発達障害は、最近ネットやテレビでもよく聞くようになったよね。でも決してわかりやすい言葉じゃなくて、なんだかごちゃごちゃしてよくわからないよね。
今日はそんなややこしい発達障害について、基本を押さえていこう。基本と言っても「どう発達障害の特徴と付き合っていったらいいのか」「発達障害グレーゾーンがどうして生じるのか」など、とても大切なことをまとめたから参考になると思う。
チェックリストも用意したから、発達障害の特徴を知りたい人にもおすすめだよ。
目次
発達障害とは
発達障害とは、生まれつきの脳機能の障害のために、行動や情緒に特異さが生じ、生活に支障を来す障害のことだよ。
例えば、じっとしているべきときにそうできなかったり、言葉をうまく習得できなかったり、「空気を読む」ことが出来なかったりだね。発達障害は目に見える障害じゃないから、「行儀が悪い」「ちょっと変わった人」「失礼な人」などと誤解をされてしまいがちなんだ。
本人が誤解されてしまうだけでなく、養育者も「きっとまともな教育やしつけをしてこなかったんだろう」と誤解されてしまうこともあるよ。
でもそれは大間違い。大事なことだからもう一度繰り返すけど、「発達障害とは、生まれつきの脳機能の障害」なんだ。いくらどれだけしっかりと教育やしつけを行っていたとしても、行動や情緒に特異さが表れるよ。
発達障害の種類
一言で発達障害と言っても、実はいくつかの種類があるんだ。次にそれを見ていこう。
とはいうものの、「発達障害を分類する基準」によって、少し種類が変わってくるんだ。
・米国精神医学会が発行する精神疾患の分類と診断の手引き書であるDSM→正確な診断が目的
・世界保健機関(WHO)が作成した疾病の国際統計分類であるICD→国際調査が目的
・発達障害者支援法→各種障害に応じた細かな制度支援が目的
それぞれ分類する目的によって「発達障害」の定義が異なっているから、種類が変わってくるんだよ。例えば、DSMには知的障害は発達障害に含まれるけど、発達障害支援法では知的障害は含まれないなどだね。
こういった細かい違いはあるけれど、一般的に「発達障害」と言えば、下記のものが想定されることが多いよ。
・自閉スペクトラム症(ASD)
・注意欠陥・多動症(ADHD)
・限局性学習障害(SLD)
・知的障害
・チック症
・吃音症
この記事では、どの定義にも必ず含まれるほど代表的な発達障害であるASDとADHDをメインに、次の項目から詳しく取り上げるよ。
ASDとADHD以外の発達障害の種類については、以下で簡単に説明するね。
限局性学習障害
限局性学習障害(SLD)とは、知的な障害はないにもかかわらず、特定領域の知識の習得や使用に支障をきたす障害のことだよ。知能検査の結果は平均的な範囲にもかかわらず、算数が全くできなかったり、音読ができなかったり、漢字が書けなかったりといったことが起きるんだ。
北海道大学の関氏の研究によれば、読むことができないSLDでは脳の左側頭部が、計算ができないSLDでは両側頭頂間溝に障害がある可能性があるとのことだよ。
知的障害
知的障害とは、知的機能の障害が18歳ごろまでにあらわれ、日常生活に支障をきたしている状態だよ。知能検査の結果が70を下回ることが目安となっているんだ。知的障害が起きる原因はまだよくわかっていないようだよ。
チック症
チック症とは、本人がわざとやっているわけではないのに、身体の一部が素早く動いたり、声や音を発してしまう障害のことだよ。例えば、肩を上げ下げしたり、頻繁に鼻を鳴らしたりといった症状が出てくるんだ。チック症の明確な原因はまだわかっていないみたい。
吃音症
吃音症とは、いわゆる「どもり」のことで滑らかに話せない状態のことだよ。「コ、コ、コ、ココロジー」と言葉につっかえたり、「コーコロジー」と伸ばしたり、「……ココロジー」となかなか発音できなかったりするんだ。吃音症も、まだ原因は特定されていないよ。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症と注意・欠陥多動症についてより細かく見ていこう。まずは自閉スペクトラム症から。
自閉スペクトラム症はASDともいわれる発達障害の中で最も代表的なものの一つだよ。 原因は、脳機能のどこかしらに支障があるためと考えられているんだ。ただ、「内側前頭前野の活動が弱い」など様々な仮説が考えられているものの、未だハッキリとした原因はわかっていないみたい。
自閉スペクトラム症の「スペクトラム」とは「あいまいな境界をもちながら連続していること」を意味する言葉なんだ。黒から白に色が変わっていくグラデーションもスペクトラムの一種だね。「どこからが黒でどこからが白色なのか」って明確に線引きできないんだ。
ASDの場合はなんのグラデーションなのかというと、かつて知能・言語能力などの違いで別物として分類されていた「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー障害」のグラデーションなんだ。これらの障害は多くの共通点があり、「同じ症状が強く出たり弱く出たりしていると考える方が合理的なのではないか」と捉えられるようになってきたんだよ。
そこで、一つにまとめて「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼ぶことになったんだ。「発達障害と健常者のスペクトラム」ではないことと、「アスペルガー障害」の診断名はなくなったことに注意してね。
発達障害の「グレーゾーン」ってなに?
「発達障害グレーゾーン」と呼ばれる人たちは、「ASD(黒)とは言えないけど、健常者(白)とも言い切れない」人たちのことを指す言葉だよ。診断は明確に「黒」のときに出るものだから、発達障害グレーゾーンは正式な診断名ではないんだね。
ただ、何をもって「黒」と判断するかは医師のスキル、情報量、本人の情報伝達能力、家族からの情報の有無などの複合的な要因によって多少変化するんだ。だから「最初に行った病院では発達障害と診断されなかったけど、次の病院では診断された」ということも稀に起きることがあるよ。
ASDとして診断されるのは、以下の症状・サインがあるときなんだ。
症状・サイン
ASDの症状は大まかに①対人コミュニケーションが苦手、②同じことを何度も繰り返す、③感覚の障害の3つに分類できるよ。
①対人コミュニケーションが苦手
ASDの特徴としては、まず第一に人とのコミュニケーションが苦手なことが挙げられるよ。
ASDがあると相手の感情を正確に読み取ることが難しいんだ。なので、「またいつかご飯にでも行きましょうね」と相手が社交辞令のつもりで言ったにもかかわらず、「あのときの約束はいつ叶えてくれるんですか?」などと頻繁に催促してしまうようなことが起きるよ。
もちろん、社交辞令の是非はあるにはあるけれど、「社交辞令である」と気づけないと、人間関係に摩擦が起きてしまうことは避けられないかもしれないね。
対人コミュニケーションを苦手としている理由はほかにも「抽象的なことがわからない」も挙げられるよ。「この資料、この前みたいにいい感じにしておいて」と言われてもことも、「いい感じ」といった抽象的なことが分かりにくいんだ。
さらに、「視線が合わない」といった特徴も、対人コミュニケーションに問題を生じさせる理由になり得るよ。話し手からするとこちらを見てくれない相手に対しては良い印象を抱きにくいから、それがトラブルを生む火種になることもあるんだ。
②同じことを何度も繰り返す
ASDの特徴としては、「同じことを何度も繰り返す」もあるよ。いわゆる「こだわり」で、同じ場所を何度もくるくるまわったり、何度もその場をぴょんぴょんとはねたり、人の言葉を何度もオウム返ししたり、ずっと同じものを見続けたり、などだね。
ASDがあると「先を見通すのが苦手」と感じる人が多いので、何が起きるのか予想がつく単純で反復的なことに安心を覚えるんだ。
③感覚の障害
ASDの特徴として、「感覚の障害」も挙げられるよ。
例えば、Tシャツの首元についているタグが気になって着ることができないほど感覚に敏感だったり、あるいは逆にすごく寒い日でも半袖半ズボンで平気なほど感覚に鈍感だったり。
どの感覚が過敏か、あるいは鈍感かは人によってまちまちだよ。ある人は人の話し声が気になって仕方がないし、ある人は疲労感に気づきにくいことがあるんだ。
敏感にせよ、鈍感にせよ、自分の正確なコンディションに気が付きにくいことの表れなので、怪我や体調不良の原因となってしまうんだね。
大人のASDチェックリスト
「自分はASDなのかどうか知りたい」と思った人もいるかもしれないね。そんな人のために自分で過去と現在の症状をチェックできるRAADS-14と呼ばれる検査を参考にチェックリストを用意してみたよ。
ただし、このチェックリストはあくまでも「目安」であることには注意してね。検査結果が独り歩きしないように、あえて本当のものから質問項目を減らしてあるんだ。
正確な診断のためにはより多くの情報が必要だし、医師の診察が欠かせないんだ。どうしても気になる人は必ず医療機関を受診するようにしてね。
得点が高ければ高いほど、ASDの傾向は高いと言えるよ。
※なお、このリストはあくまでも目安として使ってほしいんだ。正式な診断のためにはより多くの情報が必要となるので、必ず医療機関を受診してね。
子どものASDのチェックリスト
「自分の子どもがASDの特徴があるかも?」と気になった人もいるかもしれないね。その場合は、以下の特徴に当てはまっていないかをチェックしてみて。
ただ、こちらもあくまでも「目安」だから参考程度にしておいてね。
「いいえ」の数が多い場合、ASDの特徴が多いと考えていいかもしれないね。もし、子どもが発達障害かが気になった場合は、客観的な材料として連絡帳や通信簿などを持って専門機関に相談に行くとスムーズだよ。
本人の工夫
ASDの特徴は生まれつきの特性なので「治す」「治さない」といったものではなく、工夫や仕組みで苦手を補ったり、得意を活かしていくものだよ。具体的に考えていこう。
ASDの特徴として「こだわり」があるのだけど、言葉を替えれば「一つのことにとことん熱中できる」ということだよ。ある一つの分野に熱中すれば、その分野のエキスパートになれるかもしれない。魚にとても詳しくなれたり、緻密な計算が必要な数学に長けたりだね。
一方、感覚が鈍感で疲れを感じにくいため、熱中するのはいいけど体調を崩しがちだから、タイマーをセットして集中する時間を区切るなどの工夫ができるといいよ。
さらに「こだわり」は「融通が利かない」とも言えるけど、同時に「決まっていることは得意」とも言い換えることができるよね。事実、北海道大学の沼崎氏の研究によれば、ルーティン作業をこなし続けられていることが仕事へのやりがいや意欲、向上心につながっていると回答している人が多いことがわかっているよ。
周囲の対応
周囲の人がASDの特徴を持つ人とどのようにかかわっていけばいいかも考えてみよう。
大人のASD
相手がASDの特徴を持つ大人の場合、優先順位がつけられないので、一緒に日々のルーティン作業を考えるといいかもしれないね。
社会人の場合、「朝自席につく前に、既に出勤している人がいれば相手の1メートルやや斜め前まで近づいて『おはようございます』とあいさつし、自席についたら着信履歴の古いものからメールを確認する。『すぐに返事を下さい』「いついつまでにご対応を』などと書かれたメールは…」といった形だね。
感覚が鈍感で集中しすぎる人には、要所要所で声掛けして適度に休憩を促してあげよう。聴覚過敏の人にはイヤーマフの着用を許可するなども大切な配慮だね。
子どものASD
ASDの特徴を持つ子どもに対しては、「無理をさせない」が大切になるよ。例えば、無理して友だちを作らせようとするみたいなことだね。1人で過ごすことの方が快適な子どももいるんだ。
また、「発達障害=才能がある」と決めつけて本人の希望を無視して詰め込むことも避けるといいね。熱中するものがあるのも、本人が好きだから熱中できるのであって、人から強制されたら嫌になってしまうのはASDのあるなしは関係なく同じだよ。
ASDの特徴を持つ子どもに対しては、具体的な言葉で伝えるのも忘れずに。「お行儀良くしなさい」ではなく、「電車の中では大きな声を出さないで、お椅子に座っていてね。お外を見たいときは、靴を脱ぐよ」の方がより伝わりやすいんだ。
注意欠陥・多動症(ADHD)
注意欠陥・多動症はADHDともいわれる発達障害の一つだよ。ADHDはその名の通り、注意力の弱さと動き回ることを大きな特徴としているんだ。原因として脳の前頭前野の機能障害と言われることがあるけど、まだ詳しいことはわかっていないみたい。
多動に関しては、大人になると落ち着いていくと言われているよ。子どもの頃に教室で動き回っていた生徒も、大人になれば会社のデスクで数時間は座っていられるようになるという感じだね。
ただ、多動が落ち着いたように見えるのは外見上の話で、頭の中は大人になってからも依然としていろいろな声や音でガヤガヤしていることも多いんだ。実際、大人になってからADHDのお薬を飲んで「普通の人はこんなに頭の中が静かなんですね」と感想を述べる人もいるくらいなんだ。
では、もう少し細かくADHDの症状・サインを見ていこう。
症状・サイン
ADHDの症状は大まかに①注意力のなさ、②落ち着かなさ、③突発的の3つに分類できるよ。
①注意力のなさ
ADHDの症状として「注意力のなさ」があるよ。一つのことに集中していられなかったり、大切なものを大切だと意識することに苦手さがあるので、お財布やケータイですらよくなくしてしまったりするんだ。
特に小学校以降の教室で座って授業を受け続ける場面で、この注意力のなさが浮き彫りになることが多いんだ。授業に集中することができないので、つい動き回ってしまうんだね。症状が強いときは教室から飛び出してしまったりするよ。
②落ち着かなさ
ADHDの症状として「落ち着かなさ」もあるね。絶えずきょろきょろしたり、貧乏ゆすりをしたり、うろちょろしたりしているんだ。
順番が待てず割り込んだりすることもあるから、トラブルに発展することもあるよ。一方的にしゃべり続けたり、人がまだ話し終わっていないのに話始めてしまうなどで、うまくコミュニケーションが取れないこともあるんだ。
③突発的
ADHDの症状として「突発的」もあるんだ。「あ!」と気になる物を見つけたら、周りを確認せずに飛び出してしまったり、触ろうとしたりだね。車通りが多いようなところでも突発的・衝動的な行動を取ってしまうから、危ない目にあうこともしばしばだよ。
大人のADHDのチェックリスト
「自分はADHDなのかどうか知りたい」と思った人のために、自分で現在の症状をチェックできる ASRSと呼ばれる検査を参考にチェックリストを用意してみたよ。
ただし、このチェックリストはあくまでも「目安」であることには注意してね。検査結果が独り歩きしないように、あえて本当のものではなく、質問の仕方を変えたものを記載しているよ。
「頻繁にある」が多ければ多いほど、ADHDの傾向は高いと言えるよ。
※なお、このリストはあくまでも目安として使ってほしいんだ。正式な診断のためにはより多くの情報が必要となるので、必ず医療機関を受診してね。
子どものADHDのチェックリスト
「自分の子どもがADHDの特徴があるかも?」と気になった人もいるかもしれないね。その場合は、以下の特徴に当てはまっていないかをチェックしてみて。
ただ、こちらも例にもれず「目安」として利用してね。
「はい」の数が多い場合、ADHDの特徴が多いと考えていいかもしれないね。もし、子どもが発達障害かが気になった場合は、客観的な材料として連絡帳や通信簿などを持って専門機関に相談に行くとスムーズだよ。
本人の工夫
ここまで読んで「ADHDの特徴が自分にも少なからず当てはまるかも」「うちの子はADHDかも?」などと思った方もいるんじゃないかな。子どもの5~6%程度、大人の3~4%がADHDだとみられているので、決して珍しい障害じゃないんだ。
ADHDの特徴は、ASD同様生まれつきの特性なので「治す」「治さない」といったものではないよ。いかに工夫や仕組みで苦手を補ったり、得意を活かしていくかが大事なんだ。具体的にみていこうね。
ADHDの特徴として「不注意」や「多動」があるよ。だから単調なものが苦手なんだ。流れ作業などは苦痛すら感じるかもしれないね。
ただ、刺激の多いものは大好きで、変化が激しいものが向いているよ。例えば、料理・写真、建築などクリエイティブなものなどがそうだね。ここに挙げた仕事は「これをやったらすぐにこれをしないといけない」と、なかなか忙しい仕事だけど、そこに多動力が活きてくるんだ。
ADHDを持つ人は人懐っこい人も多いから、もし自分がそのタイプで対人接触が苦手ではないのなら、美容師などもいいかもしれないね。一方で、「突発的・衝動的」な面があるから、車に人を乗せる仕事は急発進・急ブレーキで事故のリスクが高まるかも。
とはいうものの、ぱっぱと行動できるのがADHDの持つ強みなので、自分が少しでも「いいな」「楽しいな」と思うことなのであれば、積極的になんでもチャレンジしてもいいんだ。それも十分、ADHDの特徴を活かしていると言えるよ。
ネットを見ると「ADHDに向いてる仕事/向いてない仕事」といった記事をよく見るけど、たとえ「向いてない仕事」の中に自分がやりたかった仕事があったとしても、簡単にはあきらめないでいいんだ。やってみるまで「自分に向いていないかどうか」は誰にもわからないよ。
周囲の対応
ADHDの特徴を持つ人に対して、周囲の人がどのようにかかわっていけばいいかも考えてみよう。
大人のADHD
ADHDの特徴を持つ大人に対しては、集中力が必要な場面では、刺激が少なくなるように手助けしてあげるといいよ。
例えばパーテーションで隣の人の作業が目に入らないように工夫してあげたり、1人で関係する仕事を任せたりだね。指示をする際は、短く具体的な言葉をかけてあげることも大事だよ。
子どものADHD
ADHDの特徴を持つ子どもに対しても、短く具体的な言葉をかけてあげることは大事なんだ。例えば、高いところに登って危ないとき、「怪我するよ。危ないよ」と言う代わりに、「降ります」と具体的な行動を指す言葉をかけてあげてね。
一緒にルールを決め、そのルールを守れたら具体的に褒めることもできるといいね。「言ったことをちゃんとできたね」と言う代わりに「夜ご飯食べおわってから30分以内に歯磨きしようねって一緒に決めたことをやってくれてありがとうね」みたいな感じだよ。
二次障害
発達障害があるとあらぬ誤解を受けたり、どうしても出来ないことがあったり、他の人とは異なる考え方や捉え方をすることで大きく悩んだりすることがあるよ。
このような事柄がストレスとなり、発達障害以外の病を発症するのが二次障害と呼ばれるものなんだ。代表的な二次障害を説明するね。
うつ病
発達障害があると、どうしても「普通とは違う」と評価されたり、自分自身も「他の人が簡単にできることができない」と感じる機会が多くなるんだ。そのためにいじめなどの対人トラブルに巻き込まれたり、自尊心が傷ついたりし、結果的にうつ病を発症してしまうんだ。
「うつ病の治療を行ってもなかなか治らないのでよくよく検査してみると、発達障害が隠れていた」なんてことはとても多いんだよ。
適応障害
適応障害も、うつ病同様に発達障害の二次障害として表れやすい障害だよ。
発達障害がある人はコミュニケーションが苦手な人が多いので、思うように自己主張ができず、また感覚が鈍感なこともあり、1人であらゆる作業を抱え込んでしまうんだ。気が付いたときには身体が動かないほど疲弊している、なんてこともよくあるよ。
このような状態になるまで働き続けて、ついには働くこと自体が嫌になる適応障害を発症するに至るんだ。
強迫症
強迫症とは、生じた不安や罪悪感を消すために儀式的な行動を繰り返す精神疾患のことだよ。
強迫症も発達障害の二次障害になりやすいんだ。ASDの場合は、元々持っている「こだわり」が高じて、本人が苦しくなるまで止められなくなってしまうことがあるよ。
例えば、「数字が1から順番に並んでないとイヤ」というこだわりがあった場合、幼いころは手に取れる物の数が少なかったけれど、大人になってから見える世界が広がるとあらゆる数字が気になってどうしようもなくなってしまう、ということがあるんだ。
仮に「自分を変える8つの法則」といった本が出版されたら、同じようなタイトルで数字の1、2、3、4、5、6、7、9、10が入っている本を購入しないと気が済まなくなるよ。本人も「こんなことしても意味がない」「ばかばかしい」と感じて辞められない場合、それは強迫症を併発している可能性が高いんだ。
ADHDの場合も強迫症が二次障害になりやすいんだ。なぜならADHDのある人は衝動的でケアレスミスが多いがゆえに「ミスをしないように」と確認を繰り返すことがあるのだけど、この確認が段々と強迫症状へと変化してくことがあるからだよ。
PTSD
PTSDも発達障害の二次障害になりやすいんだ。実は、ASDなどの発達障害があると同じ出来事でもトラウマとなりやすく、トラウマ反応も起こりやすいことが知られているんだ。
トラウマになるような体験は、その人が今までしたことがない体験なんだ。だから誰にとっても「この後どうなるのか?」は分からないものなんだけど、発達障害がある人はともともと先を見通すのが苦手なので「この後どうなってしまうのか?」に対する不安が人一倍強くなるんだ。
さらに発達障害があると疲れや嫌なことがあるとフラッシュバックしやすく、この特性も悪い意味でPTSDとの親和性を強めてしまうんだね。
PTSDについて詳しく知りたい人は心的外傷およびストレス因関連障害をまとめた記事を読んでみてね。
それ本当に発達障害?
最後に、発達障害と誤解されているけど実は発達障害ではなかったという、わりとよくある可能性について見ていくことにするね。
不安症
不安症は発達障害と間違われやすい障害の一つだよ。特に間違われやすいのは不安症とADHDだね。
この記事でも何度か紹介しているように、ADHDは多動や不注意があるんだ。この多動や不注意が不安症と間違われやすいんだよ。
不安になると人は誰でもソワソワするのだけど、不安症があるとそのソワソワが行動にも現れて、その場を頻繁にうろうろするようになるんだ。当然、不安で頭がいっぱいになると、目の前のことにも集中できなくなるよね。
こういった行動をはたから見ると、あたかもADHDがあるために動き回り、不注意になっているように見えるんだ。
この二つを鑑別するためには、しっかりと過去の様子についての情報収集をし、生まれつきのものなのか人生の途中で生じたものなのかを見極めることが大事になるよ。生まれつきならADHD、途中で生じたなら不安症である可能性が高いね。
不安症については不安障害の種類と原因も読んでみてね。
強迫症
強迫症も発達障害と間違われやすいと言われているよ。強迫症の中でも「強迫行為」「ため込み強迫」「強迫性緩慢」の症状が、特にASDと間違われやすい症状なんだ。
一つ目は「強迫行為」だよ。「二次障害」のところでも紹介したように、ASDの「こだわり」と強迫症の強迫行為がとてもよく似ているからだよ。でも理論上はこの二つを分けるのは簡単で、それは「自我違和性の有無」を確認すればいいんだ。自我違和性とは「ばかばかしいことをやっている」意識のことで、ASDと違って強迫症の場合は自我違和性があるんだ。
とはいえ、ASDの特徴の一つにコミュニケーションの苦手さがあるから、自分のこだわりついてうまく話すことが難しかったりすると、自我違和感があるかどうかを第三者が見極めることは難しくなるよ。
二つ目は「ため込み強迫」。これもASDと間違われやすいよ。ため込み強迫とは、「いつか使うかもしれない」と不安になり、物を全然捨てられなくなる状態なんだ。これもASDの特徴である「優先順位のつけられなさ」のために結果として溜まっているのか、その区別は案外難しいんだよ。
三つ目は「強迫性緩慢」だね。強迫性緩慢は頭の中で強迫観念と強迫行為を行う症で、これがあると現実の事柄が疎かになるんだ。その様子が「人間関係に興味がない」と思われ、ASDの特徴のように見えてしまうこともあるんだよ。
まとめ
発達障害はどのように定義するかで、「何を発達障害と考えるか」は変わってくるんだ。けど、どのような定義でも必ずと言っていいほど含まれる代表的な発達障害に自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥・多動症(ADHD)があるので、この記事ではこの二つに力点を置いて解説したよ。
ASDは①対人コミュニケーションが苦手、②同じことを何度も繰り返す、③感覚の障害が代表的な症状だったね。一方ADHDは①注意力のなさ、②落ち着かなさ、③突発的が代表的な症状だよ。
「自分や自分の子どもが発達障害かも?」と感じた人用にチェックリストを作ってみたから「目安」として参考にして欲しいな。もしどうしても気になるようなら、病院のような専門機関に行くことをお勧めするよ。
発達障害は生まれつきの障害で治すものではないけれど、仕組みや工夫でうまくその特徴と付き合っていけるといいよね。