記憶って何種類あるの?心理学でわかる記憶メカニズム

2022.01.14 Fri
シンくん

この記事を書いた人

ココロジー案内人

シンくん

記憶って何種類あるの?心理学でわかる記憶メカニズム

ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授の研究によると、人は1日に最大で3万5000回の決断を下しているんだって。

その日々の判断を支えているのが、主に記憶なんだ。社会適応的な行動や自己効力感を満たした記憶などをもとに、人は3万回もの判断を下し、その判断方法が性格として形作られていくんだね。

だから、記憶メカニズムの理解は性格の理解にも通じるんだ。でも、一言で「記憶」と言っても、旅行の経験から自転車の乗り方までいろいろあるよね。

「わかる」には、まず「分ける」ことから。今回は、記憶の種類や分類法についてみていこう。大量に名前があるから、最初は図を見ながらざっくり理解していこうね。

性格の悩み解決から効率的な暗記方法まで役立つよ

 記憶の仕方による分類

記憶の種類
最初に記憶の全体図を確認すると理解が早まるよ。画像をクリックして拡大してね。

一般的に「覚えること」を「記憶」と言うよね。けど、いったい人はどのようにして物事を覚えるんだろう?

心理学では、人は「情報を覚えやすくする」「情報を留める」「情報を取り出す」の3ステップを踏むことで物事を記憶すると考えるよ。3ステップに分けることでより詳細に記憶の理解に役立つんだ。

例えば、「物忘れがひどい」と言うとき、そもそも覚える方法が悪いのか、それとも思い出す力が弱っているのか、などと細かく分析できるんだ。

情報を覚えやすくする

記憶の種類_記銘

1つ目のステップは、「人の脳が覚えやすい形に情報を変換する」だよ。これを記銘と言うんだ。符号化と言われることもあるよ。例えば、「シンリガク」という単語を耳で聞いたとき、「『心理学』だな」などと覚えやすいように工夫することだよ。

情報を留める

記憶の種類_保持

2つ目のステップは、「情報を脳に留めておく」だよ。これを保持、あるいは貯蔵とも言うよ。

一般的には「記憶する」は情報を脳に留める意味で使われるけど、心理学的には記憶の一ステップに過ぎないんだね。

保持に関して、アメリカの心理学者ロフタス氏による興味深い実験があるよ。ロフタス氏は交通事故に関するスライドを提示した後、それを見た参加者をAとBの2群に分けたんだ。その後、A群には「『接触』した車のガラスは割れていましたか?」と尋ね、B群には「『激突』した車のガラスは割れていましたか?」と尋ねたんだ。すると、実際のスライドは割れていなかったのに、B群は「割れていた」と答える傾向がみられたんだ。「激突」という単語の印象に引っ張られて、保持した情報が書き変わってしまったんだね。

人の記憶は案外簡単に歪められてしまうものなんだ…。

「激突」したなら割れてないとおかしい、と後付け解釈してしまったんだね

情報を取り出す

記憶の種類_想起

そして最後の三つ目のステップは、「情報を取り出す」だよ。これを検索と言ったり、想起と言ったりするよ。

検索(あるいは想起)されて初めて、「情報がちゃんと脳に保持(貯蔵)されていたんだな」ということがわかるんだ。

どのような情報を取り出すかは、性格が大きな影響を及ぼすことが知られているよ。

心理学者の杉森氏と丹野氏が行った実験では、「面倒見がいい」と「おせっかい」など、同じ意味だけとポジティブな印象のある形容詞とネガティブな印象のある形容詞を複数用意して、実験協力者にそれらを提示したんだ。すると、実験協力者がもともとポジティブな性格の持ち主だった場合、ポジティブな印象を持つ形容詞を「提示されていなかった」にも関わらず、「提示された」と答える傾向があったんだ。

つまり本当は「おせっかい」と書かれたカードを提示されていたとしても「面倒見がいい」というカードが提示されたと回答したということだね。逆にネガティブな性格の持ち主は、ポジティブな印象のカードを提示されてもネガティブな印象のカードが提示されたと回答したんだ。

記憶と性格はこんなにもハッキリとした関係があるんだね。

ちなみに、気分が落ち込んでいるときにはネガティブな記憶が思い出されやすいように、感情と記憶には密接な関係があるよ。これを気分状態依存効果と言うんだ。

「符号化」「貯蔵」「検索」って、コンピューター用語を援用しているんだよ

 記憶の保持時間による分類

同じ電話番号でも、例えば出前を取るときにかけたお店の番号は注文が終わったらすぐに忘れちゃうけど、長時間使う自分の携帯番号はずっと忘れないよね。

こんな風に、情報が保持される時間の長さによって記憶の種類を分類する方法があるよ。

短時間だけの記憶(感覚記憶)

記憶の種類_感覚記憶

もっとも保持時間が短い記憶は感覚記憶と呼ばれるよ。その名の通り、身体の感覚器が覚えている記憶のことだね。アイコニックメモリーエコーイックメモリーが有名だよ。

アイコニックメモリーとは、一目見た情報をそのままの形で保持する、目の記憶のことだよ。人は一瞬見たものをおおよそ1秒ほどそのままの形で覚えておくことができるんだ。

一方、エコーイックメモリーとは、聞いた情報をそのままの形で保持する、耳の記憶のことだよ。例えば、ドイツ語を全く知らない人でも、突然「グーテンターク(Guten Tag)」と話しかけられても約5秒以内であれば、そのまま「グーテンターク」と反復できるのだけど、それはエコーイックメモリーのおかげなんだ。

見ざる聞かざる…

1分程度の記憶(短期記憶)

記憶の種類_短期記憶

感覚記憶よりも、もう少し長い間情報を保持していられる記憶を短期記憶と言うよ。

短期記憶の保持時間は一分弱ほどと考えられていて、保持できる情報の容量は7±2チャンクと言われているんだ。

チャンクとは「情報一まとまりの単位」のことだよ。例えば、「ブルドック」という単語を知らない人にとって「ブ」「ル」「ド」「ッ」「ク」の5つの文字の羅列だから5チャンクだけど、意味を知っている人にとっては「ブルドック」の1チャンクになるんだ。

ほとんどの人にとって短期記憶に留めることができる情報は7±2チャンク(5~9チャンク)であることが知られているので、この数字はマジカルナンバーと呼ばれているよ。ちょっと神秘的。

ちなみに、短期記憶は記憶の保持といった機能だけではなくて、情報を変換したり復唱したりする機能もあるんだ。この機能にフォーカスをあてて「作業記憶」(ワーキングメモリー)と呼ばれることもあるよ。

私のマジカルナンバーは53万です

ずっと覚えている記憶(長期記憶)

半永続的に情報を保持できる記憶を長期記憶と言うよ。短期記憶として保持した情報を何度も何度も繰り返し思い返すことで情報が長期記憶へと変化すると考えられているんだ。自分の携帯番号を忘れないのは、何度も繰り返し思い出す機会があったからなんだね。

長期記憶には、大きく「言葉にできる記憶」と「言葉にできない記憶」の二種類があることが知られているよ。

言葉にできる記憶(宣言的記憶)

記憶の種類_長期記憶

言葉にできる長期記憶は、宣言的記憶と呼ばれるんだ。代表的な宣言的記憶には、意味記憶エピソード記憶があるよ。

意味記憶とは、学校で学んだことなど知識として保持している記憶のことだよ。例えば、「一日は24時間である」「一年は365日だ」「『吾輩は猫である』の作者は夏目漱石」といったものだね。

エピソード記憶とは、時系列にかかわる記憶のことだよ。例えば、「昨日の夜はカレーライスを食べた」などといった類の記憶だね。

エピソード記憶は自伝的記憶展望的記憶フラッシュバルブ記憶というように、細分化することもできるんだ。エピソード記憶は重要なキーワードなので、詳しくはエピソード記憶まとめの記事を読んでね!

意味記憶、エピソード記憶どちらも「一日は何時間?」「昨日の夜何食べたの?」などと質問されたときに、言葉で回答するのが簡単という特徴があるよ。

宣伝的記憶は「海馬」と呼ばれる脳の部位に記憶されると考えられているんだ。

言葉にできない記憶(非宣言的記憶)

記憶の種類_非宣言的記憶

言葉にできない長期記憶は、非宣言的記憶と呼ばれるよ。代表的な非宣言的記憶には、手続き的記憶プライミング古典的条件づけがあるんだ。

手続き的記憶とは、俗に言う「身体が覚えている記憶」のこと。自転車の乗り方やピアノの引き方など、何かの作業をこなすときの記憶だね。しばらく自転車に乗る機会がなかったとしても、一度乗れるようになれば基本的にいつでも乗れるよね。身体を使う動作も、人は長期的に記憶しておくことができるんだ。

プライミングとは、「学習の呼び水になる以前の記憶」のことだよ。ちょっと難しいから例を挙げるね。例えば、「だいどころ」という単語を提示された経験があると、その一週間後に「だ□ど□ろ」という穴埋め問題を解く際、単語を提示されていないときよりも、提示された経験があるときの方が回答率が高くなるんだ。以前学んだ単語「だいどころ」が呼び水となったんだね。このとき、「だいどころ」という単語を提示されたことを必ずしも覚えていないのが不思議なところなんだ。

古典的条件づけとは、「レモンを見るだけで唾液が出る」というように、過去の体験が身体の反応に影響する記憶のことだよ。「レモンを食べたらすっぱくて唾液が出てきた」という記憶があるから、見ただけで勝手に唾液が出てしまうんだ。

エピソード記憶もプライミングも古典的条件づけも「自転車ってどう乗るの?」「なんで虫食い問題解けたの?」「唾液を出したのはどうして?」と聞かれてもうまく言葉では説明できないから、非宣言的記憶と呼ばれているんだ。

非宣言的記憶は、「大脳基底核」や「小脳」などに記憶されているよ。

レモン1個に含まれるビタミンCは、レモン4個分らしいよ

思い出している感覚の有無による記憶の分類

保持時間や言語化できるか以外にも、思い出している感覚の有無で分類する方法もあるよ。

思い出してる感覚がある記憶(顕在記憶)

記憶の種類_顕在記憶

思い出している感覚があるのが顕在記憶だよ。

例えば、「あなたの出身高校はどこですか?」と尋ねられて「○○高校です」と答えるまでの間にきっと昔のことなどを思い出しているよね。このような記憶が顕在記憶の例だよ。

意味記憶やエピソード記憶は全て顕在記憶に該当するよ。

思い出してる感覚がない記憶(潜在記憶)

記憶の種類_潜在記憶

顕在記憶に対して、思い出している感覚が伴わない記憶のことを潜在記憶と言うよ。

例えば、「コーヒーにしますか? それとも紅茶にしますか?」と聞かれて答える際、「私って苦いの大丈夫だっけ? あ、ダメだ」みたいに考えないよね。特に何かを思い出している意識なく「紅茶をください」と答えると思うんだ。

こんな風に、判断に記憶が関与していても、何かを思い出している感覚が本人にもない記憶を潜在記憶と言うよ。何気ない判断の連続を「性格」であると考えると、人の記憶は性格のベースになっていると考えるられるよね。

手続き的記憶やプライミング、古典的条件づけも思い出している感覚がないから、潜在記憶に含まれるよ。

(……きこえますか… きこえますか… 今… あなたの…潜在記憶に…直接… 呼びかけています……)

覚えたことを忘れてしまうのはどうして?

記憶について考えてきたけど、ちょっと話を「忘れること」に移してみよう。どうして人は記憶したことを忘れてしまうのだろう?

使わないから忘れる説(減衰説)

長いこと冷蔵庫にしまわれていた食材は、気が付いたら萎れていたり、腐っていたりするよね。こうなってしまっては、もう料理には使えない。

それと一緒で、ちゃんと頭の中に保持していた情報でも、長いこと使わないと頭の中からその情報が消えてしまうと考える説があるよ。これを減衰説と言うんだ。

確かに昔知り合った人の名前とかは、いっこうに思い出せなかったりするね。

けど、ふとした瞬間に思い出すこともあるし、手がかりを与えられると思い出せることもあるよね。

だから、人がものを忘れてしまう理由には、減衰説以外にも有力な説があるんだ。

あれ? 何しようとしてたんだっけ???

忘れないけど思い出せないだけ説(検索失敗説)

人が一度覚えたことを忘れてしまう理由として有力な説の一つは、「覚えてはいるけど、思い出せないだけ」と考える検索失敗説だよ。

「今の総理大臣の名前わかる?」と聞かれたとき、即答できなかったとしてもイニシャルなどのヒントが与えられると答えられるかもしれないよね。

もし減衰説の言うように、完全に情報が失われてしまっていたらヒントが与えられても思い出せないはず。けど、ヒントがあれば答えられるということは、頭のどこかには情報が残っていたことを意味するんだ。

思い出せなかったのは、情報がなくなったからではなく、思い出すための手がかりが少なかっただけと考えるのが検索失敗説の考え方だよ。

思い出した! カバディだ!

記憶同士が邪魔し合ってるから説(干渉説)

他の有力は説は、「情報同士が邪魔しあっているから上手く思い出せない」と考える干渉説だよ。

例えば、meditation(瞑想)と、mediation(仲介)という単語を始めて覚えようとするときのことを考えてみよう。両者の単語はよく似ているよね。だから「仲介ってmeditationだっけ? いやmediation?」となってしまって正確に思い出せないこともあるかもしれないね。

このように、情報と情報が干渉し合うから思い出せなくなると考える説が干渉説なんだ。

これはmeditation

記憶していることを記憶している

最後に、記憶の中でも少し特殊な種類の「メタ記憶」についても考えてみよう。

メタとは?

まずは、メタ記憶の「メタ」の意味を説明するね。

メタとは、「高次の~」や「超越した~」という意味だよ。だからメタ記憶とは、「記憶を超越した記憶」という何やらかっこいい意味になるよ。

でも正直この説明じゃよくわからないよね。だから順を追って説明するよ。

メタ認知

メタ記憶について理解するには、その上位概念である「メタ認知」についても知っておいて欲しいな。

メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に把握して、認識することだよ。例えば、「自分は国語よりも数学が得意だ」とか「焦るとケアレスミスが増える」「ここの部分はまだあまり自分は理解できていないな」みたいな認識のことだね。

最近注目されているメンタルヘルス対策の一つにメンタライゼーションがあるのだけど、メンタライゼーションもメタ認知能力の向上に寄与するんだ。メンタライゼーションとは、わかりやすく言うと「自分や他人の行動の裏側にある、様々な思考や感情を推測すること」だよ。メンタライゼーションを通じてメタ認知能力を高めると、感情の渦に巻き込まれにくくなって気持ちが楽になったり、効果的に対人関係を築くことができるようになることが期待されているんだ。

メンタライゼーションに興味を持ってくれた人は、こちらも参考にしてみてね。

メタ記憶

メタ認知の中でも、自分の記憶や記憶過程に対する客観的なメタ認知をメタ記憶と言うよ。「自分はこの単語はしっかり覚えているけど、この単語はまだ曖昧だな」とか「ヒントさえあれば答えられそうなんだけど…」「この公式、昨日問題集で見たぞ」みたいな感覚のことだね。「記憶しているか否かを認識するための記憶」と言えるよ。

特にメタ記憶が関わる現象の中でも「思い出せそうで思い出せない」といった現象をTOT現象と言うよ。TOTは「喉まで出かかっている」という意味の「Tip of The Tongue」の頭文字を取っているんだ。「思い出せないけど、覚えているはず」という感覚は、まさにメタ記憶だね。

どうでもいいけど、TOTって、思い出せなくて泣いちゃってる人の顔(TOT)に見えない?

ヤバい…右の子の名前が思い出せそうで思い出せへん…

記憶の種類まとめ

一言で「記憶」と言っても、様々な種類があるんだね。

記憶は人間のデータベースとも言われるから、心理学的にも注目度の高い研究テーマなんだ。

特に記憶と性格、記憶と感情との関係は興味深いね。性格や気分の問題で辛い思いをしている人は、記憶について学ぶことで解決のヒントが得られるかもしれないよ。

記憶研究を通じて心理学に興味を持ってくれたら嬉しいな

これを読んだきみにはこれも読んでほしいな

おすすめコンテンツ
みんなの心が楽になる情報と出会えますように。