「褒めることの大切さ」ってよく言われるよね。でも、いざ褒めようとすると「上から目線になったらどうしよう」などとわからなくなるもの。
一方で「いや、褒めるのはよくないらしいよ」と言う人もいるから、「どっちなの?」と思うよね。
実は、ちゃんと心理学的な褒め方のコツがあるんだ。職場でも子育てでも、簡単に実践できるから試してみてね。
目次
褒めることが苦手な人の心理とは?
よく「褒めて伸ばす」「褒め育て」と言うけど、いざ褒めようとすると恥ずかしくなってしまったり、うまく伝わったか心配になることも多いよね。
褒めるのが苦手といっても、背景にはいろんな心理が隠れているんだ。ひとつずつ見てみよう。
関係性や立場が気になる
自分が褒めると生意気と思われるかも…。褒められても迷惑になるか…。と心配になることもあるよね。
友達や初対面の人、仕事関係の相手は、付き合う期間や利害関係の有無、親交の深さなど様々な側面があるから、受け取られ方を心配して褒めにくいことがあるんだ。
否定されたら気まずいから
もし拒否されたら気まずい雰囲気になるかもしれない…と思って、ためらってしまうこともあるよね。特に、自分が褒められることに苦手意識を持っていると、自分の気持ちと相手を重ね合わせて、”褒めても相手を困らせるんじゃないかな…”って不安に思うかもしれないね。
何をどのように褒めたらいいのかわからない
相手を褒めるためには、”相手が何を求めているか”を理解して、”相手にわかる形”で伝える必要があるよね。褒めるためには相手側の視点を持たなければいけないんだ。そうはいっても、相手の気持ちを理解するのはなかなか難しいよね…。
褒められた経験が少ない
自分が十分に褒められた経験を持っていないと、褒めることに苦手意識を持ちやすくなるよ。
”褒められてこなかったから、褒め方がわからない”という技術的な側面と、”なぜ自分は褒めてもらえなかったのに、相手を褒めなきゃいけないの?”という感情的な側面が関わっているんだ。
叱られながら育ってきた親の世代や、上司から厳しい言葉で教育を受けた管理職世代の人は、子どもや部下を褒めて育てることに難しさを感じやすいといわれているよ。
「褒められないとダメ」な人になると感じている
心理学者・アドラーは、「褒めることは相手の自律心を阻害し、褒められることに依存する人間を作り出してしまう」と言っているよ。「褒められたい」気持ちを強く持ちすぎると、自分が本当にしたいことではなくて、褒められることを目的に頑張ってしまうんだね。
子どもや部下が「褒めないと動かくなる」のを恐れて褒めにくい人もいるんじゃないかな。「一回褒めてしまったら、そのあとも褒め続けなきゃいけないんでしょ?」と考える人もいるよね。でも、褒め方にはポイントがあって、褒めることすべてが悪いわけじゃないんだ。詳しいことは「褒めるときの注意点」で紹介するね。
自分に厳しく人にも厳しい
自分に厳しいと、相手に求めるハードルも上がる場合があるよ。
「このくらいはやれて当たり前」という考えが、自分にも他人にも厳しくしているかもしれないね。また、「頑張った、よくできた!」と思っても、次の瞬間に親や上司など他人の顔を思い出して、「いや、まだまだ…全然だめだ」と思う人もいるかもね。
また、自分に自信が無いからこそ「自分なんかにできるなら他人にもできる」と感じることもあるよ。
自分にも相手にも優しくするには「ありのままの自分」を見つめることが重要なんだ。
「褒める」ことのメリット
褒めることはいったい何に繋がるんだろう。ここでは褒めることの意味、メリットを紹介していくよ。
学習効率がアップする
自然科学研究機構整理研究所の実験で、褒められながらトレーニングしたほうが6%も成績がアップしたんだ。褒められたときに脳内に放出されたドーパミンが、学習記憶の定着を促したと言われているよ。
「褒めて育てる」効果は科学的にも認められているんだね。
ポジティブ感情が満たされ前向きになる
フレドリクソンが提唱した「ポジティブ感情の拡張-形成理論」によると、喜び・好奇心などのポジティブな感情を多く感じると、思考や体験の幅が広がって、広い視野で物事を見られるようになるといわれているよ。
褒められることは、自分の考え方や行動に対する肯定的なフィードバックをもらうことと同じだよね。褒められると、相手からの愛情を感じたり、前向きな気持ちになることができるんだ。否定的なフィードバックを受けたときや無反応のときよりも、前向きに頑張ろうと思えるよ。
自分で自分を褒められるようになる
「一度褒めたら、そのあとも『褒めて褒めて!』となるのが心配‥」という人もいるよね。
でも実は、バンデューラの自己効力感理論によると、ポジティブなフィードバックを受けた子どもは、そのフィードバックを内面化できるようになるよ。「あなたはよくできた」というメッセージが、「自分はできるはず」と心の中の声に変わるんだね。ポジティブなフィードバックが内面化できれば、次第に自分で自分を褒めて前に進む力をもてるよ。
周りからの評価や褒めがなくても、自分で自尊心を保てるようになるんだね。
関係性が良くなる
褒められた人は、相手への感謝の気持ちや信頼感も抱きやすいんだ。相手が自分の褒めを好意として受け取ってくれたら、返報性の法則が働くこともあるよ。
返報性の法則とは、相手から受けた好意をお返ししたいと感じる心理のこと。
褒められて嬉しく感じたら、「気づいてくれて嬉しい→ありがとう」とか、「そんなところも見ていてくれたんだ→〇〇さんもこういうところすごいよなあ」とか、肯定的な気持ちに繋がりやすいんだ。
「褒める」ときの注意点
そうはいっても、相手が喜ぶ褒め方ってなかなか難しいよね。褒めたつもりだったのに、いまいちな反応が返ってくることもあると思う。でも、褒めるときの注意点を押さえれば心配いらないよ。
他の人と比べない
「〇〇君よりいい成績じゃないか!よくやった」
「お姉ちゃんの〇〇はまだやってないのにすごいね!」
こんな褒め方は要注意。他人と比べられると優劣を気にしすぎたり、目標がぶれやすくなってしまうんだ。それに、引き合いに出された側も嬉しくないよね。
また、逆に普段比べられている相手が褒められると、自分が責められている気分になる危険性もあるよ。
大切なのは、本人の中での変化に注目すること。できないことを克服した、本人なりに力を入れて一生懸命頑張った、よい方向に変化したと周りが感じたことを褒めるのがおすすめだよ。
おだてる・お世辞と区別する
褒めたあとに用事を言いつけたり、子どもや部下など対等でない関係で「頼りになるあなたにぜひお願い」と言うと、相手を操作するための褒めになるんだ。Noと言えない状況に追い込んで、思い通りに動かそうとするのはよい褒め方ではないよね。相手は褒められても嬉しくないし、褒められることに嫌悪感を抱くようになってしまうよ。
操作するために褒められてきた人は、「どうせ裏があるんでしょ?」と思いやすいんだ。褒められることに苦手意識をもってしまうんだね。
また、お世辞を言うときにも気を付けてね。本心ではない”お愛想”は意外と相手にも伝わってしまうもの。相手を喜ばせようとして大げさに褒めるのは、嫌がられるリスクが高いよ。もちろん社会のマナーとして、社交辞令は必要になると思う。社交辞令は、挨拶のついでくらいにさらっと褒めるのがポイント。
「褒める」背景にある自分の気持ちを要チェック
無意識に子どもが頑張っているときだけ褒めていたり、部下が思い通り動いたときばかり褒めていないかな?
本心から褒めていても、どこを褒めて、どこを褒めないかということは、褒める側が選んでいることなんだ。
適切に褒めるには、「なぜそれを褒めるのか」を自覚するのが一番。自分の思考や感情を知るには、心理学で注目されているメンタライゼーションが役立つよ。自分の気持ちを言語化して、伝えたいメッセージを適切に伝えよう。
今日から使える有効的な褒め方
具体的に、どんな褒め方が相手にとって嬉しいのか、有効的な褒め方を紹介していくよ。
結果ではなく、頑張った過程を褒める
「結果が全て」という考え方もあるよね。でも、デュウェックらの研究では、成績評価や頭の良さを褒められた子どもよりも、頑張りを褒められた子どもの方が結果的に成績が伸びたデータが示されたんだ。
成績や頭の良さを褒められた子は失敗を恐れて、できそうな課題や簡単な問題に取り組みがちだったよ。一方で、努力した過程を褒められた子どもは、失敗を恐れず難しい問題にも挑戦したんだ。過程を褒められた子どもは、頑張って取り組むことに楽しさを感じたり、忍耐の大切さを学んだんだね。
「100点を取れたのは、苦手なことを克服して〇〇が頑張ったからだね!」
「今回は結果がでなかったけど、ここまでよく頑張ってくれたね」
こんなふうに努力を褒められると、「また頑張ってみようかな」という気持ちに繋がるんだ。
認める・感謝する
NG→「お手伝いできて偉いね」
OK→「お手伝いしてくれて助かったよ、ありがとう」
評価ではなく、対等な関係としてお礼を伝えることも有効なんだ。上2つのセリフは一見同じ意味に見えるけど、前者の主語は子どもで、後者の主語は親だよね。
子育ての場面では特に、「~できて偉いね」と上から目線の褒められ方ばかりされると、褒められることがモチベーションになってしまうことがあるんだ。
もちろん褒めがモチベーションになるのは良いことでもあるよ。でも、上からくだされる評価ばかり気にしていると、新しい挑戦をするときに他人の顔色をうかがいやすくなるんだ。
だから、アドラー心理学でも、「対等な関係の中で認める関わり」を大切にしているよ。「~してくれて助かった、ありがとう」と言われて育った子どもは、一人の人として認められた感覚や、相手の喜びがモチベーションになるんだ。
対等に褒められて育った子どもは、「自分にとっても相手にとっても良い行動」を取りやすくなるんだね。
第三者を介して褒める
「面と向かって褒めるのは今さら気恥ずかしい」と感じることもあるよね。そんなときは、第三者を介してみよう。
面と向かって部下を直接褒めるよりも、同僚に部下のよいところを伝える方が簡単だよね。大好きな子に想いを伝えるのはすごく難しいけど、友達にならその子の素敵なところを話せるんじゃないかな。
第三者を介して伝えれば、心理学用語で言うウィンザー効果が働くよ。人は「何かを直接伝えられるよりも、第三者から伝えられた方が信憑性が高まる」心理的傾向があるんだ。
先生から直接「最近すごい頑張ってるね」と直接言われるよりも、「先生が、〇〇さんは最近すごく頑張ってると褒めていたよ!」と第三者から言われる方が、なんだか嬉しく感じるよね。褒める気恥ずかしさを避けられて相手も喜ぶなら、一石二鳥だ。
主語を明確に、具体的に伝える
「へえ、いいじゃん」、「悪くないんじゃない?」よりも、「私はいいと思うな!」、「〇〇というところが斬新でいいと思うよ」の方が、心に残りやすいよね。
日本には主語を省略する文化があって、英語の「I think…」「I feel…」のように「私は…」と言わないよね。外国人が自分の意見をはっきり言ってるように感じたり、褒め上手にみえるのは、主語が明確だからでもあるんだ。
まとめ
相手をよく見て褒めることって、実はなかなか難しいことなんだ。
だからいきなり褒め上手になろうとしなくて大丈夫。まずは身近な人や自分のいいところを見つけて、心の中でこっそり褒めてみてね。
「今日も一日頑張ったなあ、自分」「あの人が言ってくれた言葉嬉しかったなあ」と自分を労ったり、よかったことを思い出すと、心がぽかぽかしてくるよ。
一日の終わりには、心も一緒にお風呂で温めて、布団でゆっくり休ませてあげよう。