「病気が怖すぎる。もしなったら諦めが肝心ですか?」の相談内容詳細
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いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
- 病気が怖いです
当たり前に過ごせてることにありがたみを感じている反面ガンや病気でおじゃんになると思うとなんで死ぬまでこんなこと考えないといけないんだと思ってしまう - 「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
- 不安100
- 「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
- 年を取ると死に近づくので病気になりやすくなるので長生きしたくない
楽に死ねる薬があるなら病気も怖くないんだけど - いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
- 事故で死ぬかもしれない、いつか突然終わるかもしれない
ニュースで事故を見るたび具合悪い - いま専門家に聞いてみたいことは?
- 避けられない不幸に対する考え方、教えてほしいです
なったときは諦めが肝心ですか - 年齢、性別、職業
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- 既往歴
- --- 未回答 ---
- 悩みの内容の自由記述
- --- 未回答 ---
自分史はまだありません。
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「病気が怖すぎる。もしなったら諦めが肝心ですか?」への回答
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回答したカウンセラー
あわせa さん、ご相談を寄せていただきありがとうございます。精神保健福祉士の中浦です。
『病気が怖い』とのご相談ですね。病気は苦しみを伴ったり生活に変化をもたらしたりするので、怖さや不安も大きいですよね。
その中で、私が あわせa さんが感じる病気への恐怖の特徴に、徐々に何かが失われたり変化することに対する不安があるのではないかなと感じています。なぜなら、 あわせa さんは「死」を恐れているわけではなさそうだからです。
病気を恐れる人の多くは、病気の先にある死を恐れていることが多いと思います。実際死がどのようなものかは私にもわかりませんが、残されたものから見る死は、ある人の存在を失う喪失体験です。一方、病気はその人の存在が喪失してしまうまでの過程と捉えられるかもしれません。健康な状態と比べれば、多くの病は体にとって負担やリスクになります。つまり、病気になるのを怖いと感じるのは、その先にある「死」という喪失体験が普段以上に想像されてしまうために、恐怖や不安が強くなるのかもしれないということです。
でも、 あわせa さんは相談内容に『楽に死ねる薬があるなら病気も怖くない』と書かれていました。また、【考えとは別の可能性】には「事故や突然死ぬこともある」と書かれています。この箇所は「病気になって苦しまずに死ぬこともあるかもしれない」という未来に対するポジティブな見方として理解をさせていただきました。つまり、 あわせa さんにとっての病気は「死」という喪失体験が喚起されることによる恐怖や不安ではなさそうということです。
では何に対する怖さなのか。相談内容には『当たり前に過ごせてることにありがたみを感じている反面ガンや病気でおじゃんになると思うとなんで死ぬまでこんなこと考えないといけないんだと思ってしまう』と書かれていましたね。
この記述から、 あわせa さんの現状にはありがたみを感じられるような人生がある一方、病気によってそれらのうちの何かが失われてしまうことに怖さを感じている可能性があるのではないかと想像しています。
実際のカウンセリングでは、 あわせa さんが何を失うのが怖いのかを会話の中から見つけていくことになると思いますが、今回は特定せずに「徐々に何かが失われること」が あわせa さんの恐怖の元にあることを前提に話をさせていただきます。
病気不安を和らげる「変化に適応する」という概念
あわせa さんは【聞きたいこと】に『避けられない不幸に対する考え方、教えてほしいです。なったときは諦めが肝心ですか』と書かれていましたね。
私は「変化に適応する」のが肝心なのかなと考えています。
上述したように、 あわせa さんはがんや病気になることを『おじゃんになる』と考えてしまうようですが、実際はがんや病気になってもすべてが台無しになるわけではないですよね。今の医療では、がんの生存率は7割近くあると言われています。
がんに限らず病気や怪我によって著しく生活を変化させなければいけない可能性はありますが、だからといってすべてが台無しになるわけではありません。仕事に限っただけでも、一時的に休む、勤務形態を変える、病気や怪我に合わせて働きやすい仕事に転職する、障害年金を受給するなど方法はあります。生活を見ても、食事や睡眠などの基本的な生活習慣をあらためることで、病気の回復が高まる可能性があります。
体の健康だけじゃないですね。苦手なグループから思い切って距離を置くことで心の荷が下りることもあるでしょうし、逆に勇気を出して人の輪の中に飛び込むことで、孤独や疎外感に変化が生まれることもあります。
このように考えると、実は本当に不幸なのは、起きた変化を目の前にしてすべてを諦めてしまい、適応しようとせずにいることなのかもしれません。
病気や不幸な出来事は、人生の中でたくさん起きる変化の1つにすぎないとも言えます。上述したように、今の医療では多くの病気や怪我は不治ではなく、それらに合わせて生活を変化させ付き合っていくことで、人生を継続させられる可能性が高くなります。
実は、このように「何かに合わせて変化させることで人生がより長く継続される」のは病気に限ったことではありません。
子どものときのようにいつまでも自由な時間を求めていれば、社会で生きていくのは難しいものになるかもしれません。愛情をもらうだけで幸せでいられるのは、もしかしたら子どものときだけかもしれません。お年玉と同じように、大人になればもらうことから与える側に変わらなければいけないことは少なくありません。
つまり、人は人生を通して行動や態度、価値観などを変化させながら生きているということなんです。
冒頭で あわせa さんの病気に対する不安を「何かが徐々に失われること」と仮定させていただきましたが、何かが徐々に失われるのは人生に変化が表れているということです。人生で起きるさまざまな変化と同様に、病気になることで失う可能性のあることに対しても、自分の人生を変化させることが重要なのではないでしょうか。変化が起きたからといってそれですべてが無くなることを意味しているわけではないですし、それが不幸ということでもありません。
それよりも、変化が起きているにもかかわらず、同じでいようとすることの方が、人生を窮屈にしてしまう可能性があります。がんの治療でいえば、生活を変えれば生存率が上がるのがわかっているのに、最初から治療を諦めてしまうということです。適応しようとしなければ、より多くのことを失ってしまうこともあるかもしれないんです。
「病気」の情報源を意図的に選ぶ
次に、今 あわせa さんが感じている病気になることへの不安との向き合い方をお伝えさせていただきます。いくら「変化に適応しよう」とか言われても、「実際に今不安だから辛いんだよ」と感じられると思います。
私からの提案は、死や病気に対する情報への触れ方を、 あわせa さんが自ら選ぶことが重要だと感じています。
あわせa さんは死や病気という概念をどのようなソースから得ることが多いですか? 身内に不幸があって、そのときの悲しみやショックが残っている場合もあると思います。でも、実際病気が原因で亡くなる確率は、 あわせa さんの年代では0.07%、40代は0.14%で、60代では0.91%と、決して多い数字ではないんです。*1
ではどこから知ることが多いのか。多くの人はテレビやネットなどのマスメディアから、病気や死の情報に触れることが多いのではないでしょうか。
毎日必ずどこかで事件が起きたり、誰々が病気を患ったというニュースを目にします。マスメディアには起きた出来事を伝える役割があるので仕方ないですが、ニュースから得る病気や死の情報には決定的に欠けているものがあります。それは、実際に病気や死を抱えた「本人」の存在です。誰かが亡くなれば家族や知り合いが悲しみを言葉にします。闘病生活を送っている人がいれば、元気だったときの姿が映し出されることもあるでしょう。
でも、そこでは病気や不幸に「今、実際に」向き合っている人のことは滅多に語られないんです。私たちは、周囲の人が話す悲しみや絶望を通して、病気や死というものに向き合うことが圧倒的に多いんです。
つまり、私たちが普段病気や死について考えるときは、それらのごく一面的な情報に基づいて考えている可能性があるということなんです。 あわせa さんが感じている病気になることへの不安も、もしかしたら一つの側面から見ていることで生まれているかもしれないということです。
40歳までの年齢で何かしらの疾病や疾患を抱えている人は85万人ほどいるそうです。これは同年齢人口の約1%になります。*2 私からの提案は、マスメディアから受け取る概念的な病気や死ではなく、関係者が語る悲しみでもなく、85万の人が実際に向き合っている病気や死を知ろうということなんです。
病気になった当事者の言葉を聞くと言っても、実際にインタビューするとかボランティアとして関わるというわけではありません。私のおすすめは自伝を読むことです。自伝本には、病気だけでなく多くの困難や不幸に向き合った記録が残されています。私たちが普段触れる病気の情報は「病気になった」という1つの「点」として理解されますが、自伝では病気を時間軸のあるものとして本人の気持ちや環境の変化を含めた「線」として知ることができます。
自伝にはニュースや他者が語らない本人の言葉が書かれています。病気になっても決して諦めなかったストーリーが書かれていることもあるだろうし、たくさんのことを諦めた悲しみが強調されることもあるかもしれません。1つの不幸を経験することで、大切に思うものが変わり、人生自体が変わったことに感謝する人もいるかもしれません。
あわせa さんが恐怖を感じる病気に自ら向き合うこと自体に不安を覚えるかもしれませんが、多くの恐怖は自分が予測できないことで増幅されるものでもあります。いつどこでお化けが出るか予告してくれるお化け屋敷を想像したら、恐怖と予測できないことの関連性が強いのがご理解いただけると思います。
つまり、自分から意図して向き合えば恐怖も形を変えるかもしれないということです。
今大切にすべきことを絞る
長くなったのでまとめますね。
①病気になることへの不安は「徐々に何かが失われること」への不安。
②変化に適応することは病気に限らず人生を継続させるために必要なこと。
③病気や死に対する多面的な情報を得るため情報元を選ぶ。あわせa さんの相談内容にはたくさんの情報があるわけではなかったので、あくまで私の感じた前提から可能性のあることとして話を進めさせていただきました。
これまでとは違う病気や死に対する情報を得ることで、 あわせa さんの恐怖や不安が変化し、未来ではなく今大切にすべきものを守ることに意識を向けられるようになることを願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
*1 生命保険文化センター https://tinyurl.com/26wmkstp
*2 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000528279.pdf