「過去のトラウマや不安な気持ちが頭から離れず疲れてしまいます」の相談内容詳細
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いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
- テレビなどのニュースを見ると自分のことのように不安になりチャンネルを変える。(特に事件事故のニュースや逮捕のニュース)
嫌な思い出のある場所や方面に行けない、避けてしまう(文字を見たり、映像を見ると不安になる) - 「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
- 不安70%
しんどさ(辛い)20%
怖い10% - 「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
- 自分ではないと分かっていても、「自分もしてしまう(なってしまう)のでは…」という考えが浮かんできて、心がザワザワする。
前の職場から「電話がかかってくるかも…」「何か言われるかも」等と可能性が低いと分かっているのに怖くなる。自分が何かしているのではないかと過去を思い出して不安になる(月日が経っていて過去の記憶が曖昧で、「そんなことしてない!」と言い切れなくて余計不安だったり、自分のせいで辛くなってる人がいるかも…と思うと怖い。) - いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
- トラウマの原因になった仕事は辞めているし、相手から直接言われたり電話がきたりしているわけではないから、考えすぎなのかな…。
- いま専門家に聞いてみたいことは?
- ・過去の辛い記憶が原因で、自分が何かしてしまっているのでは…という気持ちが消えないのが悩みです。(それが嫌で、テレビのチャンネルを変えたりその場所に行かなかったりと回避行動を取ってしまいます。)
過去のトラウマや不安な気持ちを切り替える方法が知りたいです。 - 年齢、性別、職業
- 32歳、女性、会社員
- 既往歴
- --- 未回答 ---
- 悩みの内容の自由記述
- --- 未回答 ---
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地元へ戻り同職就職→仕事を辞める
・前職と同じ職種で地元へ戻ったが、慣れない環境でうまくいかないことばかり(対人関係)
・トラウマの始まり
・初めて病院へ行く
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※ プライバシー保護のため、ご質問の一部を編集部で変更している場合がございます。
「過去のトラウマや不安な気持ちが頭から離れず疲れてしまいます」への回答
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ちょもちょも さん、ご相談をよせてくださりありがとうございます。
臨床心理士・公認心理師の小野寺です。「自分が何かしてしまっているのでは…」との思いから様々な事柄が連想され、あたかもその連想が現実化するかのような感覚になって辛い思いをされているとのことですね。特に事件事故のニュースや逮捕のニュースを観るのを避けている、とのことですから、「警察がくるかも」「逮捕されるかも」との不安や恐怖もあるのでしょうか?
もしそうだとしたら、このような不安・恐怖を専門的には「加害恐怖」と呼びます。この加害恐怖はふとした瞬間にも頭をよぎるので毎日が落ち着きませんよね。常に警戒していないといけないような、そんなとても辛い思いをされていると想像します。大変ですよね。
そんな大変さを少しでも和らげることができないか、私も考えてみたいと思います。
実は、 ちょもちょも さんとかなり似たお悩みを抱えておられた方のカウンセリングをしたことがあります。その方はもうすっかり良くなられたので、その方と取り組んだカウンセリングの内容を踏まえてご回答させていただきますね。
①侵入思考はどうしようもない
さて、私のカウンセリング経験から ちょもちょも さんにもお役に立てそうな事柄をいくつかお示ししたいと思います。一つ目は「侵入思考は誰にもどうしようもないと割り切る」です。
ちょもちょも さんは、お寄せくださったご相談の中で「回避行動」との専門用語を使っておられました。なのでご自身の症状やその解決法についてかなり勉強なさっておられるのではないかと想像します。もしかしたら「侵入思考」もどこかで学ばれているかもしれませんね。
念のために「侵入思考」についてご説明しておくと、侵入思考とは特に考えようと意識していないのにふとした瞬間に頭の中に想起されるイメージや記憶のことを言います。
ボーっとしているときになぜか急に昔の友だちの顔が頭に浮かんだり、お風呂場で目を閉じながらシャンプーしているときにふと「明日の会議の資料まだ作ってなかった!」ことを思い出したり。
こんなのが侵入思考です。侵入思考の大事なポイントは「思い出そう、考えようとして出てきた思考ではない」点です。どうしてここがポイントになるかというと、「コントロールできないから」となります。勝手に出てくるものをコントロールはしようがないのです。
ちょもちょも さんが「自分もしてしまう(なってしまう)のでは…」という考えが浮かんでくるとのことですが、これは「侵入思考」と考えていいだろうと思います。
ちょもちょも さんが書かれていた「嫌な思い出のある場所や方面に行けない、避けてしまう」からの推察ですが、上記した「侵入思考」が極力生じないように何とかコントロールしようとされておられませんでしょうか?
もしそうだとしたら、まずはできる範囲からで結構ですので、コントロールする努力を手放すことが必要です。というのも、実は皮肉なことにコントロールできないものをコントロールしようとすると、 コントロールがますます難しくなるからです。
心理学に有名な実験があります。「今から私が何を言っても、絶対に『シロクマ』のことだけは考えないでください。いいですか? 雪、冬、動物園、パンダ、アイス…」といったものです。この実験は「シロクマ実験」と呼ばれます。
もしお時間があれば ちょもちょも さんも絶対に1分間、シロクマのことは考えないでください。その間、雪、冬、動物園、パンダ、アイスなどのことは考えてもいいですよ。
この実験から明らかになったのは、人は「考えないで」と言われると逆にそのことを考えてしまう、ということです。 ちょもちょも さんもシロクマが頭をちらついて離れなかったのではないでしょうか?
侵入思考も同じです。「考えないようにコントロールしよう」とすればするほど、皮肉にも侵入思考にまつわる考えを考えてしまうのです。
ですから、できる範囲で「あ、また侵入思考が出てるな。やれやれ」くらいの気持ちで頭の片隅に住まわせるようにできるのが理想です。逆説的ですが、むしろその方が侵入思考についてアレコレと考える時間が減っていくのです。
②不安を並べる
とはいえ、 ちょもちょも さんの場合は「考えたくもない」と思うほど強烈な「加害恐怖」を換気させる侵入思考が生じているのかもしれませんね。
その場合、「侵入思考はできるだけ頭の片隅に置くくらいにするのが丁度よい」との知識は知識として持っておきつつ、別の方法も併行して取り組めるとよいでしょう。
それが「不安なものに徐々に慣れる」です。侵入思考をコントロールしようとすればするほどコントロールがますます難しくなるのと同じ理屈ですが、不安も「感じないようにしよう」とすればするほど感じてしまうようになります。「過去のトラウマや不安な気持ちが頭から離れ」ないのはそのためかもしれません。
トラウマや不安を頭から切り離すには、どうしても不安を避けずに慣れていく必要があるのです。
やり方はそこまで難しくはありません。 ちょもちょも さんが不安になる状況はおそらく複数あるはずです。「○○をされるんじゃないか」「××をしてしまったんじゃないか」など様々あるでしょう。そういった不安な状況をできるだけリストアップしてください。
リストアップができたら、今度はそれらを0~100で点数化し、点数の低いものから高いものへと階層になるように順番に並べてください。それを不安階層表と呼びましょう。
不安階層表ができたら、点数が低い状況を数分間、できれば10分くらいできるだけリアルに思い浮かべてください。
不安を感じる状況なわけですから、当然イメージするだけでも不安になるかと思います。しかし、人の感情には必ずピークがあり、そのピークを過ぎれば時間の経過とともに落ち着いていきます。
この作業を繰り返し、イメージしてもそれほど不安を感じなくなったら、次の階層に進んで同じことを行います。
努力は必要ですが、やればやった分効果の表れる方法です。
③現在に集中する
そして3つ目は「現在に集中する」です。
「過去」のトラウマや不安な気持ちをどうしたらよいかとお悩みの ちょもちょも さんにとって「現在に集中する」はあまりピンとこないかもしれません。
しかし、冒頭でご紹介した ちょもちょも さんとかなり似たお悩みを抱えておられた方は①と②でもそれなりの効果がありましたが、実は③の「現在に集中する」が最も効果的でした。
守秘義務があるので詳細はお伝えできませんが、その方は会社に不満がある方でした。特に社内の対人関係に不満があったようです。そのためカウンセリングで「社内で自分がどう振舞えばいいのか。社内の人にどの程度の期待をするのが妥当なのか」を整理していきました。
同時に職場以外の対人関係を充実させていきました。趣味を共有できる仲間や恋人を探していったのです。
その結果、現実への満足度が高まるのに反比例して、過去の記憶への否定的な気持ちも減っていったのです。現実への満足度が高まるのに比例して、過去の記憶への満足度も高まった、という方が正確かもしれません。
実は人の記憶は常に歪められています。何が記憶を歪めるか。それは現在の感情です。
今幸せなら過去の記憶も「幸福色」に染まった形で思い出されやすいのです。「あのきつかった経験があったから今の自分がある」と美談にできるのですね。
逆に今が不幸なら過去の記憶も「不幸色」に染まった形で思い出され「宝くじさえ当たらなければ、こんな相続問題で苦しまなくて済んだ」などと考えるのです。
こんな感じで、「正確に過去のことを記憶している。思い出している」と自分がいくら信じていても、実際は気づかないうちに歪められているのです。
したがって、「現在に集中する」ことで今の生活や対人関係を満足させることも、過去のトラウマや不安な気持ちを頭から離すことに有効な手段となるのです。
ちょもちょも さんの自分史を拝見すると、今現在、お相手の方がおり安心感はあるとのことですが、一方で心配なことも多いとのことですね。また、 通院なさっていることもパートナーには明かしておられないとのことです。
パートナーに通院していることを明かせないのは、「信頼していた人に裏切られた」過去が影響してのものでしょう。そのときの体験がパートナーに打ち明けるのを躊躇させているのも十分に理解できます。
しかし、過去のお相手と今回のお相手は別の方です。異なる結果となる可能性は大いにあり得るかと思います。パートナーに隠し事をするのはそれだけで大きなストレスになりますが、逆に受け入れてもらえる体験は大きな安心感となります。
以上、私のカウンセリング経験を踏まえ、3つの方法をご案内しました。
いずれの方法も取り組むこと自体はさほど難しいことではないかと思います。 ちょもちょも さんができる範囲でできることから取り組まれるとよいかと思います。ただ、より安全に進めるためにはやはり専門家の力を借りることをオススメします。現在通院中とのことですので、主治医とよく話し合われるのがよいでしょう。
もし主治医と話し合う時間があまり多くとれないのなら(往々にしてお医者さんの診察時間は短くならざるを得ないのです)、臨床心理士などのカウンセラーのカウンセリングを受けるのも手です。
カウンセリングであれば1回30分~60分程度の時間をとってじっくりと話し合えることがほとんどです。例えばパートナーに通院を打ち明けるにしても、「どう伝えるか」「どこまで伝えるか」を経験ある専門家と一緒に考えるほうが良いことも多いでしょう。
パートナーが ちょもちょも さんの状態を詳しく知りたいと希望したときには、 ちょもちょも さんが直接伝えるのが難しければカウンセラーが代弁することだってできます。
ぜひカウンセラーと一緒に取り組むことを含め、①~③の方法を実践することをご検討ください。 ちょもちょも さんを苦しめる過去のトラウマや不安な気持ちが頭から離れますように。