「なんでいつもあいつばかり」
「私の彼、絶対浮気してる!」
同僚の成功を羨ましく思ったり、恋人の浮気を疑ったりした経験がある人もいるんじゃないかな。
嫉妬は自分の能力に自信を持てなかったり、大切な人を信じられなくなっている状態。「したくないのにやめられない」からとても辛いよね。
でも、嫉妬しているのは自分がダメな人間ということではないし、嫉妬は未来の自分を描くチャンスでもあるんだ。
人に嫉妬しないために、まずは心理学的な嫉妬のメカニズムや特徴から見ていこう。
目次
嫉妬のメカニズム
誰にでも起きる反応
嫉妬している自分はダメな自分と思いがちだけど、実はどんな人間にも備わっている自然な感情なんだよ。
プリンストン大学のスーザン・フィスケ氏は、脳はどんなシーンを見たときに喜ぶかを研究したんだ。
結果は、「お金持ちそうな医師や弁護士」が「通りがかりのタクシーに泥水を浴びせられる」などの場面で、脳はもっとも喜んでいたんだって。
また、慶応大学の別の実験では、狭いところに閉じ込められたネズミは、目の前に自由なネズミを見せられるとストレス値が上がり、同じように閉じ込められてるネズミを見せられると、ストレス値が下がることがわかったんだ。
つまり、嫉妬は人間だけじゃなくて、感情を持つ動物に共通の習性なんだね。
嫉妬の作られ方
次は、嫉妬がどうやって作られるか順番に見ていこう。
①感情の発生
嫉妬は感情の表れの一つなんだけど、実はいくつもの感情が入り混じった複雑なものなんだ。広島大学の研究によると、嫉妬は「怒り」「不安・恐怖」「悲しみ」の感情が主体で、それに「憤り」「恥」「後悔」などの罪の感情が加わったものと言われているんだ。
②感情の認知
怒りや不安、悲しみといった感情が、恋人やライバルといった特定の人と結びつくことで、自分が嫉妬していることを自覚するようになるんだ。一度自覚すると、「自分は劣っている」とか「きっと他に好きな人がいるんだ」と、自分や相手を疑う気持ちが出てくるよ。
③制限と禁止
嫉妬を複雑にしているのが、「制限」と「禁止」という要素なんだ。「こんなに頑張っているのになんであいつだけ」とか、「わたしはこんなに尽くしているのに」のように、自分に制限をかけたり我慢していることが、相手への不満に変わってしまうんだ。
④行動化
最初は不安とか悲しみの感情だったはずが、これらのステップを踏むことで、最終的には相手を攻撃したり束縛したりすることで、関係性を壊してしまうような行動に繋がってしまうんだね。
恋愛嫉妬の特徴
これまで嫉妬がどうやって起きるかを解説してきたけど、実は嫉妬にも2種類あるんだ。一つは社会的比較ジェラシーといって、学校の成績や出世の順番など、相手との「社会的な比較」から生まれるもの。
もう一つは恋愛嫉妬の場合で、社会的比較ジェラシーとは違う特徴があるんだ。
脳科学者の中野信子氏は、恋愛嫉妬と社会的比較ジェラシーの違いを、嫉妬と妬みの違いとして、嫉妬は自分の持っている何かを奪いにくる人の排除で、妬みは自分よりも上位の何かを持っている人との差異の解消、と説明しているよ。
第三者の存在
恋愛嫉妬の特徴の一つは、実在の(もしくは空想上の)第三者がいることだよ。たとえば、彼のとなりのデスクにいる女性とか、長く付き合ってた元カノの存在とかだね。
「自分のものは誰にも渡さない」という所有の力が働いて、第三者に対して攻撃的になる特徴があるんだ。
一方、同僚が昇進することへの嫉妬は、その人が持っている能力や権力をほしいと思ったり、自分の能力と比較することで、「あいつはいいなぁ」と羨ましく思うことなんだ。
友情にも嫉妬はあるけど、広島大学の同研究によると、恋愛嫉妬の方が怒りや抑うつの感情が高く、自己評価も低いことがわかってるよ。
マウントを取られる(と思い込んでしまう)
嫉妬しているときは、恋人との関係が対等に思えなくなるよね。
嫉妬が始まると、疑いや心配が心の中で大きくなっていくんだけど、その疑いを心から真実だと思っているわけでもないから、相手に思っていることのすべてをぶつけるのに躊躇したりしちゃうんだ。
自分の言いたいことを我慢するようになると、次第に「わたしはこんなに一途なのに自分だけ自由にしててズルい」というふうに、相手との力関係に優位差が出てきちゃうんだ。
たとえば、恋人に好かれるために相手の好きなことを優先したり、そのために自分の気持ちを押さえ込んだりするようにね。
マウントを取られていると思うと、言いたいことが言えないだけでなく、自尊心や自己評価も低くなるから、さらに疑いが強くなってしまい、嫉妬の悪循環に陥りやすくなるよ。
相手をコントロールしたくなる
「自分のものは誰にも渡さない」という所有の力が働くことで、次第に相手をコントロールするようになるよ。
たとえば、相手の携帯を見ようとしたり、頻繁に電話するように要求したりね。
心理学者のエーリッヒ・フロムは、愛することは「相手を成長させること」と言っているんだけど、愛する人をコントロールしようとしたり、行動を制限したいと思うことが、二人の関係を壊してしまう大きな要因になってしまんだ。
恋人に嫉妬しているときにしがちな11の行動
嫉妬しているときは普段では考えられないような行動を取ったりしちゃうよね。
神戸大学の神野氏は、嫉妬しているときによく見られる行動を11個に分類しているよ。
①否定的なコミュニケーション(パートナーの前で泣く、距離を取る)
②沈黙(嫉妬していることを伝えない)
③否認・抑圧(嫉妬していないようにふるまう)
④嫉妬させる行動を取る(自分から浮気の可能性をつくる)
⑤ライバルへの接触(自分が恋人であることを知らせる)
⑥ライバルを貶める(パートナーにライバルを悪く言う)
⑦暴力的な行動(パートナーのもの投げる)
⑧監視・束縛(調べる、ライバルへの接触を防ぐ)
⑨所有のサイン(仲が良いことを周りに見せつける)
⑩統合的なコミュニケーション(自分の気持ちを伝えて分かり合おうとする)
⑪補償的な関係修復(プレゼントを贈ったり、より魅力的になろうとする)
もちろん代表的な行動だし、状況や時間によって表出されるものは変化するよ。自分が嫉妬するときはどんな行動をすることが多いか、参考にしてみてね。
嫉妬のデメリット
次は嫉妬のデメリットを見ていこう。
実は嫉妬という感情自体は悪いものではないんだよ。でも、嫉妬している時間が長くなったり、嫉妬の強さが増していくと、自分の人生にとって不利益な影響が出てくるんだ。
自分の成功のために努力する時間がなくなる
嫉妬しているときは、他人の成功に気を取られたり、ライバルを遠ざけることにエネルギーを注ぐことになるから、自分の成功のために努力する時間がなくなってしまうんだ。
妬んでいる同僚からの依頼を拒否してニヤニヤしていたら、知らないうちに周囲の評価を落としていた…なんてこともあるんじゃないかな。
誰かの能力が消えることを祈っても、自分の能力を磨かかなければ解決にならないんだ。
永遠に満足できない
ライバルと同じようなものを所有したり、同じようなスキルを磨くために勉強する人もいるんじゃないかな。
でも、能力があったり優れている人は、決して一人だけじゃないよね。
誰かの持っている何かを妬んで、もしそれを手に入れたとしても、成功している人は次々と現れるから、永遠に満足することはできないんだ。
攻撃的になる
嫉妬はいくつもの感情が複雑に混ざっているものと言ったけど、特に「怒り」の感情が強いことがわかっているよ。
広島大学の研究では、被験者に嫉妬を感じた状況を振り返り、そのときの感情を書き出してもらったところ、全状況の75%に「怒り」の感情が共通していたことがわかったんだ。
怒りの感情は相手への攻撃になりやすく、それが原因で関係性の破壊にもつながってしまうことがあるよ。
嫉妬のメリット
今度は、逆に嫉妬のメリットを見ていこう。
「嫉妬なんて辛いしみっともないだけだよ」なんて思うかもしれないけど、これからの自分を思い描くヒントがたくさん含まれているんだ。
自分を知るきっかけになる
嫉妬や妬みの感情って、自分が欲しいものを相手が持っているときに生まれやすいんだ。
たとえば「あんなふうに誰とでも気さくに話せたらな」と楽しそうに話している人を見て羨ましなることもあるよね。
つまり、強く嫉妬心を抱くものほど、それが自分の求めているものだということなんだ。
嫉妬という感情を通じて、自分が何を求めていて、それを獲得するには何が必要なのか、どう動けばいいのか考えて努力できるチャンスなんだね。
自己克服の情熱を持てる
自分が欲しいものを知り、実際に行動して、一度でも得たいものを自分の努力で手に入れる経験ができると、「自分は変わることができる」という自己克服の喜びを得られるよ。
努力と変容の経験は自己肯定感につながるから、自分を他者からの評価じゃなくて自分の評価を拠り所にすることができるようになるんだ。
難しいけど、少しずつ実践することで、どんどん自分を信じられるようになるから、他の人に嫉妬することも少なくなってくるよ。
パートナーの存在を再確認できる
特に長く付き合っているカップルや夫婦にとっては、相手への愛情を再確認できるチャンスになるよ。
アメリカでは、カップルカウンセリングに通っている夫婦のうちの約40%は、どちらかの嫉妬が原因だと言われているんだけど、カウンセリングを通じて恋人との関係をさらに深めることができた、と語るカップルも多いんだ。
付き合いが長くなると「言わないでもわかってるだろう」とか、マンネリが起きやすいけど、嫉妬している自分を見つめて、恋人と話し合うことで、お互いの本音を知ることができるんだね。
ただし、愛と嫉妬は別物。愛がある嫉妬もあるけど、愛がなくても嫉妬はできるから、「嫉妬が愛情の証」にならないよう注意してね。
嫉妬の対策
最後に、実際に嫉妬の感情をどうやってポジティブなエネルギーに変えられるか、具体的で試しやすいものを紹介するね。
ジェラシータイムを作る
時間を決めて自分の嫉妬の感情に向き合う方法だよ。
嫉妬は心地悪い感情だけど、切り替えができず続いてしまうことで、自分も相手も傷つけてしまうから、時間を決めることで感情を切り替える練習になるんだ。
たとえば、いつも彼の仕事が終わる頃に疑いの感情が出てくるとしたら、ジェラシータイムを19時に設定してみて。
19時までは仕事や家事に集中して、時間になったら思い切って嫉妬に向き合ったり、気持ちを紙に書き出したりするのも良いね。
意識的に自分の感情にメリハリをつけることで、少しずつ感情をコントロールできるようになるし、もしかしたら時間になったら嫉妬の感情が薄れていた、なんてことも起きるかもしれないよ。
あきらめも肝心
とはいえ、なんでもネガティブな部分をポジティブに変えようとするのも大変だよね。
そんなときは、あきらめてしまうことも大事だよ。
恋人が一人でいるときに何をしているか心配しても、全部を知ることはできないし、ライバルの能力をすべて手に入れたら、それはもう別の人間になってしまうことだからね。
もし嫉妬心が芽生えてきたら、何か他に考えてみてほしいな。
ずっと買いたいと思ってた新しい洋服やバッグ、旅行の計画を立てることなんかも楽しそうだよね。
すれ違う人の幸せを願う
人の幸せを願うと自分の不安が減る、という実験結果もあるよ。
アイオワ州立大学の実験では、大学構内を12分歩き、すれ違った人に「幸せになりますように」と心の中でつぶやくように言われたグループは、他のグループに比べて不安が減り、共感性が増え、他者とのつながり感が増えたという報告がされているんだ。
心の中でつぶやくだけだから、行き帰りの通勤のときなんかにもできそうだよね。もちろん辛い気分のときは、まず自分のことを考えてあげてね。
なりたい自分と比べる
SNSを見てて「いいな〜あんなふうになれたらかっこいいな」なんて思うことあるよね。
でも、憧れと自分の成功は別物なんだ。他人になることを望んでも、それは結局他人軸で生きてしまうことになるから、まずは自分の成功を定義することが大事だよ。
自分の本当の望みを知るために役立つ質問を3つ挙げるね。
「なぜそれがほしいのか」
「それを得るために努力をしたいと思えるか」
「それを得るために何をすればいいのか」
嫉妬した相手や、その人が持っているものを言語化することで、少しずつ自分の本当の望みがハッキリしてくるよ。なりたい自分になるためのワークもあるから、ぜひチャレンジしてみてね。
嫉妬は自分を知るチャンス
誰かに嫉妬するのはとても居心地の悪いものだよね。
でも、嫉妬は、人生において自分がどんな人になりたくて、どんなふうに生きたいかを知るヒントがたくさん潜んでいるんだ。
自分の嫉妬の出どころを探るとき、ほとんどの人はライバルや恋人との関係性にだけ焦点を当てることが多いんだけど、どんな感情が沸き起こっているか、その理由を自分で観察することが大切なんだよ。
それに、嫉妬は誰にでもある自然の反応だから、嫉妬している自分を責めたりしないで、まずは嫉妬する自分の心とゆっくり向き合うことから始めてみてね。