上司に相談しなければいけないことがあったり、恋人に甘えたいとき、なんとなく躊躇してしまうことってあるよね。
これは、誰かに頼ることを「弱さ」と考えていたり、「依存しちゃダメだ」と自分が警告している状態なんだ。
じゃあ、「安易に頼るのはダメ」と考えてしまう理由ってなんだろう? 実は心理学では、人に頼れない理由は2つに分けることができるんだ。一緒に見ていこう。
目次
頼れない理由①自分の要因
福岡県立大学の研究によると、他人に頼れない理由は、自分にまつわる要因と人間関係にまつわる要因の2つに分けられると言われているよ。
幼少期の経験
「厳しい親に育てられる」
「両親がケンカばかりしている」
「家庭の会話が少ない」
こんな状況で育った人は、トラウマになったり、頼ったり甘えにくくなったりすることがあるよ。
心理学では、幼少期における親との適切なアタッチメントが作られなかったことが、他人と関係を持つときの不安感につながりやすいと言われているんだ。
会話が少ない家庭で育った場合には、そもそも頼る方法が分からないといったロールモデル(お手本となる人)の不在という影響もあるよ。
周囲からの評価
周囲の反応が気になる人は、自分が困っていることも悟られたくないよね。
でも、人の目を気にするのは時代とか社会的な風習の影響を受けていることも多いんだ。
たとえば、女性が家を任されることが多かった昔は、近所付き合いを円滑にするために、周りの人に同調することが重要だっただろうし、「男は外で稼いでくればいい」と言われていた時代には、成功するために弱みを見せづらかったこともあると思う。
だから、頼れない自分を責める必要はないよ。他人の評価を気にするのは、社会で求められる役割に適応するために、人間が獲得していった自然な反応なんだ。
頼れない理由②人間関係の要因
これまで頼ることができない自分について見てきたけど、そもそも誰かを頼るのは相手がいなければできないこと。すごく社会的な活動なんだ。
現代的な人間関係
技術が発展してきた現代では、人間関係が希薄になりがちだよね。
でも、他人に気を遣って距離を置くことは、親密な関係になるチャンスを拒んでしまうことにもなるんだ。
たとえば、福岡県立大学の同研究によると、女性は周囲と同調すること、男性は相手の負担を減らすことで他人と関係をつくる傾向があるんだ。
つまり、適応的に依存することが重要で、無理やり人間関係を保とうとしたり、他者との関わりを減らそうとすると、いつか自分が辛くなってしまうんだ。
ルールが曖昧
「そんなことでいちいち報告に来なくていい」
「なんでもっと早く相談しなかったんだ」
こんなことを言われた経験はないかな?
相談をする基準が人によって曖昧だったり、ルールが上司の気分で変わってしまう場合には、頼ろうと思ってもなかなかしづらいよね。
ちなみに矛盾や2つ以上の意見の板挟みになることを、心理学用語でダブルバインドと言うよ。
依存は2種類ある
頼れない理由を見てきたけど、実は依存にも2種類あるんだ。
1つは情緒的依存で、他者との親密な関係を築くことで得られる安定を意味しているよ。好きな人といるとホッとしたり、職場の人間関係が良いと感じるときは、情緒的依存が健全に作られているんだ。
もう1つは道具的依存といって、自分の課題や問題を解決するために、他者からの具体的な援助を求めることを言うんだ。困ったときに人に頼ったり相談するのは、こっちの依存を使うことになるね。
人は人間関係を築いていくときに、道具的依存を活用して情緒的依存を育む必要があるんだ。
後輩から質問されて嬉しくなったり、恋人から悩みを相談されてより深い関係になれたと感じた経験もあるんじゃないかな。質問や相談といった道具的依存を使うと、情緒的依存を育めるんだ。
「誰かに依存してはいけないから、私は誰にも頼っちゃいけない」と考えると、実は問題を解決する上でも親密な関係をつくる上でも、どんどん自分を孤立させてしまうんだね。
上手に頼るための対策
人に頼るときはなんとなく心苦しいよね。そんなときは「気の持ちよう」じゃなくて「テクニック」が役に立つよ。
名前を呼ぶ
「◯◯さん、この〜だけど」
「ありがとうございます、◯◯さん」
こんなふうに、話の前か後に相手の名前を呼ぶと、好感度がアップするよ。
心理学者のジョゼフ・ヌッティン氏は、人は無意識に自分の名前を好み、自分の名前に含まれる文字に対しても好意的に感じるネームレター効果を発見したんだ。
それに、好意の返報性といって、人から好意の気持ちを受けとると、自分も同じように好意を返したくなる法則があるよ。
相手の名前を呼んで「この人は私に好意がある」と思わせ、自分のことも好きになってもらおう。
表情と言葉はポジティブに
批判されるのが怖くて、つい顔をくもらせながら相談してないかな?
誰かに頼るときは、明るく自然な笑顔でいることが役に立つよ。メラビアンの法則といって、話をするときに相手に伝わる情報は、話の内容が7%、声の大きさやトーンが38%、見た目が55%と言われているんだ。
いつもより少しだけ声のトーンをあげたり、少しだけ口角をあげるだけで十分だよ。本当に大変なことをお願いするときは、困った表情も混ぜると効果的だね。
結論から言う
相談するときは、自分より目上の人にする場合が多いんじゃないかな。
相談された上司の役割は、なんらかの評価や判断をすることだから、何について検討すれば良いか先に伝えてあげよう。
「〜の件について、私は◯◯◯◯と考えているのですが、△△部長の意見をお伺いできますか?」
感謝を示す
意外と大切なのがこれ。
助けてもらったあとは「◯◯さんのアドバイスのお陰で、なんとか期限内に提出できました」と成果を報告しよう。
相手は自分が役に立てたことがわかり、自尊心も満たされるよ。ちゃんと名前を伝えることも忘れずにね。
対面かビデオ通話で頼む
頼み方も大事だよ。
ウェスタン大学とコーネル大学の研究によると、誰かに依頼をするときはメールより対面のほうが、約30倍も承諾される確率が上がることがわかっているんだ。
表情や声のトーンなどノンバーバルな部分が分からないことで、依頼された人が疑いを持ったり共感しにくくなると言われているよ。
依存は弱さではない
自分が困っているときにポジティブに考えるのは難しいよね。
でも、誰かを頼るのは弱さじゃないし、頼るだけで自分の評価が下がることもないよ。
ほんの少しコミュニケーションを工夫するだけで、頼ることへの重荷が減ったり、より親密な関係性を築けたりするから、ぜひ試してみてね。