本当の「無償の愛」ってなに?条件付きの愛の心理的影響と無償の愛の育て方

「つい優等生でいようとする…」「周りの期待に応えようと必死になってしまう…」
そういった人は「条件付きの愛」で育てられた可能性があります。条件付きの愛で育てられた人は、無償の愛を欲する、自己肯定感が低くなる、といった心理的影響が出て、生きづらさを感じてしまうのです。
この記事では、条件付きの愛がもたらす心理的影響、無償の愛とその育て方について詳しく紹介していきます。
条件付きの愛とは
条件付きの愛とは「〜であるなら好き」という愛情のことです。愛と引き換えに、個人的な好みや願望を条件にして相手に求めます。
わかりやすい例は親子愛です。「学校の成績が良ければいい子」「親の言うことを素直に聞いてくれる子は好き」「親に恥をかかせない子であれば愛してあげる」などが、親から子に対しての条件付きの愛として挙げられます。
条件付きの愛で育った人にみられる心理的影響
条件付きの愛で育った人には、生きづらさに繋がる心理的影響があらわれます。以下では、例として3つご紹介します。
自己肯定感が低い
自己肯定感が低い人の多くは、養育者による条件付きの愛を経験しています。「条件をクリアしなければ愛されない」「自分の居場所がなくなってしまう」と恐怖にかられ、子どもは必死に応えようとします。
この努力を繰り返していくうちに「親が求める自分(=自分以外の存在)にならなければ愛されない」と感じ、ありのままの自分を否定していきます。そして、自己肯定感が非常に低い大人になってしまうのです。
条件付きで人を好きになる
自己肯定感が低い女性は、自分の不足している部分(コンプレックス)を埋めてくれる人に惹かれ、その人と関係を持つことで自分の価値を高めようとします。
例えば、学力がないことにコンプレックスを抱いている人は知性に溢れた人に魅力を感じ、容姿に自信がない人は整っている人に惹かれ、精神的な未熟さ感じている人は包容力がある大人を好きになるでしょう。
つまり、「お金持ちだから好き」「仕事がバリバリできるから好き」「タイプだから好き」などど、と条件付きで人を愛するようになります。
健全な恋愛関係を作るのが難しい
仮にパートナーと交際が始まっても、健全な恋愛は望めません。恋愛は自分の価値を高めてくれる人といることではなく、互いに高め合うもの。一緒にいるだけでは、自己肯定感や価値の向上には影響しないからです。
そしてもし振られた場合、また不足を感じる自分に戻ってしまうため、相手の心をつなぎとめようと必死に尽くすようになる人もいます。
そして「相手の求める自分であれば愛される」「相手に合わせていれば嫌われない」と条件付きの愛をベースにした言動に変わってしまうのです。
無償の愛とは
「〜であるなら好き」が条件付きの愛であるのに対し、「〜だけど好き」が無償の愛。
他者を自分とは別の存在と認めた上で、見返りを求めず、互いの考えや感情、行動を称賛・尊敬することを指します。自分へのメリットは関係なく、相手のデメリットも含めて好きだと感じられます。
また、無償の愛は、頭で考えるものではなく心で感じるもの。誰からから受け取るときと自分が与えるときに、人は無償の愛を感じることができます。
無償の愛を感じるためには、自分の心を他者に開くことが必要。心を開くことで他人の良いところが見え、その人自身をより深く理解することができます。
たとえ心を開いた結果、傷つけられて失望することがあっても、相手を許し慈悲の心を送ります。
その失望を乗り越える過程で、人の良いところも悪いところも肯定し、人の愛し方や愛の受け取り方を知り、家族や友人、職場の同僚など周りの人に無償の愛を与えることができるのです。
無償の愛の育て方
無償の愛は人から与えられるだけでなく、自身が持っていることも大切です。
先述したように、条件付きの愛で育った人は自己肯定感が低い傾向にあり、その人自身も他人に条件を付けて愛してしまいます。この悪循環を断ち切るためには他者を肯定し、無償の愛を自分の中に育んでいく必要なのです。
以下は、無償の愛の育て方の一例です。
- 自分で自分を認める(愛する)
- 自分自身を大切に育てる
- 定期的に瞑想する
- どんな時でも”ありのまま”でいる
- ネガティブな感情を抱えないようにする
- 「〜すべき」「〜しなければならない」という思考を捨てる
- 前向きで明るい人と一緒に過ごすようにする
- 頑固で気難しい人にも愛を届ける
まとめ
今回は、条件付きの愛とその心理的影響、そして無償の愛についてご紹介しました。
条件付きの愛によって生きづらさを感じている人にとっては、それが原因だと気がつくこと自体が難しいもの。自分の考え方や感じ方、物事の捉え方は長い年月をかけて形成されてきたものなので、簡単に変えることは難しいでしょう。
ご紹介した無償の愛の育て方の中でも、比較的ハードルが低いと感じるものからチャレンジしてみてください。
著:山下 悠毅『いい子をやめれば幸せになれる』2018年(弘文堂), Psychology Today, ACC Kyoto「アダルトチルドレン克服カウンセリング京都」/ written by Cocology編集部