精神障害があっても公認心理師になれる可能性はありますか?

2023.03.15 Wed

「精神障害があっても公認心理師になれる可能性はありますか?」の相談内容詳細

相談者
相談者 球体
いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
精神障害者になってしまい、公認心理師の資格の審査に通らない状態になってしまったため、今後どう生きていいか分からない
「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
喪失感70%
怒り60%
「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
大学院であれだけ教授たちから理不尽な目に遭わされたのに、結果が出せないことが確定してしまった
人生を捧げるつもりでしてきた努力が全て水の泡で無駄だった
今更他の資格を取ろうにも鬱や体調管理でそれどころでは無い
いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
心理士の知識を生かせる所があるかもしれない
他になにか出来ることがあるかもしれない
環境さえ合えば一般職でも働けるかもしれない
いま専門家に聞いてみたいことは?
公認心理師の第3条第1条の「心身の故障により公認心理師の業務を適切に行うことが出来ない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの」が改定される可能性があるのでしょうか
諦めるべきでしょうか
年齢、性別、職業
27歳、女、無職
既往歴
適応障害、鬱、精神障害者手帳2級
悩みの内容の自由記述
私が大学院に入学した年は公認心理師試験が始まった年だったため、入学者が私1人というかなり特殊な環境だったため、教授たちからオーバーワークを強いられました
その頃に適応障害を発症し、心身ともに疲弊した状態で就職してしまい、続けることが出来なくなりました
私はどうすればいいのでしょうか
公認心理師法第3条第1号の内容が曖昧なため、心理士になることを諦めきれません
相談者 球体 さんの自分史

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「精神障害があっても公認心理師になれる可能性はありますか?」への回答

  • 回答したカウンセラー

    小野寺 リヒト

    臨床心理士/公認心理師 小野寺 リヒト

    球体 さん、ご相談をよせてくださりありがとうございます。臨床心理士・公認心理師の小野寺です。

    精神障害を患ったことで公認心理師法第3条第1条(以下「条文」と記載します)の「心身の故障により公認心理師の業務を適切に行うことが出来ない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの」に該当するようになり、資格取得が危ぶまれているがどうしたらいいのか、とのご相談ですね。

    拝読する限り、 球体 さんが精神障害を患うに至った経緯が教授たちからの理不尽にあるとのことですので、大変胸が苦しくなる思いです。まさか「心理士の先輩」でもある人たちからそのような仕打ちを受けるとは…。さぞやショックが大きいだろうと想像します。

    【聞いてみたいこと】に条文が改正される可能性があるのかどうか?と「諦めるべきなのか?」と書いてくださいましたね。

    下記、それぞれについて考えていきたいと思います。

    公認心理師法の条文改正の可能性は「ある」

    まず条文が改正される可能性があるかどうかですが、あるかないかで言えば「可能性はある」になるでしょう。

    そもそも、改正された結果「心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの」になったのであり、改正前は「成年被後見人または被保佐人」と書かれていました。一度改正されたのだから、また改正される可能性は十分あると言えそうです。

    ただ、当然のことながら、可能性はどれくらいあるのか、いつ改正されるのかは誰にも分りません。我々に条文を変える力がない以上、条文の改正を待つ作業は他力本願とならざるを得ないことは間違いがなさそうです。

    公認心理師を諦める前にできること「クライエント体験」

    続いて「諦めるかどうか」に関してですが、なかなか難しいですよね。少なくとも、他人が決められるような小さな事柄ではないはずです。

    球体 さんのおっしゃる通り条文の内容は「曖昧」ですよね。「心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの」と言われてもピンときません。

    確かに「公認心理師法施行規則」には次のように書かれています。

    第三条第一号の文部科学省令・厚生労働省令で定める者は、精神の機能の障害により公認心理師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。

    でも、これだと具体的なことが一切書かれていないので、自分がこれに該当するのかどうか、一概に言いにくいと思います。

    一方、 球体 さんは「精神障害者手帳2級」を持っているのですね。2級の判定基準は「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」となっています。つまり、 球体 さんの状態は「精神の機能の障害」があり、かつそのことで「日常生活に著しい制限」があると「厚生労働省」により認められたということです。

    一般論的に考えれば、「日常生活に著しい制限」があるならば、日常生活よりも高度な知識と技術が求められる「公認心理師の業務」は「適正に行うことができない」と判断されると思います。

    大変申し上げづらいですが、「精神障害者手帳2級」を持っていることが「心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」に該当することの証拠となっているようです。そういった意味では、現時点では 球体 さんは諦めるしかない、と言わざるを得ません。

    ただ、条文に記載されている欠格事由の条件は「心身の故障により」ないしは「精神の機能の障害により」と、精神障害を患っていることとなっています。精神障害が寛解したあとについてまでの記述はないのです。

    精神障害になったこと自体が欠格事由になるのなら、「精神障害者でなくなった後においても」欠格になる旨が明記されているはずです。事実、公認心理師法第41条には秘密保持義務の規定に関しては、次のような記述があります。

    公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知りえた人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

    秘密保持義務は、「公認心理師でなくなった後においても」順守するべき義務と定めているのです。

    ここから考えられることは、「精神障害者でなくなった後において」は、その人は公認心理師の第3条第1条の「心身の故障により公認心理師の業務を適切に行うことが出来ない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの」に該当しないということです。

    精神障害を寛解させたあとであれば、公認心理師試験にチャレンジすることは問題がないと解釈していいのではないでしょうか。

    球体 さんが患っている適応障害もうつ病も、寛解が十分に望める病です。【考えとは別の可能性】に「心理士の知識を生かせる所があるかもしれない」と書かれていますが、自分をケアする過程では 球体 さんが学んできた心理学の知識も活きてくるはずです。セルフCBT(認知行動療法)などは、心理学の知識がある方が高い効果が見込めそうです。

    カウンセリングを受けて病気をケアすることも、治療+公認心理師としての学びになるのではないでしょうか。 球体 さんであれば教育分析を受ける感覚に近い形でカウンセリングを受けることができるかもしれませんし、先輩心理職がどのようなカウンセリングをするのかを観察学習することもできます。

    クライエントがどのような体験をするのかを身をもって知ることは、公認心理師として大きな成長に繋がります。余談ですが、私は心理職向けにカウンセリングやCBTのスキルを教えることがありますが、カウンセラーとして技法を学ぶだけではなく、必ずロールプレイでクライエント役になってもらう機会も設けています。「カウンセラーにこう言われると、こう感じるのか」という体験を重視しているからです。それくらいクライエント体験をすることは、心理職として大きな成長の糧となるのです。

    このように考えていけば、公認心理師になるのを諦めるのは、病気を治してからでも遅くはないと言えるのではないでしょうか。治療の過程が公認心理師としての学びにもなるのですから。少なくとも、私ならそうします。

    もしかしたら、「私ならそうします」と言われたところで「私とあなたとでは立場があまりにも違う」と思われるかもしれませんね。

    確かにその通りです。しかし置かれた状況は違いますが、私には「他学部(文学部哲学科)から臨床心理士指定大学院に挑戦するために心理学と英語を1から独学で学び、何度も大学院に不合格になり、それでも諦めきれず心理学部に入り直して、また大学院にチャレンジした」。そういう経験ならあります。

    「不合格になっても、合格をつかむまで勉強する」ことと、「欠格事由に該当しても、受験資格を得るために病気を治す」ことは違うかもしれません。だから「 球体 さんのことがわかる」というわけではないのです。でも、心理士になることを諦めなかった経験はそれなりにしたつもりです。

    諦めなかった経験をした私には、 球体 さんを応援する資格くらいはあると自負しています。仮に最終的に諦めてしまうことがあっても、それは何も恥ずかしいことではありません。ですが、「心理士になることを諦めきれません」との気持ちがある間は、諦めるべきではないと思うのです。応援しています。

    ご相談くださりありがとうございました。

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