「なんだかやり残したことがある気がして寝付けない」
「自由時間を楽しみたくて夜ふかししてしまう」
そういうことってあるよね。最近ではこうした夜ふかしに「報復性夜ふかし」なんて名前がついたことでも話題になったんだ。今回はそんな「報復性夜ふかし」について、心理学的な視点から解説していくね。
「ダメなのはわかってるのについ夜ふかししちゃう…」って人もそうじゃない人も、一緒に見てくれると嬉しいな。
目次
報復性夜ふかし(リベンジ夜ふかし)とは?
ここでは報復性夜ふかしについて、その発祥や特徴について紹介するね。
「報復性夜ふかし」の意味と由来
報復性夜ふかしとはわかりやすく言えば「寝ると明日になってしまうのが耐えられない」「仕事などで不自由な日中への報復」の気持ちで夜ふかしをしてしまうことだよ。
報復性夜ふかしはリベンジ夜ふかしとも呼ばれ、もともと中国のSNSで「报复性熬夜(熬夜は中国語で夜ふかしや徹夜のこと)」という言葉で流行したのが輸入されたものなんだ。
とくに中国のメディアでは「報復性夜ふかし」は若者に特有の、自分の健康を害する自傷行為だと問題視されているんだよ。だけどなぜ「若者に特有」なのか不思議だよね。それに、社会問題になるほど広がった「報復性夜ふかし」は、はたして単なる自己責任の怠け癖なのか、という点についても考える必要がある気がするんだ。
中国のニュースサイト「中国人民網」では報復性夜ふかしについて「昼間の時間を有意義に過ごせなかったり、または満足できなかったために、夜になってからそのマイナス分を取り戻そうとする行為を指し、若い人にとってはごく自然な心理状態かもしれない」としているよ。
若者に多い傾向
報復性夜ふかしをしちゃう人は、1990年代以降に生まれた若い人に多いみたいだよ。
電子機器メーカーの華米科技(ファーミ)と関連機関が発表した「2019年中国人睡眠白書」によれば、夜ふかしをする人のうち43%が1990年代生まれで、27%が2000年以降に生まれた人だと発表されているよ。その中でも90年代生まれの夜ふかしが最も深刻だと言われているんだ。
中国医師会による報告書では1990年代生まれの人の平均睡眠時間は7時間半で、睡眠不足を感じている若者は6割を上回っているんだ。慢性的な睡眠不足は生産性の低下や身体へのダメージを与えることが明らかにされているため、報復性夜ふかしは中国国内で「自傷行為のようなものだ」と問題視されているんだよ。
社会構造の影響
報復性夜ふかしの流行は、長時間労働が常態化したことが背景にあると言われているよ。
中国で2019年の流行語に選ばれた「996」という言葉はIT業界で生まれた「朝9時から夜9時まで、週に6日働く」という勤務状況を指す言葉なんだ。
自分の時間を取れない現実に対して、必要な睡眠時間を削ってまで夜ふかしすることで「自分には自由があり、コントロールできる」と証明しようとする心の働きがあると言われているよ。
かろうじて残された時間を自分の好きにするために夜ふかししてしまう、という人は多いんじゃないかな。それは自分勝手な夜ふかしというより、人間らしい当たり前の感情かもしれないね。
「就寝先延ばし行動」との関連
次に報復性夜ふかしについて、心理学的な概念から近づいていこう。
報復性夜ふかしによく似た心理学上の概念として2014年にオランダのユトレヒト大学に所属するFloor M. Kroese氏の調査により広まった「就寝先延ばし行動(bedtime procrastination)」が挙げられるよ。
就寝先延ばし行動は「人が日中の出来事に対する影響力を欠いていると認識しているため、夜をコントロールしようと必要以上に睡眠を遅らせる心理的現象」とされ、ほとんど「報復性夜ふかし」と同じ意味なんだ。
この就寝先延ばし行動の背景について見ていくことで、報復性夜ふかしについての理解を深めていこう。
自己制御能力
就寝先延ばし行動には「自己制御能力」が関係すると言われているんだ。自己制御能力とは、生活の中でなにか特定のことに集中したり、逆に考えないようにしたりすることのほか、感情をコントロールすることや飲酒・喫煙などの行動を制限するといった自分自身を制御する能力のことだよ。
就寝先延ばし行動を取る人はこの自己制御能力が低い傾向があることが研究によって明らかにされているんだ。「そんなこと言われても困るよ〜」って感じだよね。うまく自分をコントロールしていく方法もこのあと紹介するから、付いてきてくれると嬉しいな。
セルフコンパッション能力
セルフコンパッション能力が高い人は終身先延ばし行動をする可能性が低いことが研究によって明らかにされているよ。これはネガティブな気分を抑える健康な感情調節ができるためだと考えられているんだ。
セルフコンパッションとは「自分への思いやり」のことだよ。失敗や困難なことがあったとき自分自身を慰められることや、否定的な感情に注意深く気づいて認めてあげることを指すんだ。「自分自身を親友のように扱うこと」なんて言われたりもするんだ。
セルフコンパッション能力はマインドフルネス瞑想や自分の気持ちに丁寧に目を向けるジャーナリングを通じて育まれることが明らかにされているよ。
明日への期待感の低さ、仕事への嫌悪感
好きではない仕事へのストレスや焦りから、つい夜ふかしをしてしまったなんて経験がある人も多いんじゃないかな。
就寝先延ばし行動を引き起こす要因として「翌日に対する期待感の低さ」や「仕事に対する嫌悪感」があると言われているんだ。
「そんなの当たり前じゃん」と感じるかもしれないけど、日常への不満を見つめ直すことは自分が人生に何を求めているのかを知るチャンスでもあるんだ。「何が変われば明日を楽しみにできるのか」「どんな仕事なら充実感を得られるのか」という問いに変えていくことができると、生活を改善するきっかけが見つかるかもしれないね。
夜ふかし対策
これまで紹介してきたように、報復性夜ふかし・リベンジ夜ふかしなどの名前で広まった就寝先延ばし行動の背景には、社会構造など多くの影響があるんだ。
つまり就寝先延ばし行動は「怠け癖」など個人の性格の問題だけではなく、仕事の忙しさや低賃金労働によるストレス、セルフコンパッションを育みにくい周囲の構造によっても生じているということだね。
次に自分から取り組める夜ふかし対策を紹介するね。ここで大切なのは「自己責任だ」「怠けている自分が悪い」と自分を責めないことだよ。社会構造の影響があることがわかっても、現実は簡単には良くなってくれないよね。だからこそ現実的な対処方法を身に着けられるといいね。
スマホを触る時間を減らす
就寝先延ばし行動とスマホ依存の間には、強い相関関係があることが明らかにされているよ。
スマホはブルーライトなどの影響により大きな知覚的ストレスを生じさせるんだ。知覚的なストレスは睡眠をはじめとした、やるべきことを先延ばしにしてしまう理由になることが研究で明らかにされているよ。つまり「夜ふかしでスマホを触ると、スマホから受けるストレスでさらに夜ふかしが進んでしまう」ということなんだ。
どうしても夜ふかしをしてしまうときにはスマホを触るのではなく、眠気を誘いやすい温かい飲み物を飲んだり、動画視聴なども壁に光を反射させることで目に優しいプロジェクターを活用すると、夜ふかしの改善に繋がるよ。
ジャーナリング
自分の過ちや個人的な失敗について認めて、自分を許すことができる人は先延ばし行為をする可能性が低いことが明らかにされているよ。
セルフ・コンパッションの項目でも触れたように、自分に対して思いやりを持って接するとネガティブな感情をうまく調節できるため、ストレスが減り先延ばし行為が減る、という作用だと考えられるよ。
ジャーナリングなどのテクニックを通じて出来事やそのときの気持ちをアウトプットして客観的に見つめることで「あぁ、こんなにまいってた時期なら失敗しても仕方ないな」と自分を許してあげるきっかけがつかめるはずだよ。
マインドフルネス
短い時間でもマインドフルネスのエクササイズを実践した人は、やるべきことを先延ばしにせず、継続してタスクに取り組み続ける傾向が高いことがわかっているよ。マインドフルネス瞑想は、今この瞬間の自分の心や身体の状態に意識を向け、集中する技法なんだ。
マインドフルネス瞑想を実践することで、ストレスが減って夜ふかしをしにくくなるほか、創造性や記憶力が向上するという研究結果も得られているんだ。マインドフルネス瞑想のやり方についてまとめた記事のリンクを貼っておくから、ぜひ見てみてね。
初心者でも簡単!一番シンプルな「マインドフルネス瞑想」のやり方
快眠法
夜ふかしを改善するためにはよく眠れる快眠法を試すのも効果的だよ。
人生の中で3分の1くらいは眠っている時間だからこそ、睡眠の質を高めることは重要なんだ。
快眠法についても網羅的にまとめた記事のリンクを貼っておくから見てみてね。
報復性夜ふかしまとめ
「不満のある日々への報復として夜ふかしをしてしまう」報復性夜ふかしという言葉は、多くの共感を集めたことで流行したんだね。報復性夜ふかしのプロセスはこれまでの心理学の中で「就寝先延ばし行動」として研究されてきたものとよく似ているから、これまでに提唱されてきた対処法が効果的なはずだよ。
また、報復性夜ふかしが若い世代を中心に流行った背景として、長時間労働やそれに見合わない低賃金など、社会構造の影響が大きいと考えられるよ。
報復性夜ふかしは個人の自己責任や怠け癖といった理由だけでは説明できないから、夜ふかしをしてしまう自分に対して必要以上に罪悪感や後悔の気持ちを抱える必要はないんだ。
報復性夜ふかしを引き起こすストレスを減らすためにも、快眠法をはじめとしたココロジーの記事をぜひ活用してみてね。