「どうせやっても無駄だし」「頑張っても意味ない」と感じることってあるよね。
その背景には、心理学で「学習性無力感」と呼ばれる現象が潜んでいるかもしれないんだ。
今回はこの学習性無力感の克服法からよくある誤解、周りへの影響まで盛りだくさんで解説するよ!最後まで読んでもらえると嬉しいな。
目次
学習性無力感とは?
学習性無力感とは、ストレスを感じることが繰り返し起こり、かつその場から逃れられないと、その場から逃れる努力すらしなくなる現象だよ。
「何度なにをやっても効果がなかった」ことを学習してしまうから、学習性無力感という名前がついているんだね。学習性無気力と呼ばれることもあるよ。
犬の実験で証明された
学習性無力感は心理学の実験によって証明されている現象だよ。アメリカの心理学者マーティン・セリグマン氏によって発見されたんだ。
彼が学習性無力感を発見した実験は犬を用いたものだったんだよ。実験の概要を簡単に説明するね。
・犬を2つのグループ(AとB)に分け、両グループの犬に電気ショックを与えた。
・Aグループは、パネルを押せば電気ショックを止められるが、Bグループは押しても電気ショックは止まらない。
・ その後、Bグループにも電気ショックを止めることができる条件を与えた。
最終的にBグループの犬も電気ショックを止められたはずなんだ。けれど、Bグループの犬達はそうしなかった。「電気ショックを受けることは回避できない」と学んでしまったんだね。
このように、本当は改善策があっても、実行をあきらめた状態のことを学習性無力感というんだ。
学習性無気力とうつ病との違いは?
無気力に陥った様子はうつ病と似ていることが指摘されているよ。けど、この二つは別物で、見分け方があるんだ。
うつ病は必ずしも、ストレスから逃れられなかったことが原因で起きるものではないよ。うつ病は脳機能の低下によっても起きるから、必ずしも特定のストレスが原因であるとは限らないんだ。
また、学習性無力感は特定の状況、うつ病は生活全般に対して無力感を感じている点も異なるよ。
例えば、何度LINEしても返信のない子に対して「もうLINEしなくていいや…」と思った人でも、他の友だちにならLINEするよね。けど、うつ病になると、相手が返信をくれるとしても、そもそもLINEする元気すらなくなってしまうんだ。
うつ病と学習性無気力の見分け方
■うつ病
特定のストレスが原因とは限らない
生活全般に無力感を覚える
■学習性無力感
ストレスから逃れられなかった経験が原因
特定の状況に無力感を覚える
学習性無力感に陥りやすくなる原因は?
同じ状況でも学習性無力感に陥りやすい人と、陥りにくい人がいるよ。その違いはどこからきているんだろう?
学習性無力感に陥りやすくなる原因について解説するね。
過去の体験
過去の体験は学習性無力感への陥りやすさに影響を及ぼすよ。「またか」という気持ちが意識的にも無意識的にも働きやすいんだ。
親が過干渉
小さい頃って、「あれをしたい」「これをしたい」という気持ちが強いよね。けどそんな気持ちを支配的で過干渉な親に「ダメ」と却下され続ける体験をすると、学習性無力感に陥りやすくなってしまうんだ。小さい頃から自己決定権がないまま育つと、「自分は何も選択できない」と無気力になりやすくなるよ。
成功体験が少ない
本当は誰かの協力があれば達成できた事柄でも、運悪く助けてくれる人がいなかった、ということはあるよね。特に自分が幼いときは一人できることに限りがあるから、大人の協力がないとなかなかうまくいかないものなんだ。
小さい頃に成功した体験が少ないと、成長して新しい挑戦をするときにも「どうせ今回も上手くいかない」と思いやすくなるよ。似ている状況に同じような反応をすることを心理学では「般化」というんだ。
悲観的説明スタイル
学習性無力感を発見したセリグマン氏は、人間が「なぜこのようなことになったのか」を説明するとき、2つのスタイルがあると提唱しているんだ。それは楽観的な説明スタイルと、悲観的な説明スタイルだよ。そして悲観的な説明スタイルは無力感を拡大してしまうとしているんだ。
悲観的な説明スタイルとは、以下の3つだよ。この3つの説明スタイルを繰り返すのも問題だとされているんだ。
①ずっと続くと思う
一つ目は、何か失敗したときに「悪いことは永続的に続くだろう」と説明するスタイルだよ。ずっと続くと考えることで、対策を取る気持ちがわきにくくなるんだ。
②似たような状況でも似たようなことが起きると考える
二つ目は、他のあらゆる分野にも普遍的に起きる困難であると説明するスタイルだよ。過去に成功体験が少ないと、「般化」が起きやすいことはすでに説明したよね。般化が起きる背景には悲観的な説明スタイルが潜んでいるんだ。
③自責感を感じる
三つ目の悲観的な説明スタイルとは、困難が生じたときに「自分が悪い」と説明すること。
自分じゃコントロールできない環境側に原因があったとしても、「自分に原因がある」と考えるんだ。自分に原因があると考えると、どんどん自己効力感も下がっていくよ。
何度も思い出す
学習性無力感に陥りやすい最も大きな要因は、過去の困難を上記三つの説明スタイルで何度も反すうすることなんだ。反すうとは、何度も同じことを思い返すことだよ。
反すうすることで過去の嫌な出来事を何度も再体験し、無力感の学習が進んでしまうんだね。
学習性無力感にまつわるよくある誤解
学習性無力感に陥った心の状態は他人には見えないので、誤解を招きやすいんだ。よくみられる誤解をあげていくね。
従順である
学習性無力感があると、「どうせ自分の意思は反映されない」と感じやすくなるんだ。だから、他人に何か言われても自分の意見を言いにくくなるよ。そのことが他人からは「従順」と映ってしまうんだね。
例えば誘拐事件が起きたとき、「本当は逃げ出せたはずなのにそうしなかったのは、犯人に自ら従順に従っていたからだ」と言う人がいるけど、それは誤解なんだ。加害者に共感、信頼、協力などをする現象としてストックホルム症候群があるけど、背景には学習性無力感が潜んでいると考えられるよ。
真剣でない
学習性無力感があると「どうせ無駄なんだ」という意識が先行するし、結局うまくいかないことが怖いから、物事に消極的になってしまうんだ。それが他人には「真剣に取り組んでいない」と見えてしまうこともあるよ。
甘えている
学習性無気力があると、苦しい状況から抜け出す気力がわかなくなるんだ。だから他人から悪口を言われていてもあまり表情に表れなかったり、せめてもの自己防衛としてニコニコしていることもあるよ。笑顔を作ることで「攻撃しないで」と非言語のメッセージを精一杯送っているんだ。
けど、その笑顔が「ヘラヘラしている」「甘えている」と勘違いされてしまうんだね。
忍耐力がある
辛い状況でも耐えしのぐ姿をみて「忍耐力がある」と捉えられることもあるけど、これも誤解だよ。
学習性無力感のために、何か対策を取るだけの気力が失われてしまっているから、辛い状況にとどまり続けていると考えられるんだ。忍耐力とは、「辛さを避けられるけど、あえて避けない」力。だから学習性無力感に陥っていることと忍耐力があることとは全く別物なんだ。
もちろん、「学習性無力感に陥っている人は忍耐力がない」わけではないから安心してね。特定の分野で学習性無力感がある人でも、他の分野では忍耐強くいられたりするよ。
学習性無力感が周囲に与える影響
学習性無気力は、無気力になった本人だけでなく、周りにも多大な影響を及ぼすんだ。
周りも学習性無力感に陥る
学習性無気力は犬の実験によって発見されたと話したよね。実は、この実験を行ったセリグマン氏は、人間の場合、コントロール不可能な状況にいる他人を観察するだけでも学習性無気力に陥ることを見出したんだ。
お兄ちゃんがお母さんにいくら「お小遣いちょうだい」と言っても「ダメ」と言わ続けているのを見ていたら、自分も母さんに「お小遣いちょうだい」と言わなくなるということだね。
自発性が低下する
今説明したように、学習性無気力はどんどん周りに伝染していくんだ。周りに伝染すると、同じ環境にいる人たちみんなの気持ちが無気力になって、自発性が低下してしまうようになるよ。
会社の会議でせっかく提案を出したとしてもことごとく却下されてしまうのなら、誰も何も言わなくなるよね。
パワハラ気質になる
学習性無気力にまつわる誤解が、周囲をパワハラ気質にしてしまうこともあるんだ。
学習性無力感があると、悪口を言われても無表情や笑顔になることがあると説明したのを覚えているかな。穏やかな態度の裏に、どんな無気力が隠れているかはなかなか見えないものだから、相手が「こいつはこんなに厳しくいっても大丈夫なやつなんだ」と勘違いしてしまいやすいんだ。そうなると「厳しく言う」行為がエスカレートしてしまうよ。
また、学習性無気力の無力感からパフォーマンスを改善できないと「あんなに厳しく言ってもダメならもっと厳しく言わないと」と相手に思わせることもあるんだ。こちらも言動をエスカレートさせる要因となってしまうよ。
学習性無力感の克服法
「どうしてやる気が出ないんだろう?」と思うとき、学習性無気力に陥っている可能性もあるよ。最後に学習性無気力を克服する方法も述べていくね。
完璧主義を手放す
完璧主義があると学習性無力感に陥りやすくなるよ。
完璧を目指せば目指すほど、些細なミスが気になるからものすごく丁寧に物事をこなそうとするよね。それ自体はとても良いことだよ。
でも、人間である以上ミスはつきものだから、100%の完璧はあり得ないんだ。完璧主義が強すぎると100%ではない状況が続くことに耐えきれなくなり、「どうせ100%にならないのなら…」と無力感につながってしまうよ。強すぎる完璧主義は手放せるといいね。
いったん環境のせいにする
学習性無力感は、「自分が悪いんだ」と自責することでさらに強くなっていくよ。
だから、いったん環境のせいにしてしまうのも手なんだ。
「この試験に合格できなかったのは、今年はあまりにも難しい問題が出すぎたせい」
「彼女に振られたのは、相手に見る目がなかったから」
こんな風に考えて、学習性無力感に陥るのを意識的に回避するんだ。
もちろん、何でもかんでも環境のせいにするのは無責任な感じだよね。無力感に陥って本当にしたいことができなくなるのはもったいないよ。「いったん」の姿勢を忘れなければ、環境のせいにするのはとてもいい対処法なんだ。
しっかりと睡眠をとる
学習性無力感に陥らないためには、良質な睡眠も大事だよ。
一見すると睡眠は無関係に見えるけど、やる気を起こすドーパミンと睡眠はつながっているんだ。
ドーパミンとは神経伝達物質の一種なんだけど、脳科学者によれば、ドーパミンは人のモチベーションに大きく関係しているんだよ。このドーパミンは良い睡眠をとることで増加すると言われているんだ。
良い睡眠でドーパミンを増やすことで学習性無力感によって落ち込んだ気持ちを改善していくことが期待できるんだ。
散歩をする
運動することも効果的だよ。
特におすすめなのは朝に15〜30分散歩すること。日光を浴びることでセロトニンが分泌され、ストレスが減り、心が落ち着くからなんだ。
散歩とはいえ、運動はハードルが高い…という人もいるよね。運動が苦手な人は朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びるだけでもいいよ。日光浴だけでもセロトニンは分泌されるんだ。
「できる」を積み重ねる
学習性無力感はその名の通り、「学習」された「無力感」なんだ。
ということは、「効力感」を「学習」しなおすことで学習性無力感を改善できるんだ。効力感は「できる」とか「できた」「できそう」という感覚のことだね。
効力感は成功体験を積み重ねると形成されていくよ。成功体験といっても、大げさに考える必要はまったくないから安心してね。ほんの些細なことでもOK。自分を褒めてあげることが大切なんだ。
「毎日不満を言いながらも仕事に行けて、偉いじゃん私!」
「自分は欲しいものないのに、彼女の買い物付き合ってあげる俺って優しいな」
こんなことでも十分だよ。
しっかりと、できた自分を褒めてあげてね。
学習性無力感を治すには「可能性を学習する」
ストレスから逃れられない状況が続くと、学習性無力感に陥って改善策が取れなくなってしまうんだね。学習性無力感に陥った状況と似た状況でも対策が取れなくなってしまうのはつらいよね。
けど、無気力が学習によって形成されたなら、その逆の効力感も学習できるということなんだ。些細なことでも自分を褒めてあげたり、朝日を浴びたりするのも効果的だよ。0.0001mmでも、少しずつ「できた!」感覚を増やしていこうね。