葛藤とは?意味と使い方を紹介!心理学的には「複数の欲求が同時に存在する状態」

2023.05.16 Tue
シンくん
案内人 シンくん
ライター
執筆 梅本 武史 臨床心理士・公認心理師
葛藤とは?意味と例
葛藤とは?意味と使い方を紹介!心理学的には「複数の欲求が同時に存在する状態」

何かに葛藤しているときって苦しいよね。

でも、そもそも「葛藤」ってどんな状態を指すんだろう?

今回は葛藤という状態を心理学的に分解して、葛藤にもメリットがあることや、葛藤から抜け出すヒントをお伝えするよ。

葛藤は欲求がぶつかり合ってる状態なんだ
 

葛藤とは?

葛藤とは、複数の欲求が同時に存在し、一方の欲求を満たそうとすると、もう一方の欲求を満たせない状態のことなんだ。英語ではコンフリクト(conflict)というよ。

葛藤は、「こうしたい」「こうなりたい」といった、自分の理想や設定した目標通りに物事が運ばない状況で生じやすく、ストレスを抱える原因になるんだ。

葛藤の由来と言葉の使い方

葛藤という言葉の由来は仏教用語で、葛は「かずら」、藤は「ふじ」。葛も藤も植物の蔓草(つるくさ)で、葛と藤が絡み合ってなかなか解けないことから葛藤の語が生まれたと言われているんだ。

葛藤の言葉の使い方の例文を挙げると、「葛藤を抱える」「葛藤に苦しむ」といった形だよ。

どっちを選んだらいいだろう?
 

葛藤が起きる理由

葛藤は複数の欲求がぶつかり合うことで生じるよ。葛藤を生み出す欲求の種類と、葛藤自体のパターンを紹介するね。

葛藤を生み出す欲求の種類

社会心理学者マレーは、人間の欲求を生理的欲求と社会的欲求の大きく2つに分けたんだ1

生理的欲求は12種類あって、代表的な例は食べ物が欲しい「食物欲求」や、適正な体温を維持して体調を整えたい「暑熱・寒冷回避欲求」などがあるんだ。

社会的欲求は、28種類あるいは59種類あると言われているよ。代表的な例は、お金や財産など色々なものを手に入れたい「獲得欲求」、他人と交流したい「親和欲求」、周りから認めてもらいたい「承認欲求」、他人を支配したい「支配欲求」などがあるんだ。生理的欲求と社会的欲求を全部合わせると、40通りあるいは71通りあると言われているよ。

人間の中にたくさんの欲求があるからこそ、色んな欲求がぶつかりあって、葛藤が生まれるんだね。

これも獲得欲求の1つ
 

葛藤のパターンと解消方法

社会心理学者レヴィンは、葛藤の基本的なパターンを3つに分けているんだ2

接近−接近
接近とは、目の前に二つの選択肢があり、そのうち一つを選ばなければならないが、どちらも魅力的な状況。
例:ランチメニューに二つ食べたいものがあるが、どちらか選ばなければいけない。

接近-回避
回避とは、その人にとって魅力的でない状況のこと。やりたいけれど、そうすると新たな問題が起こる可能性がある状況。
例:遊びに行きたいけれど、遊ぶとお金が無くなってしまう。あの人と仲良くなりたいけど、話しかけるのは緊張する。

回避-回避
魅力的でない状況が二つ重なり、どちらも回避したいと思い、行動が起こせなくなる状況。
例:歯医者には行きたくないけど、行かなければ虫歯がひどくなる

上記の葛藤の3パターンは、二つの欲求が同じくらいのレベルで拮抗するときに生じるとされているよ。反対に言えば、どちらかの欲求が大きくなると葛藤が解消されるんだ。

例えば、ランチメニューで「よく考えたらこっちはカロリーが高いので、もう一方を選ぼう」とか、「歯医者に行きたくないけど、歯が痛いからさすがに治療しないとまずい」といった状況だとみんなも悩まないよね。

迷ったときは、どっちの欲求が大きいか整理すると葛藤が解消される場合があるよ。

宿題やりたくないけど、怒られたくないほうがデカいから頑張る…
 

葛藤は2種類ある

心理学では、葛藤は「自分の中で起こる葛藤」と「対人関係で起こる葛藤」があるんだ。それぞれ説明していくね。

自分の中で起こる葛藤

精神分析の創始者フロイトは、人間の心の中に「エス」「超自我」「自我」の三つの役割があると仮定していたんだ3

3つの役割を車の運転に例えながら説明するね。「エス」は、「ルールを破ってスピードを出したい」と本能のままに動く役割、「超自我」は、「信号機や標識を守ろう」と道徳的な役割、「自我」は、「エス」「超自我」の二つの役割バランスを取って、交通ルールを守りつつ、時間に遅れないよう目的地まで運転するドライバーの役割だよ。

フロイトは、ドライバーの役割を持つ自我を重要視していたんだ。ただ、自我は、エスと超自我の欲求の板挟みになり葛藤が生じやすいよ。葛藤が強くなりすぎると、不適応状態になるので、治療が必要とフロイトは考えていたんだ。

ただ、フロイトも葛藤自体は否定していないよ。葛藤できることは、自我が強くて人間的に成熟している証とも言っているよ。葛藤する力をポジティブに捉えているなんて意外だよね。

悩んだっていいじゃないか
 

対人関係で起こる葛藤

対人関係の場面で起こる葛藤があるよ。自分と相手の「こうしたい」「こうなりたい」欲求が異なる場合、お互いに考えが食い違って葛藤が起こるんだ。対人間で葛藤が起きやすい場面を説明していくね。

自分と他者の意見が異なる場面

自分と他者と意見が異なる場面での葛藤について、日本でも数多く研究されているんだ。実際の生活でも相手と意見が違うときって、どうしたらいいかわからなくて困るよね。

社会心理学者の加藤司氏は、相手の意見に同調するのでもなく、自分の意見を突き通すでもなく、話し合いを通して相互に折り合いをつける方法を取れる人が最も精神的健康度が高いと言っているよ4

具体的には、意見が食い違う場面に遭遇したときに、いったん落ち着いて自分の考えや感じたことを整理して、何を相手に伝えるかを決めるんだ。そして、「私は、〜と思います」と私を主語にした伝え方(I(私)メッセージ)で、相手に自分の考えを伝えるよ。その後に、相手の考えも丁寧に聞いて、お互いに納得できそうな点を探っていくのが大切なんだ。

詳しくはアサーションの記事を読んでみてね。

アサーションとは?人間関係がラクになる簡単入門トレーニング

みんなで意見を出し合って、飲み会の店を決めました
 

ヤマアラシ・ジレンマ

ヤマアラシ・ジレンマとは、「人と近づきたい」欲求と「近づくことで傷つく状況を避けたい」欲求がぶつかり合って生じる葛藤だよ。ヤマアラシ同士は近づきすぎるとお互いのトゲで相手を刺してしまうから、ほどほどの距離を取るようになったのが語源なんだ。

人は他人との適切な距離の感覚を自分の中で持っていて、相手によってもそれぞれ違うと言われているよ。自分の中での適切な距離感を取るために、「人と近づきたいけど、(自分にとって適切な距離以上に)近づきすぎたくない」「相手と離れたいが、離れすぎたくはない」葛藤が生まれるんだ。

それでも、ヤマアラシ・ジレンマのおかげで、空気を読んだり、相手との距離感を考えるきっかけになるので、社会で生きる上で必要な葛藤でもあるよ。

よい漫才も適切な距離感が大事
 

葛藤にはよい面もある

葛藤は悪い面ばかりではなく、よい面もあると言われているよ。その理由を話していくね。

葛藤保持力の考え方

日本の臨床心理学者、河合隼雄氏は人間の心の強さとして「葛藤保持力」に着目していたんだ5。「葛藤保持力」とは、自分の葛藤や悩みを持ち続ける力のことだよ。

悩み続けることは、結構エネルギーがいるんだ。悩むのは辛いから、誰かや何かのせいにして、悩むのをやめたほうが気持ちが楽になるかもしれないよね。それでも人生に影響を与える葛藤などは、真剣に考えた方がよいときもあるよ。葛藤や悩みが生まれたときに、自分が納得できるまで向き合って悩める「葛藤保持力」が必要だと河合氏は言っているんだ。

一つの葛藤に時間をかけて悩むことは、ある意味自分を成長させるきっかけになるのかもしれないね。

じっくり悩むって大事なんだね
 

対人関係の葛藤はアイデンティティ形成に必要

対人関係の葛藤は、「社会の中での自分らしさ」を見出すアイデンティティ形成のプロセスでも起こりうるんだ。

青年心理学者の杉村氏は、自分の意見に気づくことと、他者との意見の食い違いを相互調整するプロセスを経て、アイデンティティが形成されると言っているよ6。アイデンティティ形成は、自分の「こうなりたい」欲求を見つける作業でもあるんだ。自分に「こうなりたい」欲求があるからこそ、「こうなってほしい」と思う親や友人などの欲求がぶつかり合って葛藤になる場合があるよ。葛藤状態を自分なりに上手く解消していくのも、アイデンティティ形成にはとても重要なんだ。

葛藤が、自分のアイデンティティ形成にも役立つんだね。

 

親と相談して進みたい道を見つけたんだ
 

葛藤の意味のまとめ

ここまで葛藤について説明してきたよ。葛藤とは、複数の欲求が同時に存在し、一方の欲求を満たそうとすると、もう一方の欲求を満たせない状態のことなんだ。葛藤は2つの欲求が拮抗しあっているときに起こるよ。自分の中で整理して、どちらの欲求が大切なのか見えてくると、葛藤が解消されるんだ。

葛藤はネガティブに捉えられがちだけど、葛藤できること自体が人間の心の強さも表していて、人間の内面的な成長には必要でもあるよ。葛藤する状況に遭遇したときは、向き合って悩む時間も大切だと覚えておいてね。

葛藤は自分を成長させるんだね
 

これを読んだきみにはこれも読んでほしいな

おすすめコンテンツ
みんなの心が楽になる情報と出会えますように。