黒歴史って言葉があるように、誰にでも思い出したくない嫌な記憶ってあるよね。思い出したくないのに、ちょっとしたきっかけで思い出しては「うわぁぁぁ」と悶絶しちゃったり。
忘れる方法なんて無いんじゃ…と思ってしまうけど、実は「青魚を食べたる」「テトリスをする」などの科学的な裏付けのある方法があるんだ。
この記事では科学的で信頼性のある「嫌な記憶のなくし方」について解説していくよ。
目次
嫌な記憶ほど消えない理由
嫌な記憶がなかなか忘れられない主な理由は「忘れようとするから」「繰り返し思い出してしまうから」「脳がストレスをうけるから」の3つだよ。
忘れようとするから
実は「忘れよう」とした記憶ほど忘れにくくなるんだ。
意外だけど、人間は「○○してはいけない」と言われると、逆にその○○について考えてしまう性質があるよ。
鶴の恩返しは「のぞき見ないでください」と言われたのに部屋をのぞいてしまった話がでてくるけど、まさにそれだね。禁止されると余計気になってしまうんだ。
心理学の実験でも、「シロクマのことは考えないでください」と言われるほうがかえってシロクマのことを考えてしまうことがわかっているよ。
この実験から、人間の「考えるなと言われほどそのことを考えてしまう傾向」はシロクマ効果と呼ばれているんだ。
繰り返し思い出してしまうから
試験対策のために英単語を暗記したいとき、多くの人は試験に出そうな単語を何度も紙に書き出すことで覚えようとしたんじゃないかな。
人は同じ内容を繰り返すことでその情報を記憶に保持しやすくなるんだ。このことを心理学ではリハーサルというよ。
嫌な記憶に関しては、好き好んでリハーサルしないよね。けど、シロクマ効果で説明したように「忘れよう」とする努力が、嫌な記憶をリハーサルをする結果となってしまっているんだ。
脳がストレスをうけるから
脳はストレスを受けると、嫌な記憶を「過去」にできなくなるんだ。PTSDによるフラッシュバックなどもこれが原因だよ。
感情を伴う記憶の保持は、主に脳の海馬と扁桃体が担っているよ。海馬はエピソード記憶を司り、扁桃体は不安や恐怖を感じる部分で、この二つは隣り合っているんだ。
ストレスを受けた後の反応は真逆で、海馬はストレスを受けると萎縮してしまう一方、扁桃体は強烈に作用することが知られているよ。
つまり大きなストレスを受けると、以下のような状態なるんだ。
①海馬の働きが悪くなって記憶力が低下し、 現在と過去の区別がつかなくなる
②扁桃体が活性化して強い感情を感じ、まるで「今」それを経験しているかのような感覚になる
嫌な記憶は「過去」のこととして扱われないから、ずっと「今」のこととして思い出してしまうんだね。
そもそも「忘れる」ってどういうこと?
嫌な記憶の対策をする前に、「忘れる」状態について知っておこう。
一般的に「忘れる」は「記憶から消え去る」ことを意味しているよね。けど心理学では、「一度脳で処理された情報は消えることはない」と考えられているんだ。
心理学で「忘れる」と言った場合、思い出せない場合と、新しい記憶が上書きされた場合とがあると考えるよ。
思い出せない
情報を思い出せないことを心理学では「検索失敗」と言うよ。
PCで例えるのなら、本当はどこかのフォルダにデータ保存したはずなんだけど、そのフォルダが見つからない状態だね。フォルダさえ見つかれば、必ず情報はアウトプットできるんだ。
人もこれと一緒で、記憶を思い出すための手がかりを見つけなければ、嫌な記憶も思い出さずにすむよ。具体的な方法は後述の「スキルを鍛える」をみてね。
上書き
もう一つは、新しい記憶を上書きすることで古い記憶が思い出せなくなる場合だよ。
心理学では「干渉」と言ったり「消去」と言ったりするんだ。物事の記憶を上書きする場合は干渉、感情や生理現象を上書きする場合は消去という言葉が使われることが多いよ。
PCは同じフォルダ名でデータを保存すると、古いデータは上書きされてアウトプット出来なくなるよね。人の場合もこれと同じなんだ。
例えば、レモンを食べる経験を例に考えてみよう。一度レモンを食べて「すっぱい」思いをすると、人の身体はレモンを見ただけ唾液を出すことを覚えてしまうよね。けど、何度もレモンを見続ければ次第に唾液は出なくなっていくよ。この場合、唾液分泌という生理現象の上書きだから消去の例だね。
人も、新しい体験を何度も繰り返すと、過去の体験の記憶が上書きされるんだ。
嫌な記憶を消す方法
嫌な記憶がなかなか消えてくれない理由と忘れ方についてわかったところで、次は具体的な嫌な記憶のなくし方について解説していくよ。
想い出にする
嫌な記憶は、脳が「まだ終わっていない出来事」と勘違いしているから繰り返し思い出してしまうんだ。
観終わったDVDと観終わっていないDVDだったら「観終わっていないDVD」の方が気になるよね。観終わったDVDはラックに丁寧に片づけられる一方、観ている途中のDVDはいつでも観られるようにデッキの中に入れっぱなしってこともあるかもしれない。
これは脳にとっても同じ。しっかりと海馬で処理された記憶は大脳皮質に送られて「想い出」として大切にしまわれるけど、処理しきれない記憶は繰り返し思い出されることになってしまうんだ。「未処理の記憶」は脳がずっと気になっている状態なんだね。
だから脳に「もう終わったこと」と分からせて、想い出にしていくことが大切になるよ。
記憶を処理して想い出化するためには、海馬で新たな細胞が生まれればいいことがわかってきているんだ。
その具体的な方法の一つは、青魚を食べること。青魚にはDHA やEPA などのオメガ3脂肪酸が含まれていて、これが海馬の神経新生を高めるんだ。
定期的な運動や日光浴なども神経新生を高めると言われているから、青魚が苦手な人はこちらの方法がいいかもしれないね。
扁桃体に負荷をかける
嫌な記憶を思い出したあとに扁桃体に負荷をかけると、記憶が変わることが知られているよ。
氷を冷蔵庫から取り出すと水になるよね。この水はもう一度同じ製氷皿に入れれば、また同じ形の氷になるけど、違う製氷皿に入れれば当然形が変わる。
これと一緒で、一度嫌な思い出を思い出し、その後テトリスなど扁桃体に負荷をかける作業を行うと、嫌な記憶は少しずつ変わっていくんだ。
この不思議な現象についてもっと詳しく知りたい人は、エピソード記憶の記事も読んでみてね。
スキルを鍛える
嫌な記憶にもっとダイレクトにアプローチするスキルもあるよ。
それがケンブリッジ大学の認知神経科学の教授であるアンダーソン氏が推奨する「動機性忘却」と呼ぶスキルなんだ。「動機性忘却」には2つの方法があるよ。
1つ目は「思考置換」だよ。この方法は、「検索手がかり」に対する脳の反応の仕方を変える方法なんだ。
この記事の中盤あたり「「忘れる」とは?」で「記憶を思い出すための手がかりが見つからないと、思い出せなくなる」と説明したのを覚えているかな。このことは逆に言えば、嫌な記憶は何かしらの検索の手がかりがあるために思い出されているということだね。
思考置換は、この「検索手がかり」に対して、別のポジティブなことを連想するように意識を集中する方法なんだ。
例えば、「学校」という単語を見るだけで思い出す「キザな告白の仕方をしてあっ気なく撃沈した」学生時代の黒歴史を消したければ、「学校」から連想する良かった思い出を紙に書き出してそれを何度も意識的に読み返してみる、などが具体的な方法の一つだね。
動機性忘却の2つ目は「直接抑制」だよ。この方法は、嫌な記憶が蘇ってくる毎に、あらかじめ決めた自分だけの呪文を唱えたり、特定の動作をしたり、記憶内容と全然関係ないことをするものだよ。
例えば、嫌な記憶が蘇ったら「アブラカダブラ」と言ってみたり、「宇宙から見た自分」を想像したりなどだね。
直接抑制をすることで、嫌な記憶が蘇って来ても「それに対処できる」という自信がつくし、嫌な記憶を繰り返し思い返すのをストップすることができるよ。
嫌な記憶を忘れる方法まとめ
嫌な記憶は一刻も早く消し去りたいけど、忘れようとする努力がかえって嫌な記憶を繰り返し思い出してしまうことにつながっていたんだね。
完全に記憶を消し去ることはできないけど、思い出しづらくしたり、思い出してもそれほど嫌なものではないようにすることはできるんだ。この記事に書かれていたことの中で、試せそうなものがあればぜひ試してみてね。