今更聞けない「アドラー心理学」って? 代表的な考えまとめ
ドラマや本の『嫌われる勇気』で一躍有名になった「アドラー心理学」。自己啓発だけでなく、ビジネスや子育てにも活用できると評判になり、関連書籍が次々に発売されました。
提唱者はオーストリア出身の精神学者で心理学者であるアルフレッド・アドラー。
アドラー心理学の思想的な特徴は、「他者を支配しないで生きる決心をすること」「他者に関心を持って相手を援助しようとすること」などが挙げられます。今回、これら思想を反映したアドラー心理学の代表的な考えを4つご紹介致します。
アドラー心理学の考え
アドラー心理学の代表的な考えである「目的論」「課題の分離」「共同体感覚」「劣等感」の4つを、具体例と一緒に解説していきます。
1. 目的論(トラウマは存在しない)
目的論とはアドラーの5つの基礎理論の1つで、フロイトが提唱した原因論とは対になる考え方です。フロイトの原因論が「人間の行動には必ず原因がある」という考えなのに対し、目的論は「人間の行動は未来の目的によって決められる」という考えを指します。
例えば、過去のトラウマを引きずって家に引きこもっている人は、原因論で説明すると「過去のトラウマが原因で外に出られない」となります。
一方、目的論で説明すると「外に出ない・家の中でのんびりする・家族から心配されるという目的のために家から出ない」となるのです。
つまり、目的論においては、トラウマという原因を重視していません。
アドラー心理学では、現在の行動を変えることで未来を変えることができるとしています。そして、人は誰でも性格を変えることができ、悩みから解放され、幸せな人生を歩むことができるとしています。
2. 課題の分離(他人の人生を必要以上に抱え込まないようにしよう)
「課題の分離」とは、自分と他者の課題は別と考え、他者の課題に入り込まず、また自分の課題に他者を入り込ませないようにする考え方のことです。
ここでいう「課題」とは人生におけるあらゆるタスクを指します。例えば、恋人や家族・友人の怒りや悲しみといった感情、仕事に対する悩み、自分の評価などが挙げられます。
自分と他者の間に線引きを行う上で、ポイントになるのは「最終的に誰がその決断に責任を取るのか?」「最終的に誰が結論を出すのか?」の2つです。
課題の分離を実生活で役立てると、下記のような効果が期待できます。
- 自分に対する周りからの評価を気にしなくなる
- 相手に命令をして強制させることがなくなる
- 相手からの見返りを求めなくなる
例えば、1つ目に関して言えば、周りが自分をどのように評価するかはその人たちの課題であり、また最終的に周りが結論を出すもの。自分の評価を周りに依存していては、いつまでたっても承認欲求に支配される人生を送ることになってしまいます。
3. 共同体感覚(人間の悩みは全て人間関係にある)
アドラー心理学の重要なコンセプトの1つに「共同体感覚」があります。
これは、自分と世界とのつながりのこと。「自分は全体の一部であり、全体と一緒に生きていること」を実感できると、健全な人間関係を築いたり、心の悩みを解消したり、自分本来の生き方ができるとしています。
共同体感覚の最も小さい範囲は自分とパートナーの2人で、そこから家族や職場、国、地球、宇宙と広がっていきます。アドラー心理学では、宇宙も含めて「全体」としており、私たちはその一部として、全体と調和して生きていくことを目指しています。
また、アドラーは「人間の悩みは全て人間関係にある」としています。例えば、恋人と喧嘩した、会社の上司と上手くいかない、友人に比べて劣っている、などは多くの人に見られる人間関係による悩みです。
極端な話、人間が誰もいない世界ではそういった悩みは持つ必要がなくなります。しかし人間ではひとりでは生きていけません。
この矛盾を解決をするために先述した「共同体感覚」を理解し身につけることが重要。「自分は全体の一部であり、全体と一緒に生きている」と実感した上で、他者を信頼して貢献し、周りから必要とされることでより自分を受け容れることができます。
そして自分も他人も味方になり、周りから必要とされることで孤独感を味わうことがなくなります。こうすることによって、悩みから解放される人生を送れるのです。
4. 劣等感(劣等感はあっていい)
劣等感とは、容姿や能力などが劣っている感覚のことです。アドラー心理学では、この劣っている感覚を、次の3つに区分しています。
- 先天的に身体に障害があり劣等感を感じる「器官劣等性」
- 他者と比較したり、理想の自分と比較してギャップから感じる「劣等感」
- 劣等感を行動で解消することを諦め、心が歪んだ状態になってしまう「劣等コンプレックス」
人間は誰しも「向上したい」「理想の自分になりたい」という欲求が本能的に働きます。これを「優越性の追求」と言います。
アドラーは、理想の追求に伴い生まれる劣等感は、目標を達成するための原動力として健全なものであり、「劣等感があるから人間は頑張れる」としています。
劣等感をバネに自己の向上を目指せていれば問題ないのですが、向き合わなければならない自分の課題から目をそらし、劣等感を行動で解消しようとしなければ「劣等コンプレックス」という克服すべき問題になってしまうのです。
例えば、「仕事ができない」という劣等感に悩む会社員がいるとします。
仕事ができるカッコいい自分になるという「優越性の追求」を持ち、周りの人からアドバイスをもらったり、スキルを磨いたり、仕事に役立つ情報を集めて勉強するなどして目標達成に励めれば、劣等感を健全に使うことができています。
一方で、「元々頭も良くないし、頑張ってもどうせダメだ」「すぐに仕事ができるようになんてならない。どうせ上手くいかない」「どうせ自分は…」と心を歪め自分の課題から逃げてしまうと、「劣等コンプレックス」になってしまうのです。
アドラーの考えを活かしてより明るい人生へ
今回は、アドラー心理学における重要な考えである「目的論」「課題の分離」「共同体感覚」「劣等感」について詳しくご紹介しました。いずれの考えも、理想の自分に近づき、悩みから解放され、より幸せで明るい人生を送るきっかけになるでしょう。
アドラーがフロイトの「原因論」を比較し否定して「目的論」を打ち出したように、人それぞれ自分に合った考え方があります。
もし、アドラーの考え方を活かして、自己の向上に努めたいと考えているのであれば、ご紹介した4つの考えをぜひ実践してみてください。