知らない間に精神を追い込む「ガスライティング」から身を守る方法

2022.05.03 Tue
シンくん
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ライター
執筆 小野寺 リヒト 臨床心理士/公認心理師
ガスライティング対策
知らない間に精神を追い込む「ガスライティング」から身を守る方法

人間関係に潜む問題って、自分だと気づきづらいよね。ガスライティングがまさしくその典型だよ。

ガスライティングとは精神的DVの一つで、相手を追いつめるために行われる言動のことを言うんだ。

今回の記事を通じて今の人間関係を客観的に捉えられる知識を備えれば、ガスライティングの被害に遭わないですむようになるよ。現在被害に遭っている人も対策がとれるようになるはずだから、是非最後まで読んでみてね。

ガスライティングを知れば対策も立てられる!
 

ガスライティングとは

ガスライティングとは、嘘の情報を信じ込ませることで、精神的に追いつめる行為だよ。
周囲の人の協力を得ながら、特定の個人を追い詰めていくので集団的いじめの様相を呈することもあるみたい。

ガスライティングの名前の由来は1944年に製作された『ガス燈』という映画だよ。この映画は、妻の財産を狙う夫が、妻に繰り返し「物忘れが酷い」「窃盗癖がある」「幻聴がある」かのように思わせて精神的に追い詰めていく様子が描かれたものみたいだね。

この映画がきっかけとなって、相手を混乱させ追いつめることを目的に行われる言動をガスライティングというようになったんだ。

嘘であっても、相手が強く何度も繰り返してくると、人は「実は嘘の方が正しくて、自分が正しいと思っていることの方が間違っているのでは?」と思わされてしまうんだ。

例えば、「お前は使えない。ろくでなしだ」と繰り返し批判され続けると、本当に自分が役に立たない生きている価値のない人間かのように錯覚してしまうよ。ガスライティングの卑劣な手段に遭い続けると、最悪の場合、自ら命を放棄してしまうことすらあるんだ…。

お前のへなちょこパンチなんて全然痛くねーっていつも言ってるだろ!?(超痛い)
 

ガスライティングの手口

具体的に、ガスライティングはどのような手口で行われるのかをみていこう。長年ガスライティングの被害に遭っていると、それがガスライティングかどうかすら分からなくなってしまうけど、この記事を読んで「もしかして自分が受けているのはガスライティングかもしれない」と気づくきっかけになってくれたら嬉しいな。

なお、ガスライティングを使う人のことを、加害者と呼ぶことにするね。

真顔で嘘をつく

ガスライティング加害者は真顔で嘘をついてくるよ。

加害者は嘘をつくことや相手を傷つけることに良心の呵責にさいなまれることがないんだ。だから平気で嘘をつけてしまうんだね。

加害者が目をそらしたり、申し訳なさそうな素振りを少しでも見せてくれたら「ああ、嘘ついているな」とすぐわかるのだけど、そういった振る舞いがなかったら「もしかして本当のことを言っているのでは?」と思ってしまうんだ。

怖くない怖くない、ぜーんぜん怖くないから
 

「記憶にございません」

加害者は、事実として「言ったこと」でさえも、「そんなこと自分は言っていない」と主張してくるよ。

あまりにも堂々と「言っていない」と言ってくるものだから、つい「自分の記憶違いかな?」と引いてしまうんだ。

仮に録音や録画などで加害者が言った証拠を持っていたとしても「そういう意味で言ったわけじゃない」と、あたかも「お前の解釈がおかしい」と言わんばかりの主張をしてくるよ。自分の正当性を主張し、こちらが間違っているかのように追いつめてくるんだね。

禁煙する? は? そんなこと言った覚えないけど?
 

悪い噂を広める

加害者は根も葉もない悪い噂を広めて追いつめようともしてくるんだ。

「あの人、この前○○さんの悪口言っていたよ。○○さん、気をつけてね」
「あの人、反社会的勢力とのつながりがあるらしいよ」

こんな風な噂を広めることで、孤立させようとしてくるんだ。

やあ、A君おはよう。ところでBさんの噂聞いた?
 

勝手に物をいじる

加害者は、人の物を勝手にいじっておいて、知らんぷりして過ごすこともあるよ。

この行為の目的は、相手に「自分の判断や記憶は信ぴょう性にかける」と思わせることなんだ。

日用品って普段からしょっちゅう使用するからこそ、ほぼ無意識で使ったりしまったりしているよね。だから、例えば買い置きしていたはずの歯磨き粉がなくなっていても「買っておいた気がするけど、勘違いだったかな?」などと思いやすいんだ。当然、加害者に歯磨き粉の行方や買ったかどうかを確認しても、「俺は知らない」「私は見ていない」というだけ。

「勘違いだったかな?」と思わせることこそが加害者の狙いなんだ。こうやって、相手の判断や記憶は曖昧で確証があるものではないと印象付けしていくんだよ。

なぁ、ワシの服どこにあるか知らんか?
 

音、臭いなど不快な刺激を与え続ける

加害者は、不快な音や臭いなどをわざと出し続けるんだ。

もちろん、その音や臭いが単純に不快だから、嫌がらせの意味があるよ。でも実はそれだけではなく、相手から考える力を奪うためでもあるんだ。
物事を考えるときには集中力が必要だけど、不快な音や臭いで集中力を削いでいるんだよ。人は考える力が弱まると、意思決定を他人にゆだねてしまう傾向があるんだ。

ガスマスクをつければ万事解決。ガスライティングだけに
 

ガスライティングの被害例

ニューヨーク市で心理療法を実践しているロビン・スターン氏によれば、ガスライティングを受けると12もの被害を被るとのことだよ。
ここでは、12個の被害を3つにカテゴリーに分けしたものを解説していくね。

無力感が強くなる

ガスライティングの被害に遭うと、被害者の無力感はどんどん強くなっていってしまうことが知られているよ。

「自分は誰の役にも立っていない」
「希望や楽しみがあっても、それは自分とは関係ないこと」

こんな風に感じてしまうようになるんだね。

無力になればなるほど、加害者の判断や考えに盲目的に依存してしまうようになるんだ。

どうせ私はダメダメ星人です…
 

いつも誰かに謝っている

本来謝る必要がないことも謝るようになることも知られているんだ。

先述したように、悪意ある噂を流されることもガスライティングには含まれるんだけど、そこには根も葉もないよ。けど、あまりにガスライティングの被害に遭い続けると、その噂が本当かのように錯覚させられてしまい、結果的に謝る羽目になってしまうんだ。

悪いことをしていないのになぜか罪悪感を抱え込まされ、さらには謝らせられるのは相当ストレスだよね。

申し訳ございません!
 

自分に不信感がある

ガスライティングの被害を受けると、どんどん自分を信じられなくなっていくんだ。

ガスライティングの加害者があまりにも堂々としていたり、周りもその影響を受け始めると「自分だけが『おかしい』と思っているの?」と、疑問に感じている自分の気持ちが信じられなくなってしまうんだね。

大勢の人が「黒」と言っているなか、自分だけ「白」と言い続けることはとても難しいことなんだよ。

僕は本当は犬なのかもしれない
 

ガスライティングが恐ろしい心理学的な理由

ガスライティングの恐ろしさが分かったところで、どうしてガスライティングが恐ろしいのかを心理学的に考察してみよう。

ガスライティングがいかに人の心の弱みにつけこんだ卑怯な手段かがわかるはずだよ。

ブルー=グリーン・パラダイム

ガスライティングが恐ろしい心理学的な理由の一つ目は「ブルー=グリーン・パラダイム」だね。

ブルー=グリーン・パラダイムとは、客観的には間違っていることでも、一貫して「○○だ」と主張され続けると「○○なのかも?」と思わされてしまう現象のことだよ。

この現象は社会心理学者のモスコビッチによって発見されたんだ。モスコビッチは、青色のスライドを見せて「何色に見えるか?」を6人の人に尋ねるとても単純な実験を行ったんだけど、その際、2人はいわゆるサクラで、「緑色」と答えてもらったんだよ。すると、残り4人の人も「緑色」と答える傾向が高くなったんだ。

この現象は、例え少数派の意見でも、ましてやそれが間違った意見でも、一貫して自信をもって「こうだ」と言い続けると、多数派もその影響を受けてしまうことを物語っているよ。

加害者はまさにこの効果を狙って、一貫して「お前はおかしい」との根拠のない嘘を言い続けてくるんだ。

どー見てもイカでしょうよーこれー
 

公平世界仮説

公平世界仮説」もガスライティングが恐ろしい心理学的な理由だよ。

公平世界仮説とは、人々が素朴に持っている「正しい行いをすれば正しいことが起きる。悪い行いをすれば悪いことが起きる」とする信念のことなんだ。因果応報といった言葉に端的に表れているよね。

人にはこの素朴な信念があるからこそ、「悪い噂がたっているのは、それなりの悪いことをしたからだろう」と推察し、加害者の言うことを信じてしまうんだ。たとえ根も葉もないものであったとしても、「悪い噂がたっていることそのこと」が人々に噂の当事者への不信感を芽生えさせてしまうんだね。

でも、努力が必ずしも報われるとは限らないように、悪い噂があるからといって必ずしもやましいことをしているとは限らないよ。加害者が勝手に言ってるだけってことも十分あるんだ。

火のないところにも煙が立つこともあるんだ
 

投影

加害者が未熟なゆえに自分の未熟さを抱えられず、こちらのせいにさえてしまうこともガスライティングの恐ろしいところだよ。この「こちらのせいにされる」ことを、投影というんだ。

本当は自分がAさんのことが嫌いなのに、「Aさんが自分を嫌っている」と判断してAさんと関わらないようにするなどがその典型例だね。

人は辛い気持ちをずっと抱えていくことに大きなストレスを感じるものなんだ。成熟した心を持っている人は、そのストレスを自ら抱えて反省し、「どうしたら建設的に解決していけるかな?」「次に生かすにはどうしたらいいかな?」といったことを考えられるよ。

でも、辛い気持ちを抱えるストレスに耐えきれず、「この辛さは自分のものじゃない」「他の人ものだ」と、無意識の力を使って投げ出してしまうことがあるんだ。

本来加害者の抱えるべき課題を丸投げされてしまっているだけでも恐ろしいのに、加害者の心が成長しない限り投影し続けられると思うと更に恐ろしいよね…。

私は別に食べたくないけど、あなたがどうしても食べて欲しいと言うから食べるわ
 

ダブル・バインド

加害者がダブル・バインドを利用してくることもガスライティングが恐ろしい理由の一つだよ。

ダブル・バインドとは、言語的メッセージと非言語的メッセージとの間で矛盾するメッセージを送り、相手に「どちらを信じたらいいかわからない」と思わせ身動きを取れなくすることだよ。

例えば「お前のために言っているんだ」と、一見すると優しさや思いやりから言ってくれているような言葉を、鬼の形相で言われたといった状況だよ。このような状況になるとありがたがっていいのか、怖がったらいいのかわからなくてパニック状態になり、固まってしまうんだ。

あるいは、いつもは暴言を言ってくるのに、急に「君がいないと僕はダメだ」「あなたが全て」なんてことを言ってきたりもするよ。この場合も、どちらを信じていいかわからなくなるよね。

このように「どうするのが正解かわからない」状況が続くと、自分で何も判断できないと誤解してしまい、加害者の指示に盲目的に従わせられることになってしまうんだよ。

べ、別にあんたのことなんてなんとも思ってないんだからね///
 

決定麻痺

決定麻痺に陥ることもガスライティングが恐ろしい心理学的な理由になるよ。

ガスライティングの手段の一つに、不快な音や臭いなどをわざと出し続けるものがあったよね。これは考える力を奪うために行われるんだ。このように、考える力がなくなってしまうことを「決定麻痺」と呼ぶんだよ。

人は情報がたくさんありすぎると決定麻痺に陥って自分で物事を決めることができなくなってしまうんだ。

コロンビア大学のシーナ・アイエンガー氏によると、6種類のジャムが陳列された状況では30%もの人が何かしらのジャムを購入したのに対して、24種類のジャムが陳列された状況では3%の人しかジャムを購入しなくなってしまったそうだよ。その差なんと10分の1。

考えたいことがあるのに、不快な音がするし、臭いもする。こんな刺激・情報が多いことがあると容易に決定麻痺に陥ってしまうんだ。

人は決定麻痺によって自分で判断できなくなると、他人の判断に流されやすくなってしまう。加害者の目的は「自分の意見に従わせること」だから、決定麻痺に陥る状況を作り出したいんだね。

いろいろありすぎて結局何も買わずに出てきた
 

ガスライティングに打ち勝つには

ガスライティングがどのような手段で行われるのか、そしてガスライティングが恐ろしい理由が確認できたので、次はいよいよガスライティングに打ち勝つ方法をみていこう。

ガスライティングはとても巧妙に人間の心理を突いてくるから、打ち勝つのは大変だけど、必ず打開策はあるんだ。

内省力を鍛える

ガスライティングに打ち勝つためには、なによりもまず内省力を鍛えることが大事だよ。

内省力を鍛えるには自己洞察メタ認知の記事を読んでみてね。

内省力を鍛えることができると、自分の中の違和感に敏感になれるんだ。違和感に敏感になると、今自分が受けている被害がガスライティングによるものかどうかにも気づきやすくなるよ。

被害に遭っている事に気づいたら、次に被害に遭いそうな状況にも見通しが立つんだ。「きっとばつが悪くなると『君のためを思って言っているんだ』みたいなことを言い始めるぞ」「ここに歯磨き粉をおいておくと、どこかに隠されるぞ」みたいな感じだね。

見通しを立てることができれば、ガスライティングを回避する手段を取ることができるようになるかもしれないし、あるいはガスライティングを行っている決定的瞬間を証拠として押さえることができるかもしれないよ。

もちろん、証拠を突き付けても加害者はしらばっくれるかもしれないけど、法律家などの第三者に相談する際は強力な武器になるはずだね。

知識で武装しよう
 

自己主張をする

「○○はやめて欲しい」など、明確に自分の意見を主張することもガスライティングに打ち勝つためには大切なことだよ。

ガスライティングの目的は、「相手を無力化し、精神的に追い詰めていく」ことだから、自己主張することでその目的を達成することはできないことを加害者に知らしめていくことが求められるんだ。

もちろん、自己主張をしてもガスライティング行為は止まらないかもしれない。けど、「私は○○して欲しいと思っている」「私は××が嫌だ」と主張することで自分の気持ちを明確にし、自分で自分を疑う気持ちを振り払っていくことができるんだ。

上手に自己主張する方法をアサーションというよ。アサーションはコミュニケーションに必須のスキルともいえるから、ぜひ調べてみてね。

だったら言葉の銃口をその頭に突き付けて打てばマジヤバない?
 

カウンセリングを受ける

カウンセリングを受けることもガスライティングに打ち勝つ力になるよ。

ここでいうカウンセリングには、心理学の専門家のカウンセリングと法律家への相談も含むよ。

心理学の専門家のカウンセリング

まずは心理学の専門家のカウンセリングを受けることについて説明するね。

ガスライティングは非常に巧妙なので、一見するとガスライティングかわからないこともあるんだ。でも今回の記事で示したように、心理学の専門家から見ればガスライティングのメカニズムを明確にしていくこともできるよ。自分のあっている被害がガスライティングなのかどうかわからないというときには、心理学の専門家を頼ってみるのもオススメだよ。

また、ガスライティングの被害は相当心に深い傷を負わせるから、その傷を癒すために心理学の専門家を頼ってみてね。どのような専門家を頼ればいいかは、よいカウンセラーの選び方を参考にしてみて。

法律家への相談

次は法律家への相談について説明するよ。

ガスライティングを自分一人で解決しようとしても、「気のせい」と言われてしまってそれ以上進展しないことが多いだけでなく、かえってがガスライティング行為が悪化するリスクもあるよ。そんなとき、弁護士のような専門家が入ることで安全に示談に持っていけたりもするんだ。

また、ガスライティングは精神的DVの一つなので、加害者がパートナーの場合、慰謝料を請求したり、離婚の申し出が出来ることもあるみたい。慰謝料や離婚については、法律家のサポートがあると心強いよね。

あなたはガスライティング被害に遭っていると考えられます
 

まとめ

ガスライティングは精神的DVの一つで、心理学的に巧妙な手口でなされるんだね。
ガスライティングに打ち勝つためには以下の3つが大切だよ。

①内省力を鍛える
②自己主張をする
③専門家後からを借りる

ガスライティングは、なかなかその被害に気づけないことも多いけど、「おかしいな?」「つらいな」と感じたら、ガスライティングの被害に遭っていないか少し立ち止まって考えてみてね。

1人で頑張らないで誰かに助けを求めることも検討してね
 

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