてしまいそう」や「僕自身、クラス内で居心地が悪いから」と書かれていたところです。

    それ以外の記載はなかったので詳しくは分かりませんが、もしかしたら日常生活で彼女への恋心以外にも、悩んでいることや苦しんでいることがあるのではないでしょうか?

    紹介した「恋は雨上がりのように」という映画は、足を怪我して部活ができなくなり傷心している女子高生が、父親ほど歳も違うバイト先の店長に恋をする話です。別に高校生が歳の離れた人を好きになるのがダメとか、本物の恋ではないと言いたいわけではありません。

    でも、「部活ができなくなった」という主人公の傷ついた部分があって、そんな空虚な部分を埋めるために、店長への恋心が生まれやすくなっていたと考えたくもなってしまいます。彼女の中で部活に対する思いを何かしらの形で処理しなければ、たとえ店長と恋人の関係になったとしても、彼女のもの悲しい気持ちをすっきり晴らすまでには至らないかもしれません。

    どんなに誰かを好きでも、どんなにその関係が健全なものであっても、ひとつの人間や場所にしか自分の重心を置けないのは依存の関係になりかねません。依存の関係になってしまったら、たとえ電車で見かける女の子と結ばれたとしても、また別の苦しさに悩まされることも考えられます。

    私の恋バナに戻ります。私は自分の連絡先を書いた紙を黙って彼女に渡して去るという手段で、運よく彼女と話すことができ、幸いにも付き合うことができました。結論からお伝えすると、2週間でフラれました。映画に1回行ったのと電話を数回しただけです。実は、彼女は私と付き合うことになった時も別の男性と付き合っていて、その人とケンカをした腹いせに私と付き合ったのです。私の淡くて美しかった初恋はズタボロに終わりました。

    今考えると、そういえば映画館にいる時や電話している時も何か「心ここに在らず」みたいな感じでした。

    でも、その時の私には違和感に気付く余地はありませんでした。ひとつは好きな人と付き合えて浮かれていたからだと思います。

    もうひとつは、足を怪我した女子高生と同じように、私も部活を続けることができない状況になって気持ちが荒んでいたからです。授業終わりに誰もが部活に行く中で、自分だけ帰宅するのが辛くて、ぽっかり空いた時間と気持ちをYさんを追いかけることで埋めていたのだと思います。

    彼女は彼女で、恋人とケンカをして空いた穴を、ちょうどよく現れた私で埋めたかったのだと思います。

    つまり、傷ついた心や大きな悩みを自分以外の何かで埋めようとすると、正常な判断ができなくなるということです。自分が弱っているから、ちょっとの違和感があっても「きっと大丈夫」と考えてしまい、自分や誰かを傷つけてしまうのです。

    らるぱ さんが今弱っているかどうかは分かりませんが、「学校で居心地の悪い想いをしている」というのは決して楽な状況ではないと思います。苦しい恋心を誰にも話せないことも、決して好ましい状況ではないはずです。

    らるぱ さんが想いを寄せる彼女が私の初恋相手のような人というつもりはないですが、自分の心が穏やかな方が、彼女への想いにも上手に向き合えるし、必要になった時は彼女の気持ちをより正確に理解できると思います。

    学校で話せる友達を見つけるのが難しかったら、学校以外のコミュニティやオンラインで自分がより居心地良く感じられる居場所を作ってほしいです。趣味があればサークルのようなものでもいいですし、オンラインで恋に苦しんでいる人たちが集まるチャットなどに参加するのも良いと思います。

    「いい加減日常生活の他のところにも影響が及ぶと思って怖くなっている」と書かれていましたが、今の日常生活に意識を向けるのが難しいのであれば、新しい日常を作ってあげるのが役立つはずです。

    今回 らるぱ さんにお伝えしたことをまとめると以下のようになります。

    ①恋愛の映画や小説に触れることで自分の恋心を抑えずになぞる。
    ②「相手をもっと知りたい」という欲求は否定しない。
    ③サークルやオンラインコミュニティなどに参加して新しい日常生活を作る。

    紹介した映画や私の恋だけでなくたくさんの物語をなぞることで、 らるぱ さんが自分の恋と苦しいだけではない関わり方を見つけられて、今の恋を経験したことが らるぱ さんの人生を豊かにするものになることを願っています。

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

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