なぜ人は死や悲しみを対象にした観光「ダークツーリズム」に惹かれるのか

心理学 2019/12/15
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最近、海外で「ダークツーリズム」が注目されています。

ダークツーリズムとは、死・災害・惨事などが起きた場所を目的地とした観光のことです。21世紀以降に始まった慣例ですが、その起源はずっと古くに遡ります。かつての戦場や事故現場、被災地などに加えて、幽霊や超常現象、魔女狩り、呪いといったものにまつわる場所を訪れることもダークツーリズムに含まれるのです。

人々がこの種の観光に出掛ける動機はさまざま。スロベニアの文化人類学者Lea Kuznik氏は自著‘Fifty shades of dark stories’の中で、ダークツーリズムの動機やその魅力を7つのカテゴリーに分類しています。それらは、一体どんなものでしょうか?

1. 好奇心

観光客の多くは、普通とは異なるユニークな体験に関心があります。それは、ナイアガラの滝に代表されるような自然現象であったり、エジプトのピラミッドのような芸術的・歴史的建造物であったり、ロイヤルウエディングのような滅多にないイベントだったりします。

興味深いことに、人々がダークツーリズムに引き寄せられる理由は、少なくとも部分的には、ナイアガラの滝を訪れる動機を生むのと同じ好奇心に由来します。ダークツーリズムの目的地を訪れることは、日常とはかけ離れたユニークな体験であり、人間の好奇心を満足させる手段として魅力的だからです。

2. 共感

その場所で人々が感じた恐怖に感情移入することも、ダークツーリズムの動機の1つです。その根底には、同じ空間に身を置くことで出来事を疑似体験し、共感したいという欲求があります。

ただし、ダークツーリズムの場所における観光客の感じ方は千差万別で、キュレーターが伝えようとするメッセージと観光客の理解に矛盾が生じることは珍しくありません。

3. 恐怖

人がダークツーリズムの目的地、とりわけ虐殺などの残虐行為が行われた場所を訪れる背景には、いわゆる「怖いもの見たさ」という感情があります。その現場を直接訪れることは、テレビやインターネットなどでその出来事についての情報に触れることと同程度にエンターテイメント性があります。

人々が処刑や殺人が行われた場所で肝試しをしたり、ロンドンに残る切り裂きジャックの痕跡を辿ったりするのはこのためです。

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4. 教育

古くから観光学の分野では、人が旅をする大きな目的の1つは本物の体験を通して新しい見識を得ることだと言われてきました。特に文化や遺産を巡る観光では、ガイドによる解説を通じて観光客に学習の機会を提供することをミッションの1つとしています。

同様に、知識や理解、学びを得るためにダークツーリズムの目的地を個人的に訪ねることも、本質的な教育上の価値があります。よく修学旅行の行き先としてダークツーリズムの目的地が選ばれるのは、経験的学習を通じた教育的効果を期待してのことです。

5. ノスタルジア

ノスタルジアとは、特定の物・場面・匂い・音楽に刺激されて過去に思いを馳せることです。よく元兵士が戦場を再び訪れ、若かりし頃の自分を思い出すのはこのためです。

6. 追憶

追憶とは、過去と繋がろうとする人間の基本的活動の1つです。追憶は、人がアイデンティティーを確立し、過去の過ちから物事を学び、明確な視点をもって未来へ向けて前進する手助けになります。ダークツーリズムにおいて、追憶は重要な要素です。

7. 生存者の罪悪感

ダークツーリズムの特徴の1つは、観光客の中にその場所でかつて被害に遭った人やその家族が含まれていることです。特に第二次世界大戦やホロコーストなどに関係のある場所では、このタイプの観光客を多く見かけます。

被害者やその家族にとって、その場所を訪問することには治療上の目的があります。つまり、恐ろしい出来事が起きた経緯を理解することで、悲しみに決着をつけるのです。

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また、Kuznik氏は、私たちの身の回りに存在する「ダークな場所」についても、以下の17のカテゴリーに分類しています。

1. 自然災害が発生した場所を訪ねること(台風、津波、火山噴火などが発生した場所)2. 墓標を訪ねること(偉人や有名人のお墓や霊廟など)

3. 戦争跡地を訪ねること

4. ホロコーストが行われた場所を訪ねること(ナチスの集中キャンプや記念博物館など)

5. 集団虐殺が行われた場所を訪ねること(カンボジアのキリングフィールドなど)

6. 旧刑務所を訪ねること(アルカトラズなどの旧刑務所など)

7. 共産主義国を訪ねること(北朝鮮など)

8. 冷戦に関連する土地を訪ねること(ベルリンの壁など)

9. 核爆弾に関連する土地を訪ねること(チェルノブイリ、広島、長崎など)

10. 殺人事件が発生した場所を訪ねること(ロンドンの切り裂きジャック、ケネディ元大統領の殺害現場など)

11. スラム街を訪ねること(インド、ブラジル、ケニアなどのスラム街)

12. テロが発生した場所を訪ねること(ニューヨークのグラウンド・ゼロなど)

13. 超常現象に関連する場所を訪ねること(ミステリーサークル、UFOの目撃現場、幽霊屋敷など)

14. 魔女狩りに関連する場所を訪ねること(マサチューセッツ州のセイラムなど)

15. 事故現場を訪ねること(ダイアナ妃が交通事故で亡くなったパリのトンネルなど)

16. 医学や人体に関連した展示を観ること

17. テーマパークで実施されるダーク系のイベントに参加すること(お化けやドラキュラなどに因んだイベント)

こうして見てみると、「ダークツーリズムなんて自分は興味ないなぁ」と思っていた人も、自分が想像以上に「ダークな場所」を訪れていることに気付かされることでしょう。

「行きたくない。でも、行ってみたい」という感情は、複雑極まりない人間の好奇心だけでなく、悲しみに自ら正対しようとするたくましさの表れなのかもしれません。

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reference: psychologytoday / written by まりえってぃ

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