最近、「トラウマ」や「適応障害」についてよく見聞きするよね。
メンタルヘルスに関する言葉が注目され、心の病に関して人々の理解が深まっていくことはとても良いことだと思う。
でも、よく知られるようになってきたからこそ生まれる疑問もあるんじゃないかな? 例えば、「トラウマって具体的にはどんなこと?」とか、「適応障害とうつ病って何が違うの?」とかね。
今回はそんな疑問へのアンサーを兼ねて、「心的外傷およびストレス因関連障害(トラウマ関連障害)について概説していくよ。
目次
心的外傷およびストレス因関連障害とは
心的外傷およびストレス因関連障害(トラウマ関連障害)とは、トラウマやストレスなどの心的外傷が原因となって種々の症状を呈する精神障害のことだよ。
心的外傷およびストレス因関連障害には、主に以下があるよ。
- 反応性アタッチメント障害
- 脱抑制型対人交流障害
- 心的外傷後ストレス障害
- 適応障害
以下、一つ一つ概要と原因、対策についてまとめていくね。
反応性アタッチメント障害
反応性アタッチメント障害は、アタッチメントの形成不全を特徴とする障害だよ。
アタッチメントとは「愛着」のことで、「特定の対象に対して形成する特別な情緒的結びつき」のことなんだ。人は特定の対象との愛着をベースにして、徐々に他の対人関係にも心のつながりを作っていけるようになるよ。反応性アタッチメント障害は、この愛着に障害があるということなんだ。
だから最小限の対人交流しか取らずに、人に対して過剰な警戒心を示す傾向があるよ。
嬉しい・楽しいといった感情の表出もとても希薄になるんだ。このような症状が5歳未満に明らかに出ていることが診断基準となっているよ。
反応性アタッチメント障害の原因
以下のようなことがきっかけとなり、特定の人との間に愛着を持てなかったことが原因になるよ。
・養育者からの酷い虐待
・養育者からの愛情をかけられなかった
・事故などで本来愛着を向けるべき対象がいなくなった
・養育者が複数おり、特定の人と深く長い関係を密にとることが出来なかった
反応性アタッチメント障害の対策
反応性アタッチメント障害の診断は9ヶ月以降5歳未満の子どもにつけられるものだから、その年齢の子どもが何かしらの対策を取るのは難しいかもしれないね。だから、子どもに反応性アタッチメント障害があることに気が付いた周囲の大人が、安心・安全な環境を提供してあげることが大切になるんだ。
愛着に障害を抱えたまま大人になった人は、自分の心に耳を傾ける時間を作ったり、自分を優しくハグしたり、落ち着ける環境に意識的に出向くなどをするといいよ。具体的な方法やは安全基地を読んでてみね。
反応性アタッチメント障害(愛着障害)についてもっと知りたい人は、下の記事を参考にしてね。
脱抑制型対人交流障害
脱抑制型対人交流障害(だつよくせいがた たいじん こうりゅうしょうがい)は、誰に対しても見境なく親しげな振舞いをしたり、遠慮なく人と接することを特徴とした障害だよ。その様子から、人とかかわる場面でADHDのような症状をみせることもあるんだ。
一見すると「フレンドリーな人」と思うかもしれないけど、そうじゃないよ。通常、子どもは愛着を形成している特定の人物以外には警戒心を示し、知らない大人とのかかわりをためらうものなんだ。そうやって「何が安心か」「何が危険か」を少しずつ探索していって、徐々に世界のことを知っていこうとするんだね。
その点、脱抑制型対人交流障害は誰彼構わず、警戒心なしに交流をはかろうとするので、同年代との交流でいざこざに発展してしまうこともあるよ。安心や危険の感覚が育っていないがゆえにこういったことが起きてしまうんだね。
脱抑制型対人交流障害の原因
特定の人との間に愛着を持てなかったことが原因だよ。
・養育者からの酷いネグレクト
・保護者が何度も変わった
・安心感や愛情などの欲求が満たされてこなかった
脱抑制型対人交流障害の対策
脱抑制型対人交流障害の診断も、反応性アタッチメント障害と同じく9ヶ月以降5歳未満の子どもにつけられるものなんだ。だから、その年齢の子どもが何かしらの対策を取るのは難しいよね。
できることなら、脱抑制型対人交流障害を持つ子どもに特定の大人が養育者としてしっかり寄り添ってあげられるといいよ。
愛着に障害を抱えたまま大人になった人は、こちらも反応性アタッチメント障害同様、自分の心に耳を傾ける時間を作ったり、自分を優しくハグしたり、落ち着ける環境に意識的に出向いたりしてみてね。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷後ストレス障害とは、事故や事件により死を意識させるような壮絶な体験が原因となり、様々な症状が出てくる障害のことだよ。PTSDと言った方がなじみがあるかもしれないね。
PTSDはPost Traumatic Stress Disorderの頭文字を取ったもので、トラウマとはつまり心的外傷のことを指すんだ。ここでいう心的外傷とは、先ほど書いた「事故や事件などにより死を意識させるような壮絶な体験」のことだよ。生きるか死ぬかがトラウマと呼べるかどうかの分かれ目なんだね。
PTSDの主な症状は、回避症状、過覚醒症状、再体験症状の3つだと言われているよ。
回避症状とは、トラウマを負うことになった原因について考えたり、話したり、出来事が起きた場所に近づくのを避けたりといった行動のことなんだ。PTSDになると、否定的な信念を抱くようになることが知られているよ。そのため、自分のことを「ダメな人間」と思って対人関係を避けることも起きるんだ。
過覚醒症状とは、眠れなかったり、イライラしたり、警戒心が強まったり、常に気が立っている状態だよ。PTSDになると、人に危険を知らせるセンサーが「あれも危険これも危険」と誤作動を起こすようになるんだね。
再体験症状とは、フラッシュバックや夢でトラウマの原因が脳裏によみがえることだよ。PTSDによる再体験症状は、その名の通り、今まさにそのトラウマ体験が起きているかのように感じられるので、とても強烈な恐怖を感じる体験なんだ。
ちなみに、同じ原因と症状があっても、一か月で良くなるものは急性ストレス障害と呼ばれるよ。
PTSDの原因
以下のような、死を意識させるような体験が原因になるよ。
・災害
・暴力
・レイプ
・虐待
・誘拐やハイジャック等の犯罪に巻き込まれた
PTSDの対策
ソーシャルサポートを作っていくことと、身体を癒すことがPTSDの対策には特に有効だよ。
様々な研究を通じてわかっていることは、トラウマ体験後にPTSDになるかならないかを分けている一番大きな要因はソーシャルサポートの有無なんだ。
たとえ命の危機にさらされても、ソーシャルサポートの存在が段々と落ち着きを取り戻す支えになってくれるからなんだね。
また、身体を癒すことも対策になるんだ。というのも、PTSDの症状のほとんどは「身体が記憶」してしまったものだからだよ。フラッシュバックしようと思ってするわけじゃないし、大きな音を聞いてビクッとしようとしてするわけでもないよね。身体が勝手に反応するようになってしまったんだ。
身体を癒し、自律神経の過剰反応を穏やかにするために、安心できる人とのつながりをつくったり、自然の中を散歩したり、ゆっくりと温泉につかったり、アロマをたいたりするなどがオススメだよ。
ここに挙げた以外にもいくつかPTSDへの対策があるから、下のトラウマの克服法の記事にも目を通してもらえると嬉しいな。
適応障害
適応障害とは、落ち込みや涙もろさ、絶望感、不安などが顕著になり仕事や家事などがままならなくなる障害だよ。
一見すると「うつ病」との違いがわかりにくいよね。けど、うつ病と適応障害はいくつかの点で違っているんだ。
一つ目の違いは「診断カテゴリー」の違いだよ。うつ病は「抑うつ障害群」に属する障害で、適応障害は「心的外傷およびストレス因関連障害群」に属する障害なんだ。
二つ目の違いは「薬の効きやすさ」だよ。うつ病には薬物療法が有効とされているけど、適応障害にはあまり効果的な薬がないんだ。
三つ目の違いは「物事を楽しめるか」だよ。うつ病は全般的に物事を楽しめないけど、適応障害は適応障害になった原因に関係しないものなら依然として楽しむことができるんだ。
これらの違いはうつ病と適応障害の原因の違いがもたらしているんだよ。
適応障害の原因
心理社会的な事柄から来るストレスが原因だよ。
・ハラスメント
・業務量の多さ
・環境の変化
ストレスが原因なので、適応障害は「心的外傷およびストレス因関連障害群」に属する障害となっているんだね。
また、うつ病は脳内で神経伝達物質のセロトニンが少なくなることでなる状態なので薬が効きやすいんだけど、上記のように適応障害は心理社会的な事柄からくるストレスなので、薬が効きにくいんだ。確かに、業務があまりにも忙しくて適応障害になった人が薬を飲んだところで、仕事の忙しさが全く変わらなければ、薬も意味をなさないよね。
適応障害は、ストレスを感じる事柄に反応して症状が出るので、それ以外の事柄には大きな問題を来すことが少ないんだ。だから仕事が大変で適応障害になった人は、仕事と関係ない趣味などは相変わらず楽しむことができるんだね。
適応障害の対策
環境調整を行ったり、柔軟な発想が持てるように考え方の幅を広げることが適応障害の対策には有効だよ。
環境調整とは、ストレスの要因となる環境の改善点や工夫すべき点を明確にして、ストレス軽減のために調整することだよ。適応障害は特定の心理社会的な要因がストレスになっているから、精神論や我慢して済ますのではなく、まずはそのストレス要因から離れるなど、環境調整することが先決だね。
例えば、仕事がストレスなら有休を使ってしばらく休むとか、同僚がストレスなら人事に相談するとか、学校がストレスなら保健室登校できないか検討したりとかだよ。
環境を調整することが困難な場合は、自分の考え方の幅を広げることも効果的なんだ。例えば、「いつも自分ばかり損な役回りになる」と考える傾向がある人は、いったん立ち止まって「自分が得した経験はなかったかな?」「最初は『損だな』と思ったけど、最終的に『やってよかった』と思えた経験はなかったかな?」などと考える習慣をつけるなどだね。
「自分の考え方の幅を広げる」に関して注意してほしいのは、「自分の考え方が悪いから、それを修正する」という理由で行うものではないということだよ。あくまでも「幅を広げる」なんだ。
「いつも自分ばかり損な役回りになる」だって、十分自分なりの根拠がある正当な考えだよ。でもそれだけの考えだと自分が辛くなるのであれば、「自分助け」のためになる考えも持てる方がいいんだ。
とはいえ、自分一人で自分の考え方の幅を広げるのはなかなか難しいよね。そんなときはカウンセラーと一緒に考えるのも手だよ。検討してみてね。
適応障害の詳細は下の記事を参考にしてね。
心的外傷およびストレス因関連障害まとめ
心的外傷およびストレス因関連障害には反応性アタッチメント障害、脱抑制型対人交流障害、心的外傷後ストレス障害、適応障害があるよ。
この病気には、以下のように何らかの形で対人関係が影響しているんだ。
反応性アタッチメント障害・脱抑制型対人交流障害:幼少期の養育者との愛着関係が影響している
PTSD:発症しやすさにソーシャルサポートの有無が影響している
適応障害:対人関係上のストレスが主な原因
対人関係は人を病気にするほどネガティブな影響をもたらすものであると同時に、人を癒す人生には無くてはならない重要な要素でもあるんだ。自分の身近にいる人にとってくらいは、重要な要素でありたいと思っているよ。