「何だか物足りない…」欠乏感が与える心理的影響と行動の変化
「何だか物足りない…。」「心が満たされない…。」こういった気持ちは欠乏感と呼ばれています。
欠乏感を強く抱きすぎるとメンタルや心理にネガティブな影響を与えてしまいますが、上手に使えば毎日の生活をより充実させることもできます。
今回は、欠乏感が与える心理と行動の変化について、ポジティブとネガティブの両面を詳しくご紹介します。
欠乏感によるネガティブな心理・行動の変化
欠乏感にとらわれすぎていることで引き起こす、ネガティブな心理や行動の変化について解説します。
1. メンタルを消耗させる
欠乏感が強すぎると、考えや行動などのコントロールが上手にできなくなっていきます。
例えば、お金が十分にない場合、お金に対して欠乏感が強くなります。欲しい物を我慢することが積み重なると「どうせ自分に手に入れることはできない」「なんて自分はダメなんだ」とネガティブに考えるようになり、結果メンタルを消耗させてしまうのです。
2. 目先のことにとらわれる
欠乏感が強いと、今現在足りないものに焦点を当ててしまいます。将来的に価値があるものよりも、すぐに心を満たせるものが優先的だと考え、すぐに結果が出るものに対してより価値があると考えてしまうのです。
例えば、将来的に大きな自己投資となる健康診断の受診や運動は、即時的な利益とならないため価値を感じられず、先送りにしてしまいます。
3. 隣りの芝生が青く見えるようになる
自分が満たされていないと、「自分にはなくて他人が持っているもの」を羨ましく感じ、卑屈な見方をするようになります。
「あの人はお金に余裕があって羨ましい」「あの人には素敵なパートナーがいて羨ましい」「私はこんなに頑張ってるのになんで報われないんだろう」「あの人は楽に手に入れてずるい」と、だんだん自分の常識や価値観を他人に当てはめて自分と比較し、非難するよになってしまいます。
4. モノの価値を過剰評価してしまう
欠乏感はモノの価値を高めるため、買い物客の欠乏感を満たそうとさせるプロモーションは、多くの店舗や企業で戦略的に使われている手段でもあります。
例えば、スーパーマーケットで「品薄につき、マスクはお一人様2個まで」「人気のご当地プリン、残りわずか!」と購入可能数や数量が限定されている店内POPを見たとします。
買い物客は、商品がなくなってしまう恐れを抱いて「買っておかなくては」という心理になり、元々買う予定はなくても買ってしまうことが多くあるのです。
欠乏感によるポジティブな心理・行動の変化
適度な欠乏感は心理や行動にポジティブな影響をもたらしてくれます。5つのポジティブな変化を詳しく解説します。
1. 優先順位をつけられるようになる
制限がある中で何かを成し遂げるとき、欠乏感は物事の優先順位をつけるのに役立ちます。
例えば、提出物の締め切り期限が迫っているとき、人は時間に対して欠乏感を抱きます。全体のスケジュールを把握して時間配分を考え、どのタスクを優先的に進めれば締め切りに間に合わせるか、を必死に考えることができます。
2. トレードオフ思考ができるようになる
人はトレードオフを繰り返して人生という時間を過ごしています。「朝食にパンを食べる or ご飯を食べる」「休日に出かける or 出かけない」「転職する or 今の会社で頑張り続ける」といったように、どちらかを選択すればもう一方を失います。
時間やお金、機会など有限なものに対して欠乏感があるとき、人は「効果を最大限得よう」と考え、自分にとって「より重要な選択肢」を選ぶことができます。そして、もう一方の選択肢を捨てた以上、選んだ方に全力で取り組むことができるのです。
3. 五感を掻き立てる
欲しいものが手に入らず我慢していると、満たされない欠乏感が自動的に強くなっていきます。そして、欲しているものが手に入ると、五感を使って堪能することができます。
例えば、食べ物は空腹(満腹の欠乏感)を満たすことができます。人気レストランでのランチを楽しむために朝食を抜いてお腹を空かせておくと、その料理をより美味しく感じることができるでしょう。
4. 生きがいになる有意義な活動に集中できる
人生の時間は有限です。いつ終わりがくるのか誰にもわかりません。
人生の時間に欠乏感を持つことで、人は「限られた時間の中で何がしたいのか」「自分の中で何が大切なのか」「譲れないものは何か」を考えることができます。
そして、自分の大切なものを優先的に選び、その生きがいとなる有意義な活動だけに集中することができるのです。
欠乏感を意識することで人生を濃いものにする
今回は欠乏感による心理と行動の変化について、ポジティブとネガティブの両面をご紹介しました。
欠乏感が強すぎると他人に嫉妬したり、自己否定や自己肯定感を下げることに繋がってしまいます。しかし、欠乏感を適度に持つことで、自分の行動を自分の意志で決めることができ、より濃い毎日を送ることができます。
欠乏感を上手に使って、自分の望む未来への一歩を踏み出してみてくださいね。
著:ワタナベ薫『生きるのが楽になる「感情整理」のレッスン: 「がんばっているのに、なぜかうまくいかない」と悩むあなたへ』2014年(廣済堂出版)/ written by Cocology編集部