人間関係って本当に面倒くさいよね。
けどその一方で、人生を幸福に生きるには、人とのつながりが欠かせないという意見もあるよ。
ハーバード大学のヴェイラント氏らによって75年間もの歳月にわたって行われた研究によると、人間の幸福にもっとも関係するのは「いい人間関係」であることがわかったんだ。
今日は、人と人とのつながりの肯定的な側面をとらえた「ソーシャルサポート」について解説していくね。
目次
ソーシャルサポートとは
ソーシャルサポートとは、ある個人がその人を取り巻く家族、恋人、友人、恩師、同僚などの重要な他者から得られる様々な支援のことだよ。簡単に言うと、「自分を助けてくれる存在」のことだね。
コミュニティ心理学者のG・キャプラン氏が「人が人生上の危機に遭遇したとき、その人をとりまく家族や友人の支援的関係がその人を支えるのに極めて重要である」と指摘したことが、ソーシャルサポート研究が盛んになったきっかけなんだ。
実際、その後の研究を通じて、ソーシャルサポートの有無が心身の健康に大きな影響をおよぼすことがわかってきたんだ。健康のためには、自分1人でできることだけではなく、人との関係性にも目を向けることが大切なんだね。
ソーシャルサポートの4種類
心理学者のハウスによれば、ソーシャルサポートには情緒的サポート・道具的サポート・情報的サポート・ 評価的サポートの4つがあるとのことだよ。まずはこの4つを解説していくね。
情緒的サポート
ソーシャルサポートの1つ目は、情緒的サポートだよ。
情緒的サポートとは、励まされたり、共感してもらったり、慰めてもらったりといった気持ちを支えてもらうサポートのことなんだ。
確かに誰かから「大丈夫?」と気にかけてもらえたり、「頑張ったね」って褒めてもらえると嬉しくなるし、心の支えになるよね。
道具的サポート
ソーシャルサポートの2つ目は、道具的サポートだよ。
道具的サポートとは、仕事を手伝ってもらったり、お金を貸してもらったり、問題を解決するのに必要な直接的サポートのことなんだ。
テストがあるのに消しゴムを忘れてしまったときに、誰かが余っている消しゴムを貸してくれたらものすごく助かるよね。
情報的サポート
ソーシャルサポートの3つ目は、情報的サポートだよ。
情報的サポートとは、「○○なときは、××したほうがいい」「どこどこにあなたの欲しいものが売っていたよ」など、課題解決をスムーズに進めるために知っておくほうがいい情報を提供してもらうサポートのことなんだ。
自分が知らなかったお得な情報や為になる情報を教えてもらえると、とても嬉しい気持ちになるよね。
評価的サポート
ソーシャルサポートの4つ目は、評価的サポートだよ。
評価的サポートとは、「○○がよくできていた」「前回の成績より全体で30点以上向上している」など、自分がやったことに対する客観的な評価を提示してもらうサポートのことなんだ。
人は感情的な生き物だから、落ち込むと何もかもがダメになったように感じるよね。そんなとき「いや、○○は出来てるじゃない」などと客観的な意見をもらえると「確かに」と冷静さを取り戻せたりもするよね。
ソーシャルサポートがあることのメリット
ソーシャルサポートがあることは「なんとなく良さそう」ってことはわかるけど、じゃあ具体的にはどんないいことがあるんだろう。
ソーシャルサポートがあることの代表的なメリットをみていこう。
PTSDになりにくい
ソーシャルサポートがあると、心に傷を負ってもPTSDのように重症化するリスクが下がるんだ。
PTSDとは、生死にかかわるようなとても辛い体験をした後、そのことがなかなか忘れられないために常に恐怖を感じ、日常生活に大きな支障が生じる精神的な病のことだよ。
心理学者のブレウィン氏らが行った研究によって、「様々な研究に共通していることは、トラウマ体験後にPTSDを発症するかどうかを見分ける最大の要因は、ソーシャルサポートの有無である」ことがわかったんだ。
心に傷を追って大変な目にあっても、支えてくれる人がいることで段々と落ち着きを取り戻していけるんだよ。それくらいソーシャルサポートは重要で、大切なものなんだね。
PTSDについて興味のある人は、こちらのトラウマ克服法の記事も読んでみて。
身体が健康になる
ソーシャルサポートがあると、心だけではなく身体も健康になることが知られているよ。
小林氏らによる研究では、ソーシャルサポートがない高齢男性は、たんぱく質、カルシウム、鉄、ピタミンなどをあまり摂らなかったり、身体活動の不足で、多量にお酒を飲んだりなど、不健康な行動を取る傾向があることがわかったんだ。
ソーシャルサポートは、ストレスが低い場合は健康への影響はみられないけれど、ストレスが高い場合には健康に大きな影響をもたらすとの考えもあるよ。
上記のように、多量にお酒を飲む背景には大きなストレスがあることが考えられるよね。そんなときこそ、ソーシャルサポートを形成することが大切なんだ。実際、飲酒や喫煙、肥満や運動習慣などを改善する効果よりも、ソーシャルサポートがあることの方が身体の健康への効果が高いとする研究もあるんだよ。
ソーシャルサポートがないということは、つまり、不健康な行動をいさめてくれる人がいないということ。不健康な行動が維持されてしまうのはそのためなんだね。
死亡率が下がる
ソーシャルサポートがあることで、その人の死亡率が下がるんだ。
逆に言うと、ソーシャルサポートがないと死亡率が上がるんだけど、このことは様々な研究からわかっているよ。
例えば、イギリスの精神科医パークス氏らが行った、 妻に先立たれた男性4486人を 9年間追跡した研究によれば、死別後 6ヶ月以内の死亡率が 40%も増加することがわかったんだ。
また、アメリカの疫学者バークマン氏らの研究によれば、ソーシャルサポートの度合を5段階でランク付けした人たちを9年間追跡調査を行なったところ、ランクが最も低い人たちは、最もランクの高い人たちに比べ調査していた9年間での死亡率が高かったことが示されたんだよ。
自分の気持ちをを支えてくれる存在が、自分の命まで支えてくれているんだね。
ソーシャルサポートのダークサイド
以上みてきたように、ソーシャルサポートは基本的には健康に対してよい影響があるのは間違いがないよ。
ただ、何事にも副作用があって、状況によってはソーシャルサポートが相手の心にネガティブな印象を植え付けてしまう場合もあるんだ。
そんなソーシャルサポートのダークサイドも確認していこう。
求めてないサポートをもらっても迷惑
ソーシャルサポートが「ありがた迷惑」になるときにはネガティブな影響があるよ。
欲しくもないものをもらっても嬉しくないときってあるよね。それはソーシャルサポートでも同じことが言えるんだ。
広島大学の坂本氏らが行った研究では、学生がアナグラム課題をやっている最中に「頑張れ」といった情緒的サポートや「解ける問題からやるといい」といった情報的サポートを受け取ると、「考えが中断された」「集中できない」といったストレスを感じることが分かったそうだよ。
確かに仕事中に何度も話しかけられたら、たとえそれが気にかけくれてのものだったとしても「しばらくそっとしておいてくれ!」って思うよね。
「ありがた迷惑」の代表格って「あなたのためを思って」と言ってくる人のサポートじゃないかな。そんな「あなたのためを思って」と言ってくる人の心理と上手い交わし方についての記事もあるので、参考にしてみてね。
相手が求めていないサポートをすると、相手を不快な気分にさせることがあるから注意しよう。
落ち込む
ソーシャルサポートを受けることで、「自分は誰かの助けがないと○○を達成できないのか…」と落ち込むこともあるよ。
特に自分以外の人がいかにも簡単そうにやっている事柄に対してサポートを受けると、自尊心が傷つけられるために落ち込んでしまうんだ。
完璧主義な人もできない自分に納得できないので、落ち込んでしまいがちだね。
けど、何事も初めからうまくできる人はいないんだ。最初は落ち込むこともあるかもしれないけど、独学でやるよりも習った方が結果的に上達の近道になることも多いよ。
単純にサポートの出し方に問題がある場合もあるから、その場合は落ち込む必要はないので安心してね。「こんなこともできないのか? やれやれ」といった態度でサポートされたら、誰だって傷つくんだ。そんなソーシャルサポートを受けた場合は、他の人のサポートに切り替えてもいいんだよ。
恨んでしまう
どんなにいいソーシャルサポートでも、受け手のコンディションによっては恨みを買うといった逆効果をもたらす場合もあるんだ。
受け取り手が「あなたしか頼りになる人がいない」ほど追いつめられた場合、それが顕著だよ。
追いつめられると人は視野が狭くなって現実的なものの見方をするのが難しくなるんだ。サポートに対する「希望」が大きく膨らんでいくんだね。だから実際に受けたときのサポートが少しでも自分が希望していたものと異なると、一気に失望に変わってしまうんだ。
自分を支えようともしてくれなかった人ではなく、支えてくれようとしている人に対して恨みが湧くのは、なんだか悲しいね。
ちなみに、頼りにする先が特定のもので固定されてしまうと共依存状態になることもあるよ。
ソーシャルサポートをうまく機能させるコツ
ソーシャルサポートにはダークサイドもあるけど、うまく機能させることで人の心身の健康に貢献してくれるんだ。
どのようにソーシャルサポートを活用していけばいいかをみていこう。ソーシャルサポートの基礎は対人関係だから、いかに人々と交流していくかがカギになるよ。
あいさつ
ソーシャルサポートをうまく機能させるには、あいさつは欠かせないよ。
「そんなことが?」と思うかもしれないね。けど、あいさつの効果は決して侮れないんだ。
ソーシャルサポートがダークサイドに落ちる原因の一つは、「ありがた迷惑」になること。自分の必要とするサポートが相手に理解されていないことが、ありがた迷惑につながっているんだ。
あいさつを通じて普段からかかわりを持っていれば、相手は自分が欲しいサポートをイメージしてくれやすくなるよ。相手が何かを求めて来たときには、自分も相手が必要とするサポートを類推しやすくなるね。
頼る練習をする
ソーシャルサポートをうまく機能させるのに、頼る練習をしておくことも大切なんだ。
協力的な人たちに囲まれていたとしても、自分からサポートを求めないとせっかくのソーシャルサポートが機能しないかもしれないよ。
人に頼ることが苦手って人もいるよね。けど、頼ることは一種のスキルだから練習すれば必ず抵抗がなくなっていくんだ。
スクールカウンセラーが高校生向けに行った、人に頼る練習を施した授業の結果がそのことを示唆しているよ。最初は他人に頼る人のことを「メンタル弱いなー」と言っていた生徒達が、練習を通じて「自分が不安になったときに相談したり対処法を役立てたりしたいと思った」という感想を寄せたことが報告されているんだ。
頼るのがどうしても苦手な人は「そこの醤油取って」など、ほんの些細なお願いからでもOK。他の頼り方を知りたい人は他人に頼れない人の心理をまとめた記事も参考にしてね。
ちなみに、無事に人に頼ることができて、何かしてもらったら「ありがとう」を意識的に言うようにしよう。人は誰かから感謝されると幸福になり、また誰かに親切にしたくなることが北村氏の研究でわかっているんだ。
頼られた人は幸福になるだけではなく、頼ってくれてた人のことを好きになることも知られているよ。これをフランクリン効果というんだ。
温かい気持ちでつながれた人間関係を築いていけると素敵だよね。
自分も誰かを助ける
自分も誰かを助けてあげることも、ソーシャルサポートをうまく機能させる行動の一つだよ。
盲点かもしれないけど、「自分」もソーシャルサポートの構成要素の一つなんだ。自分は誰かから一方的にサポートを受ける存在ではなく、自ずから誰かを助けたっていいんだよ。
ノースカロライナ大学の社会心理学者サラ・アルゴ氏らが実施した、77組のカップルを対象とした研究によれば、自分がしてあげたことで相手から感謝されると、幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンが分泌されることが分かったんだ。
この研究の面白いところは、「感謝した側」つまり、してもらった側にも同じくオキシトシンが分泌されたことだよ。
「情けは人の為ならず」という言葉があるけど、人助けは自分のためにも他人のためにもなっているんだね。幸せは伝染するんだ。
「カップルだからだろ」と思った人もいるかもしれないね。けどハーバード医科大学のニコラス氏らが行った他の研究では、幸せではない人も幸せな友人に囲まれていると幸せを実感するようになっていくことが知られているんだ。友人同士でも、幸せは伝染するんだね。
幸福感は、「誰かをサポートしたい」という気持ちにつながることは先述した通り。お互いを支え合えるソーシャルサポートはとても居心地よくてメンタルヘルスを高めてくれるよ。
もしかしたら「困っているのは自分だ。だからまずは誰かが自分を助けるべきだ」という気持ちもあるかもしれないね。けど、今まで見てきたように、助ける側も幸せになれるし、待っているだけではもったいないのかもしれないよ。
アドラーはこんな言葉を残しているんだ。
誰かが始めなければならない。
他の人が協力的ではないとしても、それはあなたには関係がない。
私の助言はこうだ。
あなたが始めるべきだ。
他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく。
自分の所属するソーシャルサポートを、もっともっと機能的にするきっかけを持っているのはもしかしたら自分かもしれないね。
ソーシャルサポートまとめ
ソーシャルサポートがあると、心だけではなく、身体まで健康になるんだね。
自分を大切にしてくれる存在を大切にし続けることも大事だけど、自分もソーシャルサポートの一部なんだ。
だから自分からも積極的に自分が大切だと思う人を支えていってあげられると素敵だね。そうすることによって、お互いの信頼関係がさらに強固なものになって、ますますみんなが幸福になって、健康的になっていくんだ。