日曜日も夕方にさしかかると「あー、明日仕事か…行きたくない…」と考え始める人も多いんじゃないかな。
それだけ「仕事」はストレスの多いものだよね。実際、仕事のストレスが原因での労災請求件数は、年によって多少の増減はあるものの、基本的に増加傾向にあるんだ。
仕事はストレスになりやすいからこそ、ストレスから心を守ることが必要となるよ。今回は、働く人たちがどうやって心をケアしていくか、4つのメンタルヘルスケアの観点から解説していくね。
目次
4種類のメンタルヘルスケア
働く人たちの心の健康を守るため、厚労省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を示しているんだ。
そこでは4つのメンタルヘルスケアを提示しているよ。その「4つのメンタルヘルスケア」とは①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフ等によるケア、④事業場外資源によるケアのことなんだ。
①のセルフケアは、働く人が自らのストレスに気づいて、対処する方法のことだよ。
②のラインによるケアは、管理監督者が部下のために行うケア。
③の事業場内産業保健スタッフ等によるケアは、職場の産業医、保健師などが行うケアのことだよ。
そして④の事業場外資源によるケアは、職場以外でメンタルヘルスケアの専門家を活用することなんだ。
これら4つのメンタルヘルスケアについてはしっかりと解説していくね。でもその前に、そもそもどうしてメンタルヘルスケアが必要なのかを考えていこう。
4つのメンタルヘルスケアを行うメリット
「働く人」を対象にメンタルヘルスケアをすることで、働いている本人はもちろん、企業側にもメリットがあるんだ。
生産性の向上
メンタルヘルスケアを行って、働く人たちが健康でストレスが少なくなれば、その分意欲と集中力をキープできるよ。
仕事に対する意欲や集中力が高いと、生産性の向上が期待できるんだ。会社としては、より多くの利益を上げていきたいと考えているはずだから、働く人たちには健康でいてもらいたいんだね。
対人関係が良好になる
メンタルヘルスケアを行うことで、対人関係からくるストレスを少なくすることも期待できるよ。
厚生労働省が発表している「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)」をみると、仕事上のストレスがあると回答した人のうち27%が「対人関係」がストレスとなっていると回答しているんだ。「仕事の量・質」「仕事の失敗、責任の発生等」に次ぐ、3つ目に多いストレス原因とのことだよ。
職場の対人関係はストレスを生みやすいから、十分なケアをすることが必要になるんだね。
コストを抑えられる
メンタルヘルスケアを行うことで、教育コストや医療費を抑えることもできるよ。
せっかく時間とお金をかけて仕事を教えた従業員が病気で会社を休職・退職すると、それだけ会社は大きな金銭的負担を強いられることになるんだ。
内閣府が出した試算によれば、メンタル面等の理由で1人休職者がでると、企業は約422万円のコストを被るとのことだよ。
「健康への投資」と最近よく言われるようになってきたけど、メンタルヘルスケアはまさに防げたはずのコストをしっかりと防ぐための施策なんだね。
メンタルヘルス不調者を出さないために
4つのメンタルヘルスケアを会社のメリットにつなげるために、もっとも大切なことは「予防」の発想を持つことだよ。
確かにメンタルヘルスケアはメンタルが不調になった人に対しても効果があるのだけど、せっかくならメンタルが不調になってからよりも、なる前に効果を上げたいよね。なってからだと、既に集中力がなくなってしまっているかもしれないし、数か月休職しなければならない状態かもしれないから。
予防には「一次予防」「二次予防」「三次予防」があるよ。
一次予防
一次予防とは、働く人たちのメンタルヘルスを未然に防ぐものだよ。発生予防のことだね。
働く人たちがストレスを発散する方法を学んだり、働く環境を快適にすることが一次予防につながるよ。
50人以上の人たちが働く職場ではストレスチェックを実施することが義務になっているよね。ストレスチェックも自分の心の状態が把握できるといった意味で一次予防になっているんだ。
二次予防
二次予防とは、メンタルヘルスに不調をきたし始めている人をできるだけ早く発見し、そしてできるだけ早く治療につなげることだよ。重篤化予防のことだね。
働く人たちが「なんか変だな…」と思ったらすぐに相談できる環境を整えたり、産業医との定期的な面談の機会を設けるなどが二次予防につながるよ。
三次予防
三次予防とは、メンタルヘルス不調となった人ができるだけ早く回復し、以後メンタルヘルス不調に陥らないようにするために行われることだよ。再発予防のことだね。
休職した人の職場復帰を支援したり、配置転換をしたり、リハビリ出社のための仕組みを作ることなどが三次予防につながるよ。
セルフケア
4つのメンタルヘルスケアが必要な理由について解説したあとは、4つのメンタルヘルスケアの具体的な中身について見ていこう。
まずはセルフケアについて解説していくね。セルフケアは働く人たちが自分自身でできるメンタルヘルスケアなんだ。
「なんとなくいつもの調子が出ない…」そんなときに
セルフケアは「なんとなくいつもの調子が出ない」ときが実践のタイミングなんだ。
「いつもの調子がでない」とは、例えばいつもより食欲がない、いつもよりやる気が出ない、いつもより頭が回らない、いつもより眠い…などといった変化のことだよ。
身体や心が「今あなたはストレスを感じているんだよ」と教えてくれているサインとして、今挙げたような変化が表れるんだ。だから「いつもの自分」とは違うなと感じたら、そのストレスを発散することがとても大切になってくるよ。
セルフケアのために必要な2つのこと
セルフケアの実践として、まず次の2つをおさえてほしいんだ。それが「いつもの自分を知る」ことと、「コーピング」だよ。
「いつもの自分」とは、「ストレス反応がないときの状態」や「ストレスを意識しなくてもいい状態」のことなんだ。ストレスがないとき「自分は何時ごろ眠くなって、どれくらいの集中力があって、どれくらい仕事をし続けたら疲れてくるのか」、こういったことを把握しておくことが大切になるよ。「いつもの自分」を知っているからこそ、「いつもと違う自分」に気づきやすくなるんだ。
「いつもと違う自分」に気づけたら、それはストレスが溜まっている証拠。コーピングを実施しよう。ストレスを発散する方法を心理学ではコーピングと呼んでいるんだ。
コーピングは事前にいくつか用意しておけるといいよ。例えば、「ちょっとイライラしてることに気づいたら、すかさず一口チョコを食べる」「トイレに行って深呼吸する」「お気に入りのアロマオイルをしみ込ませたハンカチをかぐ」などだね。
セルフケアは4つのメンタルヘルスケアの中でも特に中核になるケアなんだ。「いつもと違う自分」への気づき方やコーピングなどについて、かなり詳しく解説した記事があるから、こちらもあわせて読んでみてね。
ラインによるケア
ラインによるケアとは、管理監督者が行うケアのことだよ。マネジメント業務を担う上司が、自分の部下の相談に乗ってあげるようなものをいうんだ。
「部下の様子が気になるな…」そんなときに
ラインによるケアは、「部下の様子が気になる」ときが実践のタイミングなんだ。ラインによるケアを効果的に進めるために、「上司の立場」と「部下の立場」になって解説していくね。
「上司の立場」にある人には、部下が健康的に働けるように気を配っておくことが求められているんだ。人はなかなか自分から「調子が悪いです」と言うことができないので、こちらから気づいてあげることが、心の健康には大切だとの考えからだよ。
上司が部下の不調に早い段階で気づいてあげることができれば、生産性の低下や周囲への仕事のしわ寄せ、労働士気の低下を未然に防げる可能性が高まるので、ラインによるケアはとても重要なケアと考えられるんだ。
「部下の立場」にある人は、自分の上司が「ラインによるケアを行うことが期待されている人物」であることを把握しておくことが大切だよ。人は「こんな相談したら、迷惑をかけるだろう」と思いやすく、なかなか相談できないものだよね。けれど、上司は部下の話を聞くことも仕事のうちだと思うのも一つの手だよ。話を聞いてもらうだけで元気になれることもあるかもしれないんだ。
もちろん、上司と言えど人なので相性があるし、上司が必ずしも聞き上手とは限らないよね。その場合は、他の3つのケアのいずれかを試すことも考えられるといいかもしれないよ。
上手なラインケアのために上司が部下にできること
上司の立場にいる人がラインによるケアを実施するには、「部下の『いつもとの違い』に気づく」「声掛け」「問題解決」「メンタルヘルスについての学習」など、多くのことが求められるよ。
特に「部下の『いつもとの違い』に気づく」は大切なんだ。ここに気づけないと、いつ声をかけていいかわからないし、問題解決能力も勉強した知識も活かしようがないからだよ。
とはいえ「いくら部下のこととはいえ、相手の心の中の変化なんてわかるわけないよ」と思う人もいるかもしれないね。でも、相手の心の変化に気づくコツが一つあるんだ。それは「部下のいつもの “行動”」に注目することだよ。
部下の日ごろをよく観察して、どんな「行動」をとる傾向があるかを把握するんだ。「いつもの出勤時間は何時ごろかな?」「いつも服装はどんな感じかな?」「いつもどれくらいの量を食べるのかな?」「休憩はどれくらいのタイミングでとっているかな?」などをおおよそでも把握しておくんだね。
ストレスは心に表れるだけではなく、行動にも表れるよ。だから「遅刻が増えてきたな」「スーツがしわだらけだぞ?」などといった異変が見られれば、部下にストレスが溜まっている可能性は大きいんだ。行動の違いに気づいたら、それが声掛けのタイミングだよ。
「声掛け」と言っても、基本的には部下の話をじっくりと聞いてあげることが重要になるんだ。真剣に話を聞いてくれると、人はそれだけでも随分安心できるからだよ。その際、「傾聴」の姿勢が求められるんだ。傾聴については傾聴方法をまとめた記事があるから参考にしてみてね。
このように上の立場の人が率先して受容・共感的な雰囲気を社内に作っていくことによって、働く人たちが「自分たちは否定されない」「尊重されている」と感じられることを「心理的安全性」というんだ。心理的安全性が高い職場はプロジェクトチームや組織の労働生産性が高まることが知られているよ。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、自分が勤めている会社にいるメンタルヘルスケアの専門家が行うケアのことだよ。例えば、産業医や保健師、カウンセラーなどの専門家、あるいは人事や衛生管理者等が行うケアのことだね。
「社内のメンタルヘルスの専門家に話を聞いてほしい…」そんなときに
事業場内産業保健スタッフ等によるケアは、「社内のメンタルヘルスの専門家に話を聞いてほしい」ときが実践のタイミングなんだ。
事業場内産業保健スタッフ等によるケアは、人事労務管理スタッフが窓口になっていることが多いよ。専門家につないで欲しいときには、人事の人に相談してみよう。
事業場内産業保健スタッフ等にする相談内容としては、下記のようなものがあるよ。参考にしてみてね。
「休職した方がいいのかわからない」
「自分では上手くセルフケアできないのでコツを教えて欲しい」
「精神科や心療内科に行った方がいいのか自分では判断できないので教えて欲しい」
効果的な事業場内産業保健スタッフ等によるケアの利用の仕方
上に一応相談内容の例は挙げたものの、仕事に関係することはもちろん、なんでも辛いことを相談することができるんだ。その話を受けて専門家は、必要に応じて様々な施策を取ることになるよ。
例えば産業医は人事労務スタッフに就業上の配慮や職場復帰の手続きについて助言や指導をすることができるんだ。なので、残業時間が多いことがストレスへの大きな要因であることが産業医との面談で明らかになったような場合、産業医は人事に対して残業規制を設けるように指導を施してくれたりもするよ。
事業場内産業保健スタッフ等によるケアにあたる専門家は、自分と同じ会社にいる専門家なので、その会社の経営状況や社風、人事制度などをよく知っているんだ。自分に合わせた働き方やメンタルヘルスケア方法論について一緒に考えてくれるメリットがあるということだよ。
一方、社内の専門家だからということで、「自分が相談室に入るのを誰かに見られるのではないか?」「自分のことより会社に有利になるように話を進めるのではないか?」と不安になることもあるかもしれないね。そもそも勤務する会社の規模によっては、必ずしも専門家がいるとは限らないんだ。
そんな場合は、次に紹介する「事業場外資源によるケア」の利用を考えてもいいかもしれないね。
事業場外資源によるケア
事業場外資源によるケアとは、自分の属する会社の外にある専門機関が行うケアのことだよ。「事業場外資源」は具体的には、会社の外にある医療機関や地域保健機関、EAPなどのことを指しているんだ。「EAP」は聞きなれない言葉だと思うので、あとでピックアップするね。
「家の近くの医療機関やカウンセラーを利用したい…」そんなときに
事業場外資源によるケアは、「会社にメンタルヘルスケアの専門家がいないけど、専門家に話を聞いてほしい」「会社にメンタルヘルスケアの専門家はいるけど、なんとなく利用しづらいので、外部の人に話を聞いてほしい」ときが実践のタイミングなんだ。
「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」のところで書いた「相談しているのが他の人に知られるのではないか?」などといった不安があるようなときや、そもそも社内に専門家がいないようなときに利用するといいよ。
事業場外資源によるケアの具体的相談方法こと
もっとも一般的なのが、自分の通いやすい医療機関を受診することだよ。メンタルヘルスケアを目的とした場合は、心療内科や精神科を受診してみてね。
心療内科や精神科では、医師の診察を受けることができるほか、臨床心理士などのカウンセリングを受けることができる場合があるよ。
今困っていることがうつ病などの精神医学的な症状なら、医師から処方されるお薬を飲みつつ、カウンセリングを受けることが効果的とされているんだ。また、通院している患者さんの許可があれば、会社が通院している病院へ問い合わせし、主治医から必要な配慮等を伝えてもらうこともできるよ。
ちなみに、「自分は心療内科と精神科、どちらに行けばいいの?」「そもそもその二つの違いって何?」「どんな準備をしたらいいの?」ということに疑問を持った人は、心療内科と精神科の違いをまとめた記事があるから、こちらで調べてみてね。
医療機関の他の事業場外資源として注目したいのが「EAP」だよ。EAPとはEmployee Assistance Programの略称で、日本語にすると「従業員支援プログラム」となるんだ。
EAPはその名の通り、従業員つまり働く人たちを対象にして、心の健康はもちろん、仕事のパフォーマンス、ライフキャリア、出社のリハビリ、リワーク、家庭内問題等、様々な相談に応じて「働くこと」を支援する専門機関だよ。
EAPを利用することは、企業にとっても大きなメリットがあることが知られているんだ。例えば、ワシントンDCに本社を持つ電力会社を調査した結果、EAP導入前と比べ、医療費の減少(46ドル)、病欠の減少(561ドル)、事故の減少(57ドル)によって、計644ドルの経済効果があったことが分かったそうだよ。
EAPは企業にも従業員にもメリットが大きいので、会社が契約しているEAPもあるんだ。自分が働いている会社が契約しているEAPを利用した場合「5回までカウンセリングが無料」などといった特典があったりするから、興味ある人は人事にEAPが利用できるかを確認するといいかもしれないね。
以上4つのメンタルヘルスケアについて表にしてまとめてみたから参考にしてくれたら嬉しいな。
まとめ
メンタルヘルスケアと一言で言っても、細かくは4つのメンタルヘルスケアがあるんだね。
メンタルヘルスヘアは働く人たちだけではなく会社にとってもメリットがあるから、積極的に4つのメンタルヘルスケアを推進している会社も増えているんだ。
仕事はどうしてもストレスが溜まりやすい性質があるよ。だから4つのメンタルヘルスケアを意識しつつ、適切にストレスに対処していけたらいいね。
セルフケアを基軸としつつ、他の3つのメンタルヘルスケアもバランスを見ながら活用していこう。