他人のネガティブ感情に“感染”しない3つの方法

人間関係 2020/09/10
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身近な人の感情は、実はかんたんに感染してしまうことをご存知ですか?

脳科学や心理学でも、過去10年ほどの先行研究で人間の脳が情動感染(emotional contagion)を受けることが明らかになってきました。

人の感情や気持ち、雰囲気は常に安定しているものではありません。普段冷静で落ち着いていても、常に安定している人は少ないでしょう。

今回は、感情が伝染する仕組みと、周囲からのネガティブな感情の影響を受けないようにする方法を詳しく解説します。

感情は知らない間に伝染する

冒頭のような感情の伝染を、心理学で「情動感染」といいます。感情は個人から個人だけでなく、個人からグループ、学校や会社など組織の雰囲気にも伝染し、ポジティブにもネガティブにも影響します。

情動感染を理解する上で重要なポイントは、「感情の伝染による影響は、自分でも知らない間に受けている」ということです。

情動感染のポジティブ効果

詳しく解説するために、情動感染を25年以上研究してきたペンシルバニア大学ウォートン校のSigal Barsade教授が行った研究をご紹介します。

2002年、Barsade教授はビジネススクールの学生を対象に情動感染とそれによる他者への影響を調べました。まず教授は、4つの感情状態を表現できる俳優を用意しました。

その感情状態とは以下の4つです。

  • (1)活発でやる気がある状態
  • (2)物静かで穏やかな状態
  • (3)敵意がありイライラしている状態
  • (4)落ち込んでいて元気のない状態

学生はその俳優と一緒に、競い合う形式のタスクを行います。研究チームは、学生の表情や感情の変化について観察し、学生自身にも感情がどのように変化したのかレポートを出してもらいました。

その結果、俳優が演じた4つの感情すべてが学生たちに伝染したことがわかりました。

中でも、(1)活発でやる気がある状態・(2)物静かで穏やかな状態の2つの感情の状態は、学生同士の対立を軽減したり、協調性を強くしたり、パフォーマンスを向上させたり、といったポジティブな影響があったことがわかったのです。

情動感染のネガティブな効果

一方で、ネガティブな感情の伝染の影響も、自分でも気が付かない間に受けています。

カリフォルニア大学のハワード・フリードマン氏らによる研究では、不安を言葉や態度で強く表現している人が視界に入ったとき、自分もその人と同じ負の感情を経験することがあり、またそれの影響で脳の働きが低下してしまうことがわかりました。

さらに、別の研究では、ストレスを感じている人を見ただけで、被験者の26%のストレスホルモン(コルチゾール)の値が上昇することがわかっています。

副流煙のように周囲に伝わる情動感染は、普段関わりのない人よりも、上司や恋人、配偶者、友達といった親しい間柄の方がより強い力を持っています。

楽しい、嬉しい、穏やかなどのポジティブな感情であれば良いのですが、悲しい、不安、辛い、怒りなどのネガティブな感情の伝染はできる限り避けられるようにしたいものです。

なんで感情は伝染するの?

そもそも、人の感情はなぜ周囲の人に伝染するのでしょうか?

感情の伝染を引き起こしているのは、神経細胞の1つ「ミラーニューロン」です。ミラーニューロンは共感細胞とも呼ばれており、人の真似を促す働きがあるとされています。

例えば、映画やドラマを観た時に感情移入して悲しい気持ちになるとき、あくびをしている人を見ると自分もあくびがしたくなるとき、疲れた人を見ると自分も疲れを感じるときなどに働きます。

人の真似をすることは、他者の考えを理解し、共感する上で重要なもの。ミラーニューロンがあるおかげで、私たちは人の真似をし、共感し、そこから色々なことを学ぶことができるのです。

小さいうちは、お母さんやお父さん、兄弟姉妹の真似をして学び、大きくなったら、職場の上司や先輩、友人や恋人など同様のことを行い、学んでいきます。

このように、人は人生の至るところで真似るという行動を繰り返していきます。他者の気持ちや行動を理解するために、共感細胞「ミラーニューロン」の働きは、社会で行きていく上で必須だと言えるでしょう。

ネガティブ感情に影響されない方法

ただし、ミラーニューロンの働きによってネガティブな感情も無意識に伝染してしまいます。

他者のネガティブ感情によって心身を疲弊させないためには意識的に予防する必要があります。以下では、負の感情の伝染を防ぐ方法を詳しくご紹介します。

1. 自分の状況に気がつく

まず、自分が周囲の人の強い感情に影響を受けていることに気がつけるようにしましょう。

「何か心が落ち着かない」「なんだかいつも以上に落ち込みやすいかも」と感じたら、自分の置かれた状況を俯瞰して客観視してみます。

一度、感情を置いておいて、実際に起こっている事実や周囲に情動感染の発生源を確認するだけでも、感情をコントロールしやすくなります。

2. ネガティブ感情の発生源を見ないようにする

情動感染の影響は、自分が何に注意を向けているかによって変わります。「何か負の情動感染を受けているな」と感じたら、その発生源を回避する必要があります。

強いネガティブ感情を放つ人だけでなく、ネガティブな情報を伝えるテレビやSNS、LINEなどのコミュニケーションツールなどから適度に距離を取るようにしましょう。

3. ポジティブな人の近くに行く

最後に、ポジティブな人の近くに行くというのも、ネガティブな情動感染を回避する方法の1つです。お伝えしたように、ポジティブな感情も周囲に影響を与えます。

イライラしたり、ストレスを感じたり、気持ちが下を向かないように、話すだけで自分が元気になる人や見ているだけで気持ちが落ち着くもの(動画や写真など)を観るようにしましょう。

自分の気持ちを上げてくれる人やものを探しておこう

今回は、感情が伝染する仕組みとネガティブ感情に伝染しないための方法を詳しくご紹介しました。

どんなに心が強い人でも、常にポジティブな気持ちでいることは簡単にはできません。「周囲の感情は無意識に伝染する」「それによって自分の気持ちやパフォーマンスに影響が出ることもある」と知っているだけで、回避したり改善したりすることができます。

ご紹介した方法を参考に、自分の気持ちを上げてくれる人やものを探してみてくださいね。

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