精神的に安定している人は3種類いる!本物を見分ける鍵は「自我同一性」

心理学 2020/07/19

ネット上で物議を醸しまくった「精神的に安定した人」。ココロジー編集長のまきしむが、「精神的に安定した人の本質って?」「精神的に安定した人と付き合うためには?」「精神的に安定するためにはどうしたらいいの?」といった疑問について、元臨床心理士の春井星乃さんに深堀りしてみました。「そもそも人の性格がどうやってできるのか」というところから、とっても緻密に分析された「精神安定」の完全保存版です。

本当に「精神的に安定している人」ってどういう人なの?

まきしむ(以下まき):6月に「配偶者には精神的に安定した人を選ぶべき」というツイートがバズってたんですが、春井さんはご存知でした? 例えばこんなの。

春井:ああ、タイムラインで流れてきたので見ましたよ。

まき:春井さんまで(笑)。すごい拡散してますね。このツイートの反応には、「精神的安定で人を判定するな」とか「一度も精神的に不安定にならない人なんていない」「相手にばかり求めすぎ」「精神疾患の人を軽視してる」という批判の声も多かったですね。そのあとはこんなツイートも出てきました。

確かにそういうケースもありますよね。
それで、私たちって普段「精神的安定」って言葉をあまり考えずに何気なく使っていますけど、「そもそも精神的安定ってなんなの?」って思ったんです。実は奥が深いんじゃないかと。なので、今回はぜひ春井さんに「精神的安定」についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

春井:なるほど、そうですね。みなさん普段「精神的安定」についてなんて深くは考えないですよね。「精神的に安定している人」っていうのはその人の表面的な言動を見てそう思われているわけですが、実は、その奥の意識構造を見ると3種類の人がいるんですよ。

まき:「精神的に安定している人」って3種類もいるんですか!? 見た目には同じに見えても?

春井:そうですね。よく見れば違うのだけど、ぱっと見では似てるように思うかもしれません。

その中の2種類がまず主なタイプなんだけど、簡単に言うと、さっきまきしむさんがあげたツイートの「不安定を経験していない人」と「本当に安定している人」です。3番目はちょっと分かりにくいけど「安定に縛られている人」。最初の2つは「感情を抑圧もしくは切り離して生きている人」と「感情のコントロールができている人」と言ってもいいかな。

まき:「不安定を経験していない人」と「本当に安定している人」と「安定に縛られている人」か。やっぱりその3つは似ているように見えて、全然違う意識状態なんですよね?

春井:そうなんです。これが具体的にどういう意識状態なのかを説明するためには、「赤ちゃんから成人するまで人間の意識がどのように発達していくのか」っていう心理学の意識発達理論をお話しなきゃいけないんだけど、いいかな?ちょっと長くなっちゃうかもしれないけど。

まき:え、赤ちゃんまで遡るんですか…? 軽い気持ちで聞いちゃったけど、精神の安定ってわりと究極的な質問だし、確かにそうなるよな…。よし、覚悟できたんでお願いします!

そもそも人の性格ってどうやってできるの?

春井:じゃあ、まず0歳から6歳までの乳幼児期の意識発達についてお話しますね。精神分析の創始者のフロイトって聞いたことありますよね?

まき:はい。1800年代後半から1900年代前半に活躍したドイツの精神科医で心理学者でもあるんですよね。

春井:そうですね。そのフロイトは「リビドー」と呼ばれる性的衝動や欲望を核とした以下のような「心理性的発達理論」を提唱しているのね。


そこでは、人間は男根期までの間に欲求不満や過度な満足を経験し、ある特定の段階に固着することで性格が生じると考えます。

まき:固着?ってなんですか?

春井:固着っていうのは、乳幼児期のある段階に意識が強く影響されてしまい、成長後もその状態を引きずって生きることです。そこから、さまざまな自我の防衛機制(抑圧や否認、合理化など)が生じ、悪化すると精神病理が生じると考えます。

まき:ふむふむ。乳幼児期にどのような経験をしたかで性格が決まってくるんですね。私はその頃のことをわりとよく覚えているんですが、確かにその時悔しかったこととか悲しかったことについて考えた経験が、今の性格に強く影響しています。考え方のクセというか。

本当の精神安定には「自我同一性を達成すること」が必須

まき:それで、その後はどうなるんですか?

春井:うん、その後の6歳から12歳までの潜在期は、その名の通り、このリビドーが影を潜めて、表に出てきづらくなるんです。そのかわり、社会的規範や人間関係のコミュニケーションや認知機能を発達させていく時期となります。

まき:ちょうど小学校で友達や先生と集団生活をしたり勉強をしたりして、社会的な常識を学ぶ時期ですもんね。

春井:そうですね。そして、その後の13〜14歳以降は性器期と呼ばれて、またリビドーが活発化し始める時期になります。心理学者のエリクソンという人は、フロイトの影響を受けて「心理社会的発達理論」という発達理論を提唱しているのですが、この13〜14歳以降の思春期では、自我同一性を確立することが課題となると言っているんですね。

まき:自我同一性ってなんでしょうか? 13〜14歳ってちょうど中二病患者が出てくる頃ですよね。私も罹患してましたけど…

春井:うん、「自我同一性」とは、これまでもこれからもこの自分であるという「一貫した自分」や「これこそが自分自身だ」という感覚のことです。アイデンティティとも言われていますよね。13〜14歳って、人目が気になるようになってくると同時に、自分の内面も客観的に見るようになってくるんですよね。

まき:そうか、中二病って、「他人から見た自分」が気になり始めた子どもが自分の内面と向き合って起きる葛藤による症状ってことなんですかね。13〜14歳になると、そのアイデンティティを確立するための作業に入るということですね。

春井:はい。人間は13〜14歳前後から自我同一性確立への課題に向き合うことになるとされていますが、マーシャという心理学者は、この自我同一性を確立するためには、「危機」と「傾倒」という2つの条件が必要だと考えました。

まき:「危機」と「傾倒」?

自我同一性に必要な「危機」と「傾倒」とは

春井:うん、「危機」とは、それまで当たり前だと感じて取り入れていた価値観に対して迷いを感じ、自分はこれでいいのかと考え始めること、「傾倒」とは、自分で選択したある特定の事柄に対し、興味関心を持ち、積極的に関わることです。

まき:なるほど、傾倒が必要っていうのは学校現場とかでも耳にタコができるほど言われますけど、危機は新鮮かも。
一度「危機」を経験して、これまでの価値観を疑うことが必要になってくるんですね。

春井:そうですね。そして、マーシャはこの「危機」と「傾倒」の組み合わせで、自我同一性を確立するまでには4つの段階があるとしました。「自我同一性達成」「モラトリアム」「早期完了」「自我同一性拡散」です。このマーシャの理論を「自我同一性地位」と呼びます。

まき:でも「傾倒しろ」って情報は巷にあふれているけど、「どうしたら特定のものに興味関心を持てるのか」とか「その対象は何でもいいのか」っていう疑問が出てきますよね?

春井:そうなんですよね。マーシャもそこのところはあまり詳しく説明していないんです。でも、私は、ここにフロイトの乳幼児期の固着の影響が生じてくると考えているんです。

まき:お、フロイトが返り咲いた!

乳幼児期で作られた認知様式が思春期で「性格」になる?

春井:(笑)。私は、フロイトのいう口唇期から男根期(0歳〜6歳ころ)までの経験によって世界の認知様式が作られ、それが13〜14歳ころから影響を及ぼし始め性格として表現されると考えているんです。

まき:なるほどー。じゃあ具体的には、この乳幼児期に作られる世界の認知様式はどのように性格に影響するんでしょうか?

春井:うん。フロイト派では、たとえば口唇期で満足した人は、楽観的・依存的で、欲求不満を経験した場合は抑うつ、退却的、受身的、他者から愛情を注がれていないと自尊心を保てないなどの特徴を持つというように考えます。そして、フロイトの弟子W.ライヒは、この固着したエネルギーを昇華していくと感情的にも安定し、愛と信頼を持った成熟した人間として生きていくことができると考えたんですよね。

まき:ふむふむ。 陽キャか陰キャかもここで分かれるってことですかね?

春井:うーん(笑)、厳密にはそれだけでは決まらないんだけど、その基盤ができるって感じかな。そして、この乳幼児期に作られる世界の認知様式を意識化することが、同様に、自我同一性を達成するための「傾倒」ということなのではないかと私は考えているんです。

まき:そうすると、まず0〜6歳の乳幼児期の経験で世界の認知様式が作られ、児童期ではそれが一旦影を潜めて社会的常識や規範を学び、13〜14歳以降に再び乳幼児期に作られた世界の認知様式が顔を出すという流れなんですね。でも、乳幼児期に自分がどんな不安を抱いていたかとか、親とどういう関係だったかを覚えてない人はどうすればいいんでしょうか?

春井:普通はみんな覚えていないですよね。この乳幼児期にできる世界の認知様式は無意識に近い部分にあるために、頭で考えて分かるものではないんです。日々の生活や友人関係、勉学などの経験を通して生じてくる感情や欲求・不安のパターンとして表れてきます。

タイプ1:「不安定を経験していない人」

まき:そっか、「傾倒」は頭で考えてできるものではないんだ……もしかしてその感情や欲求・不安が意識化できていない人が、最初に春井さんが言っていた「不安定を経験していない人」とか「感情を抑圧もしくは切り離している人」ってことなんでしょうか?

春井:そうですね。マーシャの理論だと、それは「早期完了」ということになります。

まき:えーと、「早期完了」とは、「危機」を経験していなくて、親の価値観をそのまま取り込んで生きている状態ということでしたね。親の価値観に「傾倒」していてもダメってことですかね?

春井:うん。親や家庭環境の影響が強すぎると、13〜14歳になってもそこで取り入れた価値観の影響が強くて、乳幼児期で作られる世界の認知様式から生じる感情や欲求・不安を感じることが難しくなってしまうんです。あくまでも、それまでの価値観・感じ方を守ろうとして、それに従って生きることが第一優先事項になってしまいます。

まき:なるほど。そうすると、全てにおいて変化することを嫌うようになるし、自分の奥底から湧いてくる感情や欲求・不安ともつながっていないからある意味安定した人に見えるわけだ。

春井:そうですね。これを「早期完了タイプ」と呼びましょうか。この「早期完了タイプ」は自分の感情とつながっていないので、何事においても確信や強いモチベーションを持ちにくくなります。すると更に、自分以外の社会的価値観やある特定の思想、専門知識、仕事や家庭での役割、性別、有名人、アニメキャラなどに同一化して自分の安定を保とうとするという傾向が出てくるんですよね。

まき:あー、そうすることで見た目には「精神的安定した人」に見えてるわけですね。そういう人っていっぱいいそうですが…。

タイプ2:「本当に安定している人」

まき:じゃあ、「危機」も「傾倒」も経験した「自我同一性達成」の人が「本当に安定している人」となるんでしょうか?

春井:そうですね。それまでの親の価値観ときちんと向き合い、乳幼児期に作られた世界の認知様式から生じる感情・欲求・不安のパターンを認識しているケースですよね。

ただ、厳密に言うと、それだけではダメなんです。

まき:えーそれでもだめなんですか? 道のりキビしすぎない…?

春井:うん。その乳幼児期に作られた世界の認知様式から生じる感情・欲求・不安に翻弄されてコントロール不能になってしまうと、フロイトの言うようにそこから心の病気が生じたりします。

まき:キビしー!人間の意識発達って、いろんなとこにトラップありすぎだわ…。

春井:そうなんです。でも、そのトラップの場所が分かれば避けられるから、今日はみなさんに意識の地図を知ってもらえるといいなと思います。

まき:確かに。意識の地図ってなんかかっこいいですね。気に入りました…

春井:そうですか?よかった(笑)。なので、まず「本当に安定している人」になるには、親子関係にきちんと向き合い整理すること、その上で、日常生活で自分の奥底から湧き上がってくる感情・欲求・不安のパターンを知ること、その感情・欲求・不安をコントロールして自分の長所や能力として活かすことが大切になってきます。

まき:ひえー、字面では簡単そうだけど実際は大変な作業ですよね。

春井:そうですね。これは、患者さんとのカウンセリングで扱う内容とほぼ重なってきますが、患者さんの場合はこの過程に数ヶ月から数年かかる方もいらっしゃいますね。

まき:これができている人が「本当に安定している人」ってことですね。「自我同一性達成タイプ」?

春井:そうですね。

タイプ3:「安定に縛られている人」

春井:で、最後に3番目の「安定に縛られている人」ですが…

まき:はい、それってどういう状態なんですか?

春井:さっき、フロイトの口唇期・肛門期・男根期の話のときに、例として「口唇期に過度に満足したタイプ」をあげて、そういう場合は楽観的・依存的になると言われていると言ったでしょ?

まき:はい。それが、3番目のタイプと関係してくるんですか?

春井:はい。口唇期に過度に満足すると、安定や現状維持が第一で、ネガティブなことや問題を嫌うという性格が生じます。ですから、この場合はやや欲求・不安のコントロール度が低くても、精神的に安定しているように見えるんです。なにを差し置いても精神的な安定を保とうとするので。

まき:なるほど、他の段階の固着のタイプだったら感情的になったりすることでも、口唇期の満足のタイプは感情的にならずに安定して見えたりするわけですね。

春井:はい。でも、だからといって、必ずしも欲求・不安のコントロール度が高いわけではないんですよね。これは「口唇期満足タイプ」と呼びますね。

まき:その「口唇期満足タイプ」って、「早期完了」ではないけど、「自我同一性達成タイプ」までは行ってないという感じですか?

春井:「口唇期満足タイプ」にも「自我同一性達成」で欲求・不安のコントロール度が高い人もいます。図にするとこんな感じかな。

まき:なるほどー。「口唇期満足タイプ」は、乳幼児期に作られる世界の認知様式から生じる感情・欲求・不安を意識化してはいるけれども、このタイプの全員が欲求・不安のコントロール度が高いわけではないということなんですね。

春井:そうですね。つまり、「精神的に安定している人」には、世界の認知様式から生じる感情・欲求・不安とつながっておらず自分以外の価値観を取り入れて安定を保つ「早期完了タイプ」と、それらを意識化しコントロールしてうまく使うことができている「自我同一性達成タイプ」、世界の認知様式からくる感情・欲求・不安は意識化しているけれども、それが安定を最優先にするという傾向を持つので逆に「安定」に縛られている「口唇期満足タイプ」の3つがあるということになりますね。

本当の信頼関係は「開放の窓を共有する」ことで築ける

まき:なるほどねー、そうすると、やっぱりこの中で望ましいのは「自我同一性達成タイプ」ということになるんでしょうか。

春井:そうですね。難しいですが、そこを目指して行けるといいですよね。そもそも、ツイッターで話題になっていた夫婦関係も、お互いがこの「自我同一性達成タイプ」の状態になるために最適な経験なのではないかと私は思うんですよね。

まき:というと…?

春井:まきしむさんは「ジョハリの窓」っていう心理学の概念って知ってますか?

まき:いや、初めて聞きましたね。

春井:これは心理学の一般教養の授業でも出てくるような有名な概念なんだけど、人間の自己の領域は「自分と他人が知っているか知らないか」で以下の4つに分けられると考えます。

まき:あー、なんか見覚えがあるような気もします。これが夫婦関係や「精神的安定」とどう繋がるんですか?

春井:うん、通常「仕事やSNSで見せる自分」は「開放の窓」の領域に属し、そこでは、その他の3つの領域の特性をないもののようにして振る舞うことができますし、自分も周囲もそう理解してしまいがちですよね。仕事やSNS上の浅い付き合いでは、それで問題なく物事が進むことが多いです。

まき:開放の窓だけやたら磨き上げて、盲点の窓がめっちゃ盲点な人って結構見かけますよね。

春井:うん。でも、プライベートを長い時間一緒に過ごす恋愛や夫婦関係、子育てでは、他の3つの領域の特性がどうしても表れてしまいます。ですから、私は、その人の本質は、恋愛の相手、夫or妻、子供など最も身近な関係性の中に表れると考えています。

まき:確かにそうですよね。仕事ではバリバリに活躍して部下からの信頼も厚いという人が家庭では暴力をふるっていたり……なんて話はよく聞きますし。

春井:そうですね。家庭ではその人の無意識に溜まっている考え方・価値観・記憶・感情などが表に表れやすいんです。つまり、先程からお話している自分が取り入れている親の価値観や社会的価値観、乳幼児期に形成された世界の認知様式から生じる感情・欲求・不安が出やすいんですね。

まき:そっか。それが表に出ることで自分も気づきやすくなるし、問題を解決しなければならない時は否が応でも向き合わざるを得なくなりますもんね。

春井:そうですね、そこで自分と向き合うことで徐々に「自我同一性達成タイプ」に近づくことができます。

まき:なるほどねー。「精神的安定」がどういうことなのかっていうのはよく分かりました。それで、いよいよ本題というか、核心に迫りたいのですが、最初にあげたツイッターの「配偶者には精神的に安定した人を選ぶべき」っていうのは春井さんはどう思いますか?

春井:確かに精神的に安定している人と毎日過ごすのと、不安定な人と毎日過ごすのとでは大きな違いが出てきます。でも、「精神的安定」だけを基準に配偶者を選ぶというのも違う気がするんですよね。

精神的に安定した人と信頼関係を築く、たった1つの方法

まき:なんと、ここにも意識発達のトラップが…? それはどうしてですか?

春井:これは特に男性に多い傾向だと思うのですが、「精神的安定」だけを基準に選ぶということは、自分がネガティブな感情と向き合いたくないという動機が大きいように思うんです。それだけで配偶者を選ぶと、相手がなにかどうしようもない出来事にあって不安定になったときに受け入れることができなくなりますよね。

つまり、そういう動機だけで配偶者を選ぶということは、結局、自分は感情や奥底にある価値観・欲求・不安とは向き合いたくないし、変わりたくもない、自分が楽に生きたいだけということになります。

まき:う…これは手厳しい……。なんかすいません……(笑)。でも本当にそうですね。それじゃあ、せっかく結婚して夫婦生活をしても「自我同一性達成タイプ」には近づけないことになります?

春井:そうなんです。精神的安定も配偶者を選ぶときの1つの大事な指標ではありますが、本来結婚とは「相手の全人格を尊重し受け入れ、ともに幸せを目指す覚悟」だと思うんですよね。それがあって初めて、共に「自我同一性達成タイプ」を目指すことができるんじゃないかと私は思うんですが。

まき:確かにねー……かなり厳しい道のりですが。でも、それって、そういう覚悟ができるほど相手を信頼できるかってことになってきません?

春井:そうですね。まきしむさんは信頼関係ってどういうことだと思いますか?

まき:信頼関係かー、考えたことないかも。

春井:私は、さっきの「ジョハリの窓」でいうと、お互いが「開放の窓」の領域を共有できると、信頼関係が生まれると考えているんですよね。

まき:ふむふむ。

春井:今までお話してきた「精神的安定のタイプ」でいうと、「自我同一性達成タイプ」は開放の窓と秘密の窓の領域が広く、「早期完了タイプ」は狭い傾向を持つと言えます。つまり、「自我同一性達成タイプ」は自己理解度が高く、「早期完了タイプ」は自己理解度が低い傾向があります。

まき:なるほど。自己理解の深さが開放の窓と秘密の窓の広さにつながるわけですね。それが信頼関係とどうつながってくるんでしょうか?

春井:うん、なぜこういう話をしているかと言うと、信頼関係というのは自己理解と深い関係があるからなんです。まず前提として、人間というのは、他人を見るときにどうしても自分を基準にして見るので、自分を理解している程度にしか他人を理解することができないという傾向を持っています。

まき:そんなシステムが……。でも、確かにそうかもしれないですね。

春井:なので、例えば、自己理解度が4割の「早期完了タイプ」が自己理解度8割の「自我同一性達成タイプ」を見ても、「自我同一性達成タイプ」の4割しか理解することができないんです。

逆に、自己理解度が8割の「自我同一性達成タイプ」が4割の「早期完了タイプ」を見ると、「早期完了タイプ」の8割が見えてしまいます。でも、「早期完了タイプ」は4割が自分のすべてと思っているので、ここで齟齬が生じ信頼関係が生まれにくくなるんです。

まき:なるほどー……ということは、同じくらいの自己理解度じゃないと信頼関係が生まれにくいってことですか?

春井:当然そうなってきますよね。

まき:えっと、じゃあ、今まで話してきた精神的な安定と自己理解度って関係しているんでしょうか? 「早期完了タイプ」は、安定しているけど自己理解度が低いっていうのはどういうことなんだろうと。

春井:そうですね、「早期完了タイプ」は見た目安定しているように見えますが、なにか起こると不安定になる可能性が高いんです。自己理解度が低いと無意識的な信念や感情・欲求・不安に翻弄されやすいので、精神的に不安定にはなりやすいんですよね。

まき:そっか。はじめにあげたツイートの「人生初の苦境で発狂する人」ですね。ということは、自己理解度が低いと精神的に不安定になりやすくて、自己理解度が高いと精神的に安定しやすいって傾向はあるんですね。

春井:そうですね。厳密には自己理解度が高くても欲求・不安のコントロール度が低いとまた不安定にはなりやすいのですが、概ねそう言えると思います。

まき:なるほど。なぜ自己理解と精神的安定の関係を聞いたかというと、最初にあげたツイートのコメントに「精神不安定な人ほど安定した人を選ぶ」っていうのがあったんですよ。もし、自己理解度が低いと不安定になりやすくて高いと安定しやすいのであれば、これは真逆というか、そうではないってことになりますよね?

春井:そうですね、自己理解度が低い人は、同じように自己理解度が低い人と信頼関係を持つ傾向があります。

まき:ということはですよ? 自己理解度が高くて安定している「自我同一性達成タイプ」と結婚するには、自分も自己理解度と欲求・不安コントロール度を上げて「自我同一性達成タイプ」になることが必要ということになりますよね?

春井:そうなんですよね。そうでないと、結婚するくらいの信頼関係を築くことは難しいと思います。

まき:なんと…ここでも厳しい現実が…。相手のスペックだけ考えていてもダメということですね。

春井:うん……「早期完了タイプ」で生きることも「自我同一性達成タイプ」を目指すことも、あくまで個人の自由ですしそれぞれが尊重されるべきなんだけど、より生きやすいのは「自我同一性達成タイプ」ですよね。深い自己理解と他者理解をもとに相手と深い絆を築くことができるし、精神的にも安定して自分の能力を発揮することができるんですから。

まき:なるほど。肝に銘じておきます。よーし、まずは自分探しでインドに行ってきます!

春井:(90年代のフリーターかな…?)
日常の中で育んでって言ったのにな〜。あ、もう行っちゃった…。

 

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最後まで読んでいただきありがとうございました! これを読んだ方が本当の信頼関係が築けますように。(できれば私も…)

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written by maxim, Cocology編集部

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