「変わり者」ってわけじゃない。人格障害の原因と治療法
人格障害(パーソナリティー障害)とは、周りと違う行動をすることで本人が苦しみ、周囲へも迷惑をかけてしまう症状です。
社会で期待されていることとは別の考えを持ったり、行動を行ったりすることで、対人関係に問題が発生してしまいます。
つまりパーソナリティーの偏りが見られ、生活上の問題を引き起こしてしまうのが、パーソナリティー障害なのです。
症状
人格障害とは、どういう症状を伴うのでしょうか。
10のカテゴリーがある人格障害は、さらに症状によって3つの群(A群とB群、C群)に分けられます。
A群
- 妄想性パーソナリティー障害
- 統合失調質パーソナリティ障害
- 統合失調型パーソナリティ障害
B群
- 境界性パーソナリティ障害
- 自己愛性パーソナリティ障害
- 反社会性パーソナリティ障害
- 演技性パーソナリティ障害
C群
- 依存性パーソナリティ障害
- 強迫性パーソナリティ障害
- 回避性パーソナリティ障害
A群の症状
風変わりさを主な特徴とするA群には、不信感や猜疑心のある妄想性パーソナリティ障害や、他者への関心が乏しい統合失調質(シゾイド)パーソナリティ障害、会話が風変わりな統合失調型(スキゾイド)パーソナリティ障害を含みます。
シゾイドパーソナリティー障害とスキゾイドパーソナリティー障害は、「統合失調症のような」という意味ですが、統合失調症の発病までは至っていないといわれる意味合いを含みます。
B群の症状
感情面での不安定さを伴うB群は、感情の不安定さをみせる境界性パーソナリティ障害や、自己評価に強くこだわる自己愛性パーソナリティ障害。
そして、反社会的かつ衝動的な反社会性パーソナリティ障害や、他者の注目を集める演技的な振る舞いをする演技性パーソナリティ障害があります。
C群の症状
不安や恐怖が見られるC群は、他者への過度の依存をする依存性パーソナリティ障害や、融通性がなくこだわりが強い強迫性パーソナリティ障害、自己にまつわる不安や緊張がある回避性パーソナリティ障害を含みます。
原因
パーソナリティー障害の原因として、どのようなものが考えられるのでしょうか。
パーソナリティー障害は、脳神経伝達物質の異常や幼少期の逆境体験が関連していることがわかっています。
人格障害の方がみせる衝動性は、神経伝達物質のセロトニンが作用する神経系の異常によるものだと考えられています。
養育者が身近にいなかったなどの養育環境の不十分さや、養育期のつらい体験なども、人格障害の発症と関連しているとのこと。
しかしパーソナリティ障害の原因は、まだ十分に明らかになっていません。
疾患率
アメリカの研究は、人口の15%の人がパーソナリティ障害だと報告しています。
しかし、患者さんが病院を受診するのは、うつ病などの他の精神障害を合併しているときです。つまり、パーソナリティー障害に気づいていないことが多いのが現状。
精神科外来に受診する方のおよそ40%もの方が、何らかのパーソナリティー障害を患っているといわれます。
統合失調質パーソナリティー障害や統合失調型パーソナリティー障害は、男性の疾患率が高く、異性への関心が低下するため、生涯独身の男性も多いとのこと。
感情面の不安定さをしめす境界性人格障害は、比較的女性が罹りやすいものです。
治療法
パーソナリティ障害の治療には、患者と医師やセラピストとの関係性が重要です。
安定した関係の中で、パーソナリティーが引き起こす問題やその対策について検討しましょう。
治療法として、セラピストの共感によって不安を取り除く支持的精神療法や、認知や行動の歪みを矯正する認知行動療法、複数人で行う集団療法などの心理療法が主なものです。
統合失調質パーソナリティー障害の方は、初めは集団療法で沈黙してしまうかも知れません。しかし、時間をかけて、他の人物との交流が大切に思えるようになります。
また、境界性パーソナリティー障害の患者は、親に持つべき親密な感情を、セラピストに向けるという転移が発生しやすく、治療が困難になりやすいです。ですが、セラピストとともに、回復に向けて治療を続けて行いましょう。
なによりも重要なのは、患者さんが積極的に治療に参加することです。
それに加え、感情の不安定さを取り除く気分安定薬や、うつ状態に用いられる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、少量の抗精神病薬も、パーソナリティ障害の症状を軽くするのに有効とのこと。
合併している他の精神疾患を見つけ、治療することも重要です。
まとめ
人格障害にかかる方は、一見、「性格が悪いだけ」と誤解されてしまいます。
ですが性格の問題ではなく、人格障害がそうさせている可能性もあるのです。
パーソナリティー障害は、自分が意図した性格ではなく、過去の経験や生物学的理由から生じるもの。患者さんのことを理解してあげることが必要です。