「ちょっと連絡が遅れただけなのに、LINEもTwitterもインスタも全部ブロックされた」
「あの人のマイルールが細かすぎて、こっちの仕事もなかなか進まなくて困る」
「息をするように嘘をつく」
そんなふうに感じる人が身近にいたりしないかな? あるいは自分自身が「なんとなくみんなと考え方や大事にしているものが違って生きづらいな」と感じているかもしれないね。
そんな人は、パーソナリティ障害について学ぶと、付き合いづらい人との接し方や、自分の生きづらさを解消するヒントになるかもしれないよ。
パーソナリティ障害とは精神障害の一種で、「常識の物差し」で測定するとかなり逸脱しているように見える行動や考え方を見せる状態のことをいうんだ。
今回は、そんなパーソナリティ障害について概説していくね。
目次
パーソナリティ障害とは
パーソナリティ障害とは、物事に対して取る反応パターンに柔軟性が欠け、そのために自分や他人が困ってしまうことを特徴とする精神障害の一つだよ。
「パーソナリティに障害がある」と言われると、「性格の問題だったら治しようがない」と思うかもしれないけど、そうじゃないんだ。ここでいう「パーソナリティ」とは、生まれ持った性格や気質のことじゃなくて、過去の経験などによって形成されてきた「考え方や行動のクセ」のことだと思ってね。
パーソナリティ障害は、考え方や行動のクセが属する文化から期待されるものとはかけ離れてしまい、自分自身の力ではその逸脱を修正できなくて困っている状態なんだ。
例えば「大人なら多少他人の悪いところにも目をつぶろう」と期待される文化がある中で、「あの人はろくにあいさつもできない最低なやつだ。懲らしめないと気が済まない」と考え行動してしまったら、「やりすぎ」「逸脱」と判断されうるよね。
アメリカの精神医学にまつわる診断マニュアル、DSM‐5ではパーソナリティ障害を10種類想定しているよ。そしてそれらをA群・B群・C群の3つのカテゴリーに分けているんだ。
ただ最近は、パーソナリティ障害と診断されることが少なくなってきているようだよ。いくつか理由があるみたいで、例えば「実は発達障害やPTSDなどの他の病気だった」とか、「併発していたうつ病や社交不安障害、依存症などがよくなると、パーソナリティ障害の診断基準を満たさなくなった」などだね。そもそも他の障害との区別がつかないほど診断基準が難しいものも中にはあるんだ。
このような理由から将来的にパーソナリティ障害の診断基準が見直されることもあるかもしれないけど、人の行動や考え方を理解する上でとても参考になるから、今回取り上げることにしたよ。
パーソナリティ障害の原因
パーソナリティ障害の原因もみていこう。ただ、パーソナリティ障害になる背景には様々な要因が複雑に絡み合っていて、一概に「これが原因」と言えるものはないんだ。なので「おおよそこの辺りが関係しているだろう」と考えらえているものを紹介していくね。
遺伝的な要因
一つ目は「遺伝的な要因」だよ。つまり、親が何かしらのパーソナリティ障害を持っていると、その子どももパーソナリティ障害を持つ可能性が高いということだね。
とはいえ、親がパーソナリティ障害なら子どもは必ずパーソナリティ障害になるわけではないし、一卵性双生児の一方がパーソナリティ障害でも、もう一方はそうではないということも多いんだ。
遺伝的な要因の影響力は、おおよそ50%だと言われているよ。
脳機能の問題
二つ目は「脳機能の問題」だよ。生まれつき脳に何かしらの障害がある場合も、将来的にパーソナリティ障害になっていく可能性があるんだ。
代表的なのが反社会性パーソナリティ障害だよ。反社会性パーソナリティ障害については後ほど詳しく説明するけれど、このパーソナリティ障害はADHDと呼ばれる脳機能障害に起因する発達障害を抱えている人が、大人になる過程で発症するケースがあることが知られているんだ。
このことをDBDマーチというよ。DBDとは破壊的行動障害の略で、ADHDが反抗挑戦性障害になり、反抗挑戦性障害が行為障害になり、そして行為障害の一部が反社会性パーソナリティ障害になると仮定する一連の流れがDBDマーチなんだ。
もちろん、ADHDを抱える子どもが全員反社会性パーソナリティ障害になるだなんてことはあり得ないよ。ここで大事なのは「ADHDだと将来パーソナリティ障害になるのか?」ではなく、「パーソナリティ障害は脳機能の障害のために、本人の努力だけではどうしようもないことがある」ことを知っておくことなんだ。
育ってきた環境
三つめは「育ってきた環境」だよ。パーソナリティ障害と診断された人の過去の養育環境を調べてみると、親が精神的に不安定だったり、虐待を受けていたケースが多いことがわかっているんだ。
例えば、境界性パーソナリティ障害と診断された人の40~70%は性的虐待を、10~73%が身体的虐待を受けていたとの研究結果もあるんだ。
社会性を身につけるのに大事な幼少期にモデルとなる大人がいなかったり、大事にされ愛された経験もなければ、大人になってからどう振舞っていいかわからないのも無理はないよね。
パーソナリティ障害の一覧
今度は、10種類あるパーソナリティ障害の特徴を一つ一つ確認していこう。
先述の通り、
A群に妄想性パーソナリティ障害障害、シゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害の3種類。
B群に反社会性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害の4種類。
C群に回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害の3種類があるよ。
それぞれ解説していくね。
妄想性パーソナリティ障害【A】
妄想性パーソナリティ障害とはA群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
妄想性パーソナリティは、猜疑性パーソナリティ障害とも呼ばれるくらい、他人の言動に対して異常なまでに疑いの目を向けるのが特徴なんだ。
「他人は自分を利用しようとしている」
「うまいこと言って自分を騙そうとしている」
「親切にしているのは、自分を信じ込ませて後で詐欺を働くためだ」
「いま『ありがとう』って言われたけど、きっと皮肉で言っているんだ」
「彼女に送ったLINEに既読が付かない。きっと浮気してるんだ」
こんな風に、悪意のない言動であっても、そこに悪意を見つけ出して必要以上に疑い、警戒してしまうんだね。
あれもこれもと疑っていたら本人は疲れるし、疑われた方も残念な気持ちになるから、人間関係にヒビが入りやすく、双方困ったことになってしまうんだ。
欧米のデータではあるけど、おおよそ2.3~4.4%の人が妄想性パーソナリティ障害を抱えていると言われているよ。なお、他のパーソナリティも有病率を示していくけど、全てMSDマニュアルプロフェッショナル版であることを先にお断りしておくね。
接し方
周囲の人は、妄想性パーソナリティ障害を持つ人の言動を頭ごなしに否定しないことが大切だよ。
“妄想性”と付いているくらい、この障害を抱える人の言動は、かなり非現実的なんだ。そのことには本人も薄々は気づいていて、自分の主張の非論理性や唐突さに不安を感じていると言われているよ。だからこそ、「それは違う」と他人に言われると余計に不安が高まり「そんなはずはない!自分の言っていることこそ正しい!」と自己正当化に走ってしまうんだ。
こうなると妄想性パーソナリティ障害を持つ人の言動はますます頑なになってしまうよ。「あなたはそう思うのね」というスタンスと同時に「私はこうも思うよ」といったスタンスを持ちつつ、冷静かつ中立に関わることが大事なんだ。
シゾイドパーソナリティ障害【A】
シゾイドパーソナリティ障害もA群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
シゾイドパーソナリティ障害は、対人関係に全くと言っていいほど興味がなく、自分の世界に浸ることを好むのが特徴なんだ。なので呼びかけても反応がなかったり、冷たい態度を取っているように見えることが多いよ。
一方、内に秘めている感性は独特で豊かと言われているよ。芸術などの領域でその特徴を大きく開花させるケースもあるみたい。
おおよそ3.1~4.9%の人がシゾイドパーソナリティ障害を抱えていると言われているよ。
接し方
周囲の人は、シゾイドパーソナリティ障害を持つ人の「人に興味がない」特性を理解することが大切なんだ。つまり、強引に仲間に誘ったり、深い関係性を築こうとしない方がいいんだよ。「あえて関わらない」も、立派な関わり方の一つなんだね。
もちろん、仲間に入りたそうにしている場合はこの限りじゃないよ。シゾイドパーソナリティ障害の特性を尊重しながら、相手のペースに合わせたかかわりをしていこう。
統合失調型パーソナリティ障害【A】
統合失調型パーソナリティ障害もA群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
統合失調型パーソナリティ障害は、考え方や行動が奇異なことが特徴なんだ。例えば突然思い出し笑いをしたり、魔術的な思考をしたり、などだね。
「今日はやけにカラスの鳴き声がうるさい。悪魔が降臨してくる前触れだ」
「季節外れの雪が降ったのは、私の神への祈りが足りなかったせいです」
こんなふうに、一見するとよくわからない言動がみられることがあるんだ。統合失調症とよく似ている面があるんだね。実際、統合失調症へ移行するケースもあるし、統合失調症の軽症例と考える見方もあるよ。
おおよそ3.9%の人が統合失調型パーソナリティ障害を抱えていると言われているんだ。
接し方
周囲の人は、統合失調型パーソナリティ障害を持つ人の独特の世界観を尊重することが大切だよ。
「普通はこう」「常識的に考えて」などと一般論や正論をただ一方的にぶつけられてしまうと、統合失調型パーソナリティ障害を持つ人には大きなストレスになってしまうんだ。信頼関係を少しずつでも築いていくことができれば、何が言いたいのか徐々に分かってくるかもしれないよ。
心が打ち解けてきたら、必要に応じて基本的なコミュニケーションスキルを身につけていくサポートをしていけるといいね。
本人が周囲に理解してもらえないことや自分を取り巻く環境に苦労している様子を語り始めたら、優しく医療機関への受診を勧めてみるのもおすすめだよ。
反社会性パーソナリティ障害【B】
反社会性パーソナリティ障害はB群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
反社会性パーソナリティ障害は、良心の呵責に乏しく、人権や社会的ルールを無視するのが特徴なんだ。そのため平気で嘘をついたり、人を利用したり、犯罪行為に手を染めることまであるよ。
DBDマーチで先述した通り、AHDHの特徴を持っている人の一部が反社会性パーソナリティ障害に発展していくと考える立場があるんだ。
ADHDは脳の報酬系に障害があると考えられていて、「欲しいものは今すぐ欲しい」となりやすく、「我慢する」や「適切な努力をする」といった行動が取りにくいんだ。その特徴に加えて、養育者からネグレクトを受けていたなどの理由により、規範となる考えやルールを学習する機会に恵まれないと、非社会的・反社会的行動がクセづき、最終的に反社会性パーソナリティ障害と診断される状態になるというわけだね。
このように反社会性パーソナリティ障害はかなり脳機能の障害が示唆される障害なんだ。
おおよそ0.2~3.3%の人が反社会性パーソナリティ障害を抱えていると言われているよ。
接し方
周囲の人は、毅然とした態度で、一貫性を持った関わりをすることが大切だよ。
反社会性パーソナリティ障害を持つ人は、人間関係に不信感を抱えていることが多いんだ。だから、「裏切られた」と感じる体験にとても敏感に反応するんだね。
裏切るつもりはなかったとしても、結果的に反社会性パーソナリティ障害を持つ人がそう感じる状況になることがあるんだ。例えば、反社会性パーソナリティ障害を持つ人の言動が侵襲的で「面倒くさいな」と思って最初はつい従ってしまっていたんだけど、どんどん要求がエスカレートするので、ついには付き合いきれなくなったとするよね。
この場合、裏切ったつもりはないかもしれないけど、反社会性パーソナリティ障害を持つ人にとっては「裏切りやがった」と感じる体験になる可能性があるんだ。
裏切られたと感じる体験をすると、反社会性パーソナリティ障害を持つ人の行動はより深刻化するので注意が必要だよ。
毅然と「いけないことはいけない」「したくないことはしない」と一貫した態度を取り続けることが大事になるんだ。
自己愛性パーソナリティ障害【B】
自己愛性パーソナリティ障害もB群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
自己愛性パーソナリティ障害は、自分を「特別な存在」だと思っており、他人を見下すなどしばしば傲慢な態度を見せることが特徴なんだ。
「俺ってすごいだろう」
「これくらいできて当然なのに、あなたたちができないのはどうして?」
「私の有能さに気づかないなんて、この会社の役員の見る目のなさにはあきれてものも言えない」
このような言動や態度を示すよ。人間関係をも、自分のことを褒めて気持ち良くしてくれる人かどうか?といった損得勘定で考える傾向もあるんだ。
統計によって大きなばらつきがあるけれど、最大6.2%の人が自己愛性パーソナリティ障害を抱えていると言われているよ。
接し方
周囲の人は、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人の劣等感や傷つきやすさに配慮する必要があるよ。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、あたかも「自分はとても優れている」「評価されて当然の存在」といった言動を取るのだけど、その背景には「あるがままの自分」に対する満たされなさを抱えているんだ。満たされなさを解消するための言動なんだね。
評価は評価でも「○○ができたからすごい」といった条件つきの評価ではなく、「あなただから大切」といった無条件の評価をする態度で関わると、そんな満たされなさが少しずつ満たされていくよ。
無条件の評価が上手な人は、おしなべて傾聴も上手だよ。傾聴上手な人と関わるとあるがままの自分を感じられて癒されていくかもしれないね。
実は傾聴をする側も「この人の言葉に対して自分はなぜ疑問を持ったのだろう」「この人の言うことを批判したくなったのはなぜだろう」と内省することで自己理解が深まるんだ。何かしらの満たされなさを感じている人は、傾聴のスキルを磨くのも手かもしれないね。
境界性パーソナリティ障害【B】
境界性パーソナリティ障害もB群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
境界性パーソナリティ障害は、感情や行動が両極端で不安定な様子を示すことが特徴なんだ。
「これほど素晴らしい人は見たことがない」と言ったと思ったら、ささいなきっかけで「最低なやつ」と幻滅してきたり、突然リストカットなどの自傷行為をしたり、普通じゃないくらいの量の連絡をしてきたりなどだね。
このような感情や行動の揺れ動きの背景には「見捨てられ不安」があると言われているんだ。見捨てられ不安があるために、些細なことで「愛想つかされた!」と感じ、自分を見捨てた相手を攻撃したくなるんだね。自傷行為や大量の連絡も同じで、見捨てられ不安があるからこそ、これらの行動によって自分から目をそらさないように働きかけているんだ。
報告されている有病率は様々だけど、5.9%もの人が境界性パーソナリティ障害を抱えていると言われることがあるよ。
接し方
周囲の人は、境界性パーソナリティ障害を持つ人の極端な言動に振り回されないことが大切だよ。
ある瞬間は「あなたしかいない」と感じたのに、次の瞬間には「もう顔も見たくない」といった理想化と幻滅を行ったり来たりするのが境界性パーソナリティ障害の特徴なんだ。
そんな態度を取られると周りの人はびっくりして戸惑うし、感情的に巻き込まれてしまうよね。けど、境界性パーソナリティ障害を持つ人自身も、その症状に振り回されて困っているんだ。
だからこそ周囲の人は一貫した態度を示し、一喜一憂することなく、境界性パーソナリティ障害の症状に巻き込まれないように接するのが重要になってくるんだね。
とはいえ、自殺する素振りを見せたり、攻撃してきたり、ひっきりなしに連絡をしてきたりなど非常に激しい振り回しとなることもあるので、専門家に相談するなど1人で抱え込まないこともとても大切だよ。
演技性パーソナリティ障害【B】
演技性パーソナリティ障害もB群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
演技性パーソナリティ障害は、派手な外見や大げさなふるまいによって他者からの注目を集めようとすることが特徴なんだ。
注目を集めることが目的なので、注目を集めるためならなりふり構わない行動に出ることもあるよ。何か突出すべき特徴によって結果的に注目を集めたわけではないので、本人自身の中身はあまり伴っていないことも多いと言われているんだ。
演技性パーソナリティ障害を持つ人は2%未満だと言われているよ。
接し方
周囲の人は、演技性パーソナリティ障害を抱える人の「偽りの姿」をとがめないことが大切だよ。
演技性パーソナリティ障害を抱える人は、注目を集めるためにその場その場で自分を演じ分けているんだ。だからあの人の前ではおしとやかだったけど、他の人の前ではキャピキャピしている、といったことも起こり得るんだね。
このように対人関係がとても表面的で場当たり的なので、言動に内容が伴っていないことが多いんだ。ゆえに矛盾した言動もよくみられるよ。
けど、そのことに一番困っているのは本人自身。「いつまで自分を偽っているんだ」と指摘したところで、余計に傷ついてしまうだけなんだ。
周囲の人、特に家族などとても身近な立場にいる人は、気兼ねなく過ごせる相手にしか見せないその人自身の素の部分を尊重した関わりができるといいね。
回避性パーソナリティ障害【C】
回避性パーソナリティ障害はC群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
回避性パーソナリティ障害は、失敗することや他人からの評価を過剰に恐れる気持ちがあることが特徴なんだ。
「どうせ私なんか」
「やっても失敗するだけ」
「『ダメなやつ』と思われたらどうしよう」
こんな言動や態度を示すんだ。不安が高いゆえに新しいことに取り組むことができず、必要なスキルがつかない。すると本当に課題に失敗する。この悪循環によって「やっぱり自分は何をやってもうまくできない」と、ますます回避的になっていくんだね。
推定では、約2.4%の人が回避性パーソナリティ障害を抱えていると考えられているよ。
接し方
周囲の人は、回避性パーソナリティ障害を持つ人の挑戦を後押ししてあげることが大切になるよ。
回避性パーソナリティ障害を発症する背景には、挑戦したことを強く叱責された経験があることが多いんだ。だからこそ「失敗するに違いない」と思い込み、挑戦を回避するんだね。
挑戦を後押ししてあげることは、この過去の体験の修正体験になるよ。失敗も成功も挑戦したから得られた点では共通しているんだ。挑戦したことそのものを「よく頑張ったね」と支持してあげよう。
依存性パーソナリティ障害【C】
依存性パーソナリティ障害はC群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
依存性パーソナリティ障害は、あらゆることを自分一人では決められないことが特徴なんだ。人が決めてくれると安心するんだね。
人が「こう」と判断したことには基本的に従うので、一見すると素直で従順と思えるけど、内心は不満があることもあるし、犯罪の誘いも断れないのであとで傷つくことも多いんだ。
依存性パーソナリティ障害は1%未満の人が抱えていると考えられているよ。
接し方
周囲の人は、依存性パーソナリティ障害を持つ人に些細なことからでもいいので「自分で決める」ことを促すことが大切だよ。
依存性パーソナリティ障害を持つ人は、自分が何かして嫌われてしまうことを極端に恐れているんだ。だから極力自分の意見は出さないようにしているんだね。「相手のやりたいことについていくだけなら、嫌われることはないだろう」と考えるのが、依存性パーソナリティ障害を持つ人の典型的な考え方なんだ。
でも、相手に合わせるだけのことが続くと本人もストレスだし、「何考えているかわからない」と周りも誤解してしまうよね。こうならないために、ご飯に何を食べるのか?など、本当に些細なことからでいいので、「自分で決める」体験をしてもらうのが大切なんだ。
「晩御飯、ハンバーグとカレーどっちがいい?」
「あなたが好きな方でいいよ」
「決めてもらった方が材料を選ぶのが楽になるから決めてもらえると助かるな」
「じゃあ…カレー…」
「決めてくれてありがとう」
このようなやり取りができると「自分の意見を言っても嫌われない体験」になるよ。自分の意見を言うには勇気も大切だけど、テクニックも大切なんだ。アサーション的な対応が参考になるかもしれないね。
強迫性パーソナリティ障害【C】
強迫性パーソナリティ障害はC群に分類されるパーソナリティ障害だよ。
強迫性パーソナリティ障害は、融通が利かずルールや自分の信念にのみ従うことが特徴なんだ。
例えば旅行に行っても、現地で仕入れた情報から柔軟に行先を変更するよりも、事前に決めたスケジュール通りに観光する、みたいな感じだね。
「ルールが絶対」なので、他人のちょっとした違反も許すことができないんだ。そのため、周囲の人は強迫性パーソナリティ障害を持つ人との関わりに窮屈さを感じることが多いよ。
おおよそ2.1~7.9%の人が強迫性パーソナリティ障害を抱えていると言われているね。
接し方
周囲の人は、強迫性パーソナリティ障害を持つ人の厳格さやこだわりを頭ごなしに否定するのではなく、「そういう考え方もあるね」といった柔軟な捉えることが大切だよ。
「臨機応変さが大事」「TPOによる」といったことを伝えても、強迫性パーソナリティ障害を持っている人は余計ルールに執着してしまうんだ。
「あなたの言っていることは○○なときは正しい」と認めたうえで、「今回は××なので、△△と考えることもできる」と、根拠をもって伝えていくことが大事になるよ。
パーソナリティ障害の治療法
パーソナリティ障害の治療には、いくつか種類があるのだけど、大きくはお薬による治療と、心理療法に分けて考えることができるんだ。
薬
お薬を使って、パーソナリティ障害から来る抑うつや不安、いらいらなどの精神的苦痛を和らげることができるよ。
衝動性が激しいときには抗精神病薬のオランザピン、抑うつにはパロキセチンなどの抗うつ薬、不安が強いときにはエチゾラムなどの抗不安薬などが使われるんだ。
お薬だけでパーソナリティ障害が治るわけではないけれど、気持ちが落ち着いてきたら、次に記載していく心理療法に取り組むだけの精神的な余裕が生まれてくるよ。
心理療法
パーソナリティ障害を克服する根本的な対応方法は、心理療法を受けることだよ。
パーソナリティ障害を克服するのに有効な心理療法には数種類あるのだけれど、ここでは代表的な「スキーマ療法」と「メンタライゼーションに基づく治療(MBT)」の二つを紹介するね。
スキーマ療法
スキーマ療法とは、心理療法家のヤング氏によって創始された、認知行動療法を「スキーマ」を重視する形で発展させたものだよ。スキーマとは、自分・他者・世界に対する信念や価値観のことなんだ。
パーソナリティ障害を持つ人は、幼少期の体験によってスキーマが傷つき、とても大きな不適応を抱えているんだ。例えば「人は必ず自分を裏切る」といった信念や、「世界は恐ろしいところ」といった価値観を持っていたりするんだね。
このようなスキーマを持っていると、行動や対人関係も現実にそぐわないものになってしまうんだ。この状態こそが「パーソナリティ障害」なんだね。
スキーマ療法では、「どうしてそのスキーマを持つに至ったのか」「そのスキーマ以外の価値観や信念があるとして行動してみるとどんな結果になるか」「どんな新しいスキーマを身につけていけるとよいか」などをカウンセラーと一緒に考えていくよ。
メンタライゼーションに基づく治療(MBT)
メンタライゼーションに基づく治療(MBT)は、精神分析家のフォナギー氏らによって提唱された心理療法だよ。メンタライゼーションとは、自分と他者の心の在り方の違いを認識する能力のことなんだ。
パーソナリティ障害を持つ人は、幼少期に自分と他人には違う心があることを体験する機会が少なかったと考えられるよ。例えば、小さい子が転んで怪我をした際、保護者があたかも「自分自身が怪我をした」かのように慌てふためいてしまうと、小さな子どもは自分が怪我をしたのか、保護者が怪我をしたのか分からなくて混乱してしまうんだ。
こんな調子で自分と他人の境界線を区切る体験のないまま幼少期を過ごすと、自分と他人の心や考え方、振舞い方、過ごし方に違いがあることを理解することが難しくなるよ。このことが、相手の考えを取り入れて柔軟に自分の考えを修正することができないことにつながり、パーソナリティ障害の極端な言動として表れてくるんだね。
MBTでは、ゆっくりと時間をかけ、自分の気持ちを振り返り、他人の言動の意図を推察できるように導いていくんだ。
【おまけ】ダースベイダーは境界性パーソナリティ障害?
最後におまけとしてパーソナリティ障害に関する興味深い研究を紹介するね。
カーン大学のエリック・ブイ氏らの研究によれば、スターウォーズに登場するダースベイダーは境界性パーソナリティ障害の診断基準を満たすそうだよ。
スターウォーズを知らない人のために簡単にダースベイダーについて説明すると、ダースベイダーはもともとアナキン・スカイウォーカーといった名前を持つ、将来を期待されたジェダイだったんだ。ジェダイとはスターウォーズの世界では正義の味方なんだよ。
そんなアナキンなんだけど、実は壮絶な体験をしているんだ。もともと母子家庭で育っていたにも関わらず、ジェダイの素質を見出されたばかりに修行のため9歳にして母親と離れ離れになってしまうよ。あげく母親は悪者に誘拐され、目の前で殺されてしまうんだ…。
このような経験からか、アナキンは恋人にぞっこんだったかと思うと突然疑いの目を向けるようになったり、師匠を慕っていたかと思うと挑発してみたり、母親を誘拐した犯人の一族に甚大なダメージを与えたり、敵にそそのかされて味方を攻撃したりと非常に劇的な感情の移り変わりを見せるよ。
このようなアナキンの行動を分析すると、境界性パーソナリティ障害の診断を満たすんだって。実在の人物を診察や本人の同意もなしに診断するのはダメだけど、架空の人物を娯楽として診断するのは興味深いね。
今後スターウォーズを観る機会があれば、本当にダースベイダーが境界性パーソナリティ障害を抱えているのか?という視点で鑑賞してみても面白いかも。
パーソナリティ障害まとめ
今回の記事ではパーソナリティ障害について概説したよ。
パーソナリティ障害はA群、B群、C群があり、下記の障害が分類されるよ。
A群:妄想性パーソナリティ障害、シゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害
B群:反社会性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害
C群:回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害
それぞれ特徴や関わり方は異なるけど、治療には薬物療法やカウンセリングが有効だよ。
パーソナリティ障害の特徴や関わり方をヒントにして、付き合いにくい人とのかかわりを振り返ってみたり、自分自身の生きづらさを克服するヒントにしてもらえると嬉しいな。