オキシトシンとは、脳から分泌されるホルモンの一つ。
元々は女性が赤ちゃんを出産するときに作用するホルモンとして知られていたんだ。オキシトシンが子宮を収縮させて赤ちゃんが産道を通るのを助けたり、母乳を出すように働きかけたりするんだね。
ところが、研究が進んでいくと男性にもオキシトシンが分泌されること、さらに人間関係の親密さや信頼感に関係するホルモンであることも知られるようになっていったよ。メディアでよく「愛情ホルモン」とか「幸せホルモン」と呼ばれるのはそのためだね。
じゃあ、オキシトシンはどう人の幸福に作用するんだろう? ここではオキシトシンの増やし方や副作用についても一緒に見ていくね。
目次
オキシトシンの効果
オキシトシンには様々な効果があることが知られているよ。ここでは主にメンタルについての効果を解説するね。
人への信頼感が増す
オキシトシンは人と人との信頼感を高めてくれる効果があることが知られているんだ。
「オキシトシンと人間関係」がが注目されたきっかけは、2005年のNature 誌に載ったチューリッヒ大学のコスフェルド氏らの論文だと言われているよ。コスフェルド氏らはオキシトシンを鼻から直接投与された人は、人への信頼感が増すことを発見したんだ。
この研究が嚆矢となって、オキシトシンが「幸せホルモン」と呼ばれるようになったんだね。
コミュニケーション能力が上がる
オキシトシンはコミュニケーション能力も向上させることが知られているよ。
東京大学の山末氏らが行った研究によって、自閉症スペクトラム障害を持つ人にオキシトシンを吸引してもらうと、対人コミュニケーション障害が改善されることが世界で初めて示されたんだ。
自閉症スペクトラム障害とは、生まれつきの脳機能障害のために対人関係が苦手だったり、強いこだわりがあったりといった特徴をもつ発達障害の一つだよ。未だに原因がはっきりとしていないし、治療法も確立されていないのだけど、オキシトシンが自閉症スペクトラム障害の改善に関係するかもしれないとして、今とても注目されているんだ。
ストレスが減る
オキシトシンはストレス軽減効果があることもわかっているよ。
オキシトシンは、脳の疲労回復や気分安定によい影響をもたらすことが知られていて、それは海馬と呼ばれる神経細胞の新生を促進させるからなんだ。海馬の神経細胞が新しくなると、うつ病やPTSDの改善を促す可能性があることがわかってきているよ。
PTSDのような辛い記憶と海馬との関係については、嫌な記憶の消し方の記事にも書いたから、良かったら読んでみてね。
ダイエット
ちょっと意外だけど、オキシトシンはダイエットにも関係しているよ。
自治医科大学の岩﨑氏らが行ったマウスを使った研究によって、オキシトシンがマウスの摂食行動を抑制することが分かったんだ。
もしこの結果が人間にも適応されるとしたら、肥満や過食の改善につながるのではないかと期待されているよ。
オキシトシンの副作用
ここまでみてきたように、オキシトシンにはとても多くの素晴らしい効果があるんだ。「幸せホルモン」と呼ばれるのも納得だよね。
けど、実はあまり知られていないけど、オキシトシンにも副作用があるんだ。今度はそれをみていこう。
他人に厳しくなる
オキシトシンは他人に対して厳しい態度を取るように働いてしまうことがあるんだ。
2010年にアムステルダム大学の研究者たちが行った実験によれば、確かにオキシトシンの「信頼感を高める」という効果が認められたものの、その効果は同一グループ内に限られるということが分かったんだよ。つまり、同一グループでの結束が強まれば強まるほど、見知らぬ人に対する嫌悪が高まるんだ。
心理学では自分が所属する集団を内集団、そうではない集団を外集団といって、「自分の集団こそ素晴らしい」と感じる「内集団びいき」があることが知られているんだけど、もしかしたらオキシトシンがこの現象に関係しているのかもしれないね。
辛い過去を思い出す
特定の状況下ではオキシトシンがかえって辛い記憶を呼び覚ます可能性があることも知られているよ。
マウントサイナイ医科大学のジェニファーらの研究によれば、子どもの頃にあまり親から愛情をもって接してもらえなかった男性は、オキシトシンを投与されると「自分の親はそれほど愛情深い方ではなかった」ということを思い出しやすいことが分かったんだ。
実験の被験者は男性のみだから、すべての人に適用されるかはまだ不明だけど、オキシトシンの働きは「幼少期の環境」に左右される可能性があるみたいだね。
ちなみに、子どもが「安心安全」と感じられる養育者のことを「安全基地」と呼ぶよ。
セロトニンやドーパミンとの違い
今までオキシトシンを「幸せホルモン」として紹介してきたけど、実は「幸せホルモン」には他にもセロトニンやドーパミンもあることが知られているんだ。どれも「幸せホルモン」と呼ばれるので違いが分かりにくいよね。
セロトニンやドーパミンのオキシトシンとの違いも簡単に触れておこう。
セロトニンとの違い
セロトニンは一言で言うと身体の健康に関わるホルモンだよ。
「心と身体はつながっている」とよく言うけれど、やはり身体が健康的な方がより一層幸せを感じやすいよね。セロトニンはそんな身体からくる幸せに関わるホルモンなんだ。
セロトニンが欠乏すると、脳機能が低下してうつっぽくなったり、イライラしやすくなるんだ。それだけではなく、セロトニンは睡眠の質にも大きく関与する物質でもあるんだよ。と言うのも、人を自然な眠りに誘ってくれる物質をメラトニンと言うのだけど、このメラトニンはセロトニンを原料として作られるからなんだ。
セロトニンを増やすには、日光を浴びたり、牛乳やチーズなどの乳製品、大豆などの豆類、あるいは魚などを食べるといいよ。
ドーパミンとの違い
ドーパミンは一言で言うと意欲に関するホルモンだよ。
人は競争に勝ったり、何かに成功したときに「やった!」と思ってとても嬉しい気持ちになるよね。それも一つの幸せなんだ。ドーパミンはそんな状況に関わるホルモンなんだよ。
ドーパミンは強い幸福感を人間にもたらしてくれるんだ。必死でレベル上げして防具を揃えてなかなか勝てなかったボスキャラにようやく勝てたときや、ギャンブルで一気に儲けたときのことを想像してみて。こんなことがリアルに起こったら、ドーパミンがたくさん出るのは必至だね。
けど、ドーパミンの幸福にはすぐに慣れてしまう性質があるんだ。「もっと強い敵を倒さないとつまらない」「よりたくさんお金がないと満足できない」といったようにね。
より強い快楽を求めると、依存的になってしまうから注意が必要だよ。
オキシトシンの増やし方
副作用もあるオキシトシンだけど、基本的には人を幸福にしてくれるみたいだね。最後にそんなオキシトシンの増やし方をみていこう。
スキンシップ
オキシトシンはスキンシップをはかることで増やしていけることが知られているよ。当然ながら、好意的な感情を抱いている人とのスキンシップに限定されるけどね。
恋人や家族がいる人は、その人とのスキンシップをはかることが効果的だよ。けど、必ずしも恋人や家族がいるとは限らないよね。そんなときはぬいぐるみを抱くのがオススメだよ。
花王が行った研究で、やわらかいものに触れるとオキシトシンが増えることがわかったんだ。
家にぬいぐるみがないって人はクッションやタオルなんかもいいかもしれないね。とにかく、ストレスを感じたら家にあるやわらかいものに触れると心が落ち着いていくよ。
コミュニケーション
人とコミュニケーションをとるのもオキシトシンを増やすのにいい方法だよ。
特に効果的なのは相手に感謝の言葉をかけるコミュニケーションなんだ。
ノースカロライナ大学の社会心理学者サラ・アルゴ氏らが実施した研究によれば、感謝した側もされた側も、どちらにもオキシトシンが増加することがわかったんだ。
感謝する内容はちょっとしたことでもOK。コンビニで店員さんからお釣りを受け取ったときや美容院で髪を切ってもらったときなどに「ありがとう」を伝えることができたら、お互いオキシトシンが出て幸せになれそうだね。
食べ物
マグネシウムやビタミン、カフェインなどが含まれた食べ物を取るとオキシトシンの分泌が促進されるそうだよ。
マグネシウムを多く含む食材には豆腐やほうれん草、藻類などがあるね。ビタミンを多く含むのは果物などで、カフェインはコーヒーやお茶に含まれているよ。
ただ、オキシトシンの分泌には「何を食べるか」よりも「誰とどんなふうに食べるか」の方が重要なんだ。どれだけマグネシウムをたっぷり含む食事をとっていたとしても、大嫌いな人とケンカしながら食べていては幸せじゃないよね。
大皿料理をみんなで仲良くとりわけあったり、バーベキューやタコ焼きのようにみんなで協力して作る過程の方がオキシトシンの分泌の多寡に影響しているんだ。
職場では、チームのメンバーと雑談をしながら昼食を取ることができればオキシトシンも増加するし、心理的安全性の向上が期待できるから、一石二鳥になるかもしれないね。
オキシトシンまとめ
オキシトシンは「幸せホルモン」と呼ばれるだけあって、信頼感やコミュニケーション能力を高めたり、ストレスを減らす役割があるよ。しかもダイエット効果までありそうなことがわかっているんだから驚きだよね。
オキシトシンは人と触れ合ったりコミュニケーションをとることで増やせるんだ。気軽に話し合えるような人が近くにいない場合は、ぬいぐるみのようなやわらないものに触れることで代用してもいいよ。
ただ、精神科医の齋藤環氏などが指摘しているように、中にはまだ動物実験の段階でしかないオキシトシンに関する研究を、さも人間にも当てはまるかのように取り上げている情報もあるみたいだから注意が必要だね。
今後のオキシトシン研究に乞うご期待!