悩みごとがある。
仕事の仕方がわからない。
理由はわからないけどすごく辛い。
困ったことがある時、みんなはどうやって対処してる?
内閣府の調査では、相談できない日本人は年々増えていて、諸外国に比べて「誰かに相談するのが苦手」であることも指摘されているんだ1。
今回は、誰にも相談できない心理と理由、相談することの意外なメリットなどを説明していくよ。
目次
相談できない心理と理由
日本は誰にも相談できない人がダントツで多いんだ。
上のグラフは2018年に内閣府が発表したもので、13〜29歳までを対象に、悩みを誰にも相談しない人の割合を諸外国と比較したものだよ1。
諸外国では相談できない若者の割合が減っている一方、日本だけは5年間でその割合は20%に増え、他国の倍以上の若者が悩みをひとりで抱えていることになるんだ。
ここでは、相談することがなぜ難しいのか、考えられる可能性を心理学の視点から探っていくよ。
「人に迷惑をかけるな」と言われ育ってきた
時代や地域によっても違うと思うけど、日本で育った人の多くは、子どもの頃に「人に迷惑をかけてはいけない」と教えられたんじゃないかな。
実は、人に迷惑をかけることに対する意識は世界共通ではないんだよ。たとえば、インドでは「生きていれば誰かに迷惑かけるもの」と考え、他人を許すことを教えるんだ。欧米諸国では「助け合い」の精神が根づいていて、子どもには寛容性を持つことをもっとも望んでいるんだよ2。
一方、日本では「人に迷惑をかけてはいけない」のが暗黙の了解になり、同調圧力として日本社会を相談しにくいものにしていることも考えられるんだ。
同調圧力については、以下のページで詳しく説明しているから参考にしてみてね。
自己開示の少ない文化
自己開示が少ない日本の人間関係が、相談を難しくしている可能性があるよ。
自己開示は、言葉を使って自分自身に関する情報をありのままに伝えることなんだけど、さまざまな比較文化研究において、日本人はアメリカ人と比べ自己開示が少ないとされているんだ3。そして、カリフォルニア大学と南カリフォルニア大学の共同研究では、自己開示が多いほど人間関係が強化されること指摘しているんだよ4。
つまり、自己開示が少ないことで相手に対する信頼や安全を感じることができず、その結果、自分の悩みや弱い部分を伝えるのに怖さを感じてしまいやすくなるんだね。
自己開示について詳しく知りたい人は、以下のページを見てみてね。
言語化の難しさ
相談するときに、「どうやって説明していいかわからない」ことも原因のひとつなんだ。
説明が難しい理由に、そもそも「何が原因でモヤモヤしているかわからない」ことが挙げられるよ。困っている理由が必ずしも明確とは限らないもんね。
説明が難しい2つ目の理由は、困っているときほど問題の全容把握が難しいことだよ。相談したいときは何かがわからないときだから、自分でわからないことを相手に伝えるのは、よく考えれば難しくて当たり前だよね。
困っている「居心地の悪い」状態を「早く解決したい」という思いが、問題の全容把握を妨げ、相談するときの言語化を難しくさせてしまうんだ。
期待通りの結果が得られない予測
相談できない人は、学習性無力感に陥っていることも多いよ。
学習性無力感は、過去の経験から「どうせ何も変わらない」と考え、行動できなくなることを指す心理学用語なんだ。
これまで相談しても解決しなかった経験から、相談するリスクをとってもメリットがないのであれば、「困っているけど相談するよりはマシ」という選択をしているんだね。
そして、学習性無力感は自分の周りにいる人にも伝染し、集団の自発性を低下させると言われているんだ。
学習性無力感については知りたい人は、以下のページで詳しく説明しているから読んでみてね。
先延ばし癖
相談が苦手な理由のひとつに、先延ばしという心理が働いている場合があるよ。
先延ばしは、本当に不安になったり嫌な気持ちになる瞬間まで、ついやることをやらずに置いてしまうことなんだ。
つまり、相談するかどうかで迷っている状態は不安だし不快ではあっても、締め切りがまだ先だったり、問題が表面化するまでは、放置したくなる心理が生まれてしまうことが考えられるんだ。
クレジットカードのコンシェルジュの話でも、クレジット利用が多い段階で相談してもらえれば一緒に支払い計画を立てられるけど、実際は破産寸前まで相談しない人が多く、その段階で相談されても対応が難しい場合が多いんだって5。
先延ばし癖について詳しく知りたい人は、以下のページを読んでみてね。
相談しやすくなる考え方
自分の悩みや弱っている部分を見せる相談は、どうしても抵抗があったりするよね。ここでは、相談するときの心のハードルを下げるのに役立つ考え方を紹介するよ。
相談内容を分類する
相談と一口に言っても、何から始めたらいいのかわからないよね。まずは相談する前の準備として、自分の相談内容を分類してみよう。相手の負担も軽くなるし、自分の中でも整理できるよ。
【Help】助けを求める・緊急度A
「仕事で重大なトラブルが起きた」「心がつらくて、いてもたってもいられない」など、今起きている問題を伝える場合だよ。
仕事の場合は、自分で解決するための情報を得るよりも、問題をチームで認識するために「報告する」こと自体に目的があるんだ。
失恋や大切な人の喪失など、プライベートで悲しい出来事が起きて動揺しているときは、相談の目的やマナーは気にしないで、話したいと思える人を見つけて頼ってね。
【Ask】アドバイスを求める・緊急度B
「仕事でどう進めればいいかわからない」「夫婦関係で困っていることがある」など、相談したい内容がピンポイントな場合だよ。
相談する目的は、具体的なアドバイスをもらうことだよね。でも、状況を言葉にしたりアドバイスを聞いたりする中で、自分で「こうすれば良かったのか」と、ひらめきが起きやすいのもこのパターンによくあるよ。
【Talk】なんとなく不安・緊急度 C
相談は何も、わからないことがあるときだけするものではないよね。
これでいいのか不安なときや、「恋人がちょームカつく!」など、なんとなく誰かに聞いてほしいことがあるときにもしたっていいんだよ。
緊急度は低いものの、いざというときの信頼関係づくりにも欠かせないおしゃべりなんだ。
相談できないのは社会問題でもある
相談は個人がする行為である一方、相談には受ける側の反応があって成り立つものだよね。
臨床心理士のネルソン氏は、上手に相談できるようになるには、「相談する→受け止めてもらえた」という成功体験を積み重ねるのが必要だと話しているんだ6。
逆にいえば、相談しても誠実に応えてもらえなかったら、相談の成功体験を積み重ねることができず、「相談しても意味がない」と思ってしまっても仕方ないよね。
「相談できない心理」で説明したように、日本の「人に迷惑をかけてはいけない」教えと、自己開示の少ないコミュニケーションは、相談を難しくしている社会的理由として考えられるよね。また、うまく相談できなかった経験が学習性無力感となり、自発性の低下が周りの人に伝染しているのであれば、誰もが「相談できない」大きな渦に飲み込まれている可能性だってあるんだ。
だから、相談が上手にできないのは必ずしも自分だけのせいではないし、相談できない自分を「ダメな人間」と思い込む必要もないよ。
「相談」の意外なメリット
相談は問題を解決することだけが目的じゃないよ。
もちろん、困っている本人としては問題がなくなるのがもっとも望んでいることかもしれないけど、そもそも他人が簡単に解決できるような問題であれば、自分ひとりでも解決できちゃうかもしれないよね。
問題の除去だけではない、科学的根拠のある相談のメリットを紹介するよ。
言語化の科学的効果
言葉にするだけで不安がやわらぐことがわかっているよ。
不安や恐怖は脳にある扁桃体という領域が活性化されたときに起きると言われているんだ。心理学者のR・ビスワス=ディーナー氏の研究では、クモ恐怖症の人を3つにグループに分けて実験をしたよ7。
①楽観的思考(クモが無害であることを伝えられたグループ)
②経験の回避(クモへの関心をそらすための質問をされたグループ)
③感情のラベリング(今感じている気持ちを言語化したグループ)
結果は、①と②はクモに対する恐怖感が悪化した一方、クモに対する恐怖を言葉にしたグループは、不安が鎮まりストレスが軽減する傾向が高かったんだって。
つまり、言語情報は扁桃体の過活動を落ち着かせるのに役立つということなんだ。
継続できる
相談は継続する力を与えてくれるよ。
心理学者のR・ヴァン・ブラント氏の研究では、学生の退学率とカウンセリング利用の関係を研究したんだ8。結果は、カウンセリングを利用している学生は、相談していない学生に比べて退学する人が有意に少なかったんだって。
また、個人的な悩みを相談した学生は、当初の悩みが改善されただけでなく、学業面の改善も見られたんだ。
困ったことや悩みはすぐに解決する方がいいかもしれない。でも、簡単に解決できないことに向き合うのが仕事だったり、恋人や家族関係だと思う。そんなとき、誰かに相談することで、問題に継続して向き合える時間や心のゆとりを作れるんだよ。
相談したいときは人とのつながりを求めている
相談したときに相手にされて嬉しかったこと
- いつも通り
- 察する・状況共有
- 相手から話しかけてくれる
- 気晴らし
- 話を聞く
- 悩みに対する アドバイス
- 共感・理解
- 励まし・慰め
- 悩み以外のサポート
- メール
相談したいけどできない人は、実は問題解決ではなく人とのつながりを求めているかもしれないんだ。
上の一覧は、筑波大学が行った研究で、相談するときに相手に求めていることと、実際にされて嬉しかったことの一部をまとめたものだよ9。ここからわかるのは、相談する人は悩みへのアドバイスだけを求めているわけでないことなんだ。
自分の気持ちや状況を理解してもらったり、真剣に話を聞いてくれる、共感や励ましだけでなく、相談後も普段通り接してもらうことなどを求めてて、実際にそうされることが嬉しかったと回答しているんだ。
つまり、相談は問題の解決だけでなく、誰かに理解してもらうだけでもメリットのある行為なんだよ。そもそも、難しい状況にいて相談できない人は、問題だけでなく孤独も抱え、二重に苦しんでいることが多いよね。
友達じゃない人に相談するのは勇気のいることかもしれない。でも、「相談できる友達なんていない」という人こそ、相談することで信頼関係を深めるきっかけになるかもしれないんだ。
【悩み別】相談できるところ一覧
身近な人への相談が難しいときのために、悩みを相談できる専門機関をまとめたよ。
友達や知り合いと違ってプライバシーを守れるし、相手は知識と経験が豊富な専門家だから、自分を助けるためにも必要なときに利用してね。
■メンタルヘルス全般
こころの健康相談統一ダイヤル
Tel:0570-064-556
実施時間:月~金18:30~22:30 ※実施時間は地域により異なる
相談内容:こころに関する相談全般
■自殺・希死念慮
いのちの電話
Tel:0120-783-556/0570-783-556 ※都道府県別の電話番号はこちら
HP:https://www.inochinodenwa.org/
実施時間:毎日16:00~21:00(毎月10日のみ8:00〜翌11日8:00)
相談内容:死にたいほどつらい
■生活全般
よりそいホットライン
Tel:0120-279-338(岩手県、宮城県、福島県から電話は0120-279-226)
HP:https://www.since2011.net/yorisoi/
実施時間:24時間
相談内容:暮らし、暴力、死にたい、性の問題、被災など(※外国語による相談可)
■仕事
総合労働相談コーナー
Tel:各労働基準監督署による
HP:https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
実施時間:開庁時間による
相談内容:解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど
■労働条件
労働条件相談ほっとライン
Tel:0120-811-610
HP:https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/hotline/
実施時間:平日17:00-22:00/土日祝9:00〜21:00
相談内容:違法な時間外労働、過重労働による健康障害、賃金不払残業など
■子育て・女性
子育て・女性健康支援センター
Tel:03-3866-3072(※都道府県別の連絡先はこちら)
HP:https://www.midwife.or.jp/index.html
実施時間:電話相談/毎週火曜日10:00〜16:00(※自治体による相談は一覧参照)
相談内容:子育て、思春期、更年期など女性の相談全般
■子ども
子供のSOSの相談窓口
Tel:0120-0-78310
HP:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
実施時間:24時間
相談内容:いじめ、友達、学校、家族など
■介護
地域包括支援センター
Tel:各自治体による
実施時間:各自治体による
相談内容:介護に関する相談全般
■法律
法テラス
Tel:0570-078374
HP:https://www.houterasu.or.jp/index.html
実施時間:平日9:00〜21:00/土9:00〜17:00
相談内容:民事、家事、行政(※刑事は不可)
■お金
市役所・区役所・社会福祉協議会
Tel:各自治体による
実施時間:各自治体による
相談内容:家計の立て直し、就労準備支援、貸付など
この他にも、最近はSNSやチャットを使ってカウンセリングしてくれるサービスも増えてきているんだ。メンタルヘルス・ケアの重要性が、社会的にも認知されてきている証拠だよね。
もっとしっかり相談したいという人は、専門家による対面カウンセリングや、医療機関への受診という手段もあるよ。
「どんなところに行けばわからない」という人は、下のページで詳しく説明しているから参考にしてみてね。
誰にも相談できない・まとめ
「誰にも相談できない」ことについて押さえておきたいポイントは以下の通りだよ。
①相談できない人の割合は諸外国に比べて多い。
②相談できない心理には、他者を気遣う文化、自己開示の恐怖、過去の経験から悲観的な予測、言語化の難しさなどがある。
③相談は二人以上で行うもので社会性の高い行為である。
④相談の前に内容を分類すると相手にも伝わりやすい。
⑤相談には問題除去だけでなく、不安の軽減・継続・信頼構築などのメリットがある。
⑥困ったら思い切って専門家に相談しよう。
「まずはココロジーに相談してみたい」と感じた人はお悩み掲示板(募集休止中)を覗いてみてね。
みんなの困りごとが解決されたり、不安がやわらぎますように。