精神科と心療内科の違いは?受診先に悩んだときのフローチャート【保存版】

2022.02.18 Fri
シンくん
案内人 シンくん
ライター
執筆 浅井 音楽 臨床心理士 / 公認心理師
精神科と心療内科の違い
精神科と心療内科の違いは?受診先に悩んだときのフローチャート【保存版】

「つらくて仕方がない」
「周りに元気がないと言われる」

そんなとき、ネットで検索すると「専門機関を受診してみよう」と書いてあったりするよね。だけどどこに頼ればいいのかわからず、不安になることもあるんじゃないかな。

今回はメンタルの専門機関の中でも「心療内科」と「精神科」の違いについて紹介していくよ。心療内科と精神科は似ているようで違う部分も多いんだ。

専門機関の特性について知っておけば、いざメンタルがまいっちゃったときにも自分の症状にあった機関を選びやすくなるよ。メンタルの不調は早めの受診が肝心だから、いざというとき抵抗なく受診できるように一緒に見ていこう。

いざというときに備えよう
 

心療内科とは

心療内科はその名前の通り、内科をルーツに持つ科だよ。内科といえば手術せずに内臓の病気を見てくれる科のことで、かかりつけのお医者さんがいたり身近な科だよね。

日本心療内科学会の心療内科専門医の申請条件には「日本内科学会認定内科医(あるいは総合内専門医)の資格を有すること」という条件があるんだ。

心療内科の専門医になるために必要な内科認定医は「一定レベル以上の実力を持ち、信頼される内科医を認定内科医と認定する」とされているんだ。心療内科の専門医は内科をルーツにした内科のスペシャリストでもあるんだね。

「身体」に現れる症状が対象

心療内科で主に扱う疾患は「心身症」と呼ばれる身体疾患なんだ。心身症は1991年に出された「心身医学の新しい診療指針」の中で以下のように定義されているよ。

“心身症とは身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する” 

日本心身医学会教育研修委員会(1991)心身医学の新しい診療指針 より

ちょっと難しい書き方だけど、簡単に言えば「心療内科は、もともとの性格や周りからのストレスが関係して起こる病気を対象にする」ということだね。
たとえば、吐き気や頭痛、高血圧や腹痛といった身体の不調の背景に、心理的なきっかけやストレスが考えられるものが心療内科の専門になるんだ。

神経症やうつ病といった病気が、定義の上では心療内科の対象ではないのは意外に感じる人もいるんじゃないかな。だけど実際には心療内科で神経症やうつ病を診ていることが多いんだ。理由として、メンタルにまつわる疾患は内科と精神科にまたがるグレーなものが多いことや、全国的な医師不足が挙げられるよ。

身体が真っ赤になってしまうんですが
 

心療内科の対象になる症状例

ここでは心療内科で相談されることの多い症状をいくつか紹介するね。

・胸がギュッと締め付けられるように痛い
・息苦しさや喉が詰まる感じがする
・肩こりや頭痛、腰痛が治らない
・手足の痺れ、だるさを感じる
・学校や会社に行こうとするとお腹を壊す
・めまいや耳鳴り、立ちくらみがひどい
・お腹が空かない、胸焼けがする

実際に当てはまる症状がない場合でも気にせず受診して大丈夫だよ。「こんな症状で困ってるんです」と相談することから始めてみよう。

胸が締め付けられるように痛いのですが
 

 

 

精神科とは

心療内科が内科をルーツに身体症状を取り扱うのに対し、精神科は主に精神、つまり「心」を対象にした科なんだ。ちなみに精神科の他に神経科や精神神経科、神経精神科なんて書き方をされている場合も同じものを指すんだ。ちょっとややこしいね。

「心」に現れる症状が対象

精神科で主に扱うのは、不安や落ち込み、妄想や幻覚といった「心」に現れる症状だよ。また「精神病圏」と呼ばれる統合失調症双極性障害(躁うつ病)といった、とくに「心」に関与する疾患も、精神科の対象となるんだ。

感情がないのですが
 

精神科の対象になる症状例

ここでは精神科で相談されることの多い症状をいくつか紹介するね。

・人前ですごく緊張してしまう
・爽快なときはなんでもできる気がするが、落ち込むと何もできなくなってしまう
・周りの人が悪口を言っているような気がする
・食べるのを抑えきれず、食べすぎてしまう
・食欲がわかず、食べてもおいしく感じない
・悪いことをしていないはずなのに罪悪感がある
・誰かにあとをつけられているような気がする
・物忘れが増えてきた
・子どもの頃から落ち着きのなさがあって困っている
・朝気分が憂鬱になり、悲しくなってしまう

実際に上のような症状がない場合でも気にせず受診してね。そのときは事前にメモなどに「どんなことで困っているのか」「どんな気持ちで苦しいのか」をまとめておくと伝わりやすいよ。

みんなが私を見て笑うのですが
 

受診機関を選ぶためのフローチャート

次に、受診する機関の選び方について解説していくね。

「つらい気持ちがある」「日常生活に支障が出ている」「周りの人に心配された」などの出来事があれば受診を検討してみよう。

受診したいときには、専門機関の選び方がわかるフローチャートを作ったから参考にしてみてね。各結果の詳細はそれぞれ対応する番号の項目で説明してるよ。

心療内科と精神科などのフローチャート

もし死にたい気持ちがとても強くて、今すぐに話を聴いてもらいたいときは、以下の電話相談サービスを使ってみるのもオススメだよ。

こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)
実施日時:都道府県によって異なる(一覧はこちら)

いのちSOS(0120-061-338)
実施日時:​​月曜日、木曜日00:00~26:00(26時間)、火曜日~水曜日、金曜日~日曜日8:00~24:00 ※日曜日8:00~月曜日26:00まで、水曜日8:00~木曜日26:00までは連続対応
HP:https://www.lifelink.or.jp/inochisos/

チャイルドライン(0120-99-7777)
実施日時:14:00~21:00
HP:https://childline.or.jp/index.html
※18歳以下

①②:心療内科・精神科の選び方

心療内科や精神科を選ぶ時には以下の2つのポイントを重視してみてね。

・週1回程度通っても苦にならない距離か
・診療時間が自分の生活リズムに合っているか

心のトラブルは長期戦になることも多いから、医療機関は弱っているときにも通えるアクセスであることが望ましいんだ。Googleマップなどを活用して近くの施設を探してみよう。あとにも触れるけど、施設や主治医によっては「なんか相性が悪い!」という事態も起きるので、近所にある医療機関はこのタイミングでいくつか調べておくといいよ。

また、ネット検索などで口コミを参考にするときは、過度なバッシングや悪口の書き込みを気にしすぎないように気をつけてね。口コミを書くのってすごいエネルギーがいるから「すごくよかった!」「最悪だった!」といった極端な意見ばかりが書き込まれやすいんだ。病院やクリニックはとくに低評価の口コミをかかれがちだから、参考にしつつもあまり気を取られすぎないようにね。

また、希死念慮や依存症の症状がとても強い場合には、クリニックよりも病院にかかるのがオススメ。病院はクリニックよりも病床数が多く、入院が必要になったときにも他科との連携が取りやすく最適な治療を受けやすいんだ。希死念慮の強さの基準として、実際に死ぬ場所を決めたり道具を準備したりといった計画がある場合は「希死念慮が特に強い」と言えるよ。その場合は精神科の受診を特におすすめするよ。

より専門性の高い医師のいる機関を選びたいときは、心療内科や精神科の専門医の資格を持つ医師がいる機関を探してみてね。

近すぎるくらいがちょうどええ
 

③カウンセラーの選び方

「話を聴いて欲しい」
「自分の悩みがどんなものかはっきりしない」
「病院にかかると生命保険や住宅ローン審査に悪影響があるって聞いて不安」
「自分以外の家族の問題について相談したい」

そんなときは「臨床心理士」など、一定の基準をクリアした資格を持つカウンセラーの力を使うのがおすすめだよ。臨床心理士によるカウンセリングは自由診療となり高価になることが多い反面、保険やローンなどの複雑な問題を懸念せず相談できたり、自分以外の家族やパートナーのことについて相談できるという点で優れているんだ。

臨床心理士は大学院で専門のカリキュラムを学んでいる専門家だよ。そのため病院やクリニックといった機関や精神保健福祉士など他の専門家に繋ぐ力もあるから、より適切な支援を行うことができるんだ。

日本臨床心理士会のHPには「臨床心理士に出会うには」というページがあり、ここでは年齢や性別、困りごとのカテゴリから自分の住んでいる地域の臨床心理士を検索できるんだ。ぜひ活用してみてね。

正しいカウンセラーの選び方3選!避けたほうがいい人の特徴は?

専門家は手数が豊富なんやね
 

④各自治体の支援機関(精神保健福祉センターや保健所など)

「そもそもどんなところに相談すればいいのかわからない」

そんなときは全国に配置されている自治体の支援機関に相談するのがおすすめだよ。
例えば精神保健福祉センターも支援機関の一つで、各都道府県に配置されている機関だよ。ひきこもりや認知症など、相談者本人以外の問題についても専門的に対応してくれるんだ。

全国の精神保健福祉センター一覧というページから、都道府県ごとの精神保健福祉センターが検索できるから、気軽に問い合わせてみてね。精神保健福祉センターが近くにない場合には保健所・保健センター検索(パブリネット)などを利用して、保健所市町村の保健センターを検索して相談するのもオススメだよ。保健所や保健センターでも同様に幅広い範囲の相談ができるんだ。

つらい心の問題に対処するには、なるべく早く専門機関に繋がることが大切だよ。どうしていいかわからないときはまず、自治体の支援機関に相談するのを意識してみてね。

「健康センター」などの名前だったりもします
 

受診の手順

次に、専門機関を受診するときの手順について解説していくね。心の問題はひとりで抱え込んでおくのはとても辛いことだから、なるべく早く専門家が介入するのが大事なんだ。

心細く不安になっているときほど「この程度で受診しちゃいけない気がする」「自分はおかしくない」という気持ちが強くなってしまうんだ。だからこそ受診の手順を掴んで、なるべく気楽に受診できるようにしておくのが大切だよ。

まず予約を入れてみる

専門機関の選び方には不安があったりするよね。だけど「ちょっと調子が悪いかも」というときには、まずは予約を入れてみるのが大切。心療内科などは予約が取りにくいことが多く、メンタルが限界になったときに探し回るのは辛いんだ。

不調を感じ始めた段階で予約を入れておくことで安心感にも繋がるし、適切な介入を早めに受けることができるよ。

そろそろ調子悪くなる気がするんですが
 

伝えたいことをまとめておく

心療内科や精神科では、保険診療点数の関係で診療時間が初診で30分程度、再診では5分ほどしかとれないケースが多いんだ。
悩みがまとまらなかったり聴きたい質問がいくつかあるとき、焦って伝えきれず後悔してしまうこともあるから、事前に伝えたいことを紙1枚程度にメモしてまとめておくとスムーズになるよ。

「今困っていること」
「いつから困っているのか」
「どんなときに症状が出たり、つらくなるか」
「(もしあれば)思い当たるストレス要因はなにか」

などをまとめてみよう。客観的に自分の困りごとを分析することで、自己理解も深まるよ。

また、主治医への質問が進みやすくなる「精神科質問促進パンフレット」もあるよ。これは医師の監修のもと作られているんだ。もともとは統合失調症の支援のために作られたものだけど、メンタルの問題で気になる質問がしやすくなるように工夫されているから、誰でも使うことができるよ。ぜひ参考にしてみてね。

もしうまく伝えられなかったとしても大丈夫。主訴や不調の内容を引き出すのも専門家の仕事。「ちゃんと話せなかった」と自分を責めすぎないようにね。

自己理解も深まるよ
 

受診するときのQ&A

ここでは専門機関に受診する際の疑問をいくつかあげて解説していくね。

Q:主治医と合わないと感じるときは?

治療の方針に納得がいかなかったり説明が足りないと感じるときには、まずは主治医にそれを伝えることが重要だよ。言いにくい場合は上でも紹介したパンフレットなどを活用して紙に書いたりして用意していこう。

頼みの綱の主治医と合わないときには「もう医療はだめだ」「セカンドオピニオンだ」なんて考えてしまいがちだけど、まずは主治医に本心を伝えることが大事だよ。「こんなことを言ったら失礼なんじゃないか」と感じることも言っていいんだ。その一言から治療が進むこともあるよ。

勇気を振り絞って繋がり、貴重な時間とお金をかけた治療を中断させてしまうのはとてももったいないことだから、まずはなんとか主治医に本心を伝えてみよう。その上で無理だと感じたときには「たまたまこの人と合わなかっただけ」と考えて、セカンドオピニオンを検討してみてね。

ちょっと音楽性が違うかな
 

Q:話を聴いて欲しいときは?

「苦しさをわかってほしいのに主治医が全然話を聴いてくれない」なんて不満が生じることもあるよね。でも医師は話を傾聴する専門家ではないし、システム上診療時間が短くなってしまいがちなんだ。

そんなときは治療と平行してカウンセラーを利用することで悩みが明確になったり気持ちが楽になったりするよ。主治医に相談した上で、先に紹介したカウンセラーの選び方などを参考にカウンセラーを探してみてね。

話を聞いてくれ
 

特別な悩みを相談したいときは?

性別違和などジェンダーに関する問題のほか、悩み事がパートナー関係や性的な問題のためにカウンセラーは同性がいい、といった場合には「〇〇 カウンセリング 臨床心理士」といった検索の仕方で、臨床心理士など専門家が携わっている施設を選んでみてね。

HSP、アダルトチルドレンなど対象を絞ったカウンセラーの中には無資格や誰でも取れる資格で活動しているカウンセラーも多く、問題を深刻にしてしまう恐れがあるんだ。他機関との連携や、基本的な心理学・精神医学の知識を修めた専門家が在籍している施設を選ぶことが大切だよ。

無資格じゃ危ないってことか
 

Q:費用は?

心療内科や精神科でかかる費用は、以下のとおりだよ。

心療内科・精神科:初診で2500〜5000円、再診で1500〜2500円(3割負担)
カウンセリング:60分で5000円〜10000円程度

心療内科・精神科については「自立支援医療(精神通院医療)」の制度を使える場合、医療費を1割負担まで軽減することができるよ。

カウンセリングが高額なのは、保険診療の対象にならないことが多いからなんだ。費用の問題があるときは主治医に相談したり、大学院付属の研修施設の利用を検討してみよう。
無料だったり高額すぎたりと極端な金額なカウンセラーは無資格だったり誰でも取れる資格で活動しているカウンセラーである場合が多く、むしろ悪影響になってしまう恐れがあるから気をつけてね。カウンセラーを探すときには「臨床心理士」などスキルを認められた専門家を優先して探してみよう。

大学院の付属施設では、専門家の指導を受けた上で研修員が対応する形を取っているから、一般的な相場よりも安くカウンセリングや心理検査が受けられるんだ。付属施設でのカウンセリング料金の相場は60分で3000円程度だよ。NPO法人のAACCでは大学院などが運営する相談施設を検索できるようにページを作成してくれているよ(大学等が運営する心理相談)。

使えるものは使っていこう
 

精神科と心療内科の違いまとめ

今回は心療内科と精神科の違いを中心に、困ったときにどんな専門機関を選べばいいのかについて大まかに解説してみたよ。

心のトラブルは長期戦になりやすく、弱った状態でも繋がり続けられることが重要なんだ。

「ちょっと調子が悪いかも……」
「なんだかわからないけどつらい」

などちょっとしたきっかけでも相談して大丈夫。むしろ早めに連絡してくれることで専門家側もとっても助かるんだ。ここで知った知識を活かして、早めに繋がることを意識してみてね。

メンテナンス感覚で相談してみてね
 

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