近年、海外ではカウンセリングを病気を治すためだけでなく、心の調子を整えるために使うという考え方が浸透しつつあるんだ。
日本でも心理職初の国家資格である「公認心理師」が誕生するなど、メンタルの問題やカウンセリングへの関心は高まっていると言えるよ。
その一方で、カウンセラーの選び方については気をつけてほしいポイントがいくつかあるよ。たとえばSNSなどでカウンセラーを自称する人たちの中には、カウンセリングについての知識を修めていない人もいるみたい。そういう人に出会うと、貴重な時間とお金を浪費してさらに心も傷つけられる、なんてことも起きてしまうんだ。
今回はカウンセラーの選び方について解説していくね。信頼できるカウンセラーの探し方を知っておくことは、いざというときの備えにもなるよ。一緒に見てくれると嬉しいな。
目次
カウンセリングとは?
「カウンセリング」という言葉は広い意味では相談や助言を意味する言葉で、化粧品の販売や婚活など様々な場所で使われることもあるんだ。ここではそもそもカウンセリングってなんなの? という部分について簡単に解説していくよ。
臨床心理学や精神医学の専門家による仕事
狭い意味での「カウンセリング」は「臨床心理学や精神医学などの専門家による心理的援助活動の総称」だよ。ココロジーで扱う「カウンセリング」もこちらの意味だね。
カウンセリングで大事なのは「臨床心理学や精神医学の専門家」が行うというところだよ。
この基礎の部分がしっかりしていることで、カウンセリングという難しく繊細な作業を進めていくことができるんだ。
カウンセリングってなにをするの?
カウンセリングでは基本的に、信頼できるカウンセラーが側にいる安心した時間と場所の中で、心の中で渦巻いている不安や違和感といった気持ちについて言葉にしていくよ。
「自分はどんな風に考えているのか」
「どうすれば自分は過ごしやすくなっていくか」
といった気持ちや展望を発見しながら実行できるように支援していくのがカウンセラーの仕事なんだ。その仕事の基礎としてカウンセラーは臨床心理学や精神医学の知識を持っている必要があるんだよ。
この基礎の部分がしっかりしていない自称カウンセラーの人だと、能力が保証されていなかったり危険な目にあったりと、不利益を被る可能性が高いんだ。そうした危険なカウンセラーを避けて、よいカウンセラーを選ぶための方法についても解説していくね。
カウンセラーの選び方
ここではカウンセラーの選び方について、現在の資格制度などを踏まえて解説していくよ。
「臨床心理士」の資格を持っている
まず第一に、カウンセラーを選ぶ際には「臨床心理士」の資格を持っている人の中から選ぶのがおすすめだよ。上でも解説したようにカウンセリングは臨床心理学や精神医学の知識を修めた専門家であることが求められるんだ。
臨床心理士は心の問題に取り組む専門家として、大学院修了や多くの実習などを乗り越え、さらに試験を通過した人にだけ与えられる資格だよ。
文科省により任用されるスクールカウンセラーなど、公的な分野で活躍する心理職は臨床心理士の資格を持っていることが前提になっているものが多いことからも、その専門性が認められていることがわかるね。
なぜ「臨床心理士」がよいのか
カウンセラーを探すなら「臨床心理士」がいいと言われても、そんな資格は聞いたことがないという人もいるよね。臨床心理士として登録されている人は2021年4月時点で38,397人と、人口に比べるとかなり少ないんだ。高度な専門性の担保のため、厳しい訓練が課されていることが背景になっているのかもしれないね。
日本臨床心理士資格認定協会では臨床心理士の専門行為として以下の4つをあげているよ。
①種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること。
②一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること。
③地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること。
④自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されること。
また、心理臨床能力の向上と高邁な人格性の維持、研鑽の精進などのために「臨床心理士倫理綱領」の遵守と、5年ごとの資格更新制度などが定められているんだ。
つまり高い専門性を維持し続け、勉強をし続けることや、良いカウンセリングを行うために守秘義務など多くの決まりを守ることが義務付けられているんだね。
こうした厳しい条件があることもカウンセラーを選ぶとき「臨床心理士」を選んだほうがいい理由の一つだよ。
「公認心理師」はどうなの?
心理学に興味がある人なら「公認心理師」という資格について聞いたことがあるかもしれないね。公認心理師は2017年に施行された公認心理師法による資格で、心理職初の国家資格だよ。
一方で公認心理師がカウンセリングに関する高い専門性を持っているかというと、ちょっと難しい部分があるんだ。
現在の公認心理師は施行されたばかりでカリキュラムの整備がしっかり行われておらず、座学での試験問題を突破できたかどうかだけで認定されている状態なんだって。そのため現状の公認心理師の資格は、心理学の試験勉強をクリアしたという証明にしかなっていないのが実情なんだ。
そのため、現時点(2022年3月時点)でカウンセラーを選ぶ際には「臨床心理士、あるいは臨床心理士と公認心理師を両方持っている」人を選ぶのがおすすめだよ。
避けたほうがいいカウンセラー
次に、避けたほうがいいカウンセラーの特徴について解説していくね。
心理カウンセラーについて検索すると、メンタル心理カウンセラーやメンタルケアカウンセラーなど色々な名前の資格が出てくるよ。これは医師などの資格を持っていない人の業務を禁止する業務独占資格とは違って、カウンセリングという業務を独占できないことが影響しているんだ。
だからこそ危険なカウンセラーに出会わないよう自衛することが大切だよ。本当はそんなコストを困っている人が払う必要なんてないんだけどね。自分自身のためにも、避けたほうがいいカウンセラーの特徴について一緒に見ていこう。
資格を長々と書いている
上でも触れたようにカウンセラーの資格として基本になるのは「臨床心理士」なんだ。長々と資格を書く人は権威付けやアピールのために載せていることが多く、カウンセリング能力が担保されている保証はないと言えるね。
臨床心理士以外の〇〇カウンセラー、〇〇セラピストといった資格を長々とプロフィールに書いている人は避けるのがおすすめだよ。
カウンセリング件数を過剰にアピールしている
「〇〇件以上のカウンセリングを実施!」などカウンセリングの件数ばかりをアピールしている人にも注意が必要だよ。これも上で触れた資格を長々と書く人と同じで、権威付けのために数字を利用していることが多いんだ。
どんな件数が多いとしても、カウンセリングを受ける自分にとってはただ一つの大切な1件だよね。カウンセリングのそうした性質を踏まえずに件数だけをアピールする人は避けたほうがいいかもしれないね。
病歴や自分の体験をアピールしている
今苦しんでいる人の中には「自分と同じような悩みを解決した人に頼りたい」という気持ちを持っている人もいるかもしれないね。だけどその一方で
「かつて自分には〇〇などの悩みがありました。ですが△△の方法でこれを乗り越えました。あなたも同じやり方で乗り越えましょう!」
のようなアピールをする人は避けたほうがいいよ。
たとえば臨床心理学の専門家である臨床心理士は、勘や経験だけに頼るのではなく、最新の科学研究の知見を活かして困っている人の助けになる必要があるんだ。こうした考え方は「科学者ー実践者モデル」と呼ばれるよ。
一方で自分の経験ばかりをアピールする人は「絶対」「唯一」「本当」などのフレーズを使いやすく、科学的な根拠のないアドバイスをしがちなんだ。
もちろん臨床心理士の中にも苦しい経験をしてきた人はいるけど、ちゃんと目の前の人の助けになろうとしている人は「自分の苦しかった経験」ばかりを声高にアピールすることはないはずだよ。
SNSのプロフィールなどでうつ病や発達障害などを「自力で治した経験があり誰かを助けたい」などの語りをする人は、カウンセラーとして頼るには相応しくない場合が多いから気をつけてね。
根拠の薄いキーワードを使っている
上でも触れたように、臨床心理士のように科学的な研究や心理学的な理論を基礎にするカウンセラーは、効果を過度に強調する言葉や、根拠が定かではない言葉を使うのを避けるんだ。
学問としての心理学では使われない、高い専門性を持ったカウンセラーなら基本的に使わない言葉をまとめてみたよ。
・インナーチャイルド
・スピリチュアル
・ヒーリング
・ホメオパシー
・オーラソーマ
・カラーセラピー
・ヒプノセラピー
・NLP
・魂の救済
・前世
・癒やし
・神秘
・輝き
他にも「HSP専門カウンセラー」や「発達障害専門カウンセラー」など「専門」を掲げる人も心理臨床家としての訓練を十分に積んでいないことが考えられるよ。
臨床心理士など高い専門性を持つカウンセラーは、クライエントが置かれている状況やクライエント自身の性格や能力といった様々な情報を系統立てて分析し、結果を見て立てた仮説から「どんなふうに支援するか」を決める能力を持っているんだ。これは心理学で「アセスメント」とも呼ばれるよ。
一方「〇〇専門」という書き方は、最初からクライエントの状態像を絞って、アセスメントはしませんと言っているようなものなんだ。
「クライエント本人は発達障害(HSP)を疑っていたが、生育歴などを聞いてみるとその可能性は低く、むしろ職場への不適応が問題の中核にある」
といったケースは珍しくないのに「〇〇専門カウンセラー」の人は「この人の◯◯をどう治そう」と偏った見方しかできず、クライエントに不利益を生じさせることも多いんだよ。
良識のあるカウンセラーであれば「◯◯専門」といった書き方はせず「得意分野:〇〇」のような書き方をするはずだから、その人が持っている資格と合わせて注意深く見てみてね。
価格帯
他にも、カウンセリング料金が極端に低かったり高かったりする場合も注意が必要だよ。
臨床心理士など信頼できる専門家によるカウンセリングの料金は一般的に、1時間あたり5000〜15000円程度が相場になるんだ。ちょっと高いと感じるかもしれないね。だけどこの料金は、臨床心理士などの資格を取得するための学費や、高い専門性を維持するための研修費を踏まえたものになっているんだ。
この相場よりも極端に安い場合は、能力や専門性を維持するためのコストを支払っていないことが考えられるから、信用するのは難しいということだね。「無料カウンセリング」などは特に注意が必要で、心という繊細で大切なものが実験や練習に使われてしまう恐れがあるから、避けたほうがいいよ。
それでも金銭的に厳しい、という場合には全国の臨床心理士を養成する大学院が併設している実習センターの利用を検討してみてね。
実習センターでは臨床心理士になるための実習として、確かな知識と専門性のある教員の指導を受けながら研修員がカウンセリングを実施するよ。実習センターのカウンセリングは1時間あたり2000〜4000円程度が相場になっているんだ。
NPO法人のAACCでは大学院などが運営する相談施設を検索できるようにページを作成してくれているよ。参考にしてみてね。
大学などが運営する心理相談のページへ(別サイト))| aacc.jp
よいカウンセラーとは
次に「よいカウンセラーとはどんな人か」ということについて見ていこう。カウンセラーの良し悪しは相性による部分も大きくて一概に言えないことが多いけれど、大切な部分をまとめてみたから参考にしてみてね。
断定的な言い方をしない
心の問題には学校や職場、家庭の状況やそこにいる人との関係、自分自身の性格や資質など複雑な背景が絡み合っているものが多いよ。その複雑さを分析しないまま原因や病名を断定したり「あなたは◯◯です」のように決めつけるような言い方をする人はアセスメントの能力が低く、カウンセラーとして適切ではないことが多いんだ。
「アセスメント」について心理学の辞書では以下のように言われているよ。
【アセスメント】誠信書房「誠信心理学辞典新板」より
臨床心理学的援助を必要とする事例について、その人格、状況、規定因に関する情報を系統的に収集し、分析し、その結果を統合して事例への介入方針を決定するための作業仮説を生成する過程
つまり、専門家に必要な能力として多種多様な情報を元に「こうかもしれない、こういう可能性もある」と考え、支え方を考える力がある、ということだね。
よいカウンセラーほどアセスメント能力が高く、決めつけるような断定的な言い方をしないことが多いんだ。
「この人は自分を完全に理解してくれている」と洗脳するような断定的な言葉を使う人よりも「この人は自分を理解しようとしてくれている」と感じられるカウンセラーを選ぶようにしよう。
話を聴いてもらってる感がある
カウンセリングで何よりも大切なのは「ちゃんと話を聴いてもらえてるな」と感じられることだよ。安心と信頼を感じる専門家に話を聴いてもらうことで、今の自分の状況や感情についての整理が進み、過去から現在、そして未来に繋がる「自分」を見つめられるようになるんだ。
そのための関係づくりもカウンセラーの仕事だから「この人は自分の話をちゃんと聴いてくれてるな〜」と感じてもらえることは、よいカウンセラーの条件のひとつだと言えるね。
語りすぎない
よいカウンセラーは基本的に、自分の功績や治療法について長々と話すことはないよ。
カウンセラーは何か答えを授けてくれたり、直接救ってくれる存在ではなく、「こっちには何があるかな」と一緒に歩きながら道を示すガイド役のようなものなんだ。
カウンセリングを受けるのは多くても週に数回、数時間だけだからこそ、よいカウンセラーはクライエントが自分自身の力で考えて歩いていけるように、少ない言葉で小さなヒントを出していくんだ。
合わないと感じたら
最後に、カウンセラーと合わないと感じたときどうすればいいのか、簡単にまとめていくね。
まずは直接伝えてみる
カウンセラーと「合わないな」と感じたときは、まずはその気持ちを直接伝えてみよう。話がまとまらないときは事前にメモ書きなどを用意しておくのがオススメだよ。
カウンセラーへの申し訳なさや「こんなこと言っていいのかな」と不安になって言いたいことが言えないようならそもそもそのカウンセリングがうまくいっていない可能性が高いから、自分の中に不満を溜め込んで時間やお金をかけすぎてしまう前にはっきりと相談してみよう。
乗り換えも検討する
上のように不満や合わない感じを伝えたときにはカウンセラーは見立てや自分の考えを推してくれるはずだよ。納得できる部分があれば、はっきりするまで付き合う価値があるかもしれないね。
その一方、カウンセリングで一番大切なのはカウンセラーと息が合うかどうかなんだ。はっきり合わないと感じたら「この人とたまたま合わなかっただけ」と乗り換えを検討するのも大切だよ。
だけど何度も何度も「合わない」が続く場合には、相性だけでなく複雑な背景がある場合もあるから「何度もカウンセラーを変えたけど合わない気がして変えてしまう」ことまで含めて相談したほうがいいかもしれないね。
カウンセラーの選び方まとめ
今回は資格制度やカウンセリングという仕事の背景を踏まえながらカウンセラーの選び方についてまとめてみたよ。
精神的に辛いときには判断力や思考力も鈍っていくから、よいカウンセラーの選び方や怪しい人の避け方を知って備えておくことはとても重要なんだ。
また、海外でも流行っているように、ある程度健康なうちから心のメンテナンスのためにカウンセラーを利用するのも効果的だよ。機械のように定期的なメンテナンスが大切なのは人の心も同じなんだ。健康なうちからカウンセラーを利用することで、日々の調子が良くなるだけでなく、健康な状態との比較が可能になることからカウンセラーからのアドバイスもより正確なものになりやすいよ。
自分の心は代わりの効かない大切なものだから、正しい知識と専門性を持ったちゃんとしたカウンセラーを選びたいよね。