「最近、ちょっとした部下のミスでイライラしてしまう」
「忙しくなると子どものわがままに怒鳴ってしまう」
ついキレたことで信用を失っちゃうと大変だよね。
有名なGoogleのプロジェクトでは、職場から怒りや攻撃性を減らしたら生産性が向上したんだって。とくに会社ではキレないに越したことはないよね。
実は人は「反応」では怒らない。怒りを引き起こす「こうあるべき」信念があって、その信念に背いたと判断した結果、怒りが起こるんだ。だから意識的にキレないこともきっとできるよ。
そこでいま、瞬間的な怒りを軽くする「アンガーマネジメント」が注目されているんだ。怒りの感情を無くすのは難しいけど、「すぐにキレない」訓練は誰にでもできるよ。
目次
アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントとは、「怒り」の気持ちをゆるめて攻撃的な行動を抑える心理療法だよ。1970年代当初は犯罪者の矯正プログラムとしてアメリカで開発されたんだ。でも時代と共に一般化されて、近年日本でもアンガーマネジメント研修を取り入れる企業が増えているよ。
怒りは自然とわき起こってくる感情だと考えられがちだよね。でも認知心理学では、人の行動は物事に対する捉え方(認知)によって決まるとされているんだ。
アンガーマネジメントを理解するために、まずは怒りの感情について知ってみよう。
人はどうして怒るの?怒りのメカニズム
そもそも怒りとはどんな感情なんだろう?
怒りは「欲求の充足が阻止されたときに、阻止した対象に生じる感情」だよ(『心理学辞典』(有斐閣)より)。簡単に言うと、自分が望んでいることを邪魔されたとき、邪魔した相手に向かうのが怒りの感情なんだ。
例えば子育て中に、子どもが親である自分に生意気なことを言ったとするよね。ムカッとして、つい“げんこつ”をお見舞いしたくなるかもしれない。これは、親の「自分を認めて欲しい」「子どもは親を尊重して欲しい」欲求が邪魔されて、邪魔した子どもに怒りが向くからなんだ。
ちなみに、この「自分を認めて欲しい」「尊重して欲しい」欲求を心理学では「承認欲求」と呼んでるよ。けして悪いものじゃなくて、老若男女みんなが持っている欲求なんだ。
怒りは「二次感情」
怒りは「二次感情」と言われることがあるよ。
例えば、友達と会って遊ぶ約束をしたところ、前日に待ち合わせ時間を決める電話をしたけど、全く連絡がつかないと本当に遊べるんだろうか、と心配になるし、不安にもなるよね。だけど、やっと連絡がついて、友人がこちらの心配をよそにケロッとした態度だったら、怒りを覚えることもあると思う。
友人と連絡がつかなかったときの心配や不安は一次感情、友人の態度から生まれた怒りは二次感情と呼ばれるよ。
つまり、二次感情としての怒りの背後には、心配や不安などのネガティブな一次感情があるんだ。
アンガーマネジメントの意味
誤解されがちだけど、アンガーマネジメントは怒りを無くすための方法ではないんだ。怒りの感情は生来人に備わっている大切な感情だからね。
ただ、怒りの感情を持つことと、瞬間的な怒りで人を攻撃することの間には大きな差があるよね。怒りが行動や言葉で表現されると、ときにそれは攻撃になってしまうんだ。
もちろん状況によっては、怒りによる攻撃が有効な場合もあるよ。でもアンガーマネジメントを使えば、後悔しない行動を取れる確率が上がるんだ。「あえて怒る」「怒らず、さとす」など選択肢が増えるからね。
感情を自分で調整できれば人間関係もよくなるし、怒りに対処できる自分への信頼感も増していくよ。
アンガーマネジメントの必要性
怒りそのものは無くさなくていいけど、うまく対処できるに越したことはないよね。具体的に、アンガーマネジメントの効果が発揮される場面を紹介するね。
仕事で活かすアンガーマネジメント
アンガーマネジメントは、仕事をするときにも必要になってくるんだ。
いま話題の「心理的安全性」は、チームメンバーや部下が「こんなこと言ったら怒られるんじゃ」「バカにされるんじゃ」と思わずに、何でも言える関係性のことだよ。
つまり、会社全体で「すぐに怒らない」「怒ったように見せない」配慮が必要になってくるよね。
怒りの感情コントロールは、コミュニケーションするときに必須のスキルなんだ。
怒るのは疲れる
より充実した人生にアンガーマネジメントは必要になってくるよ。
感情のなかでも、怒りはとくに精神的なエネルギーを使うんだ。イライラしてばかりいると精神的に疲労してしまい、体も疲れやすくなってしまうこともあるよ。
怒りを抑えられる部分は抑えたほうが余裕を持って生活できて、余裕があれば怒りも生じにくくなる好循環が生まれるんだ。
アンガーマネジメントのやり方
次はいよいよ実践方法だよ!誰でも簡単にアンガーマネジメントのトレーニング方法を9つ紹介するね。
6秒ルール
人の強い感情は6秒程度で静まると言われているんだ。
もちろん個人差はあるし、状況によっても差があるよ。大事なのは怒りの感情が沸いても、その感情に一呼吸おき、すぐ言動に移さない癖をつけていくこと。
6秒待つことで、怒りの感情が一旦収まる可能性が高いんだ。もし収まらなかったのなら、以下にあげる方法を試してみてね。
深呼吸
6秒の間に、深呼吸しながら自分に「落ち着け〜」と念じることもいいね。
怒りの感情が出るときは生理的な変化があるんだ。例えば、心臓の鼓動が激しくなり、動悸や脈拍数も上がるよ。ゆっくり深呼吸を続けていると、怒りによって生じた生理的変化が元に戻りやすいよ。身体的側面から落ち着きを取り戻せるんだ。
その場から離れる
メラメラと怒りが込み上げてしまい、6秒も耐えられない!と思うことだってあるよね。
そんなときは、その場から離れる、というのが有効な手段だよ。もちろん、相手には「少しタイムアウトさせて」「この場を離れさせて欲しい」と断って離れるのがベター。
自分が怒っているときこそ、相手にも配慮しよう。その中で冷静さを少しずつ取り戻す感じがいいんじゃないかな。
作業に没頭してみる
怒りを忘れようとしても、逆に怒りに意識が向いてしまい、かえって忘れられなかった経験はあるかな。
人の脳は否定形を理解できないから、忘れようと意識すると、ますます怒りに意識が向いてしまうんだ。これを防ぐには、簡単な作業をするのがいいよ。
掃除や片付け、テトリスなどのシンプルな作業がいいと思う。ただ作業をするのではなく、その出来栄えにもこだわって没頭できると、忘れる効果は高いんだ。作業に没頭して、いつの間にか怒りを忘れていた、といった感じがベターだよ。
リラクゼーション
人が怒りやすいときは、いろいろな意味で自分の余裕がなくなっているときでもあるんだ。
自分の感情や気分を少しでも変えられるリラックス方法を探していくのがいいね。コーヒーやアロマの香を楽しんだり、気持ちが落ち着く音楽を聴くのもオススメ。人は普段からよく目を使うから、木々の緑を眺めて目に優しい刺激を与えるのもいいよ。
軽い運動をする
イライラや怒りっぽさを感じているときは、軽く運動するのがいいんだ。
運動というとスポーツを思い描く人も多いと思うけど、散歩などの軽い運動でも効果は得られるよ。特にデスクワークの多い仕事をしている方や、家事や育児など終日同じ場所にいることが多い人は散歩がオススメだよ。
怒りを肯定する
怒りは悪いものというイメージがあるよね。でも、怒りを否定するだけだとイライラが悪化しがちなんだ。その時点で「アンガーマネジメントなんて意味ない!」と思って諦めてしまう人もいるかもしれないね。
長期的にアンガーマネジメントの効果をもたらすために、自分の怒りの理由を言語化して居場所をあげよう。
「〜すべき」とか「〜ねばならない」など価値観を限定する考え方が多いと、うまく行かなかったときに自分や他人へ怒りの感情が向いてしまうよ。
怒りを感じたときは「〜すべき」「〜ねばならない」といった思考が自分にどれだけあるか振り返ってみて。信念の中には「よく考えたら非合理的かも」と感じる考え方もあるかもしれないね。でも、多くは小さな頃から環境に適応するために取り入れてきた大切な信念だと思う。言語化すれば、「〜すべきだけど、ここは怒りじゃなくてアドバイスで伝えよう」「相手のためにも叱っておこう」と、適切に活用できるよ。
もちろん「〜すべき」は良い方向に働く場合もあると思う。でも、どちらにせよ「〜すべき」信念は、自覚して居場所をあげることが大切なんだ。
今怒っていることと、その中に潜む「〜べき」の考えは?
自分の怒りを評価する
自分がどれだけ怒っているのか、怒りの程度を数値化してみて。その場でもいいし、一段落したあとでもOK。
なんで自分が怒ったのか理解するのもいいね。自分がどんな感情を持ったのか、どんな風に考えたのか理解することを心理学では「メタ認知」と言うんだ。
メタ認知する習慣があると、怒りのような衝動性の強い感情が生じても、その怒りの程度や原因を分析したり理解しようとするので、落ち着きを取り戻しやすくなるよ。
メンタライゼーションもメタ認知力向上の助けになるから試してみてね。
怒りを表現する
怒りの感情をノートに書くのも良いアンガーマネジメントになるんだ。
怒りの感情を書くことで、怒りやうっぷんを溜め込まないで、表現できるメリットがあるよ。ノートは誰にも見せなければいいから、自身の気持ちを正直に表現できる機会になるんだ。自分の怒りに対する振り返りにもなるよ。
気軽に試したい人は、まずジャーナリングをやってみてね。
その場で自分の怒りを認識するのが苦手な人は、下の記事を読んでみて欲しいな。
イライラは悪者じゃない
怒りの背後には、不安や「〜すべき」信念があるんだね。でも、怒りは悪者じゃないことだけは覚えておいて欲しいな。
毎日忙しいと自分に余裕がなくなるよね。イライラは、余裕のない日常生活や仕事を見直す大事なサインでもあるよ。
だから、怒りの感情が湧いてくるときの気持ちは大事にしよう。怒りを捨てるんじゃなく、「適切に伝えられる感情」に変えたり、自分の生活を見直すサインとして活用できるといいよね。
困ったときにはメンタルヘルスの専門家に相談するのも大事なセルフケアだよ。