「心が強い」ってどんなことを言うんだろう。
心理学では、主に二つの「心の強さ」があると言われているよ。一つがつまづいて転んだときに起き方を知っていることを意味する「レジリエンス」、そしてもう一つが今回の記事で解説する「ハーディネス」なんだ。
レジリエンスが柔の強さだとしたら、ハーディネスは剛の強さと考えていいかもしれないね。
では、具体的にハーディネスがどういうものなのかをみていくね。鍛え方も紹介したから、レジリエンスとともにハーディネスも一緒にトレーニングしていこう。

目次
ハーディネスとは
コバサという心理学者は、高ストレス下でも健康を害しにくい人たちには、ある共通した性格特性があることを見出したんだ。この性格特性のことをハーディネスと言うよ。
確かに、同じトラブルに見舞われたとしても「もうこの世の終わりだ」くらいに落ち込む人もいれば、「まあ、何とかなるだろう」とそれほど気にしている様子を見せない人もいるよね。その違いはまさにハーディネスが生んでいるんだ。
レジリエンスとの違い
ストレスへの免疫について語るとき「レジリエンス」が使われることもよくあるよね。
ハーディネスもレジリエンスも「心の強さ」を意味する点では共通だよ。でも、この二つはストレスへ対応する心理特性の異なる側面をみているんだ。
レジリエンス:ストレスを受けた後に回復していく力
ハーディネス:そもそもストレスを感じにくい力
レジリエンスが回復力だとしたら、ハーディネスは防御力と考えると理解しやすいかもしれないね。
レジリエンスについてまとめた記事もあるから、ぜひ読んでみてほしいな。

ハーディネスの要素
ハーディネスは3つの要素から構成されていると考えられているよ。それがコミットメント、コントロール、チャレンジなんだ。3つ全てアルファベットのCから始まるから「ハーディネスの3C」と呼ばれることもあるよ。
コミットメント
ハーディネスを構成する1つ目のCはコミットメントだよ。
コミットメントは、困難な状況になったとしても、その場にとどまって対応できることを意味するんだ。
人は問題が起きるとつい目をそらしたくなるよね。歯が痛くなっても歯医者さんに行くのが怖くて「時間がない」「まだ平気」と思って、受診しなくなってしまった経験は誰しもがあるんじゃないかな。
けど、問題を見ないようにしていても、問題は待っていてはくれないんだ。どんどん悪化していってしまうよね。
コミットメントが高い人は、問題から目をそらさない勇気をもっているんだ。家が全焼してしまう前に、ぼやの段階で動くことができるんだね。

コントロール
ハーディネスを構成する2つ目のCはコントロールだよ。
起きた問題に対して諦めるのではなく、自分が取れる行動を取ろうすることを意味するんだ。
自分なりに「何かできることがある」と思えるだけでも自信になるし、ストレスを感じにくくなるのは納得だね。
コントロールが高い人は、何かやって失敗しても「やれるだけはやれた」と思えるので、落ち込むことも少ないよ。

チャレンジ
ハーディネスを構成する3つ目のCはチャレンジだよ。
困ったことが起きたとしても、その中に「自分を成長させてくれるものがあるはず」と諦めずに努力し続けることを意味するんだ。
確かに、客観的にみたら「辛いこと」でも、その辛さを「成長痛」と捉えることができればストレスにはならないかもしれないね。
チャレンジが高い人は、普段から新しいことに取り組み続けているので「失敗」に慣れて、困ったことが起きても「次頑張ればいい」と思えるんだ。

ハーディネスの尺度
3Cを持つ人たちの特徴を、順天堂大学の堀越氏らの研究をもとにまとめてみよう。自分にどれくらい当てはまるかな?
コミットメントを持つ人の考え方の特徴
・自分には打ち込めるものがある
・楽しめる趣味を持っている
・生きがいを感じているものがある
・毎日の生活に刺激がある
・学ぶことを本当に楽しみにしている
コントロールを持つ人の考え方の特徴
・どんなことでも最善を尽くせば、最終的にうまくいく
・努力すればどんなことでも自分の力でできる
・一生懸命話せば、だれにでもわかってもらえる
・一生懸命がんばれば、必ず目標は達成する
・計画を立てたら、それを実現させる自信がある
チャレンジを持つ人の考え方の特徴
・できればさまざまな経験をしてみたい
・目新しくて変化にとんだいろいろなことをしてみたい
・興奮したり、ワクワクすることが好きだ
・ワクワクする活動や冒険的な行為は好きだ
・作業や仕事は変化がある方が好きだ
ハーディネスが高いことのメリット
ハーディネスが高いと、どんなメリットがあるのかを具体的にみていこう。
心を守る防御力が高いことで、日常生活のさまざまな場面をストレスを感じずにやり過ごすことができるようになるんだ。
仕事に対してくじけ難くなる
ハーディネスが高いと、仕事に対してくじけてしまうことが少なくなることがわかっているよ。
心理学者の西坂氏の幼稚園教諭を対象に行った研究によれば、ハーディネスが高い幼稚園教諭は、仕事の量が多かったり、時間が足りないことをストレスと感じにくい傾向があることがわかっているんだ。
ハーディネスが高いと、自分に与えられた業務を一生懸命できる範囲でやりとげる一方、休みは休みとしてしっかりと取ることができるよ。仕事とプライベートのバランスを取ることが上手だから、仕事に対してネガティブになりにくいんだね。
子育てに不安になりにくい
ハーディネスが高いと、子育てをする際に不安定な気持ちになりにくいよ。
看護学を専門とする今野氏らの研究によれば、ハーディネスが高い母親は子育てにおいて不安やうつ気分、不全感を感じにくいことがわかったんだ。逆に言えば、ハーディネスが低い母親は子育てに強い不安やうつを感じていたということで、産後1ヵ月たっても不安定な気持ちが強かったそうだよ。
子どもとは言葉を介したコミュニケーションが難しいから、言うことを聞かずに危険なことをしたり、必ずしも怪我や病気のことを伝えてくれなかったり、わからないことが多いよね。
そんなわからないことだらけで不安が高まりやすい子育てでも、ハーディネスの高さはプラスの力を発揮してくれるんだ。

高いパフォーマンスを発揮できる
ハーディネスが高いと、仕事や子育てだけではなく、運動でも高いパフォーマンスを発揮させてくれるんだ。
テヘラン大学で行われた大学の運動選手を対象にした研究では、ハーディネスが高い選手はそうではない選手に比べてスポーツで高い成果を出しやすいことがわかったんだ。
練習や試合に望む心構えがパフォーマンスに影響を与えてくれたのかもしれないね。
楽観主義
ハーディネスが高いと、楽観的に物事を見ることができるようになることも知られているんだ。
心理学者の城氏が行ったハーディネスとパーソナリティ特性の関係を調べた研究によれば、ハーディネスと楽観主義には強い関係があることが分かったとのことだよ。
楽観的な物事の見方・感じ方ができるとしたら、「こうあらねばならない」と自分を追い込むこともなくなるので、ストレスからだいぶ距離が取れそうだね。

ハーディネスの鍛え方
では、ハーディネスの鍛え方もみていくことにしよう。
ハーディネスは性格特性なので、先天的に高い人とそうではない人がいるのは事実だよ。けど、決して鍛えていけないものではないんだ。意識的にトレーニングさえ積んでいければ、誰もがハーディネスを高めていけるよ。
ハーディネスの3Cに応じて、それぞれの鍛え方を解説していくね。
自分を見つめなおす
まずはハーディネスのうち、コミットメント力の鍛え方をみていくよ。
コミットメント力を鍛えるには、マインドフルネスがおすすめだよ。マインドフルネスによって自分の人生の価値を見つめなおすんだ。
コミットメントとは、困難な状況になったとしても、その場にとどまって対応することができることを意味するんだったよね。つまり、簡単には諦めてしまわずに、努力し続ける勇気と言えそうだね。
この力を鍛えるためには、「自分は人生にどんな意味を見出しているのか」「何を楽しいと感じるのか」「どうなりたいのか」といったことを明確にしていくことが大事なんだ。マインドフルネスを通じて、こういったことを明確にしていくことができるよ。
マインドフルネスについて詳しく知りたい人はマインドフルネス瞑想の記事をみてみてね。人生の価値を見つめなおすにはジャーナリングの記事もおすすめだよ。

過去に乗り越えた経験を思い出す
次はハーディネスのうち、コントロール力の鍛え方をみていくよ。
コントロール力を鍛えるには、過去に自分が乗り越えることができた経験を思い出すことが効果的なんだ。
コントロールは、起きた問題に対して諦めるのではなく、自分が取れる行動を取ろうすることを意味するんだったよね。
人にはネガティビティ・バイアスがあるから、ネガティブなことの方をよく覚えているものなんだ。だから、問題が起きると「またうまくいかない」と考えてしまう傾向があるんだよ。
だけどその傾向に流されるままだと、本当は乗り越えられたであろうことも諦めてしまって、後で悔しい気持ちになってしまうんだ。
そんな時、意識的に「過去自分が乗り越えたこと」を思い出すようにすると、「以前上手くいったことを今回応用できるかもしれない」と思えるようになりやすいんだ。
「そういわれてももう諦める癖が付いちゃっているし…」という人もいるかもしれないね。そんな人は逃げ癖の克服法をまとめた記事ものぞいてみてね。

毎日にちょっとした変化をつける
最後にハーディネスのうち、チャレンジ力の鍛え方をみていくよ。
チャレンジ力を鍛えるには、毎日に「変化」をもたらすことが大事になるんだ。
チャレンジは、困ったことが起きたとしても、その中に「自分を成長させてくれるものがあるはず」と諦めずに努力し続けることを意味するんだったよね。だからチャレンジ力を鍛えていこうと思ったら、意識的にちょっとした変化を作り出していくといいんだ。
なぜなら、「変化」は「困ったこと」の一つになり得るからだよ。「変化」は、今まで経験したことがない現象で、そのあと何が起きるかわからないものなんだ。
「変化」といっても「脱サラして起業しよう」とか「世界旅行に行こう」とか、なにもそんな大冒険をしなくてもいいんだ。コンビニで新作スイーツを買ってみるとか、いつもとは違う道で帰宅してみるとか、そんな些細なことでも大丈夫だよ。
それだけでも立派な「変化」で「困ること」なんだ。スイーツが気に入るかは買って食べてみるまで分からないし、違う道で帰ったら道に迷っていつもの帰宅時間より遅くなってしまうかもしれない。
けど、その一つ一つの小さな積み重ねがチャレンジ力を間違いなく鍛えてくれているんだ。
変化を起こしていく方法としては、なりたい自分になる方法の記事も参考になるよ。

ハーディネスまとめ
心理学には「心の強さ」が二つあるんだね。それが回復力を意味するレジリエンスと、防御力を意味するハーディネスなんだ。今日はハーディネスを中心に解説したよ。
ハーディネスが高いと、仕事や子育て、運動にいい影響を及ぼすんだね。柔軟なものの見方や考え方とも関係があるみたい。
ハーディネスは後天的に鍛えることができて、ハーディネスを構成する3つのC、つまりコミットメント・コントロール・チャレンジに応じて鍛えていけるといいよ。
「少しここが弱いな」と自分が思うCを中心に鍛えていけると良さそうだね。
