大切な人が亡くなっても涙が出ないのはなぜ? 喪失感を乗り越えるプロセスを解説

そうなの? 妹は涙が止まらなくて感情的になっているって聞いたから、「なんて私は薄情なんだろう」って責めちゃってるんだけど…
そんな必要ないリン! 喪失感や悲しみの向き合い方は人それぞれリン。おいもさんにその理由を伝えさせてほしいリン。
大切な人が亡くなっても涙が出ない理由
大切な人を亡くした時、涙が出ないことがあります。周りの人は涙を流したり、悔しさや寂しさを表現したりする一方で、感情を感じない自分を責めてしまう人もいるでしょう。その理由を2つ解説します。
1. 心が壊れないように守っているから
大切な人を亡くした後は、その出来事の大きさにショックを受け、心は傷つき、非常に不安定になります。
喪失感を得た後、心は急激な負荷に耐えなければならず、その結果、心はショック状態になるのです。この状態を「急性ストレス障害」と呼びます。
この急性ストレス障害の症状の1つに「回避」というものがあります。回避とは、その名前の通り、特定の場所や会話を避けるなどしてトラウマの原因となるような出来事を避ける行動を指します。
また、回避の1つとして、感情が麻痺することも。大切な人を失ったという出来事のショックの大きさは計り知れなく、心はいっぱいいっぱいの状態です。
これ以上、悲しみや怒り、苦しみといった感情を感じてしまうと、心が壊れてしまうため、防衛反応として感情を鈍くさせます。このため、大切な人が亡くなっても涙が出ないのです。
2. 以前から喪失感を体験していたから
大切な人を亡くした時、涙が出ないもう1つの理由として考えられるのは、その人の命がわずかだと悟り、存命の時から「喪失」を体験していたということです。
大切な人が亡くなることと向き合い、たくさん泣いたり、強い怒りや悔しさを抱き、やがて来るその日まで、少しずつ心の準備をしていたと考えられます。
そういった場合、実際に大切な人が亡くなった時、涙が出ないことがあるのです。
喪失感を乗り越えていくためのプロセス
心がショック状態で、まだ喪失感や悲しみを受けきれていない場合、いつか心の準備ができた時にそれらを乗り越える上で、参考となる理論がいくつかあります。今回解説するのは、アメリカのローズミード大学大学院教授J.W.ウォーデンが提唱した「喪の課題」です。
この理論によると、喪失という体験はプロセスであり、4つの各プロセスには直面する課題があるとしています。
1. 喪失の現実を受け入れる
プロセスの1つ目は、大切な人が亡くなったという現実を受け入れることです。現実を受け入れるのは簡単なことではありません。喪失とは、心が壊れてしまうくらいの力を持っています。
「現実を受け入れられない。直視できない。認めたくない。」と思っても、それは自然なことです。焦らず、丁寧に時間をかけて、少しずつ受け入れていってください。
2. 悲しみを消化していく
現実を受け入れた時、計り知れない大きな悲しみが襲ってきます。悲しみと向き合っていくのは耐え難いことですが、悲しみというのは感じることで解消していく気持ち。
大変なことですが、その悲しみから逃げずに、しっかりと感じることが、このプロセスの課題なのです。
3. 故人がいない世界に適応する
大切な人が亡くなった後、それまで故人がやってくれていた役割やありがたさに気づき、寂しさがこみ上げてくることもあるでしょう。
「大切な人がいない世界で、どうやって生きていくか」と、遺された自分に問い直し、この世界で再び生きていく意味を再構成するのが、この段階です。
現実を受け入れ、悲しみを消化していく段階と同様に、新しい世界に適応していくことは、とてもエネルギーを必要とします。無理をせず、ゆっくりと時間をかけていくことが大切です。
4. 故人との永続的な繋がりを持つ
この「永続的な繋がり」とは、故人が心の中で生き続けられるように居場所を作ることを指します。
故人への愛を持ち続けて生きる、故人が教えてくれた学びを活かす、故人の価値観を大切にする、といったように、心の中で故人との繋がりを持ち、ともに生きていくことがこの段階です。
大切な人との繋がりは見出すものではなく、思い出すもの。自然と湧き上がってくるまで、時間をかけていくのが良いでしょう。