セルフケアは質より量。知っておきたい3つの考え方と方法

2022.02.24 Thu
シンくん
案内人 シンくん
ライター
執筆 小野寺 リヒト 臨床心理士/公認心理師
セルフケア方法と例
セルフケアは質より量。知っておきたい3つの考え方と方法

人生にストレスはつきもの。

そんな人生を生き抜く「自分」に替えはきかないから、できるだけ「自分の心」は健康に保っていたいよね。そのためには自分を上手に労わるセルフケアが大切だよ。

この記事では、セルフケアをする上で重要な以下の3ポイントを解説していくよ。

①いつもの自分を知る
②いつもの自分じゃないときにすぐにストレスに対処する
③元気なときにもセルフケアを継続する

さっそく一緒に自分だけのセルフケアを見つけていこう!

セルフケアで心を楽に
 

セルフケアとは?

3つの重要性を説明する前に、まずはセルフケアについて説明していくね。

心理学では、「自分で自分を労わること」をセルフケアと呼んでいるよ。厚生労働省により定められた『事業場における労働者の心の健康づくりのための指針』にも、セルフケアはメンタルヘルスケアに必要なケアの1つであるとされているくらい大事なものなんだ。

セルフケアについて学ぶことで、自分のストレスや心の健康状態について正しく認識できるようになるよ。

癒される~
 

セルフケア方法① いつもの自分を知る

次はセルフケアを行う上で重要な3つのことのうち、一つ目の「いつもの自分を知ること」について説明していくね。いわゆる「自己洞察」と呼ばれることだよ。自己洞察によって「自分はこういう人間だ」との認識の明確性を高めて、「いつもの自分」をクリアに見ることができればできるほど、いつもとは異なる自分に対する敏感さの精度も高まるんだ。

「いつもの自分」とは、「ストレス反応がないときの状態」や「ストレスを意識しなくてもいい状態」のことを意味するよ。

「いつもの自分」を知っているからこそ「いつもよりダルいな」「いつも寝てる時間なのに眠くない」「美味しいと感じてたおかずが美味しく感じない」といったことにすぐに気づけるんだ。「いつもと違う自分」が現れたら、それはストレスが溜まっているのかも。

「いつもの自分? そんなのわからないよ」という人もいるかもしれないね。そんな人はストレス反応に敏感になるところから始めてみよう。

ストレス反応は心と身体と行動に現れてくるよ。ふだん感じていない「不快感」を感じたら、それは「いつもの自分」から遠ざかっていることのサイン。セルフケアは「いつもの自分」を取り戻すための方法でもあるから、「いつもの自分」には見られないストレス反応がないかチェックしてみよう。

下図のなかで、自分に生じているストレス反応がないか確認してみてね。

ストレス反応一覧

心理面のストレス

心に現れるストレス反応としては以下のものが代表的だよ。

・イライラ
・意欲や集中力の低下
・気分の落ち込み
・関心や興味の低下

「いつもの自分」をまず知っておくことがセルフケアをする上でとても重要なのは、こういった「いつもとは違う」ことに気づくことで心に現れたストレス反応に気づきやすくなるからなんだ。

身体面のストレス

身体に現れるストレス反応としては以下のものが代表的だよ。

・頭痛
・不眠
・肩こり
・めまい
・動悸
・疲労感
・食欲低下
・腹痛
・便秘
・下痢

「頭痛薬飲んでるのに、いまいち改善しないな…」などといったことがあれば、原因はストレスにあるのかも。だとしたら、お薬を飲んでも根本解決にはならないね。何がストレスの原因になっているのかをしっかりと把握して、それを取り除くことが大切だよ。

行動面のストレス

行動に現れるストレス反応としては以下のものが代表的だよ。

・飲酒
・喫煙量の増加
・食べ過ぎ
・ひきこもり
・遅刻
・欠勤の増加

行動はあたかも本人が望んでやっていることのように見えるから、飲酒や喫煙を止められないのを「意思が弱いから」と思ってしまうかもしれないね。

けど、行動に現れるストレス反応は全て“一時的には”ストレスを減らしてくれるものだからストレスがあるときにそういった行動が起きてしまうのはごく自然なことなんだ。

ここに挙げたような反応が慢性的にある人は、絶えず「いつもの自分」が傷つけられていることを意味しているのかも。もしかしたら環境を変えるか、「カウンセラーなど専門家によるケア」が必要な段階かもしれないよ。あまり1人で抱え込み過ぎないでね。

セルフケア方法② いつもの自分じゃないときにすぐにストレスに対処すること

次に、「いつもの自分じゃないときにすぐにストレスに対処すること」の重要性について解説していくね。

ストレスに対処することをコーピングというよ。公認心理師の伊藤絵美氏は、コーピングのことを「自分で自分を上手にケアすること」と定義しているんだ。

ストレス反応に気づいたら、「いつもの自分」が脅かされているサイン。コーピングでいつもの自分を取り戻そう。

難易度別コーピングのレベルわけ

ここでは、「やりやすさ」をココロジー編集部がレベル分けして、いくつかコーピングを紹介していくよ。試せそうなものがあれば是非チャレンジしてみてね。

レベル1
まずは、一つ一つの効果は薄いけど毎日でも実践しやすいものを紹介するね。

・リラックスできる飲み物を飲む
・甘いものを食べる
・軽い運動をする
・音楽を聴く
・ストレッチ
・人と話す
・愚痴吐き
・歌う
・寝る

レベル2
次はやや難しいけど、出来るなら積極的に生活に取り入れていきたいものだよ。

・自分を全肯定してくれるコミュニティに参加する
・ストレッサーとなっている要因を取り除く
・恋人とハグなどのスキンシップをする
・高級なご飯を食べに行く
・得意なことをし続ける
・名湯をめぐる
・ヨガ

レベル3
最後に、実施が難しいけどその分効果の高いものを紹介していくね。

・「他人は他人。期待するだけ無駄」とポジティブに捉える
・いい意味での自己愛を抱き続ける
・人を愛し続ける努力をする
・他者貢献する

寒いときに飲む甘くてあったかいココアは最&高
 

セルフケア上手になるためのコツ

コーピングをセルフケアに役立てる一番のコツは、「質より量」だよ。

効果の高いものは、実践が難しいものが多いんだ。例えば、天然温泉をめぐるのは旅先での出会いや温泉の効能などによって大きなリラックス効果があるけれど、毎日できることではないよね。

温泉巡りだけをコーピングとしてしまうと、仮に一か月に一回巡れたとしても、残りの29日くらいはずっとストレスを抱えて我慢していることになるよ。「我慢は美徳」と考えられがちだけど、我慢している状態は「いつもの自分」から遠ざかっているとも言えるよね。「セルフケア」の観点から言うと、我慢は禁物なんだ。

我慢を重ねて「いつもの自分」すらわからなくなると、セルフケアでは立ち行かなくなってしまうこともあるよ。その場合は、カウンセラーなど専門家のケアが必要になるほど「いつもの自分」を取り戻すのが大変になってしまうんだ。

だから、セルフケアのコツは毎日いつでもできるようなコーピングをたくさん自分の中にストックしておくことなんだ。

ちょっとストレスを感じたら一口チョコを食べる。仕事が早く終わったらカラオケに行く。電車の中では好きな音楽を聞く。

こういった毎日いつでもできるコーピングをたくさん用意しておくと、ストレスを感じた瞬間にすぐにその場に応じたセルフケアを行えるよ。もちろん、ストレスのない元気な状態をさらに元気にするためにコーピングを応用することだってできるんだ。

コーピングはあなたの応援団。たくさんいてくれる方が勇気がわくよね
 

臨床心理士がおすすめするコーピング【おまけ】

感情労働はストレスが溜まりやすいことが知られているけど、日ごろ感情労働をしている臨床心理士はどんなコーピングをしているのか気になったから聞いてきたよ!

接客業やサービス業など同じく感情労働をしている人たちの参考になるかもしれないものを3つ紹介するね。

①断捨離
断捨離は不必要なものをどんどん捨てていくことだよ。断捨離は自分のペースで「何を」「いつ」捨てるかを決めて難易度を調整できるし、ものを捨てたときの快感と身の回りに残っているものへの愛着が感じられるからおすすめなんだって。

②料理
料理は刃物や火を使うから集中しなきゃいけないんだけど、その分他のことを忘れて没頭できるからおすすめなんだって。料理も作る内容によって難易度を調整できるし、何よりあとで食べる楽しみがあるのもおすすめポイントらしいよ。

③ぬいぐるみを洗って干す
本当に心がまいってしまったときって、自分を労わることが難しくなるんだ。そんな時は自分の代わりにぬいぐるみを洗濯して日向ぼっこさせてあげているんだって。眼球が眼球自身を見れないように、自分を見つめ直すのに自分以外の存在が必要だそうだよ。心が疲れたときは、せめて自分の大切にしているものをケアしてあげようね。

ボクを断捨離しようとしてる!?
 

セルフケア方法③ 元気なときにもセルフケアを継続する

最後に「元気なときにもセルフケアを継続する」の重要性について解説していくよ。

コーピングはストレスへの対処を目的としたものだったよね。けど、コーピングで培ったスキルは、何もストレス反応が出たときにしかやっちゃいけないなんてことはないんだ。せっかく身につけたスキルを使わないなんてもったいないよ。それに、元気なときじゃないとなかなか実践が難しいセルフケアもあるんだ。

セルフケアはポジティブなもの

セルフケアって、一見すると心が弱っているときにするネガティブなイメージがあるよね。
けどそのイメージとは真逆で、セルフケアはストレス反応が出ていない元気な時にこそ行えば、心の病を予防することのできるポジティブなものなんだ。

例えば「仕事で失敗した」という問題が発生したとき、上手にセルフケアが出来ないとずっとそのことが気になって気持ちが沈み込んでしまうかもしれない。場合によってはうつ病になることも考えられるよね。

けど労働安全衛生総合研究所の大塚氏らによれば、そこでストレスに気づいて、対処するための知識や方法を身につけていたとしたら、うつ病になるずっと手前でストレスを弱められるんだ。

ストレスをうまく弱められた経験を、心が元気になったときに「何が良かったのか?」「次同じようなことが起こさないためには何をしたらいいか?」を復習することができれば、その経験は仕事が順調なときに、その仕事の生産性をさらに高めるのに役立つかもしれないね。

精神医学の世界では「治療」より「予防」が主流になりつつあるんだ
 

元気なときにストレスと付き合う方法を考える

元気なうちにこそ「適度なストレスは実はいいもの」という視点を養うことができれば究極のセルフケアになるよ。

121か国にも渡ってストレスと幸福度の関係が調べられた研究によると、ストレス度が高い国ほど幸福度が高い関係が見られたんだ。ストレスが低い国は貧しい国が多かったみたい。毎日生きることに必死で「いつもの自分」がわからなくなると、ストレスを感じる余裕すらなくなるのかもしれないね。

ストレスを0にすることを考えるのではなくて、ストレスと上手く付き合ったり、そこから回復することに注目してみて。

ちなみに、「ストレスに直面したときにうまく適応して回復する力」を心理学でレジリエンスというんだ。レジリエンスを鍛えるために、元気なうちにコーピングやジャーナリングを試してストレスとうまく付き合うようにしておこう。

ジャーナリングについてはこちらの記事も参考にしてみてね。

そうやって少しでも「適度なストレスがあっても問題ない」と思えると、更にレジリエンスが高まるいい循環に入っていけることが期待できるんだ。

スタンフォード大学のアリア・クラム氏らが行った実験によると、「ストレスは自分を消耗させる」と考える人に比べ、「ストレスにはプラスの効果がある」と考える人は、コルチゾールの反応がより穏やかになることが知られているよ。コルチゾールはストレスホルモンの一種だね。

コルチゾールがたくさん出てしまうと免疫機能の低下やうつ病を招く恐れがあることが知られているよ。だからコルチゾールが少ないことはそれだけストレスと上手に付き合えていることを意味しているんだ。

ストレスという名の波にうまく乗れるといいね
 

セルフケアまとめ

生きていればストレスはつきものだから、そのストレスと上手く付き合うためにセルフケアをするのがとても重要なんだね。

セルフケア上手になるには、①いつもの自分を知る、②いつもの自分じゃないときにすぐにストレスに対処する、③元気なときにもセルフケアを継続するの3つが大切なんだ。「いつもの自分」を取り戻す手段があればあるほど、心はどんどん健康になっていくよ。

ストレスを0にすることは出来ないから適度なストレスに関しては「良い側面もある」と考えてレジリエンスをつけていくことも同じくらい大切なんだね。

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