「うつ病と「ただの甘え」との違いは何ですか?定義が知りたいです」の相談内容詳細
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いまストレスを感じている「出来事」を事実ベースで抜き出してみてね。
「いつ・どこで・誰が・何を」を意識するのがコツだよ。
- かかっている内科医(予防接種や発熱時等、数ヶ月に1度行く程度)に「(鬱は)それほどひどくないし」と言われる。心療内科に通っていることや、抗うつ剤を服用していることを知らせたら毎回言われる。
- 「1」についての「感情」を%で表現してみてね。合計で100%にならなくても大丈夫。直感で書いてみよう。
- 悲しみ70%、怒り30%、罪悪感・やるせなさ80%
- 「1」について浮かんでいる「考え」を教えてね。
- 他人が決めることではないし、専門でない医師が(軽く)言うべきではないと思う。しかし症状としては軽いほうだと自覚もあり、心療内科に通っていたり、薬を服用しているのは自分自身への甘えなのではないかという思いもある。
- いろんな視点から捉えるために、上記の回答の「別の可能性」を考えてみよう。
- 内科医は私を安心させるため、また、内科治療や薬の服用に影響はないということを伝えたいのではないか。
- いま専門家に聞いてみたいことは?
- 重篤な症状がなくても鬱病だと認められるとは思っています。今は行動に移さないだけで、頭の中にいつも「不安」や「死」がこびりついていること自体が鬱の症状なのだと思っています。自分が鬱だと自覚することで折り合いをつけられている部分があります。でも、他人(件の内科医)に言われると、やはり甘えではないかと思ってしまうのは、どうすれば解消できるでしょうか。
- 年齢、性別、職業
- 40代後半、女性、パート
- 既往歴
- 30代半ばの出産後から、心療内科をいくつか巡り、薬を服用しては薬と医師に対しての不信感からやめるということを繰り返していました。今の心療内科は3年ほど継続して通っています(心療内科に対しての認識が変わったため)。
- 悩みの内容の自由記述
- 鬱病だと認めてほしいだけなのかもしれません。同居の家族は鬱に否定的です。
自分史はまだありません。
※ プライバシー保護のため、ご質問の一部を編集部で変更している場合がございます。
「うつ病と「ただの甘え」との違いは何ですか?定義が知りたいです」への回答
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カス" さん、ご相談を寄せていただきありがとうございます。精神保健福祉士の中浦です。
うつ病はただでさえ苦しい時間を過ごさなくてはいけないことが多いですが、家族や周囲の理解がないとさらに辛いものになってしまいますよね。
ご自身でもうつの症状を「軽い」と思われているとのことですが、いくら「軽い」からって他人に「甘えてる」なんて言われたらたまったもんじゃありません。
うつ病にかかわらず、人にはできることとできないことがありますし、それが時と場合で変化するのは当たり前です。
誰もが多少なりともそのときのコンディションに合わせて、「何をどれくらいするか」調整するものです。
そう考えると、内科医の先生やご家族は、 カス" さんが「何をどれくらいするか」を調整中であると理解できていないために、できないことがあれば「甘えている」と判断しているのが想像されます。
では、なぜ カス" さんが調整していることを理解してもらえないのでしょうか?
相談内容に、「鬱病だと認めてほしいだけなのかもしれません」と書かれていましたね。
私は「うつ病であることを認めてもらおうとすること」で、逆に周囲の人が カス" さんを誤解し、 カス" さんを苦しめる悪循環を生んでいるように感じています。
「うつ病を認めてもらおうとすることで逆に苦しくなる」理由は2つ考えられます。
ひとつは、うつ病であることを認めてもらおうとすると「できないことをアピールしている」と勘違いされやすいことです。
医学辞典であるMSDマニュアルによると、うつ病は以下のように定義されています。
「うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します」
大雑把にまとめると、「悲しみや喜びの低下によって活動量が減り、長い時間日常生活に支障をきたす」と言えます。
「活動量が減る」「生活に支障をきたす」ということは、「できないことが増える」と言い換えられると思います。
つまり、うつ病であることを認めてもらおうとすると、自分が今「できないこと」を人に伝えることになります。
1日や1ヶ月くらい何かができなくても他人は何も言わないかもしれません。
でも、長い時間できないことがあって、それを常に他人に認めてもらおうとしたら、人によっては「またできないアピール?」と思われてしまう可能性もあるでしょう。
また、うつ病は日によってできることとできないことが変化する特徴があります。
「今日は買い物に行けたけど次の日は寝込んでしまった」なんてことは、 カス" さんもご経験があるのではないでしょうか?
できることとできないことが変化するので、うつ病に詳しくないと、一緒にいる人は惑わされたり、最終的には「本当にうつ病?昨日はできてたじゃん」と疑ってしまうこともあるかもしれません。
このように、うつ病を認めてもらおうとすると、①「長期的にできないことをアピールする」ことになり、しかも「②できないことが日によって変わってしまう」ことで、特に家族のような一緒に過ごす時間が長い人には「甘えてるだけでしょ」と思われやすくなってしまうのです。
「うつ病であるのを認めてもらおうとすると逆に苦しくなる」理由の2つ目は、できないことをわかってもらおうとすると、「できないことがあってはいけない」と自分で思い込んでしまうことです。
できないことをわかってもらおうとすると、どうしても相手に何かをお願いしているような気持ちになりがちです。
何度かお願いを繰り返すと、お願いをしている対象のものを何か「悪いもの」のように感じてしまいます。
そうなると、「悪いことを相手に与えてはいけない」という考えを抱き、「できないことがあってはいけない」と思い込んでしまうのです。
たとえば、「今日は具合が悪いから夕食は出前でもいい?」と家族に相談するとします。
何回か繰り返すと、家族からは直接は言われなくても「また今日も…」という表情を感じとるかもしれません。ご自身でも「悪いな…」と思うかもしれません。
そうすると、本来は「具合が悪いときの出前」だけだったのに、「出前」は良くないこと→「夕食をつくれないのはダメ」と考えてしまうということです。
このように、心苦しさを感じながらお願いを続けることで「お願いせずに自分でやらなければいけない」と感じ、感じつつもできないことで「自分は甘えている」という思いを強化してしまいます。
でも、ここでちょっと立ち止まってみましょう。
そもそも「甘え」って本当に悪いことでしょうか?
カス" さんのご家族だって、ちょっと体調が悪かったら仕事量を減らして早めに帰宅することもあるはずです。
嫌なことがあったら、パートナーに愚痴をこぼしたり、寄り添ってもらい肌のぬくもりを感じながら気持ちを落ち着かせる人もいるでしょう。
体調が悪ければ家事を手抜きしたり、家族にお願いする人もいると思います。
他人が上記のことをしたときだけでなく、 カス" さんご自身がしたときも想像してみてください。
もし自分がしたときにだけ「そんなことはしてはいけない」と感じられたら、 カス" さんが「できないこと」を「甘え」と捉えてしまっているサインかもしれません。
実は、何が「甘え」で、何が「甘え」でないかという客観的な基準はないんです。あくまで相手や自分の受け取り方によって変わるものです。
なので、 カス" さんがご自身を「甘えてるのかも」と考えること自体、あまり意味はないのかもしれません。
以上が、「うつ病を認めてもらおうとすると逆に苦しくなる」理由になります。
では、「できないこと」を「ダメなこと」や「甘え」と感じ苦しんでしまうのを防ぐには、どうしたらいいのでしょうか。
まずは、「できないこと」を他人に認めてもらう前に、「ありのままの自分」を「自分で」認めてあげることが役に立つと思います。
「ありのまま」という言葉はありふれていて分かりにくいですが、今の カス" さんで言えば、「できないこと」を「甘え」と思わず、「できないこと」をただ今の自分が「できないこと」と捉え直すことと考えていただければ十分です。
次に、自分の気持ちや状況を誰かに伝えるときは、「できないこと」と合わせて「できること」も伝えてみてほしいのです。
「できること」を合わせて伝えることで、「できないことのアピール」という印象を減らすことができます。
アピールと思われないようになれば、 カス" さんが家族などに対して「悪いな」と思うことも減り、「できない」=「甘え」という感覚も減ってくると思います。
具体的な会話の仕方を示してみますね。
たとえば「今日は気分はそこまで悪くないんだけど、体がすごく重いの。体を動かすようなのは難しいかもしれないけど、読書とかならできそう」と伝えます。
翌日は、「昨日とは逆に今日は気分が落ち込んでるみたい。あまり良い睡眠が取れなかったからかな。読書しすぎたのかもしれない。一応食事つくりはしてみるけど、しんどくなったら出前でもいい?つくり途中のものは冷凍して明日以降にやるから」みたいな感じです。
このように伝えられると、「できないこと」だけに意識が向かいにくくなると感じませんか?
「できること」と「できないこと」をはっきり伝えるのは、家族の理解を得るだけでなく、ご自身の理解や治療にも役立ちます。
うつ病に限らず、自己肯定感の低さなどネガティブな思考に苦しむ人の多くは、変えにくい自分の特性に囚われやすいです。
「なんでこんな暗い性格なんだ」とか「些細なことでクヨクヨするのをやめたい」という感じで、自分を苦しめる性格や傾向に考えが囚われると、さらに抑うつ的な気分を強化させてしまうんですね。
実は、この方法は カス" さん自身にも良い効果をもたらします。
「できること」と「できないこと」を家族や誰かに伝えようとすると、何ができそうかを考える中で自然と「したいこと」を考えるようになります。
「掃除はしんどいけど散歩ならできそうだな」とか、「もしかしたらヨガみたいに軽い汗を流すのは気持ち良いと感じるのかも」みたいに、少しずつ自分が好きなことや、どんな自分になりたいかを見つけやすくなっていくのです。
自分のうつ病以外の部分を知れるようになると、それこそ「ありのままの自分」を知ることにもつながります。
ありのままの自分を知れるようになれば、相手から「甘えている」と言われたとしても、「甘え」と「できないこと」を分離させて考えられるようになります。
「できないこと」も「できること」も、「甘え」も「好きなこと」も、ぜんぶ自分の一部であると理解できるようになり、他人からの言葉にも影響を受けにくくなるはずです。
長くなったのでまとめますね。
【うつ病であることを認めてもらおうとすると逆に苦しくなる理由】
①「できない自分をアピールしている」と勘違いされやすい。
②「できないことがあるのはダメなこと」と自分にプレッシャーをかけやすい。【ありのままの自分を認めてもらう方法】
①まずは自分で自分を認めるために「できないこと」はただ「できないこと」と捉え直す。
②「できないこと」と合わせて「できること」を伝える。
③「できること」も伝えることでうつ病以外の カス" さんの状態を伝えられる。できることは大したことでなくても構いません。
できないことが変化するのは受け入れづらいかもしれませんが、できることが変化するのは他人にも自分にも希望を感じさせることができると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。応援しています。