「気づくとお金がなくなっている」
「どうすれば得になるのかばかりが気になって疲れる」
「どんなお金の使い方をすればいいのかわからない」
お金についての悩みって尽きないよね。
今回は生活と密接に関わる「お金の使い方」について、心理学的な視点から解説してみるね。豊かで有意義なお金の使い方について知ることは、生活の質を上げるきっかけになるよ。
お金の使い方は、心の健康や幸福な人生にも繋がる大事なことなんだ。
目次
お金の使い方がわからない理由は「自分基準がない」から
お金の悩みには色々なものがあるよね。
・ついつい無駄遣いしてしまう
・後で「いらなかったな」と後悔する
・「本当に必要か、もっと安いものが他にあるのでは」など考えすぎてしまう
上にまとめたものはほんの一部だけど、こうした悩みには共通の背景があるんだ。
それは「自分のためになるお金の使い方について、基準をはっきり持てていない」ということだよ。
「自分は食材に関しては妥協せず、特に豆腐だけは必ず豆腐屋で買う」のようなこだわりもその一例。
「自分にとって必要だと感じるものはなにか、それはなぜ必要か」について、他の人やマーケティングに惑わされない基準を持っていると、有意義なお金の使い方ができるんだ。
まずはお金の使い方で失敗してしまう理由や、有意義なお金の使い方をするための考え方について見ていこう。その中で自分のお金の使い方について、すこし振り返ってみてね。
お金の使い方で失敗してしまう要因
ここではお金の使い方で失敗してしまう理由について紹介するよ。
認知的なバイアスの影響
お金の使い方に関連する考え方の偏り(認知バイアス)として有名なものに「プロスペクト理論」があるよ。
これはノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンと、エイモス・トベルスキーが展開した理論で、マーケティングなどにも活用されているんだ。
プロスペクト理論=「なにかを買うことを決めるときなど、価値や確率について事実とは異なる認識の偏りが発生する」ことを説明する理論
たとえば「本日限定40%オフ!」のような広告を見たときどんなふうに感じるかな。
そこまで欲しくなかったものでも「買わなきゃ損かな」って気がするよね。
こうした気持ちはプロスペクト理論のなかで「損失回避性」と呼ばれるよ。簡単に言えば「人は損することを避けようとする」ということ。
上の例では「それを買ってどのくらい得をするか」を考えるよりも「買わなきゃ損」というほうに気を取られてしまう、ということだね。
他にも「アンカリング効果」という認知バイアスもあるよ。
アンカリング効果=表示価格など先に与えられた情報(アンカー)が判断を歪める効果
たとえばコンビニで数千円の買い物をしたときに、レジ横の小さなお菓子もなんとなく買ってしまった、なんて経験はあるかな。
これは買い物の総額である数千円がアンカー(船を固定する錨)になり、それを基準にお菓子の値段を比較するため「今更数十円くらい変わらないか」と思ってしまうのが理由だよ。
アンカリング効果は他にもECサイトの価格表示(普段は〇〇円だけど今なら50%オフ)や高額な商品の追加オプション(15万円の家電につく3000円のオプションは安く感じる)などに応用されているんだ。
こうした認知バイアスに乗せられないためには、買い物の前に「今日はここで◯◯だけを買う」とはっきり決めることが大事だよ。
強迫的な思い込み
好きなタレントや作品の関連商品を際限なく集めてしまうことってあるよね。
そんなときにはちょっと立ち止まって考えてみて。
「このグッズはあの場所に置きたい」「揃えてきれいに飾りたい」のような具体的なイメージがある場合は心を豊かにするお金の使い方だと言えるよね。
だけど「ファンだから全部揃えなきゃ」のように「そうしなきゃいけない」と考えてしまうような場合は気をつけてね。
「〜べき」「〜しなきゃいけない」のようなネガティブな信念にとらわれたお金の使い方は、適切なお金遣いのバランスを崩してしまうんだ。
それに「自分にとって本当に必要なもの」を考える力も奪ってしまうこともあるよ。
ストレス発散のための買い物依存
コンビニで意味もなくカゴいっぱいの買い物をしてしまう、明らかに必要のないと理解しているのに大量に買ってしまうなど、経済的な基盤に影響が出るようなお金の使い方をしていまっている場合にも注意が必要だよ。
ストレスや不安を解消するために衝動買いしてしまう場合があるんだ。沢山の買い物をした瞬間はスッキリするかもしれないけれど、それは自傷行為に近いよ。「自分へのご褒美」が「自分いじめ」になってしまわないように、自分を見つめてみてね。
買い物依存症の詳細は「買い物依存症の原因と対策」記事を読んでみてね。
有意義なお金の使い方とは?
次は有意義なお金の使い方について見ていこう。有名なものとしてハーバード大学の心理学者ダニエル・ギルバート氏らの論文があるよ。一部を紹介するね。
モノよりも経験・体験を買う
1000人以上のアメリカ人を対象に行った研究では、回答者の57%が車や電化製品など物質的な“モノ”よりも、旅行やコンサート、その他のライフイベントといった“体験”を買うことでより大きな幸せが得られたと答えているんだ。
買ったものはすぐに見慣れてしまうけれど、旅行やコンサートなど、買った経験とその記憶は、時間がたっても喜びを与えてくれるんだね。
誰かのためにお金を使う
人間はどんな動物よりも社会的な動物だから、社会的なつながりを感じることによって幸福度が高まるようになっているんだ。
たとえば、ブリティッシュコロンビア大学の研究では、高血圧の高齢者を2つのグループに分け、片方のグループには自分のために、もう片方は寄付や友人へのプレゼントを買うなどの用途でお金を使うよう指示したところ、他人のためにお金を使ったグループの血圧が低下するという結果が出ているんだ。
ほかにも脳科学の分野では、募金など誰かのためにお金を使うことで脳の報酬領域(腹側線条体)が活性化することなどが明らかにされているよ。
小さな満足をたくさん買う
人の心には「心理的免疫」という、感情が過剰に落ち込んだり過剰に浮かれたりするのを調和する仕組みがあるんだ。「ホメオスタシス」と似たような仕組みだね。
この心理的免疫の働きによって、人は大金を使って大きな満足を買ってもすぐに落ち着いてしまうんだ。たとえば高価な最新のiPhoneも、数週間すればあたり前に持っているただのスマホに感じちゃうってこと。
逆にこの働きを利用して、小さな満足をこまめに買うことで幸福を味わう時間を増やすこともできるんだよ。
一度にドカンとお金を使うより、ちまちま好きなものを買うほうが幸せが続きやすいんだね。
先に買って、後で使う
楽しみを先延ばしにすると、それを待っている間にも幸福が持続すると言われているんだ。
「旅行は予定を立てているときがいちばん楽しい」なんていうよね。
これは快楽物質であるドーパミンを分泌させる「報酬系」と呼ばれる神経系が、「欲求が達成される前から働き始める」という性質を持っているからなんだ。
だから旅行だけではなく「週末の楽しみにお菓子や紅茶を買っておく」なんてことでも幸福感を味わえるんだよ。
「そうは言うけど我慢なんてできないよ!」っていう人もいるよね。
そんな人は後で紹介する「有意義にお金を使える考え方」を参考にしてみてね。
欲しい物を手に入れたらどうなるか想像してみる
欲しい物について考えるとき、人はついついその詳細について考えることをおろそかにしがちなんだ。
なにか大きな物を買う前に、その新しい物を手に入れることで起きる問題について考えてみよう。
バランスボールや素敵なソファも、自分の部屋に置いたらちょっと邪魔になってしまうかも。
比較購買に気をつける
たくさんの商品を比較して優劣をつけるのは、賢い消費の仕方でもあると同時に罠でもあるんだ。
いくつもの商品を検討した結果、いちばん性能の高いものを買ってしまい、つい高額の出費になってしまうかも。
そのほかにも複数の価格に対して、人は真ん中を選んでしまう「ゴルディロックス効果」によって、「買うか買わないか」を「どれを買うか」の選択肢にすり替えられてしまうこともあるよ。
有意義にお金を使える考え方
次に、今日からでもはじめられる、上手なお金の使い方に繋がる考え方を紹介するね。
用途によって分割する
給料などまとまったお金を、それぞれの用途によって細かく封筒に振り分けると支出をコントロールしやすくなるよ。
実際にDillip Somanの実験では給料を糊付けされた4つの袋に分けて渡されたグループは、そうでないグループよりもお金を使うことに慎重になったと言われているんだ。
一方でお金の使いみちを予め決めてしまうことは「この額までは全部使っていい」という気持ちにもなりやすいんだ。
その場合はあらかじめ貯蓄用の口座に一定額を逃してしまう、なんて方法も効果的だよ。
「いざというとき」のためのお金を分けておく
上で紹介した振り分けの応用で、
「自分のメンタルが限界になったときパーッと好きなことに溺れるための保険金」
「全部ムリになったらしばらくの間逃げ出すための逃走資金」
など、自分でテーマを決めてお金を分けて、取り出しにくい場所にしまっておくのも効果的だよ。
実際に限界になったときにも罪悪感なく使えるし、お守りとして普段の心の健康を支えてくれるんだ。
自分の心の声を聞く
なによりも大事なのは、お金を使うときに自分の心の声を聞いてあげること。
「それは本当に自分自身が心から欲しているもの?」
「それは役に立って、自分のためになる?」
「それをすることで、自分はどんなふうに幸せになる?」
と問いかけてみて。このように自分の心について動きについて目を向けることを、心理学では「メンタライゼーション」とも呼ぶよ。
「こっちのほうが安いから」と安い食材を買うより、たった数十円高いだけの食材を買ったほうが値段の差以上の幸福を与えてくれるかもしれない。だとすればそれは賢い、有意義な買い物だよね。
自分が心から必要だと感じたなら、それは周りがどんなにおかしいといっても自分にとって必要なものだし、逆に「周りが持っているから」「得だから」「集めなきゃいけないから」と感じたのなら、それは自分にとって必要ないものかもしれない。
日頃から自問自答をするようにすると、自分が考え方や自分自身の気持ちを大切にしてあげる力がついて、日々を幸せに過ごすための支えになるよ。
いま欲しいものは?
それをすることで、自分はどんなふうに幸せになる?
有意義なお金の使い方まとめ
少し長くて疲れちゃったかな。
お金の使い方は、自分の人生を豊かにするのにとても大切な反面、マーケティングや周囲の人間関係によって影響を受けやすいとっても難しいテーマなんだ。
そんな中でもいちばん大切なことは「自分はなんのためにお金を使うのか」という問いかけを忘れないこと。
自分が心地よく過ごすにはなにが必要なのか。そのためにはどんなふうにお金を使えばいいのか。
人生をかけて付き合っていくテーマだからこそ、ゆっくりひとつずつ考えられるようになるといいね。