「理由はわからないけどなんか寂しい」
「恋愛がいつもうまく行かない」
「誰かに依存してしまう」
そんな経験はあるかな。
大人になっても見捨てられ不安が激しかったり、逆にすぐ関係を切りたがるなど人間関係がうまくいかない人の背景には「愛着(アタッチメント)」の問題が隠れている可能性があるんだ。
いわゆるアダルトチルドレンの生きづらさにも、愛着障害が関係しているという説もあるよ。
一方、最近よく耳にする「大人の愛着障害」という言葉には不正確な部分もあるんだ。この記事では、臨床心理士さん監修のもと愛着の定義を解説するね。愛着を適切に理解することで、愛着問題の乗り越え方を一緒に知っていこう。
目次
愛着(アタッチメント)とは?
愛着は心理学用語では「アタッチメント(attachment)」と呼ばれていて、「情緒的なくっつき(心理的結びつき)」を意味するよ。詳しく言うと「人や動物が特定の対象に対して形成する特別な情緒的結びつき」となるんだけど、これだけだとちょっと難しいから具体的に説明していくね。
赤ちゃんはお腹が空いたときとかオムツが濡れたときに、泣くことで不快感を伝え、抱っこでくっついたり、オムツを取り替えてもらったりして不快感を取り除いてもらうよね。赤ちゃんは、この「泣く→誰かを求める→お世話してもらう」流れを繰り返すことでお世話してくれた人を信頼し、情緒的結びつきを作ってていくんだ。これが愛着の形成過程だよ。
愛着の形成は、成長後の心の安定や対人関係のスタイルにも影響していくよ。
多くの人は、お母さんやお父さんがお世話するイメージを持つよね。実は、赤ちゃんが愛着を抱く対象は必ずしも血縁上の両親に限らないんだ。子どもの近くにいて、抱っことか頻繁にコミュニケーションをとったり声をかけて育てられる人なら、誰でも子どもが愛着対象になるよ。実際、小さい頃に両親からの愛情に恵まれなかったり、両親がいなかった人でも、信頼できる人と出会うことで安心して暮らしてる人はたくさんいるよね。
性格とか考え方の一部は子どものときに決まる部分もあるけど、大人になっても愛着関係を築く力は育ち続けるんだ。
愛着と愛情は別
愛着って愛情とどう違うの?と疑問にもつ人も多いよね。
愛着の原語であるアタッチメントには元々「くっつき」という意味があったんだけど、和訳では「アタッチメント=愛着」となったんだ。この和訳によって、「アタッチメントの問題=愛着障害 → 愛着障害=愛情の問題?」という混乱が生まれたよ。
でも愛着と愛情は似て非なるものなんだ。
愛情は親近感に近い一方的なもので、愛着はネガティブな気持ち、例えば不安や悲しさや寂しさが生じたときに誰かに求める「くっつき」のことだよ。
愛情を持って誰かと関わるのは一方通行でもできるよね。お母さんから子どもをぎゅって抱きしめたり、好きな人にチョコレートを渡したり。愛情を受け取る側としては、嬉しいこともあれば、「今じゃないな‥」「え、いらない」と感じることもあると思う。
一方で、愛着は必要とされている、求められているときに育んでいく相互的な関わりなんだ。
赤ちゃんが泣いているときにミルクをあげるお母さんの関わりや、不安や寂しさを感じたときにそばにいてくれることは愛着に繋がる関わり方だよ。
もちろん愛情を持って接する方がより安心して愛着を形成できるかもしれないけど、相手の求めていないときに愛情を与えたり、一方的に愛情を伝えていたら、愛着関係を築きにくいんだ。
愛情は愛着関係を形成するための一つの要素であって、すべてではないんだね。
つまり「愛着の問題がある=愛情不足のせい」ではないよ。愛着の問題は、愛情が少しすれ違ってしまったり、うまくキャッチボールできなかったりしたときでも発生しえるんだ。
「大人の愛着問題」の注意点
愛着はどんな人にも関わりのある問題だからこそ、言葉の取り扱い方には注意が必要だよ。
たとえば愛着に関してよく聞く言葉として「大人の愛着障害」というものがあるけれど、実はこれは正確な言葉でないんだ。
愛着障害はDSM-5(アメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル)などで明確な診断基準が存在するよ。一方で愛着障害の診断には「大人への愛着が持続的に欠落する社会的なネグレクトを受けている」など厳しい基準があり、実際に「愛着障害」と診断されることはほとんどないんだ。
また、行動遺伝学などの研究では「小さいうちは親などの影響を大きく受けるけど、思春期以降は本人の生まれつきの気質によって行動パターンが決まってくる」ことが明らかにされているよ。
これを踏まえると「愛着障害に苦しんでいる」と感じている人の多くは「愛着の問題はあったものの、正確な定義上の愛着障害ではなく、発達障害をはじめとした本人の資質が苦しさに影響している」ことが考えられるんだ。
「あなたは愛着障害ではない」と言われると自分の苦しみを否定されるように感じてしまうかもしれないけれどそんなことはないよ。むしろ「愛着障害」という言葉にこだわることで、苦しさの本質を見落としてしまう恐れがあるんだ。見落としを避けて心の健康を手に入れるためには「愛着障害」の視点だけでなく、多様な視点から自分を見つめ直すことが有効だよ。
「愛着障害で苦しい」と感じる人も、自分の苦しみの根っこを探して対処する方法を知るために臨床心理士や心療内科など専門家を使うことを考えてみてね。
愛着はなんで大切なの?
愛着を持つことや育くんでいくことは、社会で生きる上での色んな力に繋がるんだ。
愛着の問題を持ちながらも立派に生きてきた人はたくさんいると思う。もちろん、そのままでも大丈夫だけど、愛着関係を築いていく力をつけるともっと生きやすくなっていくんだ。
愛着の大切さについて、子どもが育っていく過程を参考にしながら解説していくよ。
人を信用できるようになる
赤ちゃんがたくさん泣いたら、抱っこしてもらったり母乳をもらえて、落ち着いて寝れるようになるよね。
そうやって毎日過ごしていく中で、お世話してくれる人との間に愛着を築くと、さらにその養育者に甘えたり、頼ったりするようになるよ。
誰かに甘えて、受け入れられて、甘えて‥。そういうやり取りを繰り返す中で、人と関わる楽しさや喜びを感じるようになるんだ。
自分の気持ちをきちんと伝えられる
もう少し大きくなると、座ってご飯を食べさせてもらったり、着替えを手伝ってもらったりするよね。そうやって少しずつできることを増やしていくんだ。そうすると、あっという間に歩いたり、走ったり、話せるようになっていくよ。
できることが増えていくのはとっても嬉しいことだよね。
一方で、この時期の子どもを育てる人は、心も体もへとへとになることも多いみたい。
できることが増えると子どもは自分のやりたいことがでてきて、相手に伝えるようになるよ。
でももちろんいつも思い通りにはいかないよね。「やりたい!」って言って、「だめ」って言われて、泣いて、我慢して‥そういうやり取りを繰り返す。
その中で、今度は自分の気持ちとか考えを表現する力や、人とコミュニケーションを取る力が身についていくんだ。
一人でも大丈夫になる
色んなことに興味津々になって、知らない世界に飛び出すと、転んで怪我したり、怖い体験をすることも出てくるよね。
そんなとき、近くで見守ってくれたり、助けてくれる人がいると、すぐに回復できて、また外の世界に飛び出していけるんだ。このとき戻ってこれる場所を心理学の用語では「安全基地」っていうよ。
失敗しても安全基地に戻ってきて、慰めてもらう経験を重ねていくと、「いつでもあそこに居てくれるから大丈夫」っていう気持ちが育つんだ。そして、さらに色んなことにチャレンジできるようになるんだよ。
安全基地があることで安心感が養われると、実際に安全基地の対象がいないときでも「私には守ってくれる場所があるから大丈夫」と思えるようになっていくんだ。
安全基地が外の世界から「心のポケット」に移動するんだね。
愛着障害の定義って?
愛着障害の研究は元々、1970年頃にボウルヴィっていう精神科医が始めたんだ。
虐待とか育児放棄などの不適切な養育を受けた子どもに、共通する行動の特徴や態度があることを発見したんだよ。うまく自信が持てない子や、心のコントロールに問題がある子の背景には、愛着の問題が共通していたんだ。
研究が進んでいく中で、愛着の問題を持ったまま成長した人は大人になっても生きづらさを抱えていることが多いとわかってきたよ。
だけど、大人になっていく中で様々な経験をするから、何が原因だったのかを特定するのはどんどん難しくなるんだ。だから、病院に行っても「愛着障害」という診断をつけられないことが多いんだ。
世界的に最も使用されている精神医学の診断分類DSM-5では、愛着障害は2種類に分類されているよ。少し詳しく見てみよう。
反応性アタッチメント障害
アタッチメントは「愛着」と訳される言葉だったよね。
この障害と診断される子どもは感情表現の乏しさや反応の薄さを特徴に持つよ。嬉しいとか楽しいとかの表現が少ないんだ。
つらいときに素直に甘えなかったり、人の優しさを嫌がったりする子も多いよ。相手に対して無関心に見えるし、用心深くて、人を信頼していない様子が見られるんだ。
言葉では表現できないイライラとか悲しみ、不安を突然示すこともあって、心のコントロールが上手くできないことも特徴だよ。
一見すると、発達障害の一つ、「自閉スペクトラム症(ASD)」の特徴にも似ているから見分けが難しいんだ。
脱抑制型愛着障害
「脱抑制」とは、何かあったときに、衝動とか感情を抑えることが難しい状態のことをいうよ。
この障害と診断される子どもは、いわゆる「馴れ馴れしさ」を特徴に持つよ。
初めての場所でも平気で進んで行ったり、初対面の大人に警戒心なく近づいたりすることが多いんだ。人懐っこさを通り越して、過剰に馴れ馴れしい態度をためらいなくする子も多いみたい。
一見すると人付き合いもうまくいきそうだけど、大人の注意を惹こうとする一方で子ども同士での関係は築きにくいんだ。
こっちの障害は一見すると、発達障害の一つ、「注意欠如・多動症(ADHD)」の特徴にも似ているんだ。
愛着障害の原因
愛着障害の定義のところで触れたように、愛着障害の要因には不適切な養育が関係していると言われているよ。
でも一言で「不適切」と言っても範囲は広くて、考え方も様々。順番に見ていこう。
養育者からの虐待を受けていた
虐待は大きく、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトの4つに分けられるんだけど、特に「ネグレクト」は愛着障害に関係すると言われているよ。
ネグレクトとは、育児放棄や育児怠慢のこと。
例えば、食事を与えない、不潔にする、病気やケガをしても病院に連れて行かないなどが「ネグレクト」に当たるよ。
重度の「ネグレクト」があると、愛着障害に発展する可能性が高いんだ。
他にも、激しい機嫌に左右されるような養育環境は愛着障害の原因になりかねるよ。「暴力をふるわれた後に優しくされる」、「家では言葉の暴力を受ける一方、外では優しくされる」、など、その時々によって対応が違うのも不安定な愛着形成に繋がるんだ。
愛着を抱く対象がいなくなってしまった
不慮の事故や病気、離婚など、幼い頃に養育者がいなくなってしまった人も愛着の問題を抱えていることがあるよ。
受け止めてくれていた人が目の前からいなくなってしまったら悲しい気持ちになるよね。どこに甘えたらいいんだろう、誰に頼ったらいいんだろうってわからなくなっちゃうんだ。
そうなると、愛着を育てる機会が少なくなってしまうことがあるよ。
ただ、先にも話したように、両親以外の誰かと愛着を形成することができれば大きな問題に繋がらなかったり、しっかりと愛着の感覚を持てることも多いんだ。
複数の養育者
複数の人から愛情をかけられることや可愛がられることは、成長にとってよい面ももちろんあると思う。
ただ、誰か特定の人と深く長い関係を密にとることが愛着形成にとっては大切なんだ。いろんな人が交代で可愛がってくれるだけでは、どうしても満たしきれない思いもあるみたい。
他の子どもと差別されてきた
養育者が、ある子どもだけに厳しかったり、冷たかったりすることも原因の一つになるよ。
もし周りの子は甘やかされて可愛がられているのに、自分だけ冷たくされたらなんで?って思うよね。
また、自分と周りを比較して、「自分なんかどうせ」と後ろ向きになってしまったり、「愛される価値がないのかな」と思いやすいんだ。養育者と一定の関わりはあって、愛着が育まれていたとしても、「周りと比べて足りない」っていう気持ちは残ることもあるんだよ。
愛着問題のチェック方法 子どもの場合
症状が出たり、障害って診断される前に気づく方法ってないの?って思うよね。
心理学者ボウルヴィの共同研究者エインズワースは、愛着の問題を発見するための方法を作ったんだ。
赤ちゃんがお母さんから離れる場面と、再開する場面を観察して三つのパターンを見つけたんだよ。さっそく順番に見ていこう。
安定型
この分類に入る子どもは養育者と再会したときに嬉しそうに笑ったり、養育者の方に駆け寄ったりするよ。大切な誰かががいることで安心して自由にうごくこともできるんだ。
養育者が「安全基地」として十分に機能しているんだね。
回避型
この分類に入る子どもは養育者に興味を全然示さないんだ。養育者が離れていくのに振り返らなかったり、探したりしない特徴があるよ。
新しい場所なのに緊張したり、不安そうな態度も見せないみたい。養育者との再会では、むしろ避けようとしたり、無視したりするんだ。
両極型
この分類に入る子どもは養育者に全集中しちゃうんだ。
だから、養育者が離れていこうとするとすっごく泣いて、不安定になるんだ。しばらくしてもなかなか泣き止めないみたい。
一方で、再会の場面になると、すごく怒って攻撃的になったり、怒りながら接触を求めたりするよ。再会した後も不安定な気持ちが続くんだ。
愛着問題のチェック方法 大人の場合
「子どものときのことなんて覚えてないよ‥」っていう人も多いよね。大人になってから自分の特徴を調べる方法もあるんだ。
医療機関では、半構造化面接っていう方法を使っているよ。半構造化面接は、半分はお医者さんとかカウンセラーさんが質問して、もう半分は患者さんに自由に語ってもらう面接なんだ。インタビューも半構造化面接の一つに入るよ。
この面接は、AAIっていう名前がついていて、大人の愛着障害を調べるために開発されたんだ。Adult Attachment InterviewでAAI、和訳すると成人愛着面接になるね。この面接でわかる4つの愛着パターンを紹介していくよ。
自律・安定型
この愛着パターンに分類される人は、不安を持ちすぎていることはないし、他の人を避けるような行動も取らないよ。
誰かから愛されたり、尊敬されたりすることに疑いが少ないんだ。“自分には愛される価値がある”って、ある程度思えている人だね。
相手のことを信頼できるし、親密な関係を築くことに抵抗も少ないよ。必要なときに誰かを頼ることが得意な人も多いみたい。
とらわれ型(別名:不安・アンビバレント型)
この愛着パターンに分類される人は、不安が強いのが特徴なんだ。
“誰かの近くに居たい!”“もっと仲良くなりたい!”と親密になりたい気持ちが強いことが特徴だよ。親しい人を傍に置いておくことで自分の不安を解消したいんだね。
そうは言っても、相手からの要求や依頼には答えないことも多いんだ。“自分の不安を分かってほしい!”っていう気持ちでいっぱいになりやすいのが難しいところなんだよね。
“相手からどう思われてるかな?”、“必要としてくれてる?”、“ほっとかないで!”って気持ちが強いんだ。
この「とらわれ型さん」が最も怖いことは見捨てられることとか、相手に必要されてないこと、拒絶されることなんだ。
拒絶・回避型(別名:愛着軽視型)
この愛着パターンに分類される人の特徴は、相手のことを信用できないというところ。「とらわれ型さん」みたいな不安は持ってないよ。
だけど、誰かと親密になることを避けようとしたり、近づいてくる相手のことを嫌になっちゃうんだ。
この「拒絶・回避型さん」は、“自分はさっぱりしてる”、“一人でも大丈夫だし平気”と思っていることが多いよ。ある程度自信があるようにも見えるかな。
相手と深く付き合わないことで、この自信をキープして、余分な感情が起こらないように自分を守っているとも言えるね。
だから、自分のことを知ろうとする人とか、仲良くなろうとしてくる人に嫌な気持ちを持ちやすいんだ。傷つくのが怖いという不安を持つ一面もあると言われているよ。
恐れ・回避型(別名:未解決型)
この愛着パターンに分類される人は、“相手から嫌われたらどうしよう”という不安を持つ一方で、“相手と親密になりたくない”と回避する、両方の側面を持っているよ。
この説明を聞くと、“ん?どっち?”って思うよね。
そう、「恐れ・回避型さん」は一貫した行動がとりにくいんだ。
あるときは、「行かないで!ほうっておかないで!」って言いながら、相手が親切にしようとすると、「やめて‥無理。」と拒否するんだ。これだとなかなか関係を築くのが難しいよね。
でもね、このパターンを持っている人は、自分がそうされた経験を持つ人が多いんだ。
つまり、自分が誰かにすごく求められて、すごく親密になった後に、ぷいってそっぽ向かれちゃうような、そんな経験。
暴力を振るわれた後にすごく優しくされる経験をした人もいると思う。この人のこと信じてもいいかな?って思って、信用しようとしたら裏切られちゃう‥。そんなことが繰り返されたら、なかなか人のことを信用できないよね。
どんな関係であれば自分にとっても相手にとっても心地いいのか、適切なのか、がまだわかっていないんだ。
相手に対して、自分がどんな気持ちを持っているのかもわからない人も多いみたい。
大人の愛着障害の特徴・症状
愛着の問題があるかもしれない場合、年齢別に色んな症状がでてくるよ。ここでは大人にも関わるものをピックアップして紹介していくね。
ただ、『この特徴・症状がある=愛着に問題がある』というわけではないから要注意。
周りにいる誰かにあてはめて、愛着の問題のせいにしようとするのも危険だよ。あくまでも「関係するかもしれないもの」で留めておいてね。
愛着対象からの分離不安
分離に不安を感じる、つまり、親密な相手から離れることに不安を感じるよ。
幼稚園や小学校に通う子は、「行き渋り」をして、お母さんからなかなか離れられない子も多いんだ。
愛着対象が「心のポケット」に入っていないから、実際に近くにいてくれないと不安になっちゃうんだね。大人の場合でも、パートナーや親友が他の人と遊びに行ったり、違う人と仲良くしているのを見ると不安になりやすい人がいるよね。
過度にいい子でいようとする
大切な人から見捨てられることが怖くて、「No」と断れなかったり、相手のペースに合わせようとするよ。
「他の人の顔色を気にしすぎる人」や「なんでも引き受けてくれる人」も、いい子でいたいからそうしてるのかも。
ネガティブな印象もあるけど、いい子でいようとするのは「そうしなきゃいけない状況だったから」とも考えられるんだ。
自分を守るために、あえて、自分をはっきりさせない生き方を戦略として選んできたとも言い換えられるよね。だから、“いい子でいようとすることは悪いこと”とは限らないよ。
自分で選んで決めることが難しい
子どものころに、自分がやりたいと主張したことに対して、共感を持って受け入れられると、自分で選んで決める力が育っていくんだ。自分が選んだことは間違いじゃないんだっていう自信に繋がるからだよ。
大人になった今でも、信頼できる人から「大丈夫」って言われたら頑張れるよね。
誰かが言ってくれた「大丈夫」を、心のポケットに入れておくことができれば、その後実際に言われなくても自分で選択していけるようになるんだ。
一方で、相手の顔色を窺いながら、自分の意見を抑えたり、相手が選んでほしそうな選択ばかりしているとどうなるかな。
自分の基準では選べなくなって、自分にとって何が必要か、自分は何がしたいのか見失っちゃうんだ。
こだわりが強い
自分にとって大切な人のことを「安全基地」と思えないと、その人に対してこだわったり執着しやすくなるんだ。そのこだわりは、他の側面にも広がっていくと言われているよ。
例えば、手放せない持ち物があったり、決まった時間にこだわったりするんだ。
自分のこだわりを守らないと気持ちを落ち着けることが難しくなるんだよ。
自分を傷つける
今まで満たされてこなかった気持ちを解消するために、自分のことを傷つけてしまう人がいるよ。
変えられない過去にイライラするとき、どうして自分だけって思うとき。身体に痛みがある間、辛い気持ちを一瞬だけ忘れられることがあるよね。
それがどんどん癖になってしまう人もいるんだ。
いろんなパートナーと関係を持つ
相手の気持ちを自分に向けさせて、自分に矢印が向いたと思ったら終わりにして。また次の人の気を引こうとして‥と、誰かと深く長く付き合うのが苦手な人もいるよ。
相手のことを信じて、信頼される関係を心理学用語で「基本的信頼関係」っていうんだけど、この関係性をうまく作って維持することができないんだ。
一方通行に誰かを思うことはできても、相手の矢印が自分に向いたらうまく関係を続けられない。相手の気持ちにどう答えればいいのかわからない。そんな特徴を持っているんだ。
また、性的な快楽も、一時的に辛い気持ちを忘れさせてくれることがあるんだ。いろんな人と関係を持つことで、どんどん癖になっていったり、感覚が麻痺しやすくなるんだ。
そういう点では、いろんな人と関係を持ってしまうことは、自分を傷つけている行為とも言えるよね。
愛着障害の克服・乗り越え方
いよいよ「愛着障害は治るもの?」「乗り越えるには何をすればいいの?」といった疑問に答えていくね。
愛着障害について、いろんな症状や特徴を紹介してきたけど、まずは自分を理解することから始まるんだ。
自分を知るのは怖いことだし、「自分は愛着障害だから」「自分には愛着の問題があるからどうせ‥」と後ろ向きに考えちゃうこともあると思う。ただ、向き合うことで今より生きやすくなれたり、新しいことを発見できることも多いんだ。
だから、もし少し頑張ってみようかな、ちょっとやってみようかな、と思えたら試してみてね。
ただ、人によっては専門家の力を借りたほうがいい人もいるよ。だから一人でやってみてすごく辛くなったらストップしたり、専門の先生の力を借りに行ったりしてね。
フォーカシング
フォーカシングはアメリカの哲学者・臨床心理学者ジェンドリンが考えた心理療法で、マインドフルネスと似た考えだよ。
いろんな方法が考案されてるけど、基本になるのは「自分の体に尋ねること」。
「今食べているものって美味しいって思ってるのかな」「お風呂に浸かってるときの自分の体はなんて言ってるかな」「今日の天気は暖かく感じてる?冷たく感じてる?」とか聞いてあげることから始まるよ。
身体は心よりも素直だから自分に正直に答えやすいんだ。
「自分の体がどう感じているか」ということから、「自分はどう思っているか」「自分は何を感じているか」に発展させていけたら◎。自分の身体を大事にしてあげることから治療は始められるんだ。
そして、自分の気持ちや考えを大事にしてあげることで、主体性が育っていくと言われているよ。
内観法
内観法は、日本人の僧侶・吉本伊信によって開発された自己観察法なんだ。心理学でも内省するための方法として用いられてるよ。
「自分を観察する方法」って聞くと、興味深いような、ちょっと怖いような感じがするよね。
内観法では、身近な人に対して、「していただいたこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」について見直していくよ。身近な人は、両親や祖父母、兄弟、配偶者など自分に深く関係してきた人だよ。
小学校低学年から年代順に具体的なエピソードを思い出しながら振り返っていくんだ。自分自身の身の回りの人々との関係をありのままに見直すことが肝になってくるよ。
内観法をすることによって、「どんな境遇になっても喜んで生きられる精神状態」を身に着けられるんだ。
難しいことだけど、「何をされたか」から「何をしてくれたか」に目を向けることには大きな意味があるよ。自分の発想や着眼点の幅を広げることができると、これから生きていくのが少し楽になるんだ。
「懐かしさ」を感じる時間を作る
満たされなかった気持ちを満たしていくために、ときには「退行」をすることも必要なんだ。
「退行」は、簡単に言うと「赤ちゃん返り」。
でも、ここで言う「退行」は泣いたり、子どもみたいに振舞ったりすることじゃないよ。少し昔を思い出して、楽しかったこととか、好きだったことに五感を使って触れてみるといいんだ。
緑の多い場所に行って森林浴をしたり、海を見たり、好きだった音楽を聴いたり、なじみのあるお菓子を食べたり。
自然とできている人もいるかもしれないけど、毎日忙しくしているとついつい後回しになっちゃうよね。
毎日一生懸命生きてると、ついつい頭で考えて疲れちゃうことが多いんだ。
そんなときに深呼吸をして、いい匂いに気づいたり、綺麗と感じるものを見たりするのが大切なんだ。そんな時間が何よりの治療にもなるよ。
大人の愛着障害は乗り越えられる
自分のことが好きになれない理由ってたくさんあるよね。
解説した愛着問題の特徴や症状もその一つかもしれない。だけど、視点を変えて考えてみると、生きていくためには自分の考えを抑えなきゃいけなかった、自分を守るために相手に合わせてた、とも言えるんだ。
そう、自分の嫌いな一部でさえも、自分を守ってきてくれた一部なんだ。
だから、無理に見直す必要はないし、今までの自分を後悔する必要なんてない。
全部を理解したり受け入れようとするんじゃなくて、自分にとって役立ちそう、便利そうと思える考えをピックアップしてくれたら嬉しいな。
これからも少しずつ心を緩めていけるように一緒に考えていこうね。