完璧主義の人は要注意!学習性無力感に陥りやすい人と乗り越える方法


学習性無力感とは
学習性無力感とは、長期間ストレスを回避することが困難な状況に置かれた人間や動物が、その状況から逃れようとする努力を行わなくなるという現象のことです。
ストレスがかかる状況に身を置くと、普通はそこから逃げようとしますが、自分が何をしても結果が変わらず、その努力が無駄だとわかると、「自分が何をしても意味がない」「自分は無力だ」と感じ、努力をしなくなってしまいます。
この学習性無力感は、1960年代にアメリカの心理学者マーティン・セグリマンが発表した心理学理論で、実証実験も行われました。
実験の内容は、電気の流れる部屋と2匹の犬を用意し、一方の犬はスイッチを押すと電流が止まる仕掛けを施した環境に、もう一方の犬は何をしても電流が流れ続ける環境に入れ、行われました。
その結果、スイッチがある環境にいた犬は、スイッチを押すことで電流が止まることを学習し、積極的に押すようになりました。しかし、もう一方の犬は、最終的に何も抵抗しなくなっていったのです。
また、ちょっとした仕切りを飛び越えるだけで、電流が流れる部屋から脱出できる状態に整えたところ、スイッチがある環境にいた犬はすぐに飛び越えたのに対し、もう一方の犬は何も行動を起こしませんでした。
つまり、自分がどんなに頑張っても結果は変わらないと学習することで、どんな状況になっても行動を起こさなくなってしまうことが証明されたのです。これが「学習性無力感」です。
学習性無力感に陥りやすい状況
学習性無力感に陥る流れの中で、どうして「ストレスは回避できない」と認識してしまうのでしょうか?その要因の1つに、常に人から自分を否定される状況にいることが挙げられます。以下が具体例です。
- 子どもの「あれしたい、これしたい」といった要望を過干渉・支配的な親に却下し続けられ、「これをしなさい」と別のことを押し付けられる。
- 配偶者から小さな失敗をチクチクと指摘され、感謝されることがない。
- 就職活動にて、何十社面接を受けても内定がもらえず、否定された気持ちを繰り返し抱く。
こういった状況が長期化すると、「どうせ頑張っても無駄だ」「どうせ何を言っても無意味だ」と学習し、自発的な行動がなくなっていってしまうのです。
学習性無力感に陥りやすい人の特徴
同じ状況にいても、学習性無力感に陥る人とそうでない人がいます。違いは、その人の性格や価値観、生活リズムと強い関係があります。
完璧主義
学習性無力感に陥りやすい特徴の1つ目は、完璧主義です。
完璧主義の人は高い目標を設定し、目標が達成できないと強く気にする傾向にあります。また、高い目標を設定することで、達成できない場面も比較的増えていき、結果「自分は何をしてもダメなんだ」と諦めてしまうのです。
良質な睡眠が取れていない
人は寝ている間に、身体の疲れを癒やすだけでなく、脳の疲れも取ります。睡眠が十分でないと、脳の疲れが取り切れず、ストレスが溜まりやすくなってしまいます。
また、睡眠中、やる気に関係するセロトニン・ドーパミン・アドレナリンといった脳内物質が分泌されるため、睡眠サイクルが乱れていたり、良質な睡眠がとれていないと、活力がなくなっていき、学習性無力感に陥りやすくなるのです。
学習性無力感を克服する方法
それでは、すでに学習性無力感を覚えている場合、それを改善する方法を解説します。
環境に原因がないか考える
セグリマン教授の実験からもわかるように、学習性無力感に陥る原因として、自分の努力が結果に結びつかないストレスフルな環境に長期間身を置くことが挙げられます。まず最初に自分がいる環境自体に問題がないかを考えてみましょう。
例えば、機嫌次第で提案を通す通さないを決める上司がいる、理不尽に当たり散らす先輩がいる、支配的でいつも否定ばかりする親がいるなど、環境に問題があると認識できるだけで、「環境が変われば自分はできる」というイメージを掴むことができ、学習性無力感は緩和されます。
成功体験を積み重ねる
学習性無力感は、自分の行動と結果に関連性がないと学習することで陥ってしまうもの。つまり、自分の頑張りによって結果を得られたり、成長が見られることで、学習性無力感から脱することができます。
こういった成功体験を積み重ねるために、小さい目標を持つことが大切。学習性無力感に陥りやすい人の特徴でも述べましたが、完璧主義の人は高い目標を設定しがちです。高い目標は達成できない場面を増やすほか、「やっぱり自分には無理だ」と諦めてしまいやすくなってしまいます。
デスクを整理する、ご飯を炊く、資料を参照元を探す、などできそうな目標を掲げてクリアしていくことで、少しずつ自信が芽生えてくるはずです。