「てんかん」と聞くと「突然けいれんし始めて倒れる」といったイメージがある人も多いんじゃないかな。けど、そのイメージはてんかんのほんのわずかな一面しか捉えられていないんだ。
そもそもてんかんはとても誤解の多い病気で、かつて統合失調症、躁うつ病と並んで「三大精神病」と言われていたこともあるんだ。今ではこの考え方は否定されていて、てんかんは精神的な病ではなく「脳の障害」であることが医学的にはっきりしているよ。
このように、てんかんは精神的な病ではないのだけど、間違われても不思議じゃないくらい精神病と似通った症状も多いよ。だから「精神的な病ではない」ことをしっかりと理解するには、てんかんのこともよく知っておく必要があるんだ。なので、ココロジーの記事でもてんかんを解説するね。
てんかんの基本的な症状と原因、接し方をおさえて、一緒にてんかんについての理解を深めていこう。
目次
てんかんとは
てんかんとは、脳の神経細胞が突然激しい電気的興奮をすることで発作が起きる病気のことだよ。
てんかんは決して珍しい病気ではなくて、だいたい1000人に7人の割合でてんかんになる人がいるよ。神経疾患の中では最も患者さんの数が多いんだ。
てんかんのメカニズム
てんかん発作における電気的興奮のメカニズムを詳しく解説するね。
脳には大きく脳の信号を促進する細胞と抑制する細胞の2つがあるよ。この2つのうち抑制系の細胞が脳神経の興奮を何かしらの理由で抑えられなくなってしまうと、電気的興奮が連鎖的に脳内に拡散してしまうんだ。興奮しなくてもいい細胞まで興奮させてしまうんだね。この結果がてんかん発作なんだ。
脳のどこが興奮するかで症状が変わってくるよ。まぶたの動きを司る脳部位の電気的興奮が生じれば、自分の意識とは無関係にまぶたがぴくぴくする、といったぐあいだね。他にも後頭葉に異常な電気的興奮が起きればピカピカと光ったものが見えたりするし、頭頂葉に起きれば音が聞こえたり焦げ臭いにおいがしたりするんだ。
てんかんの種類と症状
てんかんにはいくつかの種類があるんだけど、大きく焦点発作と全般発作の2つに分けられるんだ。
焦点発作(部分発作)
焦点発作とは、大脳の片側の一部からてんかん発作が始まる症状のことだね。かつて部分発作と呼ばれていたものと一緒だよ。過剰な電気的興奮が「脳の一部」に限定されて起こるから部分発作と言われていたんだ。
でも、国際抗てんかん連盟(ILAE)が「部分発作だと『部分』の意味が曖昧。『焦点』の方が『特定の脳部位が興奮している』といったニュアンスを適切に示せる」との理由で2017年に名称を変更したんだよ。
焦点発作は、発作中に意識があるかないかで更に分類されるんだ。意識があるものは焦点意識保持発作(単純部分発作)、意識を失ってしまうものは焦点意識減損発作(複雑部分発作)と言われるよ。
焦点意識保持発作の特徴は、発作中に意識があることだね。そのため発作中のことを覚えておくことができるし、発作の前兆に気づけることもあるんだ。焦点意識保持発作が起きると身体がねじれたり、顔が突っ張ったりするよ。目がちかちかするなど感覚発作もあるんだ。
対して焦点意識減損発作の特徴は、意識を失って朦朧状態になることなんだ。意識はないけど動き回ったり、口をくちゃくちゃさせたりといった症状がみられるよ。
全般発作
全般発作とは、大脳の両側に電気的興奮が一気に生じることでてんかん発作が始まるてんかんのことだよ。
全般発作の中でも強直間代発作(きょうちょくかんたいほっさ)がもっとも代表的なてんかんと言われているんだ。「突然意識を失って倒れてしまう」症状を示すので、一般の人が「てんかん」から連想するのはこの強直間代発作かもしれないね。全身が強直(固まり)、手足をがくがくさせる症状がみられるよ。
その他、ミオクロニー発作もあるよ。手足などの筋肉がピクッと突発的に動く発作がみられるんだ。光によって誘発されやすいと言われているよ。
てんかんの原因
国際抗てんかん連盟(ILAE)はてんかんの原因を以下の6つ想定しているよ。
- 構造的(脳の構造的異常)
- 感染性(感染の結果)
- 免疫性(自己免疫性脳炎が原因)
- 代謝性(生まれつきの酵素不足等)
- 素因性(遺伝子の異常)
- 原因不明
その中で代表的なものを3つ挙げていくね。
構造的
脳卒中などが原因で脳に傷を負うと、そのことが原因となっててんかんを発症することがあるんだ。このような原因を「構造的病因」というよ。
感染性
脳炎、脳症、結核、HIVなどの感染の結果としててんかんを生じることもあるんだ。このような原因を「感染性病因」というよ。世界では感染性病因によるてんかんが最も多いんだ。
原因不明
「原因は6つ」と言ったけど、実はてんかんの原因はまだよくわかっていないことのほうが多いんだ。てんかん患者の約60%は原因がわかっていないんだって。
てんかんになりやすい人っているの?
幼児と高齢者がてんかんになりやすいと言われているよ。乳幼児期の発症が一番多く、50歳を超えるとまた発症率が高くなるんだ。
幼児の場合、脳の発達過程で神経細部が上手く造られなかったことが原因のことが多いよ。一方、高齢者の場合は脳卒中や脳腫瘍など、脳に傷を負うことで発症することが多いんだ。
「遺伝はしないの?」と思う人も多いかもね。けど、てんかんの遺伝性は極めて乏しいと言われているんだ。
遺伝傾向が認められているてんかんもあるにはあるけど、それは家族性本態性ミオクローヌスてんかんや歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、ミトコンドリア脳筋症など極めて希な疾患の話だよ。1
てんかんの遺伝性についての心配がある方は、主治医に自分のてんかんの遺伝性について相談してみてね。
てんかんの調べ方
冒頭でも述べたように、かつててんかんは「三大精神病」と言われていたんだ。声をかけても反応がないので「解離」と思われたり、感覚発作のためにない音や臭いを感じるので「幻覚」と誤解されていたからだろうね。それくらい他の病気と見分けがつきづらいんだ。
てんかんなのか、それ以外の病気なのか。誤って診断されてしまうと、誤った対処法がとられてしまうから、ここはしっかりと調べる必要があるよ。発作のときの様子を詳しく聞いてもらったり、家族のことや普段の生活の様子などを伝える必要があるんだ。
中でもてんかんかどうかを見極める決め手となるのは脳波検査だよ。てんかんであれば「てんかん波」と呼ばれる特徴的な脳波が検出されることが多いからなんだ。
気になる人は一度脳波を調べてもいいかもしれないね。
てんかんに効く薬
てんかん患者の70%は薬で改善するんだ。しかも、その中の90%は単剤(1種類のお薬)で効果があるんだよ。
てんかん薬の効果は大きく「脳の興奮を抑える」「興奮を抑制する力を強める」「興奮するきっかけを抑える」の3つあるので、それぞれどんな薬があるのかみていくね。2
脳の興奮を抑える
脳の興奮そのものを抑える効果のあるお薬として代表的なのがカルバマゼピンやラモトリギンなどだね。
カルバマゼピンは焦点発作が生じるてんかんに対して使用されるよ。カルバマゼピンを飲む際の注意点は、服用の直前直後にはグレープフルーツを摂取しないことだよ。グレープフルーツに含まれる「フラノクマリン類」という物質が体内に吸収される薬の量を増やし過ぎてしまい、その副作用として血中濃度が上昇してしまうからなんだ。
ラモトリギンは焦点発作が生じるてんかん、全般発作が生じるてんかん両方に使えるよ。
興奮を抑制する力を強める
興奮を抑制する力を強める効果のあるお薬の代表がクロバザムやクロナゼパムなどだよ。
これらのお薬は、どちらかというと他のてんかんのお薬を補助するものとして使用されることが多いんだ。
興奮するきっかけを抑える
興奮するきっかけそのものを抑える効果をもつお薬にはレベチラセタムがあるよ。
レベチラセタムは焦点発作が生じるてんかんや、ミオクロニー発作にも有効とされているんだ。
身近な人がてんかんになったときの接し方
最後に、自分の身近な人がてんかんになったときのことを考えていこう。てんかんはまだまだ誤解されてしまうことも多いから、よき理解者になってあげたいよね。
「倒れないでね」はNG
「倒れないでね」とてんかんを持つ人に伝えるのは控えた方がよさそうだよ。理由は大きく2つあるんだ。
一つは、「そんなことは約束できないから」だね。てんかん発作は本人が起こそうと思って起こしているわけではないし、倒れようと思って倒れているわけではないんだ。きちんとお薬を飲んでいても症状が出てしまうことがあるし、そもそも薬が効かなくて苦しい思いをしている人もいるよね。
そんな人に現実的ではない約束をさせようとするのは、ますますその人を追い込んでしまう結果になってしまうんだ。
2つ目の理由は「倒れてしまうだけが症状ではないから」だよ。今まで解説してきた通り、てんかんには身体がねじれたり、顔が突っ張ったり、目がちかちかしたり、動き回ったり、口をくちゃくちゃさせたり、手足などの筋肉がピクッと突発的に動いたり、焦げ臭いにおいがしたり、と多彩な症状を呈するんだ。
このような多彩な症状があるにも関わらず「倒れないでね」と発言することは「この人はてんかんのことを理解していないな」と思わせるきっかけになってしまいかねないよね。
慌てない
身近な人がけいれんを伴うてんかん発作を呈したら慌ててしまうかもしれないね。けど、そんなときこそ冷静に対処する必要があるんだ。
例えば、けいれん中に当たって怪我をしないように、重たくて固いテーブルや椅子などをよけてあげるなどがそうだね。
けいれんを止めようと身体を抑えてしまったり、「食べ物や舌が喉をふさいで窒息するのでは?」と思って口の中にタオルを入れるなどしてしまうことがあるけど、これらもNGだよ。逆に怪我をしたり窒息のリスクがあるからなんだ。頭の下に枕などのやわらかいものを引いて安静にさせてあげてね。
以上のような対処をしてもけいれんが5分以上続く場合は、救急車を呼ぶことが望ましいよ。
「てんかん」のまとめ
今回の記事の要点は以下の5点だよ。
①てんかんは脳の異常な電気的興奮によって生じる。
②てんかんには焦点発作と全般発作の大きく2種類がある。
③原因は依然として不明なものが多い。
④てんかん患者の70%は薬がよく効く。
⑤てんかんには多様な症状があるので、症状に応じたかかわりが重要。
てんかんは種類が多くて細かい理解をするのは大変だけど、一緒に少しずつ勉強して誤解や偏見を持たない努力をし続けようね。