「慣れていない人との会話の気まずさに耐えられない」
「人と話したあと必ず一人で反省会している」
初対面やあまり知らない人と話すのって、緊張するし何とも言えない居心地の悪さがあるよね。居心地悪いだけならまだしも、うまく話せている人を見ると自己嫌悪になって、さらに落ち込んじゃうこともあるんじゃないかな。
人見知りは性格特性の一つだけど、実は人見知りにも色々な側面があって、悪いことだけじゃなくて良いこともあるんだ。
しかも、現代のテクノロジーは人見知りの力強い味方になってくれる可能性もあるんだよ。
今日は、自分の人見知りの特徴を知り、今の社会の中でどのようにすればもっと楽に人と話せて、窮屈な思いをせずにいられるかを一緒に見ていこう。
目次
人見知りとは?
人見知りは、内気・恥ずかしがり屋・シャイなどの意味を含む性格特性の一つで、英語だと “Shyness=シャイネス”と言われるよ。このシャイネスを最初に研究した心理学者はフィリップ・G・ジンバルドーという人なんだけど、実は心理学ではシャイネスの定義というのははっきり決まっていないんだ。定義が定まっていないということは、要因や側面などがとても複雑ということだよね。人見知りを克服するには、複雑な要因を一つ一つ確認し自分の特徴を理解していくことが大事なんだ。
感情・行動・認知への影響
人見知りな人によく見られる反応として、3つの典型的な側面があるよ。
①感情的側面
情動的な覚醒を自覚することによる動悸・発汗・赤面などの身体的特徴
②行動的側面
コミュニケーションのぎこちなさや、自分が望む社会行動を抑制したり、消極的な行動になる
③認知的側面
他者から否定的に見られていると感じることで自分を否定したり、低い自己評価につながる
人見知りが厄介なのは、ただ「人とうまく話せない」ことだけが問題なんじゃなくて、3つがそれぞれ影響し合っていることがポイントなんだ。
人見知りな人が誰かと話すべき状況で躊躇してしまうパターンを見てみよう。
①顔が赤くなるのを見られたくない(好ましくない身体的反応)
↓
②誰かが話してくれるから大丈夫だろう(消極的な行動反応)
↓
③また自分の意見を言えなかった(ネガティブな認知反応)
こういうサイクルが生まれることで、ネガティブな自分への自意識が強くなってしまい、さらに人見知りが加速してしまうんだね。
状態シャイネスと特性シャイネス
ドイツの心理学者であるイェンス・アセンドルフ氏は、人見知りを2つの特性から区別することを主張しているよ。
状態シャイネス
ある特定の社会的な状況でのみ起こるもの
特性シャイネス
特定の状況を越えて比較的安定して存在する一種の人格特性
状態シャイネスは、人と話すことに苦労はしないけど、大勢の前で発表するときに緊張や不安が生じるなどの場合で、特性シャイネスは「基本的にアメリカ人と比べると日本人はシャイだ」のように、一定の性格上の特性と言えるんだ。
対人不安傾向と対人消極傾向
江戸川大学の菅原氏は、対人不安傾向と対人消極傾向という2つの特性から、シャイネスを研究しているよ。
対人不安傾向
自己呈示の危機に伴う情緒反応
※自己呈示=自分をより良く見せようとアピールすること
対人消極傾向
社会的スキルが低いことや、賞賛を得ることに対する自意識の低さ
同氏の研究によると、対人不安傾向が強い人は他者からの評価や拒絶されることへの不安に敏感で、自尊感情の低さから他人の振る舞いにネガティブな認知バイアスがかかりやすいと言われているんだ。
対人消極傾向は、他者からのネガティブな反応には影響を受けない一方、社交性がなかったり、対人関係を築こうとするスキルや欲求もない状態のことを指すんだよ。
人見知りになる原因
人と話すだけなのに、なんで人によってこんなに違うんだろう。いつから人見知りするようになったんだろう。
誰とでも気軽に話せる人もいれば、特定の人や状況になると頭の中が空っぽになってしまうこともあるよね。何が人見知りに影響しているのか見ていこう。
遺伝と養育
赤ちゃんの人見知りは生後7ヶ月くらいから始まると言われているんだけど、行動遺伝学者の安藤氏は、赤ちゃんの人見知りは約50%が遺伝だと指摘しているんだ。また、心理学者の日比野氏は、生後10ヶ月の赤ちゃんの人見知りを調査したところ、全体の80%に中程度以上の人見知り反応があることを発見したんだよ。
遺伝の影響は大きいけど、その後の環境でも変化するよ。
ちなみに、日本人には緊張しやすい遺伝子が80%含まれている一方、アメリカ人には40%しかなく、不安や緊張に強い遺伝子はアメリカ人で80%なのに対し、日本では20%だけだったんだ。
誤った対人認知
人見知りの強い人は、自分だけでなく相手のこともネガティブに捉えることで、よけいに話しづらい状況を作っている可能性があるよ。
名古屋大学と東京学芸大学の共同研究では、人見知りが強い人は相手の社交性・積極性・自信のレベルを低く認知していることがわかったんだ。これは、人見知りする本人の社交性・積極性・自信のなさが相手の態度やコミュニケーションに影響し、それを本人が認知したのではないかと推測されているよ。
対人関係は、自分のコミュニケーションの仕方が相手の態度にも影響を与えていることを知るのが大事なんだ。
たとえば、上司が厳しい表情で話してきたら、部下もそれなりに神妙な顔になるよね。それを上司が「君はなんでそんな深刻な顔をしているんだ」と言っても、自分の態度が相手にそうさせていることは明らかだよね。
不確実性回避
シャイネスに影響を与える要因の一つに、不確実性回避というのがあるよ。
尚絅学院大学の研究では、ネイティブ講師の英語クラスの生徒にアンケートを取ったんだけど、回答者の85%が自分はシャイだと回答し、英語を話すときはその割合が92%まで上がったんだ。さらに、英語の授業では質問の答えがわかっていても57%が黙っていると答え、シャイネスと積極性への影響も指摘しているんだ。
積極的に発言できない理由としては、「間違っていたときのことを考える」ことと「解答することで他の生徒にどう思われるか」ということが多かったんだ。
いずれも、発言することでどういう風に周囲に見られるかわからない不確実性があって、複数の研究が日本人はこの不確実性回避指数が高いことを報告しているよ。つまり、ネガティブな反応を回避するだけでなく、ポジティブな可能性があったとしても、「どうなるかわからない」というあいまいな状況を避ける傾向が強いということなんだ。
私は本当に人見知り?時代による「人見知り」の変化
人見知りは性格特性の一つだけど、人間は社会の中で生きる生物だから、その時の社会構造などの影響も強く受けているよ。
人見知りの概念や影響について、現代社会の変化と比べながら見ていこう。
スピード社会の影響
インターネットの発展などで現代はスピード社会だと言われるよね。人見知りが強い人にとっては、このスピーディーな状況が不利になることが指摘されているんだ。
たとえば友人や恋人関係を作る場合、人生の多くを地域社会や一つのコミュニティの中で過ごすことが多かった時代では、1週間に何回も顔を合わせて少しずつ会話をしながら友好を深められたよね。現代は出会いやコミュニケーションも単発で終わることが多いから、1回の短い時間で結果を出すことを求められているんだ。
職場でのコミュニケーションも、90年代までは終身雇用が普通だったから、プレッシャーが低い状況で同僚や上司と関わっていたんだよね。今は成果を出さなければ解雇される時代だから、プレッシャーの高い状態で会話しなければいけないんだ。
時代によって変わる人間関係の変化は、こっちのページで詳しく書いているから読んでみてね。
ゲームとネットが人見知りを改善する?
現代のテクノロジーが人見知りを改善する可能性を複数の研究が明らかにしているよ。
お茶の水女子大学はゲームが及ぼす人付き合いへの悪影響を調査したんだけど、結果はゲームの使用とシャイネスの低下の関連性を示唆しているんだ。ゲームがシャイネスを低下させると考えられる理由は、ゲームが友達同士の話題作りになるなどの物理的な影響があるよ。
また、同大学の別の研究では、MMORPG(大規模な人数で行うオンラインゲーム) によって、人見知りが強い人にとって心理的負担となりやすい周囲の視線を感じることなく、匿名性を確保しながら少ないプレッシャーの中で、会話スキルなどの訓練ができるということも指摘されているんだ。
同様に青山大学の研究でも、インターネットを使用したコミュニケーションを活用することで、容姿や視覚的な心理的作用を気にせず会話できることで、利用する人の精神的健康や人間関係に及ぼすポジティブな側面を伝えているよ。
人見知りは時間がかかるだけ?
人見知りが強い人で問題になるのは「人間関係を作るときだけ」という見方があるよ。
米国で行われたある調査では、アメリカ人の48%が自分はシャイだと回答し、58%が自己紹介するときに居心地の悪さを感じ、40%がパーティーなどの社交場で友好関係を作ることに難しさを感じているんだ。
一方、人見知りな人が親密な関係を築くことに難しさを感じているのは7%しかいなかったんだって。
親友や友人はいるけど、初対面や特定の場面で苦手意識があるから、自分を「人見知り」と定義し、誰とも親密な関係を築けない人は、自分を「孤独」と定義するかもしれないよね。
人見知りは人間関係のすべてが苦手なんじゃなくて、特定の場面で難しさがあるということを分けて考えておくと、もっと自分をポジティブに考えられるかもしれないね。
逆効果?人見知り克服でNGなこと
人見知りを克服するために、自分が苦手なことに思い切ってチャレンジしてみた人もいるんじゃないかな。勇気を持って苦手なことに挑戦することは、成長できる人間の大事な一つの特徴だけど、すべてに無理して自分を変えようとしなくてもいいんだ。
社交的な自分になるためにやってはいけないことを確認しておこう。
人がたくさん集まる場所に行く
ある米国の調査では、人見知りが強い人の67%がパーティーなど大勢の人が集まる場所にいき、社交的な人と同じようにふるまうことにチャレンジしたことがあるんだって。
でも、自分らしさを消して人と関わることは、自分を疲弊させるだけでなく、仮にその場ではうまく話せても長続きしないし、本当の自分ではない振る舞い方に相手が戸惑ってしまうことも多いんだ。
ありのままの自分を知る方法は、こっちのページに詳しく書いてあるから参考にしてね!
「自分は人見知りではない」と信じる
「自分はできる!自分は人見知りじゃない!」と言い聞かせることも逆効果だよ。
精神論的に自分に何かを言い聞かせているときは、自分が自分と会話している状態だから、そんなときに他人と自然で心地よい会話なんてできるはずがないよね。
何かを変える必要はあっても、無理に強く思い込む必要はないんだ。
ハイになるものの助けを借りる
人見知りが強い人の12%は、アルコールなど何かしら気分が高揚するものを摂取して社交場に出かけて行った経験があるみたいだよ。
これも本来の自分からは程遠いし、帰宅後シラフになったときに虚しさを感じて、逆に自己嫌悪につながる恐れがあるよね。
人に好かれるために無理して社交的である必要はないんだ。
人見知りでもすぐできる!簡単なコミュニケーション方法
人に好かれるために自分のぜんぶを変える必要はないよ。相手と仲良くなることを目標にする前に、そのときの会話をより豊かにできることを意識してみよう。
感じが良い人になる
誰だって嫌われていると感じるよりは好かれていると感じるときの方が話しやすいよね。
感じが良い人と思われることで、「好かれているかも」「この人とは話しても安全かも」と思える状況を作り、自分が話しやすい状態を自然に作ってしまう作戦だよ。
特にあいさつ、返事、態度は自分が話す内容を考える必要もないから、心理的なプレッシャーも少ないんだ。
自分からあいさつする、返事は少しだけキーを高めに、ちょっとだけ口角をあげて微笑むような態度をするだけで十分だよ。「これも無理!」という人はできそうなこと一つだけでも大丈夫。自分で「いつもとちょっとだけ違う」と思える行動ができればバッチリだよ。
あいづちのバリエーションを増やす
語学学習の世界では、あいづちのバリエーションを増やすだけで会話が上手になると言われているよ。
これは、上手にあいづちを打ち会話にリズムができることで、自分が話をできているという安心感が自信につながり、自然に言葉が出てくるようになるからと言われているんだ。
それに、普段の会話でもよくわからないけど何となくリズムが良いから「それいいねー!」とか言っちゃった覚えがある人もいるんじゃないかな。
会話の中ではわからないこともあれば同調できないこともあるし、そういうことを「何となくやり過ごしながらも通じ合う」ということも大事なコミュニケーションスキルなんだよ。
すべてをわかり合えるなんていう理想ではなく、効果的なあいづちのバリエーションを増やすことで、自信を持って会話に心地よいリズムを作ることを意識してみてね。
相手のリサーチ
急によく知らない人と二人でいることになったときのぎこちなさは誰もが経験しているよね。
そんな不測の事態に陥らないように、前もって相手の情報をリサーチしておくことが役に立つよ。好きなことでもいいし、相手が今している仕事の内容とかでも良いよね。
それに、リサーチは前もってするだけでなく、直接話しているときも有効だよ。人は興味を持たれると嬉しく感じるものだから、相手がどんな人か知ろうとする行為によって、相手は気分が良くなるだけでなく相手が話すことにもなるから、人見知りな人にとっては一石二鳥なんだ。
人見知りな人は言ってみれば意識が自分に向かいやすい人とも言えるから、他人や社会に関心を持って、外の世界を知ろうとする行動が役に立つよ。
自己教示訓練
自分らしくない自分になる必要はないけど、変えたいと思う部分を具体的にイメージするのは行動変容に効果的だよ。
心理学者のドナルド・マイケンバウム氏は、自己教示訓練法という認知行動療法の一つを提唱したんだけど、自己教示訓練は自分の言葉で自分自身に何かを言い聞かせることで、それが刺激となって行動の変化を促すことを指すんだ。
「自分は人見知りではない」と言い聞かせることは逆効果だと言ったけど、自己教示訓練で大事なのは「具体的な行動内容や認知傾向をイメージして言葉にする」ということなんだ。
たとえば、まだあまり慣れていない人とランチを一緒にするときに緊張する場合は、「◯◯さんといても緊張しませんように」ではなく、「◯◯さんとランチ中に無言になっても気にしない。それはまだ慣れていないから当然のこと」みたいな感じで言い聞かせるんだ。
「願い」ではなく「こうでありたい」という姿を言い聞かせる感じかな。
もしうまくいくときがあったら、よくがんばった自分へご褒美をあげることも忘れないでね。
人見知り改善まとめ
人見知りは自分の性格特性の一つではあるけど、だからって人として劣っているようなことはないよ。
どんなにうまく人と話せなくて落ち込んじゃうようなことがあっても、無理して自分をぜんぶ変える必要はないんだ。
人に好かれるために努力することも大事だけど、そのままの自分を受け入れられることも、人が成熟していくには大切だよ。
今のままでもっと楽に会話ができるような方法を少しずつ取り入れてみてね。